旅を始めてから一年が経った頃、詠春が結婚すると聞き出席することになった。
詠春の結婚相手は結構な気の使い手のようだった。
「出席してくれてありがとう、龍燕」
「いやなに、共に戦った仲だ。仲間の結婚式に出席しないわけはないだろう」
「ハハハ、そうか。ところで、龍燕は結婚しないのか?」
「……以前、旅を始めてすぐの頃に気になる女性…いや、少女にはあった」
「ほう。どんな人なんだ?」
詠春が興味深そうに聞いてくる。
「輝くような金髪で、肌は純白のように白かった。名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。闇の福音だ」
「やっ、闇の福音!?そうか…」
一瞬驚いたような声を出す詠春。しかし何か納得したようだ。
龍燕は時に身を置く事はしないで旧世界を旅をして回った。
そんな時不幸な知らせが飛んできた。
ガトウが死んだと聞き、急いでタカミチのところへ向かった。
「記憶を消すだと?どういうつもりだ、タカミチ!」
「そうするしか平和に暮らす方法がないんだ!」
「平和に暮らす方法?平和に暮らせれば、アスナの意思は無視するのか?そんな独善的な行為、俺は認めん!」
「それが師匠の意思だからです!」
「師匠の意思、か。アスナの人生を師匠の意思で変えるのか?アスナの記憶はアスナのモノ。消すか、消さないかはアスナが決めることだ」
「けど…!」
「お前が紅き翼に入ったのは誰の意思だ?他人に言われて入ったのか?それとも、自分で決意し入ったのか?」
タカミチは頭を抱えた。
「最後に。本当の『幸せ』とは誰が決める?『幸せ』とはどうやってできる?」
タカミチは泣きながら両膝を着いた。
「幸せとは、自分の選択から得られるものだ」
「……分かりました……僕も、少しばかり気が立ってたみたいです……」
「いや、俺も少し熱くなっていた。悪かったな……」
「いえ、僕も悪かったんです。わかりました。さ、行きましょう」
タカミチに促され、龍燕はアスナが居る部屋へと入る。アスナは相変わらずの無表情だった。いや、少しばかり表情が暗い。ガトウが死んだ場所を見ていたか……。
「久しぶり、だな。アスナ」
「シエン…?」
「覚えていたか。突然だが君に聞きたい事があるんだ」
「なに?」
アスナは首を傾げた。
「君には今、二つの選択肢がある。一つ、戦いの記憶を全て消し、平和に生きる道。二つ、記憶を消さずにこのまま魔法に関わり抜く。どちらを選んでもいい。記憶を消しても消さなくてもいい。俺達は君を軽蔑したりはしない」
龍燕はそういうとアスナの目から涙が流れた。
「消さないっ!忘れたくない!皆のこと!忘れたくない!」
龍燕は目を閉じて頷いた。
「わかった」
龍燕は目を開け、アスナの目を見て言った。
「アスナは記憶を消したくない、か。俺達は君の記憶を消さない。それでいいな、タカミチ」
「えぇ……それが本人の意思なら……」
タカミチは頷いて言った。
その後、アスナはどうするかと話しをした。
結果、アスナは自分の意思で龍燕の一時的な養子となる事になった。アスナは灼煉院
明日奈と言う名前になった。明日奈の字は龍燕が決めた。