東方霊術伝   作:モン太

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下見

「さて、僕達が住んでいた小屋はこの有様だね。」

 

そう独りごちた僕に聖が「申し訳ありません」と項垂れる。最初のあの威勢は最早見る影も無い。

 

「あ!だったら家ができるまで命蓮寺で住めばいいんじゃない!?」

 

村紗が言った。目論見通りではあるが、些か性急過ぎるその提案を一度は否定しようとする。

 

「いえ、そんなーー」

 

「そうですね。私が壊してしまいましたものね。責任は持ちましょう。」

 

だが彼女達の性格であれはこうなるのは必然。こうして僕達は労せずともいとも簡単に命蓮寺に入り込む事に成功した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

命蓮寺の門を潜ると地面に五重塔の模型の様な物が落ちていた。それを要が拾う。

 

「……藍染様、これは?」

 

「それはーー」

 

聖が何か言おうとする前に前からネズミのような耳をした少女と金と黒の混ざった髪をした女性が現れた。

 

「あ!宝塔あった!あったよナズ!」

 

声をかけると同時に金と黒の髪の女性が駆け出して来る。

 

「ご主人!止まれ!」

 

「えぇ!?なんでナズ!」

 

女性が駆け寄ろうとすると同時にネズミ耳の少女も叫ぶ。その声を聞いて止まる女性。するとナズと呼ばれた少女が話しかけてくる。

 

「君達は誰だ?見覚えが無いが。そして何故宝塔を持っているんだ?」

 

尋問だろうか。まぁ知らない者が自分の家にいれば警戒はするだろう。

 

「僕は藍染惣右介。こちらは僕の部下の東仙要だ。聖さんと村紗君の知り合いだよ。宝塔とはこれのことかい?ちょうどここに落ちていたからで拾ったんだ。多分、君達の物なのだろうね。だから返すよ。はい。」

 

僕はそう言ったあと、こちらに近付いていた女性に宝塔を渡した。

 

警戒も解いてくれたようで嬉しいね。

 

「警戒してすまなかった。あと、うちのご主人が迷惑をかけてすまない。私はナズーリンだ。此方は毘沙門天代理の。」

 

「寅丸星です。宜しくお願いします。」

 

成程、鼠の妖怪ナズーリンか。そしてこちらは寅丸星。

 

「誤解が解けてなりよりだよ。では、道案内をお願いするよ。」

 

「全く、ナズももう少し落ち着きなさい。」

 

「あ、聖。ごめん、焦って気が付かなかったよ。」

 

何はともあれ命蓮寺に足を踏み入れる事ができた。

 

 

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紆余曲折はあったものの、命蓮寺に居着く事となった。

 

命蓮寺には更にもう1人、雲井一輪という修行僧にも挨拶し、失った僕達の住居が復旧する目処が立つまでここに住む事になった。

 

「藍染さん、私の弟子になりませんか?」

 

「それは如何いった風の吹き回しでしょうか?」

 

命蓮寺の面々と食卓を囲んでいる時に聖から声をかけられた。

 

「貴方の噂を耳にしました。……他の陰陽師とは違い、種族による偏見のない陰陽師だと。……だからこそ、この命蓮寺の門を潜る事を許したのですが。」

 

「……如何でしょうか?確かに僕達は異端と呼ばれていました。ですが、結局は葬ってしまった妖怪も数知れず。……これは僕の不徳によるもの。胸を張れるような実績などありません。」

 

「なら、これから更にこの命蓮寺で経験を積むといい。ここには貴方のような考え方の人間や妖怪がいる。見識を広めるにもうってつけだと思いますよ。」

 

「……そうですか。」

 

僕は他の面々を見る。

 

目を輝かせ頷く村紗。穏やかな表情の寅丸と雲居。我関せずのナズーリン。

 

成程……。これは上手く溶け込む事ができていそうだね。

 

「わかりました。確かに僕は未だ未熟の身。……先駆者の背中を追いかけるとしましょう。よろしくお願いします、聖先生。」

 

「……ええ、これからよろしくね、惣右介。」

 

特に周りからは反対の声が上がらない。

 

「惣右介と要は私と一輪の下についてもらうわ。……2人が一緒では修行にならないでしょうから。」

 

「わかりました。……要はそれで構わないかな?」

 

「はい、異論はありません。」

 

 

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振る舞いは真面目で、礼儀正しく目上の者を尊重し、部下の指導にも熱心と疑うべき要素はない。

 

ここ暫く藍染惣右介との生活で見てきた私の所感だ。

 

だけど何故か私の中に何かが引っ掛かるのです。私自身、何故彼を怪しいのかわからない。だから、命蓮寺の者達には言いませんでした。

 

であるならば、弟子として手元に置きこの目で見ればいいのです。部下の要ともあえて離す事で、以降の彼の行動で確実に私の中で折り合いが着くはず。

 

だけど、もし私の中の危惧が本当だった時を想定して、余り深くには踏み込まない。そうしながらも、彼をより人として高みへと成長させる。これもまた本心。

 

私がどういう思惑であれ、皆が新たな命蓮寺の同士となる事を受け入れているのですから。

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