天狗の花嫁   作:hana・はな

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別れは嫌いだ。
悲しいこともたくさんだ。
辛いことだって、もうたくさん。

もう、嫌だ。
あたしは、なんでーーーー。
なんで、独りになってしまったの。
なんであたしがーーー伊(・)邪(・)那(・)美(・)姫(・)なの。
なんでーーーー。


プロローグ

廃そびれた神社。降りしきる雨。

雨は今のあたしの心を写しているようだった。

 

真っ暗だ。

何もかもが暗い。この空間も、心も、この先も。暗くて仕方ない。

例え外が晴れていたって、あたしの心は暗いだろう。

 

自分の家…いや、一門の場所からあたしは逃げた。

追われながらもなんとか逃げ延び、うずくまっていたあたしを見つけたのは蓮(れん)だった。

彼は人間ではない、いずれ妖怪の大将になる大天狗鴉間一族(からすまいちぞく)の妖だ。

彼は私の幼馴染みだ。4歳年上の兄のような友人だった。

 

暗い気持ちのまま、あたしはなんとか口を開いた。

 

「蓮…あたし……もう、帰る場所がない……なんで…人と妖が…本家を……」

 

人と妖。

どっちも恨めない。恨むのは履き違えている。

存在を恨んで何になるのだろう。…何にもならない。

 

これは人と妖による周到に仕組まれた罠だった。

何故気づけなかったのだろう。

気づいていれば守れたかもしれないのに。

何のための力だったのだろうか。

 

特別な力などいらなかった。

そんなものなど、無くしたものに比べたら一文たりともいらなかった。

 

 

なんてーーーー

なんて、あたしは無力なの。

 

 

 

「……僕の一族は関わっていない。きちんと調べあげた。…ここも時間の問題だ。見つかれば危険だ。僕の家においで。ちゃんと家の者達には許可はとってある。」

 

「…蓮……」

 

「何も言わなくていい。…君の両親と約束した。必ず守るって。僕自身も君を守りたいんだ。…だから、僕の家へ来て欲しい。」

 

連の瞳は真剣だった。

長い付き合いだからこそわかる。

本気であたしを心配してくれている。

 

真っ暗な心に、ほんの少しの光が見えた気がした。

 

 

あぁ……でも。

…帰りたい場所は、もうなくなってしまった。

失って気づいた。

あの両親の待つ家は、どれほどかけがえのないものであったのだと。

後から気がつくだなんて愚かにもほどがある。

でも、過去は変えられない。

どんなに願っても。

 

 

 

ーーーーーーー決して、変わらない。

 

 

 

変わらない過去。

自覚した途端、目頭が熱くなってきた。

 

「……ありがとう………」

 

思わず蓮の胸へ飛び込んでいた。

少し驚きながらも彼は優しく抱きしめてくれた。

あの温かさは今でも忘れたことはない。

 

「ちくしょう……ちくしょう…!!!」

 

声を上げて泣いた。

自分の無力さと悔しさと悲しみを込めて。

 

あの、楽しかった日々を思い出して。

もう戻らない悲しさを想って。

 

たくさん、たくさん泣いた。

その日、雨は止むことなく振り続けていた。

 

 

 

 

 

 

これがあたし、土御門雫(つちみかどしずく)と鴉間蓮の夫婦の縁となるきっかけだった。

 




いかがでしたでしょうか?
プロローグはかなり暗い感じになってますが、本編からはかなり恋愛要素いれていきます。早い話、スイーツです(笑)
もちろん、このプロローグの話も本編できちんと書いていきます。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ゆっくり試行錯誤を繰り返したうえ、投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
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