東方霊術伝   作:モン太

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洩矢諏訪子

山を登る。この時代だからか、村の神社への道も一切舗装されていない。

 

「タケさん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃよ。歩きなれておるからの。」

 

「随分と逞しいですね。」

 

「ほめても何も出ないぞ。」

 

神社に近づいているのだろう。感じる霊圧がより大きくなっていく。恐らく、隊長格位あるのではないのか?……実際の隊長格の霊圧など知らないので、物の例えだけど。

 

感じる霊圧の大きさに内心、冷や汗をかきながら、神社に着いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

なかなかの風景だな。

 

僕が里を見渡していると、タケさんが「社に行くぞ。洩矢様にお会いしに行かなくてはならん。気を引き締めろ。」と先程までの優しい顔から厳しい表情に変わる。

 

「わかりました。」

 

短くやりとりをして、社の前に来る。

 

社の前に着くと、僕とタケさんは土下座の様な格好をする。これが作法らしい。

 

「洩矢様!昨日この村に旅人がやって参りました。その者をお連れしました。名は藍染惣右介です。今日は洩矢様にご挨拶として、ここに酒を用意してございます。どうぞご堪能くださいませ!」

 

「よかろう。面を上げよ。」

 

洩矢様であろう声に従い、顔を上げる。洩矢様の顔を見た瞬間に僕は確信した。

 

やはり、あの視線は洩矢様のものだったか。霊圧もただ大きいだけで無く、妖怪と違ってどこまでも透き通っている。それにしても、タケさん曰く、禍々しい巨大なカエルの姿と聞いていたが、僕が見るにただの小さな女の子の様に見えるのだが......................まあ、僕が現代人で信仰心が無いからかもしれない。祟り神であるからには、恐ろしい姿の方が正しいのだろう。

 

「お前が旅人か?人間よ。」

 

「はっ!僕が旅人の藍染惣右介と申します。」

 

洩矢様は、僕の顔を暫く見た後に、タケさんに対して、「お主はもう下がって良い。私はこの者と話があるのでな。」と言う。

 

「はい!わかりました!藍染君。くれぐれも失礼のない様にな。」

 

「はい。わかりました。」

 

そう言って、タケさんは去って行った。

 

 

 

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僕と洩矢様の視線が交差する。まるで、そこらへんに転がっている石を見るかのような目で。やはり神と人の差というのは絶対的なのだろう。

 

あたりに静寂が訪れる。まるで森が死んでしまったかのような静けさだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、30分ほどの時間が経過したころだろうか。洩矢様がおもむろに尋ねた。

 

「お前は何者だ。」

 

「ただの旅人にございます。」

 

「嘘を吐くな。……お前は旅人ではないだろう? 」

 

嫌な笑みを浮かべながら、追撃を仕掛けて来る。

 

「普通の旅人......人間なら、突然森に現れる事など無いだろう?」

 

「..............................」

 

まじか。最初から見られてるじゃないか。

 

僕が困惑している顔を見て、

 

「なるほど、しらを切るのか。……もしやお前、大和の密偵か?」

 

..................え?密偵?スパイだよな?何で?そりゃあ、怪しいけども。

 

大和と言う事は、今の日本は大和が他国をどんどん吸収している時期か。この村も大和が迫ってきている状況という訳か。そんな時期にこの村に見慣れない格好の人間が来たなら、警戒されるのは当然。

 

僕の反応を見て、予想通りと言わんばかりの洩矢様。

 

「やはりか。ならばこの祟り神である洩矢諏訪子が、お前に天罰を下す!」

 

洩矢様の霊圧が跳ね上がる。不味い、この霊圧。殺される!

 

「ミシャグジよ。あいつを喰え。」

 

洩矢様の足元から、白い蛇が現れ俺に向かって来る。

 

この白い蛇の霊圧もやばい!

 

僕は必死に走り、ミシャグジの攻撃を避け、すれ違い様に霊力を込めた拳を叩きつける。

 

『ギャアアアアア!』

 

ミシャグジは悲鳴をあげ、仰け反るが直ぐに対戦を立て直す。

 

「等々本性を表したか。」

 

洩矢様はいやらしい笑みを浮かべる。

 

「なかなかの威力だが、それでは私は止められんぞ!」

 

僕の死角から、更にもう一体のミシャグジが襲って来る。反応に遅れた僕の顔をミシャグジが掠る。額から血が流れる。

 

僕は諏訪子の方を見る。諏訪子の周りには、更に2体のミシャグジがいる。これをどうやって、凌いで逃走するか。

 

そろそろ、本気を出さないとな。死んでしまう。

 

「これの代償は高くつくよ。洩矢諏訪子。」

 

諏訪子は目を大きく見開いている。

 

何がそんなに驚く事があるんだ?

 

「一体何をそんなに驚いているんだね。ただ、興が乗っただけだよ。キミがそこまで驚くことはない。」

 

「口調が変わってるぞ。それが、お前の本性か?」

 

口調が変わってる?そんなつもりはないんだが..............

 

「僕は元々この口調だと思うんだけどね。そもそも、キミと僕はまだ顔を合わせて、一時間も経ってはいない。その程度では、相手の事を理解するのは不可能な事だ。まあ、長い付き合いの者同士でも、完全には理解し得ない。理解とは、相手の事を知りたいという欲求の元に生まれた単なる幻想なのだよ。」

 

「随分と饒舌になったな。私はお前と喋りたい訳ではない。さっさと私に殺されろ。」

 

「キミは、強者が弱者を支配するのは当たり前だと考えているかい?」

 

「何をいきなり.....」

 

「いや、言い換えよう。神が人を支配するのは当たり前だと思うかい?」

 

「当然であろう。この村も私の加護がなければ、豊作にはならない。」

 

「つまりキミは、ここでは強者という事だね。ならばあまり強い言葉を遣うものではないよ。」

 

「弱く見えるぞ。」

 

諏訪子の霊圧が跳ね上がる。

 

「もういい!ミシャグジよ。こいつを殺せ!」

 

ミシャグジが今までとは、比べ物にならない速度で攻撃する。

 

「縛道の一 塞」

 

「何!?」

 

2体のミシャグジを束ねる。そのまま転がってるミシャグジを諏訪子に向けて蹴り飛ばす。

 

「クッ!」

 

飛来するミシャグジを諏訪子は、手に鉄の輪を出し、切り裂く。

 

切り裂かれるミシャグジの背後で、俺はもう一度鬼道を構える。

 

「縛道の一 塞」

 

今度は諏訪子の体の自由を奪う。

 

「くそッ!私にこの様な真似をしてただで済むと思うなよ!」

 

諏訪子の霊圧が更に大きくなる。

 

神様ってのは、こんな化け物なのかよ。

 

僕の額に冷や汗が流れる。

 

既に縛道が解けつつある。流石神様。だが..........

 

「破道の一 衝」

 

「グアッ!」

 

諏訪子が衝撃波で吹っ飛び、地面を転がる。

 

「破道の一 衝」

 

更にもう一発を転がってる諏訪子の地面に当てて、土煙をあげる。僕は、それを確認して全力で逃げ去った。

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