東方霊術伝   作:モン太

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ただ執拗に 飾り立てる
切り落とされると知りながら

ただ執拗に 磨き上げる
切り落とされると知りながら

恐ろしいのだ 恐ろしいのだ
切り落とされる その時が

切り落とされた その髪は
死んだあなたに 似てしまう


悚れ

私は産まれ時から全て手にしていた。

 

富も名声も力も持っていた。

言葉を話し出す事も、2足で立ち上がり歩き出す事も誰よりも早くできた。

何をするにしても、誰よりも早く、完璧に全てを熟した。

 

だが、産まれた時 から冷えていた己の魂は、歳を重ねるごとに熱く、大きくなっていたのだ。

 

『欲しい』はいつだって、手に入るはずだった。

私は常に民の希望(退屈)だった。

 

大きく変わり出したのは、いつの事だったのか。(希望)ですら、人々を悲しませる存在。私という光でも照らす事の叶わない闇。それが、(恐怖)であった。

 

私は民に(希望)を与え続けた。病で苦しんでいるものには、呪術師や薬を与え、飢えに苦しんでいるものには、食べ物と職を与えた。

 

しかし、死の悲しみを拭う事は叶わなかった。私は死に対し憤りを感じていた。

 

なぜ、死を克服できない?なぜ、死が存在するのか?なぜ、死の悲しみが消えない?

 

私は大いに悩んだ。どれ程の時間を費やしただろうか?私は1つの解に辿り着いた。

 

私が死を超越する存在になろう。

 

何もかもを産まれた時から、天に与えられた(希望)が、死を乗り越える姿を見せる事が出来れば、民にも死の恐怖に立ち向かう勇気になるのではないか?

 

この考えに行き着き、自身の不死を目指して10年。未だ己の力では不死に至る事が出来ないでいる。

10年の月日は、私に狂気と恐怖を自覚させてくれる程の時間があった。私は民を救う為だと言いながら、自身の不死への渇望には10年を費やし、民の死の恐怖を取り除く事には1年の時間も使ってなどいなかった。

 

私はどうしようもないほど臆病者で卑怯者だった。

何て事は無かったのだ。私自身こそが、最も死の恐怖に怯えていたのだ。天から全てを与えられた私が、人並みの死の恐怖に10年も二の脚を踏んでいたのだ。

 

だが、見せる訳にはいかない。豊聡耳神子が死の恐怖に怯える姿など。死の恐怖に屈した聖徳太子など。民の手本となるべき私が死の恐怖喘ぐただの小娘であったなどと。

 

そんな時だ。私に死を克服する術を知っているとう言う導師とであったのは。

 

私は大いに喜んだ。これで私の恐怖は完全に無くなる。

 

直ぐに導師の教えを乞い、不死になるべきだ。

 

だが未だに私は不死にはならず、この導師を手元に置くに留めている。

 

ああ、そうか。私はまだ何か別のものに怯えているのだ。ーーーーーーいや、それも自覚できている。

 

私は人間で無くなる事に怯えているのだ。

 

何と度し難い存在なのだろうか?死を克服したいのに、人間である事を辞められないなど、傲慢にも程がある。天から全てを与えられたと言う考えも実に傲慢だ。

 

自嘲、失望、絶望、義務感、高揚感。様々な感情が私の体を蹂躙した。だが、何処までも私は孤独であった。悩みを打ち明ける事は最も信頼している部下にも話す事は無かった。

 

だからだろう。人間でありながら、600年の月日を超え、私と同じ目線で物事を見る人物に惹かれていったのは。

 

こんな小娘の悩みを聞いたら、彼は何を思うだろうか?

 

失望?同情?無関心?

 

きっと、どれであっても私には耐えられないであろう。

 

完全に惹かれて、ある意味では依存し始めた私の心は最早制御不能だ。産まれてからの長い月日の孤独を埋めてくれる存在は、何処までも私を堕落させていく。




髪も爪も みな宝物のように
美しく飾り立てるのに
なぜ自らの体から切り離されただけで
汚く不気味なものとなってしまうのだろう
答えは簡単
それらは全て
自らの死した姿に ほかならないからだ
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