東方霊術伝   作:モン太

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変死事件

「おはようございます、聖先生」

 

「ええ、おはよう惣右介。」

 

藍染と東仙が命蓮寺に居着いて一年が経とうとていた。

 

「今日は外で宝塔を私と一緒に捜索します。」

 

いつもの事ながら宝塔が行方不明になっていた。挨拶も早々に藍染と聖は命蓮寺の外を歩く。

 

「一輪と要の2人組、村紗と星とナズの3人、そして私達。これで見つかればいいのですが。」

 

「ナズーリンさんがいれば最終的に見つかると思いますよ。」

 

「そうねぇ。星ったら、いつもすぐに無くすのですから。」

 

師である聖が前を歩き、弟子である藍染がその後を歩く。2人は時折、足を止めては辺りを捜索する。聖と藍染は普段の行いが良い為か、人間からも妖怪からも声をかけられながら探索していた。

 

「あ、聖様〜!!惣右介〜!!」

 

背後から元気な声をかけられ、そちらを確認する二人。

 

声を掛けてきたのは唐傘お化けの多々良小傘。

 

「2人とも何してるの?」

 

「また星が宝塔を無くしたようなのです。それを探しています。」

 

「多々良君、ちょうど良かったよ。中々見つからず、手詰まりだったからね。」

 

「なら、わちきに任せて!」

 

「ああ、頼もしいよ。」

 

「いいでしょ、聖様?私頑張ったら、お腹一杯にさせて欲しいな。」

 

「わかりました。人手は多い方がいいです。……ところでぬえはどうされました?」

 

命蓮寺に偶に顔を出すぬえという少女妖怪がいる。外で悪戯しては命蓮寺に逃げ込み、聖から説教されるのがいつもの光景だ。

 

「今日は見ていないなぁ。」

 

「そうですか。またどこかで騒ぎを起こしていなければいいのですが……」

 

その後も宝塔を捜索したが見つからず、結局帰って見れば玄関に転がっていた。

 

星は聖から説教を受けていたが、これで一先ずは落ち着く事となった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

慌ただしかかった1日も夕食の時間となっていた。

 

「お師匠、いい加減拗ねてないで箸を進めてくれ。」

 

「うぅ〜、わかったわよ。」

 

若干一名気落ちしているが、いつもの食卓だ。

 

「そうだ、星さん。もう耳にされましたか?」

 

「……何ですか?」

 

気落ちしている彼女の気を逸らそうとしているのか、藍染が声をかける

 

「都郊外での変死事件についてです。」

 

「そうです。その話をしないといけませんでした。」

 

聖も顔を引き締めて追従する。

 

「変死事件?」

 

「そうです。ここ一月程、都郊外の貧民が消える事件が続発しています。原因は不明です。」

 

「消える?どこかへいなくなっちゃうってことですか?」

 

「いえ、それでは失踪などと表現します。そうではなく、文字通り消えるんです。服だけを残して跡形も無く。まるで人の形を保てなくなっ手消えたかのような。」

 

「生きたまま人の形を保てなく…?」

 

「私も意味がわかりませんが、どうも事実なようです。」

 

「明日、一輪には調査をお願いします。」

 

話を振られた一輪と雲山は頷く。

 

「わかりました。もとより聖様からは先に話を聞いていましたからね。明日、要と村紗を連れて出発します。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ねぇ〜、原因不明ってどういうこと?」

 

「私に言われても知らないよ。だから原因調査するんでしょ。」

 

「私達の信者の先遣隊が確認に出ているから、上手くいけば合流できるはず。」

 

空は快晴。天気が悪化する気配は無く、至って平和な空模様。変死事件など無ければ気を張り詰めて歩く事もなかっただろう。

 

「うわあああああ!!」

 

だがそんな穏やかな空気はすぐに霧散する。

 

3人が叫び声の方に向かう。そこには狼の群れに襲われている少年がいた。

 

「グオおおおおおおお!!!!」

 

「子供が襲われてるよ!」

 

3人はすぐに駆け出す。

 

「行くよ!!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

東仙と村紗が狼達に突っ込む。

 

「ギャアアアアアアアアア!!」

 

2人の攻撃を受けた狼達が吠える。

 

 

「鉄拳 『問答無用の妖怪拳』!!」

 

 

そして2人の背後から雲山を連れた一輪が凄まじい正拳突きで全ての狼を吹き飛ばす。その威力は凄まじく、狼だけで無く辺りの木々まで吹き飛ばす。

 

「ウァッ!!ちょっとやりすぎよ!!!」

 

「……ごめん、ちょっとやりすぎたわ……」

 

東仙は蹲っていた子供に駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん」

 

顔を泣き腫らしているが、大きな怪我はなさそうである。

 

「自分で家に帰れるか?」

 

「…だい、じょうぶ」

 

「そうか、強い男だな。」

 

東仙は少年の背中を摩り立ち上がらせる。そのまますぐに少年は走って行った。

 

「ねぇ、要〜。こっちきてー」

 

少年の背中を見送った東仙は村紗に呼ばれる。

 

「どうした村紗?」

 

「一輪が吹き飛ばした茂みの中にこんなのが落ちていたよ!ほい!法衣!」

 

彼女が手に持っていたのは命蓮寺の信者が身につける法衣だ。

 

「ここにね、いっぱい脱いであんの!10着も!」

 

並べられる10着の法衣。それを見ていた一輪の背中に冷たい物が流れた。

 

「法衣が…10着…」

 

「一輪先生…これは…」

 

「ねーねー!10着だとなんかあんの!?ねー!」

 

「これは…先遣隊の人数と…同じじないの…!」

 

「え!?でもコレそこに脱いであったんだよっ!?」

 

「オビを締めたままどうやって法衣を脱ぐの!?下駄を吐いたままどうやって足袋を脱ぐの!?」

 

「うう〜〜〜〜ん?」

 

「要!すぐに命蓮寺に戻ってこの事を知らせるのよ!この変死事件で初の命蓮寺関係者の犠牲者よ!」

 

「はい!」

 

「村紗!私達はここで野営の準備よ!これが命蓮寺を狙う者なのか無差別なのか、いずれにしろこのまま見過ごす訳にはいかないわ」

 

「はい!!!」

 

「うん!」

 

「では行ってまいります!」

 

東仙は命蓮寺へ駆けて行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「非常事態よ!」

 

息を切らしながら走ってきた東仙の報告を受け、聖が声をあげる。

 

「未だ変死の原因は不明。だけど被害は拡大するばかり。犯人の姿の目撃情報もない。そしてとうとう命蓮寺にも被害が出た。このまま事態を放置できないわ。だから私が出る。星、ナズーリン、藍染。あなた達は命蓮寺の守護をお願い。」

 

聖の決意は固い。だが星の表情は優れない。

 

「聖1人だけでいいのでしょうか?…何も3人を残す必要はないかと!」

 

星の意見は正論だ。この場に4人いるなら、あと1人は連れて行くべきだ。星とナズーリンは師弟関係であり、必然的に藍染が同伴することになる。

 

だが聖は何故か連れて行きたいとは思わなかった。理由がある訳ではないので、なんとかその理由を絞り出そうとした時。

 

「話は聞かせてもらった!わちきに任せてよ!!」

 

出てきたのは小傘。

 

「小傘か。今回は結構危険らしいぞ。お前そんなに強くないじゃん。」

 

ナズーリンが容赦なく切り捨てようとする。

 

その後ろから更にもう1人現れる。

 

「なら私も参加しようかな。なんだか面白そうだし。」

 

「……なるほどね。アンタならだいじょうぶそうだね。だけど、聖の邪魔はするなよ、ぬえ。」

 

封獣ぬえ。普段イタズラばかりしているが、有している妖力は強大である。本気を出せばかなり強いだろう。

 

こうして聖、小傘、ぬえの3人が援軍。星、ナズーリン、藍染の3人が命蓮寺の守護につくことなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お!やっと帰ってきた!」

 

「すみません、遅くなりましたが。」

 

命蓮寺から帰ってきた東仙を村紗が見つける。

 

「じゃあ、私は北側。村紗は南東。要は南西方面を見張って。援軍が来るまでね。」

 

「わかりました。」

 

それぞれが配置に着いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

それから1時間後、唐突に事態は急変する

 

「キャッアア!?」

 

「村紗、どうしたの!?」

 

村紗の悲鳴が聞こえ、駆け寄る。

 

そこには胸から血を流して倒れる村紗。意識を失っているようだ。

 

東仙も駆け寄る。

 

「これは!?」

 

「構えて要!敵はまだ近くにいるわ!!」

 

雲山と共に戦闘体制に入る一輪。東仙も刀を抜く。

 

次の瞬間、一輪の視界が暗闇に包まれる。

 

「!? 何!? この…」

 

ドッ

 

痛み。

 

一輪は自身の体から感じる痛みに従って視線を下げる。

 

そこには左胸から刀が生えていた。

 

後ろから刺されたのだ。

 

敵の姿を確認するために背後に振り返る。

 

「…お……まえ……」

 

ドサッ

 

一輪も倒れてしまう。

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