勢いで書く艦これ2次SS   作:東雲楓

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ちょっとした、舞台設定を交えつつ。
喫煙する艦娘が出てきますので、ご注意ください。


【川内】夜の煙

「鳳翔さん、なんかいいことでもあった?」

 

私がそう聞くと、鳳翔さんはいい笑顔でなんでもありませんよ、と言った。

その顔で言われても説得力ないんだけどなぁなんて思いながらも、それ以上の詮索はやめて、私は店を出た。

見上げた雲一つない夜空には、まんまるという言葉がふさわしい位の満月がある。

 

「夜はいいよねぇ、夜はさ」

 

私こと川内は、夜が好きだ。

まぁ、川内型1番艦という艦の戦いの記憶がそうさせている…というのもあるが、それ以外にも理由がある。

全ての生命が眠りについたと感じられる静寂。

その静寂を優しく包み込む月の光。

子守歌のような、静かな波の音。

そういったモノが、私の心に何とも言えない安らぎを与えてくれる。

闇が与えるそれに、存分に浸りたいという欲求が、私を夜という場所に縫い付けているのだ。

 

ゆっくりと、歩く。

多分提督が久しぶりに来たんだろう気分の良さを滲みだしている鳳翔さんの店から少し歩けば、鎮守府が見える。

一か所だけ明かりのついている部屋は、やはり執務室だった。

その明かりのついている部屋をじぃ、と見つめて、ため息を吐き反対方向に視線をずらす。

月明かりに反射され、輝く海が見える。

この鎮守府の執務室からは、海が良く見える。

過去、建物を再建する際に提督が出した要望の一つ、らしい。

私はその場に腰を下ろして、胡坐をかき、夜偵を取り出してそれを放った。仕事の一つの夜間警戒だ。

つぃ、と風に乗るように飛んでいく夜偵を見送りながら、懐から煙草を取り出し、一本を口にくわえ火をつける。

先端が燃える音に合わせて肺に煙を入れて吐き出し、ぼぅと空を見上げ、また視線を海に戻す。

 

「しかし、提督のあれはどうにかならないものかなぁ」

 

この鎮守府の提督は、なんというか働き過ぎるきらいがあった。

私ですらもうそろそろ寝ようかな、と思う時間でも何かしている。

一度その理由を妹の神通――私より先に着任していた――に聞いたところ、妹は悲しげな表情でこう言ったのだ。

 

『彼は、提督は、苦しんでいるんです』

 

と。

曰く、提督はここパラオの制海権確保のために一番最初に送られた提督のうちの一人らしい。

フィリピン周辺の制海権確保がある程度完了し、そこで資源が採掘されたことで、調子に乗った軍の強行作戦。

だが、人手も何もかも足りない状態で行われたそれは、新兵には過酷だった。

制海権が敵に奪われたままの状態、連日連夜の戦闘、足りない資源、足りない戦力。

昼も夜も砲撃音、爆発音、気を抜けばここまで敵が押し寄せてきて、死ぬ。

そんな中に初期艦として白露型の2番艦と一緒に放り込まれた提督は文字通りの地獄の日々を送ったという、話だ。

 

『私は、最初に建造されて。でもその後は、建造すら出来ないぐらいで。補給がままならなくても、疲れていても、敵は来て。そんな中でもあの人は、私と時雨を沈ませずにここに帰してくれて。いつも、懺悔するように、すまない、すまない、と言ってくれて。いつ死ぬかわからない精神状態の中、夜も眠れないのに、あの人は、それでも私たちを気遣ってくれた』

 

いつになく、饒舌に話す妹。

あの時の会話は、もう頭から離れない。

 

『私が、もっと強ければ。安心して彼を休ませることができたのに、それができなくて、結果彼をあんな風にしてしまった。私の未熟が、彼を苦しめているんです。守らないと…今度こそ、遅くなったけど、私が、彼を、守らないといけないんです』

 

――じゃないと、私が、私を許せなくなるから。

 

最後に聞こえたそれを、私は聞こえないふりをして、あの時はそこで会話は終わった。

正直、怖かった。目の前の妹が、変なモノに憑りつかれているような感じがして。

思い出して、身震いした。いつの間にか根元まで来ていた灰がぽろりと落ちた。

 

「どうした、川内」

 

そして後ろからかけられた声で、心臓が止まりかけた。

 

//---

 

「どうした、川内」

 

外の空気を吸いに行くついでに一服しようと外に出ると、海をぼぅと眺める川内がいた。

いつもならすぐ気づくはずなのに気づかないから、深く考え事をしているのだろうとあたりをつけていると、急に身震いしたものだから声をかけた。

 

「急に、話しかけないでよ。びっくりするじゃん」

 

川内は一瞬硬直して、じっとりとした視線を向けるとそんな事を言ってきた。

まぁ、こちらに非があるのだろう。すまん、と一言謝って隣に座る。そして懐から煙草を出して一本を口にくわえ、火をつけていると、川内も新しく煙草に火をつけていた。

 

川内とは、もう1年と半分ほどの付き合いになる。

鳳翔とはほぼ同時期だが、別口での配属だったので、便宜上川内が第一補充、鳳翔が第二補充となっている。

そういう事もあって、鳳翔の店を一番に利用しているのはもっぱらこの川内だという話だ。

 

「で、何があった」

 

煙を吐きながら、問いかける。それに川内は少しだけ目を細めて、なんでもないと返した。

何かあるだろうに、そう言われたらこれ以上は詮索できない。諦めて海を見ながら肺に煙を入れた。

 

//---

 

なんでもない。彼の問いにそう返すと彼はそれ以上は何も言わず、海を眺めたままタバコを吸い始めた。

それに倣って私も海を見ながら、肺に煙を入れる。

最初は不味いと思ってたが、今ではそう感じないぐらいに、喫煙という行為に慣れていた。

 

私が煙草を吸い始めたきっかけは、隣にいる彼だ。

彼が、偶に夜吸っているのを見て真似をしているうちに、本格的に喫煙者の道に足を突っ込んだ。

それからは、ごくごく稀に一緒に煙草をするようになった。まぁ、お気に入りの時間だ。

夜、私の好きな夜の時間に、静けさに抱かれながら一緒に煙草を吸う。そんなほんの数分が、今の私のお気に入り。

 

かといって、恋愛感情があるわけでは……たぶんない。

良くてもものすごく仲の良い友達感覚だろう。鳳翔さんには勝てないし。

というか、鳳翔さんは最古参四天王をライバル視しているけれど、あの四人はどうも"提督に引け目を感じている"からそういう意味では今のところぶっちぎりで鳳翔さんリードなのだけど。まぁ、好感度の振り切れ具合では四天王に軍配は上がる。

私としては、妹を応援したいなぁ――と思っていると、プロペラ音が聞こえる。夜偵が返ってきた。

ざぁ、と小さな飛沫を上げて水面に着水した夜偵を回収して、提督に別れを告げる。

提督も吸い終わったのか、立ち上がって屋内へ歩を進めている。

 

「まったく、一言ぐらい声かけてくれてもいいのに」

 

そう呟いたら、軽く手を振ってくれた。思わず頬が緩む。

たったこれぐらいのことなのに妙にうれしくなるのだから、私も随分安い女だ。




最古参:四天王。好感度カンスト、でも色々とあって奥手+病み気味
第一次・第二次補充組:川内、鳳翔。ここが一番良い意味の恋愛してる

故に、現在のヒロインは鳳翔さん。さすがはダークホース妻。
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