グアドサラムに帰って来てから3年が経った。
母様との地獄の組み手が始まって数週間後、迎えに来たジスカルに連れられ、私と母様は無事にグアドサラムに帰って来られた。どんな手段を使ったのか知らないが、エボンの教えはしっかりと広がっていて私たちはグアド族に受け入れられた。
しかしジスカルへの憎しみが薄れることはなく、復讐はきっちりと果たさせて貰った。具体的には、ジスカルと母様が夜にアレなピンクの雰囲気になった日の深夜に突撃してやった。当然、毎回邪魔したわけではないが、数回に1回の割合で用事を作り妨害したので慌てていることも多かった。ざまあみろ。
グアドサラムに帰って来てからは、ジスカルの手伝いを少しずつさせられるようになった。グアド族の族長としての仕事も、エボンの老師としての仕事もだ。まあ、見学しているだけのことも多かったが。それに関係して、エボン教の総本山 ベベルにも何度か行っている。
そして、私は今日で15歳になる。この世界(スピラ)では15歳で成人と認められるようだ。特別な日のはずなんだが……
「おめでとう。シーモア」
「おめでとう。シーモア。立派になったわね」
「ありがとうございます。父上。母上」
「シーモア。お前も成人したことだし、そろそろマイカ総老師と顔合わせしておくべきだ」
マイカ総老師は、エボン教のトップの老人で原作でも総老師を務めている。原作時、つまり13年後に在位50年だったか。原作では死人だったが、今はどうなのだろう?どちらにしても合わなくてはいけないな。
「分かりました。ではベベルへ?」
「そう焦るな。予定は組んである」
「そうよ。それに成人したお祝いとして、新しい正装を用意したの。これよ」
ああ。さっきから視界の隅に映っていた。だが認めたくなかったんだ。今、私の目の前には原作シーモアの服装がある。くそっ、どうせ族長か老師を継いだときだろうと油断していた。
「どう?素敵でしょう?ジスカル様がデザインしたのよ」
「シーモア。お前ならきっと似合う。複数用意してあるんだ。遠慮なく着てくれ」
「……アリガトウゴザイマス」
私、『ジスカル』を倒します。必ず、倒します。
あれから数日後、マイカ総老師との面会のため、私はベベルに来ている。もはや見た目は、原作シーモアとほとんど変わらない。……お腹が冷えます。
ベベルに来るのは久しぶりだが、相変わらずだな。自分たちの都合の良いように機械の許可・不許可を決め、陰で平然と教えを破る。まあ、原作を知っている身としては当然かとも思うが。
「……ほほう。この者が其方の息子か?ジスカル?」
「はい。マイカ総老師様。シーモアと言います。シーモア、挨拶を」
「お初にお目にかかります。ジスカル=グアドが息子、シーモア=グアドと申します」
「ふむ。時にシーモアよ」
「何でしょうか?」
「お主は、エボン教や究極召喚をどう思っておる?」
「それは……」
「隠さずとも良い。お主が母と共にエボン=ドームを訪ねたことは知っておる。ジスカルに聞かされているのだろう?」
やっぱり原作で、腹の中真っ黒だった爺と話していても面白くないな。どうせ自分と反発するようなことを言えば、影響力を削ぎ、同調するようなことを言えば 取り立てるのだろう。
「確かに父より聞かされております。その上で、エボンの教えも究極召喚もスピラには必要かと」
「そうかそうか。うむ。ジスカル。よくできた息子だな」
「ありがとうございます」
ちょろすぎるだろう。
ジスカルは、他にも用事があるがそれはまだ、私に見せられない部分だそうだ。暇になってしまったな。その辺をうろつくとしよう。
暫くすると、人気がなくなってきたがなにやら声が聞こえてきた。しかもこれは……子供の泣き声じゃないか!?
声のする方向へ進むとうずくまって泣いている子供がいた。
「どうかしたのかい?怪我をしているなら見せてみなさい。私は白魔法が使えるから治してあげよう」
声を掛けると、子供は泣いたままだが顔を上げた。オッドアイで茶髪の女の子のようだ。
「……ぐすっ…………ううん。ケガしてない。……ひぐっ」
「じゃあ、どうしたのかな?お父さんかお母さんとはぐれてしまったのかな?」
「…………お母さん……う、うわあああぁぁぁん」
やばい。滅茶苦茶泣き出した。とりあえず、「お母さん」がNGワードだったらしい。ちょっとどうしていいか分からない。頭をなでるくらいはしてみる。
数分間、頭をなで続けていると次第に落ち着いてきたらしい。ポツリポツリと自分のことを話してくれた。要約すると、お母さんが一度故郷へ帰るために船に乗り、その船が『シン』に襲われお母さんは亡くなったらしい。
スピラではよくある話だ。だけど、流石に目の前で小さな女の子が泣いていると心にくるな。
「……そうか。辛かったね。でもこんなところに一人でいてはいけない。お父さんは?」
「……おしごと」
「じゃあ、お友達は?」
「……いない。お母さんが『あるべど』だから、わたしとはあそばないって」
ん?母親がアルベド族?まさか……
「い、今更だけど自己紹介しようか。私はシーモア。君は?」
「……わたしはユウナ」
あ~。確定した。この子、原作ヒロインだ。そうだよな。シーモアとユウナは11歳差だから、ユウナは今4歳だよな。しかし、原作シーモアよ、いくら13年後とはいえこの子と結婚式挙げてキスしたのか。事案だよ、事案。
それはともかく……
「ではユウナちゃん。私と友達になろう」
「……いいの?わたしのお母さんは『あるべど』で……」
「ああ。ユウナちゃんは、アルベド族と人間とハーフなんだろう。だが、安心して欲しい。私もグアド族と人間のハーフだ」
「……わたしといっしょ?」
「ああ。一緒だ」
「わたしのともだちになってくれるの?」
「ああ。勿論だ」
「うう、うわあああぁぁぁん」
また泣き出してしまったので頭をなでる。
勘違いして欲しくないのだが、私はあくまでも子供を元気づけただけで疚しいところは無い。確かに将来、敵対しないでくれれば良いなとは思っている。光源氏計画などは無い。そもそも私は基本的に原作カプ派だし、FF10で個人的に好きな女性キャラクターはルールーだ。