【HCS】 星のカービィ -DARKWARS-   作:黒廃者

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筆が乗る時は乗る気分屋です。


一蓮托生の絆、廻天の悪意

 夜を覆う深き『闇』―――太平洋の小さな無人島からもくもくと増殖したそれの中心に、ゼロは浮遊していた。

 ダークマター達の拠点とは、この人間達に手付かずの無人島であった。

 ゼロの頭と背には天使のようなリングと羽が途切れることなく邪悪なエネルギーを煮えたぎらせ今にも海に破壊と殺戮をもたらさんと揺れている。

 数時間前のような、不完全なものではない。人間達の恐怖と不安を含んだ『闇』を取り込んだことで、完璧に力を取り戻すまでに至った結果がこれだ。

 そして、ゼロの下の凄惨な光景も、その圧倒的なまでの力がもたらした事実であった。

 そもそもこの無人島はダークマターが根城として占拠するまで、深海棲艦と呼ばれる海の怪物達が利用していた。自分達以外の存在が島を占領することなど、認めるはずがない。だが、少女の姿をした支配者が力を取り戻した瞬間、深海の者達は後悔と共に沈まざる負えなかった。

 漆黒の海に広がる、青黒い血液……の無残な亡骸。

 本来、艦娘と呼ばれる希望と激闘するはずであろう深海棲艦。バグスターや眼魔同様、人類の脅威と認識される彼女達でさえも、ゼロは赤子の手をひねるように蹂躙してみせた。

「弱い……地球の”敵”というのはこれほどまでレベルが低いのか」

 残念がるようにゼロはため息をついた。

 これではリハビリにもならないと、落胆の意も含めて。

「なら、この先にいる艦は如何程ものもか……」

 何十キロも先を、ゼロは裸眼で視認できる。その眼には、艦娘達の拠点である鎮守府がしっかりと映っていた。

「夜の哨戒に出ている者が数隻……残りは呑気に眠っているのか。元はただの兵器のくせに、随分といい身分のようだ」

 途端にゼロの表情が笑顔で歪む。無論、悪意に満ちていた。

「少し脅かしてやろう」

 悪戯好きな子供のように言った瞬間、ゼロが放出した破壊光線は海を割りながら、鎮守府工廠に甚大な被害を生み出す……。

 爆音による衝撃で、艦娘が慌てふためきながら次々と外へ飛び出してくる。

 工廠は艦娘達の艤装を保管・整備を行う大切な施設……慌てない娘がどこにいるか。

 しかし黒のセーラー服とスカートという風貌の艦娘『吹雪』だけが、焼かれる工廠に目もくれず、ゼロを見ていた。正確には、ゼロの破壊光線が飛んできた方向。距離が距離だ、見えるはずがない。

「ははは!愉快だ!」

 ゼロは気が付かずひとしきり笑うと、島の中へと身を引いていく。

 そのことには気が付かずとも、吹雪は夜の『闇』を見据え、確信する。

 

 

「あの方向には、確か―――」

 

 

 この些細な幼心から放った一撃が、後に自分の命運を分けるきっかけになるなど、ゼロは思いもしなかった…………。

 

 

 

 

 

 

 その日の朝――――

 東京都区内の一角に、大きくて立派な寺がある。

 そこは『大天空寺』……先代住職、天空寺龍の時代よりゴーストハンターを生業とする者達が住まい、街で発生する不可思議現象を解決へと導き人々の平穏を守ってきた、それはそれはありがたいお寺なのである……。

 

 

「いったいどこにいってしまったんじゃ~!!」

 

 

 先程から寺の庭で頭を抱えうろうろしまくっている白髪の老人がいた。傍から見れば不審者極まりないその正体は眼魔世界「元」長官『イーディス』もとい『仙人』。寺の関係者たちからはもっぱらおっちゃんの愛称で親しまれている男だ。

「おっちゃん何やってるの?」

 すると、仙人の下に一人の高校生が駆け寄る。優しそうな顔立ちの高校生に気が付くと、仙人は途端に泣きついた。

「うおおおタケル!学校はどうした?」

 彼は現役高校生であり大天空寺跡取りのゴーストハンター―――仮面ライダーゴーストとして異世界の民、眼魔と死闘を繰り広げた男『天空寺タケル』。幾度となく殺されながらも仲間達の、人間の思いの力を糧に現世へ舞い戻ってきた奇跡の存在。

 仮面ライダーとしての使命を全うし、エグゼイドと共にゲノムプロジェクトの野望を打ち砕いた後、仲間達と共に再び日常を謳歌していた。

 タケルは仙人をなだめつつ居間へと連れて行き、話を聞く。

「深夜に鎮守府が謎の爆発起こしたの知ってるだろ。あれのせいで昨日から出てる『闇』のこともあって、都内全部の学校が急遽休みになったんだよ。それよりどうしたんだよおっちゃん、そんなに慌てて?」

「聞いてくれるかタケル。実は……わしが保管しておった完全自作の試作型眼魔眼魂三つを外出した時にうっかり紛失してしまったようなんじゃ!」

「あーはいはい、おっちゃんももう歳だもんね。物忘れが酷くなってきたんじゃない?部屋探し直してみたら?」

「誰が認知症じゃ!!馬鹿にするのも程々にせい!!!わしはまだまだ現役じゃー!!!」

「わわっ、悪かったから暴れないで!危ないよ!!」

「うっ!!?」

 鈍い音と共に、仙人が床に伏した。タケルは慌てて支える。

「だ、大丈夫おっちゃん!?」

「ぎ……ぎっくり腰じゃ」

「ほら言わんこっちゃない……」

 タケルは呆れながら仙人を寝室に連れて寝かせる。

「あとは俺が探しに行くから、おっちゃんは大人しく寝てて」

「す、すまんタケル。あとは、たの、む……ガクッ」

「いや、死んでないでしょ」

「テヘッ☆」

 鬱陶しい。ウザすぎる。殴りたいこの笑顔。

「冗談はこのくらいにして、とにかく頼んだぞ。あれは通常の眼魂に比べても強大なパワーを宿している。もし邪悪な意志を持った者達の手に渡っていれば大変なことになる」

 先程までとは打って変わって真面目な顔つきで語る仙人に、タケルは慌てて表情を取り繕う。

「うん、分かった。それじゃあ早速行ってくるよ」

 着替えを済ませ、英雄眼魂を懐にしまい込み、大天空寺を飛び出した。

 眼魂の事もそうだが、それ以上に、タケルにはまだ気がかりなことがある。

 東京上空を覆う『闇』だ。あれは依然都民に不安をもたらす、不可思議現象に他ならない。

 アカリや御成など、彼の仲間達は揃って出かけている為頼れない。仙人があの有様では、タケル独りで行動する他なかった。

 なくなった眼魔眼魂、上空の『闇』、狙われた鎮守府……今回も一筋縄ではいかなそうだ。

(イヤな予感がする。Dr.パックマンの時以上に危険な予感が……わっ!)

 その瞬間、体がぐらついた。考え事をしていたせいで足を踏み外したのだ。

 勢い余って躓きそうになる。

 だが、偶然通りかかった男性に支えられ事なきを得た。

「す、すみません!」

「いや、いいさ。気をつけろよ」

 男性は三十代くらいに見えるが、少年のような朗らかな笑顔で言う。

「はい!あ、俺急いでるんでこれで!」

 再び走り出すタケル。

 彼はまだ知らない。眼魂は既にダークマター一族の配下に利用されていることを。

 そして寺の出入り口ですれ違った男が、とある贋作使いであったことを……。

 

 

「彼が凛の言っていた、”ゴースト”か……」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、CRでは鎮守府工廠が破壊されたというニュースをドクター達が緊張を覚えながら黙々と朝食を口にしていた。

 カービィはいつもの調子で大量に用意されたフルーツや野菜を容赦なく吸い込んでいく。

「ねえ、永夢。これって……」

「多分ですけど、きっとゼロです。もう動き出したのか……」

 永夢の拳がわなわなと震える。

 これは見せしめだ。宣戦布告だ。

 先日、ゼロと名乗った少女は恐ろしい力を宿していた。その一端を垣間見た自分だからこそ、この破壊活動の根源にあるあいつの意志を読み取ることができる。

 明日那も何となくは察していたようで、表情を恐怖で歪ませる。

 敵はいつでも、世界を滅ぼす準備は出来ていると言わんばかりの行為に、永夢は黙っていられない。

「行かなくちゃ……今すぐにでもあいつを止めないと!!」

「ちょっと、行くって何処に!?衛生省から対応策の通達も届いてないし、なにより居場所だって分かってないんだよ!?」

「それでも!このままダークマターを放っておくことなんて出来ませんよ!!また市民に被害が出るかもしれないんですよ!?今動かなくちゃ!!」

「永夢!!!」

 明日那の制止を振り切り、彼はCRを飛び出してしまった。

 その後を、カービィはフルーツを口に詰め込みながら慌てて追いかけていく……。

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと……すみません、ちょっとわかんないです」

「そっか。ごめんね呼び止めて」

「いえいえ!それより大丈夫でした?結構な勢いだったと思うんですけど」

「ああうん。大丈夫。いつものことだから」

「私もおっちょこちょいなんでよくやりますよ……気をつけてくださいね」

 そう言って、少女は永夢の下を離れていった。

 少女が見えなくなった頃、大きなため息をつく。

 立ち往生は目に見えていた。何の手がかりも手中にない現状、永夢に出来ることと言えば、途方に暮れることだけだ。

「はあ……何やってるんだろ僕は」

 街中を散々駆け回って、得られた成果は一つとしてない。疲れ果てた永夢は片隅に座り込んで頭を冷やしていた。

 気持ちばかり逸って明日那の言葉に耳を傾けなかった自分のせい。それは分かっている。けれど、心が待つことを拒んでいた。

(こんな時、タケル君や先輩の仮面ライダーならどうしたのかな……)

 ゴースト、ドライブ、鎧武、ウィザード――――”平成ジェネレーションズ”として語り継がれるあの戦いを思い出す。

 宝生永夢は仮面ライダーとなってまだ三ヶ月と経っていない。言ってしまえば、未熟な戦士だ。

 故に弱音を吐きそうになることも少なくない。

 その時、目の前から真っ赤なトマトが差し出された。

 不思議に思って前を向くと……。

「カービィ!」

「!」

 カービィがいた。自分を追いかけてきたらしい。

 再びトマトを差し出してくる。

「くれるの?」

「!」

 微笑むカービィ。どうやら、彼なりの励ましのつもりらしかった。

 カービィにまで気を使わせてしまうとは……反省する永夢。

「心配させちゃったかな。ごめんね。僕は人の命を救うドクターなのに……」

 謝罪すると、カービィふるふると体を横に振った。

 永夢は思い出す。自分には、仲間がいたことを。

 実を言うと、怖かったのだ。ゼロという強大な敵の出現が。先日の邂逅を思い出すだけでも肌が震える程の敵意が。そのせいで焦ってしまった……。

 でも、もうそんなことはない。彼の隣には、カービィがいる。明日那がいる。ドクター達も思いは異なれど、目的は同じはずだ。

 永夢はトマトを受け取る。励ましの想いが詰まったトマトだ。

「ありがとうカービィ」

 永夢は精一杯の笑顔で感謝の念を送る。

 

 

 カービィは思う。感謝しなければならないのはむしろ、自分の方だと。

 彼は訳も分からないまま地球に飛ばされた。しかし永夢は、優しく彼を受け入れてくれた。美味しい食べ物があることを教えてくれた。そのことに感謝しないわけがない。

 言葉は全然わからない。容易に意志は伝わない。けれど……。

 二人の絆は、言葉などなくとも紡ぐことができる。

 昨夜と同じように、永夢は手を差し出した。

「一緒に戦おう」

 

 

 

「仲睦まじいことだな、カービィ、エグゼイド」

 

 

 

 より強固な絆で結ばれた二人の前に、悪意が現れる。

 




次回から戦闘開始です。結構重要な部分なので、感想や指摘待ってます。
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