挨拶など無用 剣舞う懺悔の時間 地獄の奥底で 閻魔殿にひれ伏せ!
一つ目は撃つ! 二つ目も撃つ! 三つ四つ面倒くせぇ絆!
「舐めるでない!!」「舐めんじゃねぇ!!」
翼が断つ、クリスが射抜く。
【歌】によってシンフォギアのフォニックゲインを最高まで高めながら、二人の装者は戦場を駆ける。
その女子とは思えぬ猛撃の数々に、ダークマターは打つ手なく空へ還る他ない。
「おらおらどうしたぁ!?こんなもんかよ!!」
『BILLON MAIDEN』『CUT IN CUT OUT』『MEGA DETH PARTY』――――クリスは様々な銃器の形となった【イチイバル】を四方八方へ撒き散らしダークマターを蜂の巣にしていく……。
「この程度では、私の剣は折れんぞ!」
『逆羅刹』『蒼ノ一閃』『千ノ落涙』――――翼は多くの刀を形成した【天羽々斬】で洗練された滑らかな動きでダークマターを斬り伏せる……。
誰しも道を選ぶ時がきて そして全部が――――
「平等ってわけには、いかないがっ!!」
必ず孤独じゃないってことだけ――――
「忘れずその胸に、夢と共にっ!!」
雪にも! 風にも! 花にも! 誰にも! 負けない!
そうして彼女達に立ちはだかる敵は、たった一体のみとなった。
自分の色で戦い泣く勇気のハート!
その最後の一体を、銃弾が胴体を貫き、剣が真っ二つに両断する。
「「ひとりにはしない!!」」
追いつかねばならない相手がいる。彼女達が立ち止まることは、ない。
一方、ブレイブとスナイプの戦いも、決着がつこうとしていた。
『タドル・クリティカル・フィニッシュ!!』
『バンバン・クリティカル・フィニッシュ!!』
それぞれのガシャコンウェポンにガシャットを挿入し、背中合わせとなって全方位から迫ってくる40近い数のダークマターに必殺の一撃を見舞う。
「ライダーは俺一人で十分だ」
「俺に切れないものはない」
炎氷の剣戟と必中の銃撃が、全ての敵を消し飛ばした。
『会心の一発!!』
全てのダークマターを蹴散らして、四人はそのままメンバーの後を追う。
「ぐおおお!?ちっ、やっぱひとりじゃキツいか……」
一方、終始優勢に戦いを制した彼らとは打って変わって、レーザーは苦戦を強いられていた。
敵の戦力はその数30程。決して多くはないにも関わらず彼が辛い戦いを余儀なくされているのには、他のライダーと違い単独での戦闘に不向きな装備であることが挙げられる。
レーザーレベル2は先ほど見た通り他者の力を借りねば性能を発揮できない使いづらい代物で、まともに戦う為にはレベル1でなければならないのだ。
しかし本格的な戦闘を目的にしていないレベル1。相手が雑魚と言えど、数に圧されてしまう。
「だったら!」
ならばと新たなガシャットを構えるレーザー。
しかし起動する前に、目の前のダークマターは全て消滅してしまった。
『チュ・ドーン!』
紫色の光弾によって。
「なに……?」
自分の関与しない不自然な決着を不審に思い、周囲を見回す。
しかし何もない。静かな街並みが広がっているだけであった……。
「監察医!」
丁度その時、飛彩、大我、翼、クリスがレーザーの下に到着する。
『ガッシュ〜』
「あいつらなら先に行かせた。自分達もすぐに追いかけるぞ」
貴利矢の姿へと戻った彼は4人と同時に頷き合うと、後を追うため鎮守府へと入っていく
……。
突き出た枝木ように一箇所、余分に伸びたコンクリートの先……すなわち桟橋の横には、船乗りが魚の網漁で使用するようなシックなデザインの漁船が波で上下に揺れて、停泊していた。
その影からヌッと現れたのは、深海棲艦に対抗しうる唯一の兵器「艤装」をまとった凛々しい佇まいの吹雪だ。
「お待たせしました。ってあれ?」
船に乗員するであろう者達は、既に桟橋に集合していた。
彼女はその姿を認識するや、思わず間抜けな声が漏れる。
それもそのはず。先ほど船を用意して牽引してくる前まで3人しかいなかった人数が戻ってくると8人に増加していたのだから。
「……これで全員揃った。吹雪ちゃん」
「は、はい。現地までは私が護衛に付きます。本来であれば六隻編成でなければなりませんが、工廠が破壊されたせいで艤装をまとえる艦娘は限られていますので、ごめんなさい」
「いや、十分だよ。ありがとう。それからポッピー」
永夢はポッピーに向き直った。
「君はCRに戻るんだ。ここからは本当に危険な戦いが待ってる」
そして、強く言い聞かせる。
ポッピーは、少し俯いて唇を噛んだ。それから……。
「……うん、わかった。絶対ダークマターを倒してね」
自分が非戦闘員であるために足でまといになることを理解できない彼女ではない。もともとポッピーの役目は、鎮守府までのナビゲート。ここから先は、彼らの舞台。
その結末を祈ることが、ポッピーに出来るたった一つだけの大仕事だ……。
漁船はそのノスタルジックな外見にも関わらず、最新鋭の科学技術が搭載されていた。
特別な運転技術を持ち合わせていなくとも、必要な設定を入力しておいて乗っていれば自動で目的地まで連れて行ってくれるハイテクな代物だ。
7人全員が船に乗り込むことを確認すると、吹雪は先頭に移動して海を見渡す。
幸い波は穏やかだ。この先に強大な存在が待ち受けているなど、露にも感じさせない。
吹雪が発進可能の合図を出すと、戦士達を乗せた漁船はゆっくりと海水を掻き分けながら動き始めた。
「距離から考えて、1時間と言ったところか」
「ちょいと間が開くと気分がダレるな。とは言え、一眠りする時間もねぇか。……ん?」
船頭でクリスがボヤいていると、背後から小さないびきが。
怪訝に思って後ろを振り向くと、
「ぐー……ぐー……」
響が寝ていた。
「おいなんで寝てんだこいつ」
「マイペースなんだね、響ちゃんは」
「うぅん……んあ?」
船は、心なしか和やかな空気に包まれながら進んでいく。
大事な時に何を呑気な。と、傍から見ると戸惑うかもしれないが、張り詰めた心の状態で日常的なコミュニケーションを無意識に行えるというのは、単にその者の実力が高い位置にあることを表すと言っていい。
適度な余裕を持ち、時と場合に応じてメリハリをつけられる人間程、どの分野においても戦力として優秀な人材はいない。
野良深海棲艦が出現することもなく、戦士達を乗せた漁船はゆったりと、さらに海を進んでいく……。
――――そして、彼らは未知の領域へと足を踏み入れた。
彼らが目指す先にある『闇』によって隠された無人島は、等間隔に天まで伸びた光の塔によって四方を囲われていた。
これらが全て『闇』を生み出し、より濃密な暗黒を作り出しているのだ。
さらに空中を漂っているのは『闇』のみならず、数えることもおっくうになる程のダークマター。
まさに悪夢城と呼称するに相応しい世界が構築されていた。
教会を魔改造した帝王の座で、ゼロは背もたれに体重を預けながら静かに眠っている。可愛らしい吐息を定期的に漏らしてはいるが、その身からは隠しようもない邪悪なオーラがゆらゆらと現実世界を侵食していた……。
ありとあらゆるものが、我々の住む世界とは正反対の属性で出来上がったゼロの世界では、我々の常識は総じて異物と認識される。
一度異物が紛れ込もうものであれば、微細な『闇』の僅かな違和感が統べる王であるゼロへと瞬時に伝達されるように出来ていた。
そもそも異物が紛れ込まないよう細工を施し、マイペースで地球の支配を目論むつもりであったゼロにとって、その感覚は設定していながらも実際には感じる予定ではなかったものだ。
「!?」
『闇』の僅かな揺らめき。
完全なる世界と化したこの場所に、確かに異物が紛れ込んだと確信した。
「……馬鹿な」
想定外の事態に一瞬焦りを覚えたが、眼を開いて立ち上がる、すぐさま意識を『闇』へ溶け込ませ、異物を探る。
(1、2、3…………8か)
異物の正体までは分からずとも、その非常識にも光輝く魂を感じ取ることはできた。
「エグゼイド共か?まさかここを嗅ぎつけられるとは思わなかったな。慌てて無意味な対策を講じている奴らを思い切り蹂躙してやろうと思っていたのに……」
残念そうに肩を落とすゼロ。しかしすぐにその表情は邪悪に歪む。
「まあいい。
そう言って、ゼロは玉座から姿を消した……。