ええっと、公衆の面前で両親がイチャイチャし始めいたたまれなくなったシーモアだ。
消えてしまいたいと思ったら、なんと体が半透明になってしまった…。いや、中途半端すぎないか?と周りを見ると、誰も私に気づいていない。目の前で人間が、半透明になれば驚くと思うのだがこれはどうなっているんだ?
こんな現象を引き起こすのは、未だ詳細不明のチートのはずだ。そう5歳になった私だが、依然チートは分かっていない。少なくとも、ゲート・オブ・バビロンや無限の剣製などではない。あまりにも何も分からないため半ば諦めていたのだが、これがそうなのか?半透明になって人に認識されない能力?まあ、便利だと思うが……。しょぼいな。
「ぼ、坊ちゃま?」
って、おい。認識されてるじゃないか。今、話しかけてきたのはトワメル。原作でシーモアに仕えていたグアド族の老人だ。現在はジスカルに仕えている。ジスカルの護衛に加わっていたようだな。
「坊ちゃま?大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫ですよ。トワメルには私は今、どんな風に見えていますか?」
「そ、それが…坊ちゃまが、半透明になっているように見えます。このトワメルの目がおかしくなったのでしょうか?」
「正常だと思いますよ。私自身も半透明に見えますから。ただ、それにしては妙なんですよね。トワメル以外は、誰も騒いでいない。それどころか気づいてすらいないようです」
「……そのようですな。これは一体?坊ちゃま、こうなったのはいつから?」
「先程からです。とりあえず危険は無いようですので、大きな騒ぎになる前に一度人の少ない所に、寺院の外にでましょう。護衛をお願いします」
「その方が良さそうですな」
と、いうわけで外に出たんだが……
「戻りましたね……」
「戻りましたな……」
正確な時間は、分からないが1分ほどと。短いな。それ以前にトワメルに認識されたのは一体?
「ふむ。坊ちゃま、先程の現象に心当たりは?」
「全くありませんね。今までに、同じことが起こったことも無いです」
「では何かきっかけは?」
「まあ、ちょっと姿を消したいと思いました」
「同じことをもう一度できますかな?」
「やってみましょう」
どうせチートであれば、トワメルには完全には理解できないだろうから、検証を手伝ってもらうとしよう。
「……どうですか?」
「そうですな。確かに半透明になっていますが、それ以上になんと言うか、気を抜くと見失ってしまいそうですな」
「そうですか。……これは!」
「如何なさいました?」
「いえ、ほんの少しですが魔力が減っています」
「なんと、ではこれは魔法だと?」
「かもしれません」
実際にはどうだろうな。魔法なのか、それともチートの代償が魔力なのか。まあ、周囲には魔法と説明する他ないんだ、好都合だと思っておこう。
「むう。姿を消したい思えば消せる。それならば」
「どうしました?トワメル?」
「いえ、中途半端だと思いましてな。姿を消したいではなく、より強く相手に見るな、と思えば完全に透明になれるのでは?と」
「……試してみましょう」
相手といってもトワメルしかいないし大事にはならないだろう。"見るな"
「ぬ、ぬおおぉぉ!こ、これは"暗闇"状態!」
「落ち着いて下さい。今、治します。"エスナ"」
「ありがとうございます。それにしてもこんなことになるとは」
「……そうですね」
トワメルには分からないだろうが、私は気づいたあれは"ブライン"だ。"ブライン"は、FFの魔法ではあるがFF10には存在しない魔法だ。今にして思えば、姿が半透明になったのも恐らく敵に見つかりにくくなる"バニッシュ"だったのだろう。"バニッシュ"は、あくまで見つかりにくくなるだけだ。トワメルが気づいたのは偶然か、他の人は両親に注目していたんだろうな。
チートの内容に大体の見当はついた。実験してみたいが、そろそろ戻った方が良いな。
「坊ちゃまの魔法は、今までにないものですな」
「そうですが、魔法と分かれば自分で制御できます。一旦、父様と母様のところへ戻りましょう。いないことわかれば、心配させてしまいます」
「……そうですな」
で、戻ってきてんだが……
「おまえ……」
「あなた……」
状況はなにも好転していなかった。寧ろベタベタして悪化しているぐらいだ。周囲の皆さんも、僧官たちは逃げ出し、護衛達の目は完全に死んでいる。
現実に戻ってもらわねば。
「んんっ。父様、母様、それぐらいでいいのでは?」
「ん?そうだな。本来の目的を忘れるところだった。私は、いずれシーモアに跡を継ぎこの寺院を管理してもらいたいと思っている。勿論、ずっと先のことだが、今のうちに寺院を案内しようと思ってな」
「まあ、それは素晴らしいですね。シーモア。しっかり学ぶのよ」
「では行こう」
「はい」
案内の最中も、暇さえあればイチャつきムカついたが無事に終わった。
ジスカルも忙しい筈、漸く解放されるな。
「さて、グアドサラムに帰るとするか」
「あなた?まさか?」
「ああ。一緒に帰ろう」
護衛達と私の表情は……死んだ。