崩玉の成長に喜びを感じながら、都へ帰る。
それと同時に自身の能力も向上していることがわかった。
洩矢諏訪子と闘っていた当時は日に日に強まる霊圧を感じていた。だが、ある時から自身の能力向上を感じれなくなっていた。だが、今回の戦闘で鬼の四天王や鬼子母神と戦った際にあまりにも呆気なく戦闘が終わってしまい、僕は気が付いていないだけで、今も霊圧が上昇し続けている事がわかった。
おそらく、鬼道も白打も斬術も走術も限界強度に達した事が原因だろう。霊圧ばかりが上昇し、しかし技の威力は頭打ち状態となってしまったのだ。
ゲームなら、レベルMAXで技の威力はカンストなのに、MPは増え続けている状態か。ゲームなんて、それこそ前世の薄れた記憶にしか無いけどね。それだけ多く技を打つ回数や霊力が尽き難いのはいい事だけどね。
だが、自身の能力を正確に判断できていない現状はまずい。制御できない力は身を滅ぼす。一度自分自身を見つめなおすべきか。
それにまだ、もう一芝居打つ事になる。気を引き締めよう。
そうして、都が見えて来る頃には夜になっていた。
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都に着き、僕を出迎えたものは、数えきれないほどの松明の炎と兵士、陰陽師そして、霊術院の生徒達。そしてそれら無数の矢と札が僕に向かって降り注ぐ光景であった。
目の前に高速で襲いかかってくる矢と札と鬼道。
僕を殺そうと猛然と殺到する矢は、空気を切り裂き、何ものをも貫かんという勢いで飛んでくる。
「縛道の八十一 『断空』」
霊圧で全て叩き落としても良かったが、余りやり過ぎて、戦意を喪失されても困る。
僕は霊圧を抑えた断空で処理する。
鏃の金属が砕け散る鈍い音と、箆が圧し折れ、木が折れる独特な軽い音が鼓膜を叩くように連続として鳴り響いていく。
札や鬼道も断空に阻まれ、轟音を轟かせる。
八十九番以下の破道を防ぐ盾だが、余りの質量にヒビが入る。
僕はその様を眺めながら、目の前の光景を見据える。
退治する兵や陰陽師の顔は皆厳しく、僕に対して憎悪を抱いているのがありありと分かる。
そして兵士の顔を左から右へと流すと真央霊術院の生徒の顔が見える。彼等も苦しそうな表情で此方を見ている。
一体何で先生が……。そんな顔を浮かべていた。
正直僕は今まで十分都に尽くしている立場であり、自分で思うのもなんだが、感謝されこそすれ、怨まれる事など一切していないのだ。表向きは..............
それが、今は憎悪を抱かれている事から、僕の仕込みは成功したようだ。
「大妖、藍染惣右介!! 貴様を危険分子として抹殺するっ!」
奥の方に居る馬にまたがっている男はこの大部隊の将軍であろう人物の声に思わず笑みが溢れてしまう。
僕は訳が分からないという面持ちで大声で反論する。
「いきなり何だお前らはっ!? 僕は妖怪ではない上に、攻撃されるようなことはしていないぞ!」
そう言うと、松明の火でボヤボヤと照らされている男はニヤリと歪め、目の前に横に長い紙を広げながら僕への罪状を読み上げていく。
「貴様の戯言なんぞこの罪状の前では何の意味もなさんっ! ……自作自演による鬼との戦闘による功績詐称! 並びに、源頼光公の殺害共犯!!さらには種族の偽りによる陛下への不敬及び反逆罪っ!!」
確かにあの男の言うような罪状は、僕の部屋の机に置いてある
志波君の心情としては、納得できなかったのだろう。
しかしこれは同時に彼らにとっても許せることではないのだろう。本来ならば妖怪を滅するはずの陰陽師が、実は裏で妖怪と結託し、邪魔者を排除しようとしていたからだ。
さらには鬼との戦闘で手柄を独り占めしているから尚更である。
「そんな根も葉もない嘘を良くも平然と! 僕が鬼退治をしなければ都は滅んでいた可能性もあるのだぞっ!?」
「フンッ、その都が滅ぶということ自体がお前の真の望みなのだろう?」
僕を馬鹿にしたような笑みを浮かべながら僕の主張を一蹴していく。
思わず歯ぎしりしてしまう。
「大人しく退治されてもらおうか。」
僕は眼の前の男を睨みつける。
「僕の望みが都や幕府の滅びだと? 笑わせる! 僕が一体何のためにあそこまで危険な任務をしたと思っているんだっ! 都を滅ぼすのが望みだったら、鬼なんざ使わずに僕がとっくの昔に自分の手で消滅させている!」
そこまで言って再び息を吸い込みさらに大声で言いまくる。
「こんな無茶苦茶な罪状を進言したのは誰だ! 僕を失脚させようとするのは。一体どこの阿呆だ。こんな無益な事をするのはっ!?」
ここまでの暴言を何のためらいも無く言ったためか、男の顔は見下すような表情から一気に怒りへと変わっていく。
「この妖怪風情が、私に向かって阿呆だと? ………やれ。次は防げんぞ」
そう言うと、周りにいる兵士が何枚もの札が巻かれている矢を俺に放ってくる。放たれた矢は青白く光り、札が空力や速度を補助しているのか、今までとは違って驚くほど速い。
妖怪用の破魔の矢といったところか。
断空によって弾き飛ばされていく矢は札の効果もあるのか、領域に接触した瞬間に青白い閃光を放ちながら鏃の部分が破裂していく。
次は後方に控えている陰陽師の攻撃であり、赤く光る札を大量に飛ばしてくる。結果は言わずもがな。全て弾き飛ばされ砕け散るのみである。
ヒビも大きくなり、いよいよ砕けそうになった時........
「破道の六十三 『雷吼炮』」
閃光と轟音が響く。断空は砕け、僕は地に伏す。
視線の先には、霊術院の生徒筆頭。2代目塾長の朽木君がいた。
「先生、残念です。先生の屋敷で鬼との密通の手紙が発見されました。............僕は陰陽師として、霊術院塾長として、貴方を討ちます。」
朽木君は刀を構える。
それを見た僕は斬魄刀を抜刀し構える。
「砕けろ『鏡花水月』」
霧が辺りを覆う。
「破道の五十八『闐嵐』」
だが、一瞬で霧が晴れる。
よく僕の始解を見ていたからね。霧の対処法は心得ていて当然か。
「道を誤った先生へのせめてもの手向けです。...........夜を覆え『影牢』」
視界が真っ暗になる。
僕は一瞬、足を止める。
「これはっ!」
足を止めたのが不味かったのだろう、背中から、刃で貫かれた。
「ガハッ!」
良く見ると、朽木君から伸びた影が僕を刺し貫いていた。
「.........僕も始解を会得しました。昨日の事です。ありがとうございました。.........そしてさようなら。」
朽木君の目から涙が溢れる。その涙を振り払うように振り上げた刀は僕の首を一刀両断した。
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叛逆の裏切り者、藍染惣右介。彼の死体はこの時代では珍しく火葬される事になった。
理由としては、毒酒で殺した筈の彼が何食わぬ顔で生還したからに他ならない。死体を焼く事で、何かしらの復活の術を奪う為だ。
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僕は自分の身代わりに焼き殺される人間を眺めながら、今後の事を考えていた。
有力な陰陽師は鬼のお陰で全滅させる事ができた。残った陰陽師は屑ばかり。必然的に真央霊術院しか、有力な陰陽師は存在しなくなった。叛逆者が創設した所とは言え、他に頼る所が無ければ、これからの妖怪退治の依頼は、霊術院に集まる事だろう。
その為の助けとして、わざわざ朽木君に華を持たせたのだから。裏切り者の始末は、己でする事で、世間からの印象もマシになった筈だ。
霊力の強い人間の魂魄を奪い、崩玉に与える。その役目を担って貰うとしよう。
崩玉完成のための大事な工程とは言え、霊術院創設から頼光の鬼退治に付き合ったりと、面倒事を乗り越えたのだ。多少は整理する時間が必要だろう。
その間に霊術院も成長するだろう。朝廷の監視はつく事になるだろうが、それは同時に朝廷との関係を密にする事にもなる。
いずれにせよ真央霊術院には、繁栄しか道は残されていないのだ。