Tales of Rezar ~祈りが導くRPG~   作:0maru

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第二話 旅立ちの夜 

チュンチュンと鳥達の可愛らしい声が聞こえる社に、一人エンゼはいた。

彼は遂に開かれた社の扉を見つめ、それからその中へと入っていく。

 

ああ、昨日の事が夢だったんじゃないかと、そう思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――昨日回想

 

 

 

激しく一瞬の風。

それは本当に一瞬だけ、けれど激しくその場で渦巻き吹いた風は重たそうな女性?の鎧をも飛ばす程だった。

 

もろに攻撃を食らった女性?は後方は飛ばされ、バランスを崩したのかそのまま倒れた。

ガシャンと音が響く。

けれどゆっくりとその場に立ち上がった。

 

顔の面はその時に外れたのだろう。

彼女の隠れていた顔が露わとなり、今どんな表情をしているのかがはっきりと分かる。

苛立った、怒りが見える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「…ちっ、あの程度の風に…我が」

 

あの程度、そう言える程の風ではない。

明らかに普段とは違う威力の上がった風。

けれど、彼女はなんて頑丈な体をしているのだろうか。

立ち上がり武器を構え、そしてエンゼを睨みつけている。

 

お互いに睨みながら、次の一撃をしようとじりじりと構える。

 

けれど、その次の攻撃をすることはなかった。

…何故なら、

 

「…隊長!!」

 

「「!」」

 

女性の仲間が現れたからである。

加勢でもする気かと思えばそうではなく、

 

「隊長、大変で御座います!」

 

「…なんだ」

 

「東の守護騎士がこちらに向かっているとの事です!!」

 

東の…、守護"騎士"。

向こうでは守護武者をそう呼ぶのかとエンゼは思った。

そして守護武者達がこちらに向っている、エンゼ達のよく知る東の守護武者が。

それを聞いて隊長と呼ばれた女性は更に顔を歪ませた。

 

「ちっ…予想よりも早く動いたな。

……、…仕方がない、撤退する」

 

「…はっ!」

 

そして次に出た言葉は…『撤退』であった。

けれど彼女は内心ではしたくないのだろう。

目の前に標的である巫がいるというのに、それを逃す事になるのだから。

女性は苛立つその心も、表情も隠す事なくそのまま素早く階段に向かい歩いていく。

 

エンゼ、そしてアルマ達里の者は少しだけホッとする。

撤退と言う事はこれ以上何もしてこないと言う事だから。

 

けれど女性は階段を降りるその前に振り向き一言。

 

「次は必ずお前のその命をもらう。

……覚悟しておけ、巫よ」

 

「…!」

 

そして彼女達西の守護武者は里から去った。

 

それから、無事!かと声を皆へかけながら東の守護武者達が現れたのはその数分後のことであった。

 

 

 

               回想終了―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の守護武者達が来たおかげで今日をまた迎えられた事に本当に感謝している。

もちろん何があったのかと聞かれたけれど、彼らはとにかく無事で何よりだと言ってくれた。

本当にそうだと思う。

………犠牲はあった、それでも…皆無事で良かった、と。

今も警護をすると残っている守護武者達に後々またお礼を言わないととエンゼは思う。

 

そういえばとふと彼は昨日のあの場面を思い出す。

 

あの場面、それはあの女性に再度立ち向かった時の事。

今思えば、よくあれだけの力を出せたと思う。

動けないくらいボロボロで酷かったのに。

 

「…この石のおかげ、なのか」

 

社の中から現れた光から出てきたこの勾玉。

不思議な温かさを感じる。

そんなこの石がエンゼの願いに応えたように光出し、そして彼の体を再び立たせた。

 

「……、ほんと何なんだろうな。

…あいつ、巫の勾玉とか言ってたけどさ…」

 

本当に不思議な石だ。

けれどこの石のおかげでなんとかあの守護武者、彼女達は騎士と言っていたが。

…彼女達を退けられた。

まぁ自分だけの力ではない、アルマや他の皆、守護武者達がエンリカの里に来てくれたおかげだけれど。

 

それでもこの石のおかげで持ち堪えられた、戦う事ができた。

石に、など変ではあるけれど、この石には感謝してもしきれないな。

そう思う。

 

 

 

 

 

 

社の中に入ると今まで開けたことがなかったからだろう、少し埃っぽかった。

けれどそれだけで、あとは不思議なくらい綺麗で。

木で出来た建物だ、何年もあれば多少なりとも壊れたり、木が虫に食べられたり腐ってたり、何かしらあってもおかしくないのに。

 

それから中に進んでいくと目に入ったのは大きな石版。

…いや、石版というよりも石に彫られた絵と言った方がいいかもしれない。

 

「これ…誰だ?」

 

描かれていたのは祈りを捧げているような姿の一人の男性。

自分達が着ているような服に似ているようで似ていない、何処か幻想的に見える服装。

男性の周りには何を表しているのか分からないが、七つの丸いもの。

 

そして、

 

「……。……これって」

 

男性の首元には、今エンゼも付けている石らしきモノがあった。

 

「…そうか。

…この人が……"巫"」

 

彼の言葉はおそらく正しい。

この勾玉は巫のみ持つもの、そう女性は言っていた。

そうなれば自ずと男性は誰か答えは出てくる。

 

そしてもう一つ、

 

「社の中に今まで入れなかったのは…これがあったからだったのかもな」

 

巫の勾玉、"月詠ノ玉"。

それを隠す為、守る為だと。

 

けれど何故自分に開ける事が出来たのだろう?

疑問が残る。

分かるとすれば、あの口ずさんだ唄だろうが。

 

歌うだけで開くものだろうか。

そんなに何か力を持った歌だったのだろうか。

ならば、何故自分にそれが出来たのだろうか。

 

結局何故自分に、と戻ってきてしまう。

 

「はぁ…考えても仕方ねーか…」

 

エンゼはため息をした。

流石に分からないことだらけ。

考えるだけ無駄かもしれない。

 

とにかく何か疑問の答えになるものはないかと彼は石版の周辺を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社の中を物色し始めてからしばらくして。

エンゼは古い本のような、紙を束ねたモノを発見する。

何の本だろうかと開いたのだが…、

 

「…………………………読めない」

 

昔の字なのか、全くエンゼには読めなかった。

 

けれど何かしら巫について書かれているかもと彼はその本を持つ。

…他にないかと思ったが、予想してたよりもこの中には何もない。

エンゼはもう出るかと言って里に向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いたいた!」

 

「…?アルマ?」

 

階段の方から彼女の声が聞こえ見てみれば、こちらに駆け寄ってくる姿が目に入った。

 

「もう!何処にもいないから探したのよ?」

 

「うっ…わりー!ちょっと気になって社に来てたんだ」

 

あははと申し訳なさそうにエンゼは謝れば、アルマは一言くらい言って頂戴!昨日の今日で怪我治ってないんだから!といつもの世話焼きが発動。

けれど、それを言うならアルマもではないだろうか?と彼は心の中で呟く。

 

ふと彼女が手に持っていた古い本を見ているのに気が付く。

 

「これ、社の中で見つけたんだ」

 

「社の中で?

…巫について書かれたものなの?」

 

「…だと思うんだけど、…読めなくて」

 

はいと彼女へ渡すとパラパラとそれを捲る。

けれど彼女にもやはり読めないようだ。

 

挙句に、

 

「…これ、落書きとかじゃないわよね?」

 

「……そう見えるけどたぶんちゃんと言葉になってると思うぜ、……………たぶん」

 

昔の字だと思うのだが、………自信なくなってきた。

アルマはエンゼに本を返すと私も中に入れるかしらと言って来たので、彼はじゃあ入ってみるか?と言ってみた。

 

その流れでまた彼は彼女と共に中へと入る。

けれど先程と変わらず、特に何があると言う訳でもなく、二人はそのまま里に戻る事にした。

 

その帰り際で、

 

「あの石版の男性、どうして祈りを捧げているような姿で描かれていたのかしらね」

 

「え?…分かんねー、どうしてだろうな?」

 

「あの人があなたの前の巫なら、きっと何か意味があると思うんだけど…。

でも気のせいかもね」

 

(祈りを捧げている、…それの………意味。

……意味、あるのか?)

 

さぁ早く戻りましょうと促され、彼は駆け足に彼女を追いかける。

アルマの言葉を、頭の片隅に残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ、じっちゃん?…と、守護武者の…」

 

「おぉエンゼ、アルマ。戻っておったか」

 

「こんにちは、エンゼ殿。アルマ殿」

 

「ただ今戻りました、長老様。

こんにちは、ユアマ様」

 

長老と共に話していたのは守護武者の一人、ユアマという男性。

二人の姿を見て挨拶する。

 

「それでじっちゃん、何かあったのか?」

 

二人の先程の様子、真剣に話していた。

きっと何かあったに違いないと彼は長老に聞く。

すると、

 

「ユアマ殿が先程、昨日の西の守護武者達を見かけたそうでの」

 

「あいつらが!?」

 

どうやら昨日の守護武者達がまだ周辺の森で身を隠しながら彷徨いているらしい。

幸い、ここには東の守護武者がいる。

手出しはしてこないだろうが…。

 

「……」

 

「…エンゼ」

 

「…大丈夫、俺は」

 

狙いは決まっている。

巫であるエンゼだ。

まだ彼女達は彼を殺す事を諦めてはいない。

きっと機会を伺っているのだ。

 

今は安全かもしれない。

けれど、ユアマ達がここにずっといれる訳じゃないのだ。

 

(………俺がこの里にいる限り…、皆は)

 

…彼はこの時、ある決意をした。

それは…、

 

(…俺が、俺がこの里にいなければいい。

…出ていけば、あいつらは俺を追ってくるはず)

 

この里を、故郷を出る事。

ここにいる限り、里の皆を傷つけられる可能性がある。

それでは昨日彼女達を退けた意味がない。

ならば自分を囮にすれば、そう考えての答えだった。

 

そして彼はすぐに実行しようと、長老達に気付かれる前にそれじゃあと言ってその場を立ち去った。

 

「……」

 

その姿を見て、その決意に気付いた者がいるとも知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、否。

既に時刻は真夜中を過ぎた頃。

里の者は皆眠りについている時刻。

唯一起きているのは、ここを警護してくれている守護武者達のみで。

 

エンゼはのそのそと起き上がる。

そして隠しておいた荷物を出し、物音を立てぬ様そっと動いた。

 

(…じっちゃん、……ごめん。

必ず、…必ず戻る。だから今は許してくれ)

 

自分を大事に思ってくれていた長老に心の中で謝る。

何も言わずに出ていくのだ、当然怒る…あるいは呆れるだろう。

それでも今の自分が出来るのとはこれしかないのだと思う。

 

エンゼはそして長老の家から出ていった。

 

 

 

「………必ず、…帰ってくるのじゃよ。……エンゼよ」

 

その姿を、彼から見えない所から長老は見守っていた。

気が付いていたのだ、彼の決意を。

けれど止める事はしなかった。

………止めても無駄と分かっていたから。

 

だから願う、必ず戻ってくる事を。

その願いはエンゼに聞こえることなく、宙にそっと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユアマさん」

 

「?エンゼ殿?こんな時間にどうしたんだい?」

 

「…別れとお願いを言いに」

 

真夜中を過ぎたというのに外に出ていた彼に不思議に思ったが、彼の言葉でユアマは瞬時に理解する。

 

「ここから出るつもりなんだね?」

 

「ああ、……あいつらの狙いは巫。

つまり俺だから。

俺がここからいなくなれば…きっとそれを追いかけて来るはず」

 

「……危険と知りながら、それでも行くんだね?」

 

エンゼは頷いた。

それにユアマはそうかと一言言って、…少しだけ沈黙。

 

そして、

 

「この先の森はおそらく危険だ。西の守護武者達が彷徨いている。

もし行くなら別の所からが安全だろう、…例えば」

 

「…え?」

 

視線の先、そこは社の方だった。

そして彼は驚く、…何故なら。

 

「アルマ…?」

 

社へ続く階段の前に彼女がいたから。

ユアマは少しだけ笑うと、

 

「彼女、ずっと寝ずに外にいたんだよ。

何故かと聞いても言わなかったから不思議に思ったけど……エンゼ殿の言葉で分かった」

 

「……」

 

「エンゼ殿。

………私達がいるまではこの里を守る。

だから安心して…行ってきなさい」

 

「…!

…………、ありがとう。ユアマさん…」

 

ユアマは返事の代わりに笑う。

それを見た後、エンゼはすぐ彼女の待つ階段へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルマ」

 

「行くんでしょう?」

 

「!」

 

声をかければ、彼女はもうやる事は分かってるというようにいつもの笑顔で言った。

それを見て幼馴染の考えを理解した。

彼女は着いてくるつもりでずっとここにいたのだと。

 

「…ユアマさんが、別の所から里を出た方がいいってさ」

 

「私も同じ事を考えてた。

…だとすればやっぱり」

 

「…ああ」

 

二人の目線は社、…否。

社の山へと向けられた。

 

「この山を……越える」

 

この山は社以外人は立ち入っておらず、何があるか分からない。

魔物が時折現れる事もあった、だとすれば魔物に遭遇はしてしまう確率は高いだろう。

 

「………アルマ」

 

「何?」

 

「…本当にいいのか?着いてきて」

 

確認したかった。

きっと自分は命をあいつらに狙われる、退けてもきっとまた狙ってくる。

危険な目にあうかもしれない。

そう思ったからこそ彼は彼女へ聞いた。

 

けれど今更何をとでも言うように彼女はまた笑った。

 

「私はあなたの幼馴染よ?

どうせ皆が危険な目にあわないように、なーんて思ったんだろうけど。

 

でもね…あなたは一人じゃないの、私が…皆がいるのよ?

少しくらい頼りなさいよ」

 

「―――………」

 

「それにね、あなただけで行かせたらそれこそ危険だわ。

一人で突っ走ってしまうし、…なら私が一緒にいないとね!」

 

「…って!!俺だけだと危険って酷いな!!」

 

「はーい、静かにね」

 

「ボカッ)あたっ!?」

 

少しコントのようなことをして、その後に二人して笑った。

こんな状況でも、それでも笑えるのはきっと"一人ではない"、そう思ったから。

 

そして二人は駆け出す。

社あるこの山を越える為に。

 

 

一人ではない、………………二人で―――




はい、ということで一日で2話投稿しました!
………や、やっと旅立てたー←

ちょっと文才ないので分かりにくいかもですね…気をつけてはいますが…。
もしかしたらこっそりと分かりやすいよう変更してるかもです。
その際はまたこちらに書いて報告しますね。
それでは!次回も頑張ります!(おそらく次回は来月かもですが…;)

*題書くの忘れてたので書きました←…ほんとすみません;;;



*今回の人物と単語↓

▽人物(モブ含む)
女性守護騎士隊長…エンリカの里に現れた守護騎士の隊長。女性でありながら大きなランスを片手で持てる程力がある。
普段は冷静で真面目そうだが、実際は強くなる為に戦う事を好む戦闘狂らしい。

【挿絵表示】


・ユアマ…東の守護武者の一人。正義感のある優しい男性。
…結構感が鋭かったりする。

▽単語
・守護騎士…西の島の王を守護者達の通称。
西では東の守護武者も騎士と呼んでいる模様。

・石版…巫と思われる祈りを捧げているような姿の男性と、その周囲に七つの丸いものが書かれた石の絵。男性の首元には、エンゼが手に入れた同じ勾玉らしきものがある。
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