女子力は、神をも屠る物理破壊力   作:麻婆牛乳

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特に前書きで書きたい物等が有るわけでは無いのですが、私はお寿司が大好きです




始まり、旅立ちはいつだって

 

 

 

エレナは貧困の最中命からがらこの世界を生き延びてきた。

 

両親を失ったのは10歳の時、それも目の前で〈アラガミ〉に捕食されたのである。

 

その時点で生き延びられたのは良かったものの、完全にフェンリルの配給のみでの生活を送ってきたのである。

 

それでも同じ様な境遇の者達と励まし合い、職を持つ者の手伝いをし、廃品等を拾い集めて金銭を得たりしていた。

 

それが今ではどうだろうか。

 

 

 

 

 

 

「オレンジジュースで宜しいですか?」

 

「あっはい」

 

 

 

 

飛行機に乗せられ、まるでいい所のお嬢様の様に扱われているではないか。

 

人生とはどう転ぶか分からない物である。

 

 

 

「ケッ、ガキが……良い身分じゃあないかよ」

 

 

 

隣から陰口が聞こえるが、自分自身の状況を鑑みれば至極当然の評価である事位は理解していた。

 

乗客はこの男性しか居ないプライベート機だったのだが、エレナを乗せる為だけに出発を遅らせていた様なのだ。

 

 

 

「いやホントごめんなさい、こんな事になるなんてアタシも思ってもいなかったんです」

 

「フン、立場を弁えているならいいさ……」

 

 

 

軽い愛想笑いをしながら男性の方を向くエレナ。

 

スーツを着こなした男性は葉巻をふかしながら考え事をしているようだった。

 

その葉巻のラベルは白く、金色の文字が目を引く父も吸っていた物と同じ物であり━━

 

 

 

「ダビドフ……」

 

 

 

 

思わず、その銘柄を口に出していた。

 

男性は相当驚いた様な表情をエレナに見せた。

 

 

 

「そのトシで葉巻が分かるのか?」

 

「父が……吸っていたんです」

 

 

 

そこからの会話はよく弾んだ。

 

男性はフェンリルに出資しているとある財閥の創設者であり、今乗っている飛行機も彼の私物である事。

 

たまたま極東に用事があり、飛行機を出そうとした時に極東支部からエレナをついでに乗せるよう依頼があった事。

 

後は大体彼の軌跡ばかり聞かされたが、エレナは機嫌を損ねない様気を付けて相打ちを入れたりした。

 

そして、最後にエレナがどうしてこの飛行機に乗せられたのかを根掘り葉掘り聞かれた。

 

 

 

「自分でも分かってないのか?」

 

「そうなの、その件も含めて極東支部に異動になったんだけど……」

 

「そりゃあ心配なのは分かるがな……」

 

 

 

初対面の印象の悪さは何処へやら、男性は親密に相談に乗ってくれた。

 

父が葉巻を吸っていた、というだけでこの関係が築けたのだから感謝してもしきれない。

 

と、添乗員の女性が声を掛けてきた。

 

 

 

「あと5分程で到着となります」

 

「おう、もうそんな時間か」

 

 

 

随分と上機嫌になった男性は懐に手を入れ、財布とチューブの様な物を取り出したかと思えば、財布から2枚の紙幣を抜き取りチューブと共にエレナに差し出した。

 

 

 

「あんな態度をとって悪かったな、お詫びと餞別にコレを持っていけ」

 

 

 

半ば強引に押し付けられたのは高額紙幣のフェンリルクレジットを2枚とチューブに入った葉巻だった。

 

流石に悪いと言おうとしたエレナを遮り、男性は語り出した。

 

 

 

「お前のお陰で手を出すプロジェクトに目処が立ったよ……そしてその葉巻はこの縁の架け橋となったモノだ、お守りに持っておけ」

 

「しかし、コレは結構な額ですけど……」

 

「ハッハッハッ!なあにそんなモン、減った内に入らんよ!」

 

 

 

豪快に笑った男性は立ち上がり、壁面に掛けてあった外套を羽織りながらエレナに問うた。

 

 

 

「最後だ、名前を教えてくれ」

 

「……エレナ、エレナ・コルテーゼです」

 

親切(コルテーゼ)か、さぞや良い家庭に恵まれていたのだろうな」

 

 

 

くくっ、と男性はのどを鳴らして立ち去って行く。

 

エレナは急いで立ち上がり、深々と頭を下げた。

 

 

 

「ありがとうございました!!!」

 

「ああ、君の将来に祝福あれ!!!」

 

 

 

 

 

2人はこれから出会う事も無いのだろう。

 

しかし、清々しい気持ちで2人は別れる事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……」

 

 

 

その清々しさも、外に出た時にはもう無くなっていた。

 

土砂降りの雨は5m先の視界まで遮り、どうにも陰鬱な気持ちでいっぱいになる。

 

どうにかこうにか、飛行場のエントランスまで辿り着いた時には全身が雨で濡れてしまっていた。

 

エントランスを見渡してみると、黒い戦闘服のような物を着た男性が近寄って来た。

 

 

 

「あー……日本語、わかる?」

 

 

 

 

この声の掛け方からして、この男性が迎えの人物なのだろう。

 

久し振りに聞いた日本語に、エレナは答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「話せるで、貴方が迎えの人なん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性はゼラチンの分量を間違えたゼリーの様に固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、またもやエレナは空の上に居た。

 

それもその筈、今度はヘリコプターで移動しているからであった。

 

 

 

「しっかし驚いたぜ嬢ちゃん!日本語を話せるどころか関西弁混じりとはねぇ!」

 

「母さんが関西人やったからなー、自然とこうなったんよー」

 

 

 

雨は未だに収まる気配は無く視界も最悪なままだが、ヘリコプターは何の問題も無く飛んでいた。

 

パイロットの腕が良いのか、搭載している機器が高性能なのか。

 

 

 

「そうそう、俺の名は笠原敦〈かさはらあつし〉だ……これからも会う事になるかも知れねぇから宜しくな!アンタの事は聞いてるぜエレナちゃん!」

 

「その割にアタシが日本語話せる事は聞いてなかったんやな」

 

「ハハハッ!聞くの忘れてたんだよ!」

 

 

 

非常に抜けた人だが、この人とは良い友達になれそうだな……などとぼんやり考えていた。

 

と、何やらパイロットに通信が入ったようだ。

 

 

 

「こちらホーネット……はい了解、1名……彼ね、了解!エレナちゃん、ちょっと寄り道するよ!」

 

 

 

瞬間、ヘリコプターが大きく傾き進路を変えた。

 

どうやら誰かを回収に向かう様だ。

 

 

 

「極東支部はちーとばかり個性的な面々が多いが腕は確かだ!今の内に良い印象を持たせておけば良い事あるかもよ!」

 

「アツシもかなり個性的やと思うよ?」

 

「ハッハハ!嬉しい事言ってくれるね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、確かにこの人は個性的だ。

 

睨まれてる、さっき回収されて正面に座ってる人にめっちゃ睨まれてる

 

 

 

「……おいホーネット、コイツは誰だ?」

 

「ちーとばかし前に回収を頼まれた子だ!ほら、自己紹介してやんな!」

 

 

 

突然の振りに戸惑うエレナ。

 

正面に居る男性は成人して間もない程の年齢だろうか、中々にガッシリとした体に浅黒い肌をしており、青いフード付きのコートを羽織っていた。

 

 

 

「あ、アタシはエレナ・コルテーゼです、本日付でイタリア支部から極東支部に転属になりました……よ、宜しくお願いします」

 

 

 

エレナは気圧されながらも一通りの自己紹介を終えたが、その男性の眉間にはシワが増えるばかりであった。

 

 

 

「その年齢で腕輪も無しに転属だと……?」

 

 

 

尤もな疑問であった。

 

エレナは体つきも中身も年相応な14歳であり、ゴッドイーターとして働いている証拠の腕輪は無く、かといってスタッフとして働くには若すぎるのである。

 

 

 

「隠し事をしても無駄だ、全部話せ」

 

「おいおいソーマ君、そんなに問い詰めなくてもいいじゃないか」

 

「黙れ」

 

 

 

エレナを睨む男性、ソーマはピシャリと敦に言い放った。

 

対するエレナはあれやこれやと色々考えては睨むソーマからどう逃れようと必死に言葉を出そうと悩み、絞り出す様に一言だけ発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシにもよくわからないんや……」

 

 

 

 

 

 

 

ソーマはそんなあやふやな言葉に耳を貸しつつ、エレナの顔を睨み続けた。

 

エレナは泣きそうになりながら、何もかも諦めた表情でソーマからの返答を待った。

 

 

 

 

 

「そうか」

 

 

 

 

ソーマから出た言葉はそれだけだった。

 

エレナの答えに満足したのかは分からないが、ソーマはもうエレナを睨むことは無く、目を閉じて背を壁に預けた。

 

その様子を見たエレナは助かったと言わんばかりに天を仰ぎ、大きく深呼吸を繰り返した。

 

 

 

 

「大目に見てやってくれエレナちゃん、ソーマは昔っからこんな調子でよぉ!」

 

「黙れと言った筈だホーネット」

 

「そいつぁ無理な話だ!黙って操縦してられないタチだというのは知ってるだろう!」

 

 

 

フン、と鼻を鳴らしてソーマはそこから黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいお二人さん、そろそろ到着だぜ!」

 

 

 

精神を削るような問答を繰り返してからどれ程経ったのだろう。

 

外に顔を向けたエレナの目に飛び込んできたのはイタリア支部よりも数段大きな防護壁に囲まれた無数の建物だった。

 

 

 

「ようこそ極東支部へ!此処がエレナちゃんがコレから生活する場所さ!」

 

「わぁ……すっごくおっきい……」

 

「ん?今の台詞……ちょっと恥ずかしそうにもう一回言ってみてくれない?」

 

 

 

エレナは敦の頭を思い切りはたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリコプターが着陸するや否や、ソーマは手に神機を携え早々に地上に降り立った。

 

エレナもそこまで多くもない手荷物をまとめ、ヘリコプターから降りた。

 

 

 

「じゃーなエレナちゃん!俺は燃料補給が終わり次第直ぐに行かなきゃならんからここでお別れだ!」

 

「なんや、えらい忙しいんやね」

 

「ヘリの輸送はゴッドイーター達にとっての生命線だからな……そこでソーマ君、1つ頼まれてくれないか?」

 

「……あぁ?」

 

 

 

鬱陶しげに振り返るソーマをよそに、敦は手を合わせて言った。

 

 

 

「頼む、エレナちゃんを博士の所へ連れて行って欲しいんだ……どうせこれから向かうんだろう?」

 

 

 

頭を下げて頼み込む敦。

 

ソーマは特に顔色を変えず━━

 

 

 

「着いてこい」

 

 

 

とだけエレナに言い、極東支部内へ入っていった。

 

顔を上げて申し訳なさそうに手を振る敦に頭を下げ、エレナはソーマを小走りで追い掛けた。

 

 

 

雨は未だ衰える事無く、まるで雨雲もエレナに着いてきたかの様に極東を濡らした。

 

 

 

 

 

 

 




 

ちなみにエレナがイタリア支部で嫌われていた理由は、父親のテオが家族を優先し過ぎて仕事を他人に押し付ける事が多かったからです。


 


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