東方霊術伝   作:モン太

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洩矢の村

僕は森を駆ける。肉食動物や怪物の類いに追われている訳では無いので、全力疾走では無いが。

 

さっきの怪物は一体何だ?聞き取りにくいが、言葉を話していた。この世に存在しない生き物だ。だが、仮面や穴が開いていないという事は、虚という訳でも無い。しかし、狼とは違って、霊圧を感じる事が出来た。霊圧があるならば、やはり普通の生物では無く、何かしらの力を有する生物であるはずだ。...............今は、この程度の考察が限界か。

 

物思いに更けていると、森を抜けた。結局あれからは、何も出会う事なく無事に出れた。終始、霊圧探知に神経を回していたのが、功を奏したのだろう。

 

遠くに大きな村が見える。しっかりとした造りだな。木材の壁と大きな堀、門には門番が2人見張っている。かなりのど田舎だが、それにしては、堀や壁などの厳重な守りなど、不可解な点が多い。まるで、戦国時代かそれ以前の様な感じがする。

 

とりあえず、村の入り口に近づく。門番の2人もこちらに気付き、視線が合う。

 

向こうも気がついたか。それにしても、あの髪型...............戦国時代どころか、まさか弥生時代なのか?現代まで生き残ったとしたら、2千歳だな。ユーハバッハや山本元柳斎重國並みの年齢になる訳だな。しかも、藍染スペックで。2千年後が楽しみであり、恐ろしいな。鏡花水月が無いのが、本当に残念だ。

 

門番は鋭い目付きでこちらを睨みつけ、手に持った槍を突き付ける。

 

かなり警戒されているね。当然か。相手は素性も分からない上に、こんなにボロボロの格好をしているのだから。

 

相手の警戒を解くために少々作り話をしてみる。

 

「僕は旅の者なのですが、途中で化け物に襲われてしまい荷物を根こそぎ盗られてしまったのです。何とか命からがら逃げてきたのですが、どうか助けていただけませんか?」

 

「化け物?どんな化け物なんだ?この近辺では滅多に出ないのだがな。ここは辺境とはいえ、一応洩矢様の領地だからな。……嘘は吐いてないだろうな?」

 

洩矢?諏訪地方のか?あのミジャグジなどの。

 

そしてなかなか警戒を解いてくれない。どうしたものか。少し、怯えた感じで化け物の特徴でも言ってみるか?

 

「嘘だなんてとんでもない!あそこの森で出くわしたんです。化け物の姿は、猫の頭に蝙蝠の羽根、二本の尻尾を持った怪物です。後、身体は僕よりもかなり大きかったです。」

 

そう言って僕は自分の来た方角を指差しながら、体を震わせて言った。

 

僕の言い分を聞いた男は、少しの間考えるようなしぐさをし、突然納得したかの様な顔をした。

 

「もしかすると、妖かかもしれん!早く退治しなくては、また村が襲われかねん。...........また、数人で討伐隊を........」

 

妖?妖怪の事か?虚では無く、さっきのは妖怪だった訳か。東方とは、こんな世界なのかな?

 

しばらく男は妖怪について、ぶつぶつと文句を言っていた。

 

「あの、いいですか?」

 

と、僕が声をかけると、男はあわてて

 

「ああっと、すまない。お前さんが嘘をついてないのは良く分かった。疑ってすまなかったな。……つい最近我々の集落を妖が襲ってきてな。また狩りに行かなくてはならんなぁ。……それよりも、あれに襲われてよく生きてこれたな。何かの神の加護でも受けているのか?」

 

神?僕は一応、神様に転生された身ではあるが、転生後にいきなり襲われてたりしている。これが恩恵なら、とんだ厄介毎を渡されたもんだ。

 

「いえ、そのような大層なものは受けておりません。逃げるのに必死でしたから。僕の荷物の中にあった鹿肉などの食糧を袋ごと投げつけて逃げました」

 

「あんた運がいいな。いや、もしかしたら洩矢様が加護を授けてくれたかもしれないな」

 

祟り神が?見ず知らずの旅人の対して加護なんて授けるか?あり得ないと思うんだが。さらに信仰などもしてないし。

 

とりあえず、寝床や身の安全の確保のための交渉をせねば。

 

「ところで、すみませんが雑用でもなんでもいたしますので、どうか寝「分かってた。案内する。」本当ですか!?」

 

僕は門番に案内され、藁葺きの扉も無い土で作られた家に案内された。

 

「少し、ここで待っていろ。」

 

「わかりました。」

 

門番は家の中に入って行く。

 

その間、僕は村の景色を眺める。

 

本当に弥生時代みたいだ。恐らくそうなんだろう。それにこの村の山から感じる大きな霊圧............先程の妖怪とは、また感じが違うところからすると、妖怪とは別の種族。現代では、神様は居ないとされていたが、門番の言う通りなら、洩矢様という神の霊圧の可能性が高い。実際、妖怪とは比較にならないくらい霊圧が大きい。

 

15分程経って、男が出てくる。恐らく、僕についてこの家の者に説明でもしていたのだろう。

 

「ここは、村長のお宅だ。お前の事は説明しておいたから、あとは失礼のない様にするんだぞ。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

そのまま、門番の男は去って行った。そして、後から年老いた老人が出て来た。

 

「君が旅人かね?話は、さっき聞いたよ。災難だったね。今は寝泊まりできる場所がないから、しばらくはここで泊まりなさい。」

 

「ありがとうございます。雑用や仕事なら喜んで受けます。」

 

「ああ、その代わり働いてもらうぞ?わしも見ての通りじゃ。若い者の力を借りたいと思っとったところじゃ。」

 

「もちろんです。 働かせていただきます。本当にありがとうございます。」

 

ふう。なんとか、衣食住は確保できたか。

 

僕がホッとしていると老人は思い出したように言った。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はタケだ。お前さんは?」

 

「申し遅れました。僕は藍染惣右介と申します。よろしくお願いします。」

 

「こちらこそ、よろしく。今日は疲れたじゃろう。ゆっくり休みなさい。明日から仕事をしてもらうよ。」

 

「お言葉に甘えさせていただきます。」

 

正直、体力も精神力も限界だったので素直にタケさんの言葉に甘える事にした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おはようございます。」

 

「おはよう。さっそくで悪いんだが、近くの川にいってこの水桶に水を入れてきてくれ。」

 

「わかりました。では、行って来ます。」

 

僕は水桶を持って外に出る。

 

この村に入ってから、ずっと視線を感じる。監視されているのか?確かに、普段居ない者だが、必要以上に緊張した感じがする。外に出ても視線を感じるのは、一体?まあ、怪しい動きをしなければ、文句を言われる事は無いだろう。

 

僕は四六時中感じる視線について、考えながら水のくみ、タケさんの家に戻る。

 

「ただいま、戻りました。」

 

「ありがとう。じゃあ、次は火起こしを頼むよ。」

 

朝食の準備かな。多分さっきの水は煮込みか何かに使うのだろう。

 

「それが終わったら、朝食を食べて洩矢様の所へ、挨拶に行こう。」

 

「ええ、わかりました。」

 

洩矢様か..........。恐らく、この視線の主だろうな。まあ、怪しいのは間違いないからな。どうにかなれば、いいのだが..............。

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