東方霊術伝   作:モン太

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神力

あれから、数ヶ月。結局あの諏訪の村には居られない僕は、時折不意打ちで襲ってくるミシャグジをあしらいながら、森をさまよっていた。タケさんには申し訳ない事をしたな。

 

とは言っても、やはり藍染スペック。凄まじい速度で霊力が上がっていく。実際、諏訪子と闘っている最中でも上がっていた事を実感していたので、2回目の森の散策は楽だった。さすがに、諏訪子などの神や大妖怪に敵うとは、思っていないが。

 

ところで、藍染は原作では謎のモニターや監視装置、ひいては崩玉を作っており、科学者でもあった。俺はそれに習い、未熟な己の力量を考えて、緊急の逃走用の発明品を作った。できれば、これが使われる事がないのを祈るが、念のためだ。

 

諏訪子から逃げながら開発はできないので、諏訪の村の近くの森の地下に、簡易の研究室を作って開発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「破道の四 白雷」

 

指先から白い雷が閃光になって、目の前の大木を貫通する。

 

できる鬼道も増えたが、より鬼道を成功させるには、霊力の収束などの練習が必要だ。ただ膨大な霊力を適当に放てばできるほど鬼道は安くはないようだ。

 

『ギャアアアアア!』

 

また、俺の足元からミシャグジが急に出て来た。もう慣れた光景なので、軽く宙返りして鬼道を放つ。

 

「破道の四 白雷」

 

音速の細い電撃はミシャグジの頭部を砕き、そのまま後ろの地面に小さなクレーターを作る。

 

....................ん? 一体だけなのか?いつもなら更に畳み掛けて来るんだが.................

 

「中々のお手並みだな」

 

「っ!?」

 

僕の背後から馬鹿でかい霊圧を感じた。僕は咄嗟に振り返る。振り返った先には、数ヶ月前に僕の命を奪おうとした洩矢諏訪子がいた。諏訪子は、ニヤニヤした顔を浮かべている。

 

「おいおい、そんな怖い顔をするなよ。」

 

「それはこちらの台詞だよ、洩矢諏訪子。その様な笑顔を浮かべられては、矮小な僕ではすぐに竦み上がってしまうよ。」

 

「相変わらずの減らず口だな。」

 

「人間が神に対して、生き残る術だよ。」

 

「お前の様な奴が私を神だとは言い張るのか?笑わせる。」

 

「そうは言いながらも付き合ってくれているではないかね?ところで、こんなところに何用かな?とうとう自分からこの僕を抹殺しに来たのかい?」

 

「それは、これからのお前次第だな。」

 

「ほう、ではそのチャンスを活かさないとね。そう言えば、護衛はいないのかね?幾ら、神だからと言って..............いや、神だからこそ護衛の1人2人は付けるものだと思うが..............」

 

諏訪子は僕の言葉にニヤニヤした顔を引き締める。そして、真剣な表情で僕に問い掛けた。

 

「取引しないか?藍染惣右介。」

 

「他人に聞かれては、不味い取引という事かな?」

 

「お前のくだらない御託はいい。私と手を組め。」

 

「................なるほど、自分から追い出した手前、今更手を組む交渉を村の人間に知られる訳にはいかない。更にその様な状況でも、僕に頼らねばならない程の事象。.............つまりは大和と戦争でもするのかい?」

 

「良く頭の回る奴だ。これから、私達は大和と戦争をする。だが、私達では大和に勝てない事も悔しいが自覚している。だから、お前に頼る事にした。取引材料は今後一切、お前を襲わない事だ。」

 

「キミは以前、僕を大和の密偵だと疑っていたのではないのかい?」

 

僕の問い掛けに、諏訪子はバツの悪そうな顔をする。

 

「この数ヶ月。ミシャグジにお前の動向を探らせたが、大和と連絡を取る事も無く、ただこの森で霊力を打っていたと報告を受けている。だから、大和の密偵である事の疑いは私の中では、晴れた。」

 

確かにミシャグジが襲って来てはいたが、必ず1匹は何もせずに逃げる個体もいた。僕の力では、自分が相手取るミシャグジで精一杯だったので、逃げるミシャグジに手を出す余裕は無かった。

 

「ふむ。とは言ってもそれでキミと手を組むには、条件が安過ぎる。このまま見殺しにすれば、それだけで僕にとっての脅威は去る。また、仮に手を貸して負けた場合はただ僕が損をしただけで終わる。」

 

諏訪子は再び、真剣な顔になる。以前の様な神としての余裕の表情では無い。

 

「手を組まないのであれば、ここで殺すと言ってもか?」

 

「そんな安い挑発に乗ると思っているのか? キミ達は大和との戦争を、生き残らなければならない。その為の戦力を自ら目の前で消し去る理由が何処にある?」

 

「なら、私の神力を与える。お前に信仰は無いから使えば消費する一方だが、力が増すはずだ。もし私が生き残ればこれから先、お前が望むタイミングでお前に神力を与える事を約束しよう。」

 

「随分、大きく出たな。ただ一回の戦に対して、僕の将来までを保証するのか?」

 

「お前にも命を賭けて貰うからな。これぐらいはどってことはない。」

 

神力と言うのも実は初耳だが、大体は今の話と名前でどの様な力かわかる。恐らく、霊力の神様版と言ったところか。力の源は信仰という訳だ。

 

「良いだろう、その条件でキミと手を組もう。」

 

神力というものは、僕の持っていない力だからな。是非とも解析させて貰いたい。解析さえできれば、最悪死にそうになった時に逃げて、諏訪子を見殺しにする事も視野に入れられる。

 

「一応、礼を言っておこう。だが、先程も言ったようにお前はあくまでも追放者だ。村の者には見せられぬ故、お前は私の神力をもって、敵陣の奥に斬り込んで貰わねばならぬ。だが、敵の大将は私が相手取る故、お前が案ずる事はない。」

 

「では、いつから開戦かな?」

 

「開戦の前日にお前のところに、眷属を送る。お前は移動しなくていい。直接、私がお前のところに行く。」

 

「開戦日程はまだ、未定なのか?相変わらず、詰めが甘い。霊圧は素晴らしいものだが、やはり見た目通りの小娘か?」

 

いや、神力なのだから霊圧ではないのか。

 

諏訪子が目を見開き、驚いている。

 

「お前、私を小娘と言ったのか?」

 

「だから、どうしたと言うのかね?」

 

「怪物に見えないのか?」

 

「確かにキミと初めて会う前に、村の者から黒い大きなカエルの化け物と聞いていたが、残念なことに僕には最初から、小娘が踏ん反り返っている姿にしか見ていないよ。」

 

「そ、そうか。」

 

諏訪子が俺の言葉に怒らない。それどころか、頬を赤らめている。なるほど、わかりやすいな。

 

「まさか祟り神と畏れられているキミが、その程度の事で喜ぶとはな。」

 

「う、うるさい!もう用は済んだ。しくじったら、許さないからな!わかったか、藍染!」

 

諏訪子は逃げるように飛んで行った。

 

「それは、こちらの台詞だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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3日後....

 

今日も遠くから妖怪や野生動物を狙撃していたら、小型のミシャグジが来た。

 

3日って.............かなりギリギリだったのかよ。

 

まあ、僕ができることなんて特に無いし、準備するには十分かな?

 

僕は地下の隠れ家に戻る。部屋の棚に並べられている容器の内の一つを取り出し、中の液体を注射器で自分の体内に腕から注射する。

 

こんなマユリ様の様な自身の体に、薬を仕込むのは怖いけど、今の僕にはこれくらいしかできないからね。

 

よし。これで今回は死ぬ事はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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決戦当日

 

諏訪子が指定した場所に辿り着いた。僕は森の中の池を眺めていると、

 

「いよいよだな。」

 

背後から諏訪子が現れる。その顔は以前の様な余裕のある顔ではなく、覚悟を決めた神の顔をしていた。

 

「その様だね。」

 

「私は長居ができない。さっさと済ませるぞ。背中を向けろ。」

 

僕は諏訪子に背中を向ける。諏訪子は僕の背中に手を当てて力を注ぎ込む。

 

これが神力。凄まじい程の力の密度。己の身1つで作る霊力や妖力と違い、信仰によって強まる神力。なるほど。人間が神に勝てないのも納得だ。

 

「終わったぞ。約束は守れよ。」

 

「既に渡し終えてからそれを言うのかい?」

 

「頭の良いお前ならわかるだろう。ここで私を裏切って私が生き残れば、また命を終われる事を。大和が勝ってもいずれ大和の神々と戦うこ可能性がある事を。神力を与えられた今のうちに大和の神々を減らす事がお前にとっても利益になる事を。」

 

「........やりにくい、小娘だ。」

 

「ふふ、光栄だね。」

 

そう言うと諏訪子は消えて行った。

 

だが、本当に諏訪子の言う通り手を貸す気は無い。簡単には、触れる事すらできない神力。早速サンプルを取っておこう。

 

注射器で血を抜く。それを蓋つきのビーカーに入れて保存する。

 

そのビーカーを懐に仕舞おうとした時に気が付いた。

 

これは斬魄刀!?

 

僕はすぐに地下の隠れ家に降りる。神力のサンプルを仕舞い。斬魄刀の霊圧のサンプルも取っておく。

 

では、行こうか。

 

僕は斬魄刀を握り、戦場に向かう。

 

地上の傲慢なる神々に鉄槌を。

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