「おはようございます。」
「おはよう。」
「屠自古様!おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
僕は屠自古様の見回りに同行している。朝早くからこうして歩いているのだが、凄い人望だな。
「凄い人望ですね。」
「私はただ太子様のご威光に肖っているだけです。」
僕が褒めると屠自古様は頬を染めながら、ぶっきらぼうに言う。
「そうですわ〜。貴方はただ豊聡耳様に寄生しているだけですものね。」
「う、うるさい!お前は黙っていろ、青娥!」
霍青娥が茶々を入れる。
「まあまあ、お二人共。今は民が見ておられるのですから、落ち着いてください。」
僕が2人を諌めていると、こちらに挨拶する以外にも、コソコソと何かを話している民衆が目につく。
『なあ、あの青い髪のべっぴんさんって誰なんだろう?』
『お前、気になるのか?』
『気にならない訳ないだろ!』
『じゃあ、お前アタックしてこいよ。』
『いや〜、高嶺の花すぎるだろ..........って、今こっちに笑いかけたよな!』
『バカ言え、俺に笑いかけたんだよ。』
『はあ!俺に決まってるだろ!』
とか
『あの殿方は一体どなたなんでしょう?最近見かけるようになりましたけど。』
『かなりの男前だわ。』
『そうよね〜。こちらに振り向かないかしら。』
試しに笑顔で手を振ってみる。
『『キャアアアアアアアアアアアアアア!』』
思いっきり聞こえてるんだけどな。
まるでアイドルだな。そういえば、僕はヨン様に似ているんだっけ。いつの時代もおば様にはこの顔は受けがいいのだろうか。
下らない事を考えていると、霍青娥が唐突に僕の腕を抱きしめ、胸を押し付けてくる。
「どうしたんだい?」
「.........ふふふ。こうしたら中々面白い光景が見れるかなって思って。」
周りを見渡すと、先程まで色めき立っていた群衆が別の意味で色めき立っていた。
僕と霍青娥はその怨念の視線を受け止める。
「ね!面白い光景がみれたでしょ!」
「これが面白いと言える辺り、流石としか言えないね。」
「やーね。貴方も別に不快だなんて、微塵も思っていないでしょう?」
「さあ、どうだろうね。」
僕は微笑みを浮かべる。
「全く、お前達は何をしているのだ。」
おっと、屠自古様に怒られてしまったようだ。
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豊聡耳神子の屋敷に帰って来た。
屋敷に入る時に群衆が集まっていた様子から、彼女がまだ朝の問答を行なっている事がわかる。
耳を傾けてみると、
『税を軽くしてください!』
『もっと領地を増やしてください!』
『防人の帰還を早めてください!』
断片的に内容は聞こえるが、これらを同時に人々が喚くから、殆どわからない。
だが彼女はこれが聞き分けれるようで、一つ一つ丁寧に返していく。
最初は驚いたが、今では見慣れた光景だ。
「ところでいつまで手を絡ませるつもりなんだい?」
「それは私が満足するまでよ〜。」
どうやらまだこうしていたいようだ。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「..................ああ、おはよう。」
問答が終了し、民衆が帰った後に挨拶する。だが豊聡耳神子は僕達を見て一瞬固まった後に挨拶を返してくる。
おや?彼女にしては反応が悪いね。
「豊聡耳様。朝のお勤め、ご苦労様です〜。」
「........................」
霍青娥の言葉に対しても反応を示さない。
「豊聡耳様?」
「..........青娥。なぜ外に出た?」
霍青娥の言葉を無視して、豊聡耳神子が口を開く。どうやら不機嫌なようだ。
彼女がこのような態度を取るとは珍しいな。
それに対しても、霍青娥が悠々と返す。
「外に出るなんて、日常茶飯事ではありませんか。」
「惚けるなよ。私はなぜ民衆の目に映る様な真似をした?と聞いている。」
「布都さんだって、よく邸内でボヤ騒ぎを起こしているじゃない。」
「布都は邸内から出ている訳ではない。お前と布都は表立って、姿を見せるべきでない事はわかるはずだ。」
「本当にそれだけですか〜?本心は藍染さんと一緒にいる私を妬んでいるんでしょう?豊聡耳様ともあろう方が嫉妬なんて、随分と可愛いじゃないですか〜。」
「っ、なんだと!」
「おっと、私はこれで失礼しま〜す。」
豊聡耳神子の激昂しそうになった瞬間、霍青娥は地面に穴を開けて潜り込む。
潜り込む瞬間にこちらにウインクしてくる霍青娥。
どうやら面白い光景は、こっちのことだったらしい。
聖徳太子と呼ばれている聖人をここまで手玉に取れる彼女は、やはりかなりの大物だろう。
さて、どうしたものか。
場に取り残された僕。そして、不機嫌な豊聡耳神子。
よし。僕も逃げよう。
瞬歩で逃げようとするが、
「待て。」
今度はしっかりと僕の手を掴む豊聡耳神子。
「逃しはせんぞ。お前にもしっかり仕置が必要だからな。」
背筋が凍りつきそうな笑顔を浮かべる豊聡耳神子。
これは面倒な事になったな。
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「ここでいいか。」
「はあ〜。」
僕は豊聡耳神子に連れられ、都の外に出ている。
「いいのかい。政務はないのかい?」
「安心しろ。今日はそこまで忙しくはないからな。お前はただ私の仕置を受けていればいい。」
「力試しなんて、最初に来た時に済ませばよかったんじゃないかい?レン君とサクラ君の時のように。」
「何を言っている。これは力試しではなく、仕置と言っているだろう。」
相当御立腹のようだね。仕方ない。
僕は霊圧を解放する。
「ほう。力を抑えていたと言うのは本当だったようだな。あの2人とは桁違いだ。」
「君が今感じているものを霊圧と僕は呼んでいるものだよ。」
「欲が聞こえないなど、初めての事だからな。かなりの使い手だと思っていたが、お前は今まで数ヶ月間、一度も力の片鱗を見せる事が無かった。.........全く、喰えない男だ。」
そう言う彼女の顔には笑顔が浮かぶ。
少しは機嫌が直ったようだ。
「君の霊圧も中々の物じゃないか。」
「ほう。この霊圧の中、顔色に全く変えないとはな。これは私も悠長な事はできないな。」
「それはお互い様だねっ!」
僕は瞬歩で彼女の背後をとる。
「!?」
彼女は初めて見る瞬歩に目を見開く。
僕はそのまま回転をかけて、左手で手刀を放つ。
彼女もすかさず、右手で手刀を背後に振るう。
互いの手刀と霊圧がぶつかり合い、周囲の砂を巻き上げる。
ぶつかり合う霊圧の心地良さに微笑みながら、僕は右手で手掌を放つ。
直撃の寸前、彼女の左手が僕の右手を掴む。すかさず、今度は彼女が右拳を放ってくる。
それを見て、僕は地面を蹴り、彼女の右肩に左手を添えながら、彼女の頭上を宙返りしながら飛び越える。
そのまま自身にかかる遠心力を利用して、彼女を投げ、地面に叩きつける。
「っが!」
大きく2回バウンドしながらも、体勢を整えて彼女はすぐに僕に突進してくる。
瞬歩ほどでは無いが、想像以上の速度に驚く。
速い!
拳が当たる直前、僕は空に飛んで逃げる。
空を切った拳は地面に当たり、土埃を巻き上げる。
足の裏から霊力を放出して、空中に足場を作る。
上空から土煙を眺める。土煙から出てくる彼女を迎撃する準備をする。
「.............」
しかし、いつまでたっても彼女が出てこない。
何か作戦でもあるのか?
思案する為に意識を僅かに逸らした時、視界の端に何かが映った。
咄嗟に見上げると、拳を振り上げていた豊聡耳神子がいた。
なに!
直ぐにガードするが、女性とは思えない拳の重さに吹き飛ばされる。
勢い良く地面に飛ばされたが、なんとか体勢を立て直して着地する。
「これで痛み分けだな。」
「驚いたな。君がそんな膂力を持っていたとは。」
「お前の速度にも驚かせられたな。」
「今のは瞬歩って言うんだけどね。いつもなら瞬歩で後ろに回り込んで一刺しで決着するんだが。」
「私も褒めておこうか。よく
「こちらも白打って拳術があるからね。」
「ほう。さっきから聞いているとかなり確立された武術のようだが、師でもいたのか?」
「僕が作った我流だよ。」
「それは凄いな。見た所、お前と私ではそこまで年齢に差はなさそうだが。」
まあ、実は600歳だしね。
「そろそろ、お喋りも飽きただろう?続きをしようか。」
「そうだな。」
再び、瞬歩で背後を取る。今度は瞬歩に回転をかけて二連撃の刺突を放つ。技の名前は『閃花』。
だが今度はより早く反応し、彼女も腰の剣を抜刀し剣を弾く。
剣と剣がぶつかった瞬間、僕の刀が粉々に砕けた。
「!?」
僕は驚きで硬直するが、彼女は特にリアクションはなく、剣を振り下ろしてくる。
避けきれないと判断した僕は、その剣を素手で摘む。
「!?」
今度は豊聡耳神子が驚き、目を見開く。
「破道の四 白雷」
動きが止まっている彼女に向けて、鬼道を放つ。
彼女は即座に屈み、白雷を躱し、蹴りを放ち距離を取る。
「流石に2度目にもなれば、瞬歩も見切れるか。」
「同じ手は2度も喰わないからな。」
「それにしても驚いたよ。まさか、触れただけでこちらの剣が折れてしまうとは。かなり強力な剣のようだ。」
「当然だ。これは毘沙門天の加護が付いている七星剣だ。只の剣と打ち合えば、砕けるのは当然の事。それを素手で受け止めるお前も規格外だがな。」
無手の僕を見て、更に畳み掛ける豊聡耳神子。それを全て白打でいなす。
「流石だね。白打でもいなすのが精一杯だよ。」
「そろそろ根をあげてもいいんだぞ。」
いや〜。本当に根をあげそうだよ。
数百の斬撃の応酬を素手で対応するには限界で、僕は堪らず、大きく後ろに後退して、鬼道で攻撃する。
ただの剣なら大丈夫だけど、あの剣は別だね。
「破道の四 白雷」
白い閃光が豊聡耳神子の顔に迫るが、首を倒して躱す。
正直、白雷は本当に便利だね。速度と貫通力が高いから、大抵の敵は頭や心臓を狙えば一撃で倒せるし、豊聡耳神子のような強敵でもある程度の牽制になる。それでいて、消費霊力も少ない。
「クックック。こんなに楽しいにはいつぶりだろうか。」
「まさか、僕もここまで追い詰められるとは考えて無かったよ。」
ニヤリと豊聡耳神子は笑う。
「ほう。その言い方だと、まるで私に勝てる気でいたと言う訳か。」
その言葉に僕も思わず口角が上がる。
「勝てるとは思っていないさ。既に勝っている。」
「そうか。いいだろう!徹底的に潰してやろう!」
豊聡耳神子は杓を構える。
杓?
次の瞬間、杓から黄色い閃光が飛ぶ。
僕は咄嗟に避ける。
まるで白雷のようだね。
避けている姿勢から体勢を直すと、今度は剣を横に構え、そこから先程の閃光が無数に発射される。
「破道の三十二 黄火閃」
閃光と黄火閃がぶつかる。暫く拮抗していたが突如、閃光が分裂して僕に向かってきた。
「縛道の三十九 円閘扇」
霊圧で出来た黄色い盾は、全ての光線を弾く。
円閘扇を解くと、再び剣を振り上げている豊聡耳神子がいた。
斬撃の刹那、僕は瞬歩で回避し、彼女の背を取る。
「破道の五十四 廃炎」
円盤状の炎が豊聡耳神子の背後に迫るが、七星剣であっさりと消し去る。
中級鬼道を簡単にあしらえるとは。
僕は彼女がどこまでやれるか楽しくなってきた。
「僕も興が乗ってきたよ。」
「それは何より。」
彼女は掌を僕に向ける。掌から僕に向かって火炎放射される。
物部布都の火球とは比べ物にならない熱量と破壊力だね。
僕も掌を向ける。
「破道の六十三 雷吼炮」
雷撃と火炎が衝突する。
拮抗状態は長く続かず、徐々に雷吼炮が押されて始める。
「はっはっは!そろそろ限界か?」
僕は薄く笑みを浮かべる。
「まだだよ。」
鬼道には本来詠唱があり、時間をかけて術を発動する。それを短縮する為に威力と精度を落として詠唱をしないものが『詠唱破棄』だ。
だが、詠唱破棄で放った鬼道に後から詠唱して威力をあげる技術がある。『後述詠唱』と言う。
「散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる」
「何!?」
威力の上がった雷吼炮は、火炎を打ち消す。
「まさか、私の術が力負けするなんて。」
「信じられないかい?」
「!?」
「だが、事実だよ。君の術ならば僕を倒せると、そう思ったのだろうけど、些か思い上がりが過ぎていたようだね。」
「なっ!」
「さて、今まで君に先手を譲ったんだ。今度は僕から行くよ。」
掌をかざす。
「破道の五十八 闐嵐」
掌から竜巻を発生させる。突風に煽られた彼女は、剣を地面に突き立てて踏ん張る。
「くっ!」
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」
彼女が動けていない隙に詠唱を済ませる。
「破道の七十三 双蓮蒼火墜」
極大の青い炎が放たれる。
風に煽られ、身動きが取れない彼女はなす術がない。
直後、巨大な青い火柱が立った。
「..............」
暫く、青い炎を眺めるが変化はない。
彼女程の力量だ。死んだなんて事は無いだろう。ただ、戦闘不能かもしれないね。
一応始まりはお仕置きって事だったが、どうやら僕が彼女を伸してしまったようだ。
爆発の中心へ歩を進める。
「クックック。」
彼女の笑い声が聞こえ、歩みを止める。その笑い声は、普段の気取った感じではなく、無邪気な純粋な笑いといった感じだった。
「ふふふ。ここまで私と渡り合える者に出会えるとはな。........認めよう。お前なら資格はある。」
煙が晴れると、憑き物が落ちたような朗らかな笑顔を浮かべている豊聡耳神子がいた。傷だらけの体で。だが、まだ倒れないようだ。
どうやら僕も彼女の事を認めなければならないようだ。
僕も大概だと思っていたけど間違いない。君は
600年間、つまらない人生だったけど、漸く見つけた。彼女は僕と同類だ。対等の存在。
豊聡耳神子は剣を地面に刺し、両手を耳当てに当てる。
「私は十人の話を同時に聞く事が出来る程度の能力を持っていてな。聖人としての活動を支えている能力だ。だが、普段はこの耳当てで能力を制限しているんだ。理由は単純に『聞こえすぎる』からだ。」
「................」
「耳を傾ける必要は最早無く。四六時中、頭の中は声で溢れかえる。人々の欲から、軽い擬似的な未来視にも達する。それが何百人、何千人もだ。私の脳はその負荷に耐える事が出来ずに、直ぐに意識を失ってしまう。」
「いいのかい?その口ぶりだと、君のやろうとしている事はただの自殺行為だと思うが?」
「心配無いさ。わざわざ、誰も居ない場所に来たんだ。お前の声以外、何も聞こえはしないさ。羽虫の声は聞こえてくるがな。」
「..........ああ。なるほど。確かに聞こえるね。........それにしても、羽虫とは随分な物言いじゃないか。」
「ふふ。あんな者、羽虫で十分よ。」
豊聡耳神子は完全に耳当てを外す。
別段、霊圧が上がる訳では無いようだね。
だが、警戒は怠らない。彼女が無駄な事はしない筈だからだ。
「行くぞ。」
剣を構え、突進してくる豊聡耳神子。
「同じ手が好きなようだね。」
振り下ろそうとする剣を受け止めようと、手を伸ばす。
「!?」
だが突然、左横腹に衝撃を受け、吹き飛ばされる。直後、斬撃を囮に蹴られた事を悟った。
なんとか着地する。顔を上げると既に跳び蹴りをしてくる彼女が居た。
再び足を掴もうとするが、今度は胸を斬られる。
胸に手を当てると、手に真っ赤な血が着く。
「同じじゃなかっただろ。」
「.......擬似的な未来視が出来ると言っていたね。......それが出来ていると言う事は、今は僕の『欲』も聞こえているのかい?」
「ああ、しっかり聞こえているよ。.......ふふふ。なるほど、なるほど。随分とこの世界に退屈しているようじゃないか。でもそれ以上に理解者が欲しいようだな。.......だが、今はどうでもいい事だな。」
「どういうことだい?」
「最初に言っただろう。『欲』など聞こえなくてもお前が考えている事はわかるとな。........どうだ?この国に来てからは少しは退屈さもマシになっただろう。」
「なるほど。では今のこの状況も、君の粋な計らいって事かい?」
「まあな。実際、楽しいだろう?」
「そうだね。これ程心踊るのは久しぶりだね。」
彼女の考えている事はある程度理科した。僕の退屈を紛らわす為に、こうして僕の相手をしている事を。
だけど、それなら朝の問答で民衆が訴えていた政治の欲求に応える方が、聖人として正しい行動の筈だ。僕は別に生活に困ってるわけでは無いしね。僕と遊んでいる暇など無い筈だ。
..............なるほど。
「.....ふっ。」
「どうした?」
「僕も君の考えている事が大体わかってきたよ。」
「そうか。」
嬉しそうに笑う豊聡耳神子。
「お喋りもそろそろいいだろう。次、行くぞ。」
豊聡耳神子は剣を横に構えて、無数の光線を放つ。
僕は瞬歩で回避する。
だが、回避先で既に火炎が迫って居た。
再び瞬歩で回避。回避先で火炎。
そして、4回目の瞬歩で遂に捉えられる。
5回目の瞬歩をしようとした時に肩を掴まれる。振り返ると、左手で僕の肩を掴み、右手で剣を振りかぶる彼女の姿。前方では迫ってくる火炎。
「くっ。縛道の八十一 断空。」
鮮血が舞う。
僕は距離を取る。
「はあ、はあ。」
脚が震えるがなんとか踏ん張る。
咄嗟に断空で火炎をガードしたが、剣は間に合わず。また胸を斬られた。
だが、
「くっ!」
「惜しかったね。」
僕の白打による突きが、彼女の脇腹を掠めて、血を流させていた。
「もう少しで心臓だったか。」
「相手を理解しているのは、君だけでは無いという事だよ。」
「なるほど。このままでは、いずれ私の優位は無くなるか。」
「そうだね。まあ既にお互いに小細工は通用しなくなっているしね。」
「そうだな。私はお前の術と今の突きで傷を負っている。お前も私の宝剣で傷を負っている。」
「次で終わりだね。お互い限界だからね。」
僕は口元に笑みを浮かべて掌をかざす。
豊聡耳神子は宝剣に黄金の光を集める。
「『詔を承けて必ず鎮め』」
「破道の九十 黒棺」
全てを押し潰す闇の棺が現れる。
振り下ろした宝剣は、黄金の閃光を放つ。
黒は黄金を塗り潰そうと重力を増す。
極光は黒を消し飛ばさんと光量を増す。
そして、視界が爆ぜた。