【HCS】 星のカービィ -DARKWARS-   作:黒廃者

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知っている方はお久しぶりです。
予定通り新作を投稿する形になりました。こちらは必ず完結させられる目処が立っているので温かい目で見ていただければ幸いです。


暗闇の鼓動

 それは、遡ること一週間前――――――

 

 

 

 

 山と海に囲まれた地方都市「冬木」。強い霊脈が流れる穏やかな土地の山中から出土したのは、いわゆるオーパーツだった。

 いや、オーパーツと呼称するのはいささか語弊があるかもしれない。

 なぜならば、生命を宿していることが確認されたからである。

 

 

 そんな未知の四面立方体を入手したのは、財団X。『死の商人』とも噂される謎の団体である。

 これまでに、ガイアメモリやアストロスイッチといった超常技術開発のスポンサーとして暗躍し、最終的にその成果の一部を手に入れる秘密結社としての姿が確認されているが、その本質や目的を知っている者はいない……。

 

 

 

 ――――心臓と思わしき鼓動を確認。魔術回路なし。

 ――――引き続き分析。聖遺物とも異なる異端技術(ブラックアート)による代物と思われます。

 ――――すごいな。まさにブラックボックス、いやダークマターというべきか?

 ――――魂を転写する器となるホムンクルスの準備完了。転写を実行しますか?

 ――――すぐに始めろ。宝箱の中から宝石を引きずり出せ。

 

 

 

 今回、オーパーツを回収・解析の指揮と管理を任せられた壮年の男性が細く微笑む。

 自分より歳の離れ、なんの力もない財団構成員とはわけが違い、彼は魔術師としての素質も兼ね備えていた。

 だからなのか、男性の瞳の奥底には財団の利益を考えるのではなく、己が魔術師としての探究心からなる野心が秘められている。請け負ったオーパーツには、人類が到達できないほどの莫大な神秘が眠っていると、魔術師としての勘が告げていた。

 部下達がオーパーツに眠る魂をアインツベルンの技術を模倣して製作されたホムンクルスを転写する所業を、緊張を抱きながら見つめる男性。

「!! 数値に変動あり!」

 PC画面を凝視しながら、部下の一人が焦燥と共に叫んだ。

 すると直後、オーパーツが一人でに振動を始めており、傍らで待機していた者たちが慌てて距離を取る。

 男性は部下に冷静に問いただす。

「なにごとだ?」

「原因不明!これ以上は何が起こるか……」

「仕方ない。一度、転写を中止…………!?」

 刹那的閃光と、鼓膜をつんざくような破裂音が財団の人間たちを襲った。

 男性はいち早く意識を覚醒させ、状況を把握しようと試みた。

「い、いったいなにが……」

 

 

 

「んっ……」

 

 

 

 男性は見た。用意した『少女』のホムンクルスが動いている。声を発している。

 一糸まとわぬ生まれたての赤子のように、床にぺたんと座り込み、腰まで届く長い白髪に隠れた両の瞳を動かし、周囲を見渡していた。

「おおっ!」

 驚きと嬉しさを合わせた感情に、男性は心躍らせた。成功だ。未知の存在を手中に収めた。そう確信した。

 呆然とする部下を押しのけて、男性は状況が把握出来ていないであろう少女を上から見下ろすように立った。

 

 

「やったぞ……これで私は「時計塔」にも匹敵するほどのっ」

 

 しかし……。

 

 

「五月蝿い」

 

 

「は?」

 そんな、短い言葉と共に、腕が突き出された。筋肉と骨と、最後に心臓をも突き破る。

 男性は、何が起きたのか理解することなく、財団Xとしても、魔術師としても名を残せぬままに生涯を閉じた……。

 

 

『マスカレイド!』

 

 

 そして、ゆらりと少女は立ち上がる。周囲の者達は、護身用のガイアメモリを起動し、マスカレイド・ドーパントへと変貌を遂げ「ソレ」を取り囲む。

「……なんだこの姿は?」

 少女…いや、少女の肉体を得た「ソレ」は、取り囲むマスカレイド達を気にも留めず、自らの変化に僅かながら戸惑う。

 10秒程度の沈黙の後に、「ソレ」は自分の身に起きたらしい事実を認識すると、邪悪な笑顔を浮かべた。

「はははっ。まさか再び、現世に黄泉還ってくることになろうとは!」

「ソレ」は声を上げて笑う。無垢な笑い方ではなかった。

 直後、空間が裂けた…………。

 

 

 

 

 

 

「しかし、この姿では以前のような力は出んな。原因は…この肉体のせいと……」

 久方ぶりに目覚めた瞬間にも感じた憎悪が、「ソレ」の思考を阻害する。かつて宇宙の覇者であり、数多くの惑星を暗黒に染め上げてきた生の中、ただ一つの、最初で最期の汚点があった。

 標的とした惑星「ポップスター」において、自分を負かした存在がいた。それを思い出し、沸騰しそうなほどの憎悪が胸を焦がす。

 しかし今、自分は復活を果たした。偶然ではあるが、これはチャンスだ。

 ピチャリ、ピチャリと、先程までそばにいた人間達が流した血の海の上を進み、破壊しつくされた研究所から、一歩外に出た。

 雲ひとつない空に、「ルナアタック」という事件以来欠けたままの月から光が降りている。光に照らされた少女の形の白い肌は、とても淫靡であると共に人としてあまりにも歪な雰囲気を宿していた。

 

 

 

「待っていろ。この私が必ず貴様を殺してやる……星の、カービィ!!」

 

 

 

「ソレ」の右の瞳だけが、血のように赤黒く染まっていた。

 




文才ないですがどうぞよろしくお願いします。
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