閲覧数の伸びがおかしいと思い、確認してみた所日間ランキング6位に浮上していました……
誠に有難う御座います、閲覧して頂いた皆様のお陰で御座います。
「ヒバ」
「駄目です」
「まだなんも言ってないやん!」
次の日、あたしはミッションカウンターをバンッと叩いて怒っていた。
横暴だ、働く権利を返せ!
「休みたいと言う人は山ほど居ましたが、流石に働きたいという人は初めて見ました……」
「いやいや大げさな……」
「本気で言ってますか?」
本気も本気、大マジである。
部屋に居たって何にも無いし、どうやって過ごせば良いのか……
「逆に、任務以外で何か仕事とか無いん?」
「何処までも働く気ですか……やるべき事ならいくつかあると思いますよ」
「やるべき事?」
首を傾げてみるが、イマイチ浮かばない。
「外部居住区を見て回ったり、神機整備の進捗確認とか、それとアリサさんの様子を見たりとか」
「……え?アリサさんどうかしたの?」
「病室に居るはずですが……誰にも聞いていなかったんですか?」
その声を聞いて、エレベーターに滑り込んだ。
聞いていない、アリサさんが病室に運ばれていたなんて知らなかった。
「いやぁ、いやあ!離してよ!」
「………………」
アリサさんの声は廊下にまで響いていた。
中はとてもドタバタしている様で、入室するのを躊躇ってしまう。
「なんだ、お前か」
「え?」
振り返るとツバキさんが立っていた。
「一昨日の任務後からこの調子でな、薬が切れては暴れて、また投与されて眠るの繰り返しだ……暫くは入らない方がいいぞ」
「怪我は……大丈夫なんですか?」
「ああ、擦り傷すら負ってはいない。お前以外に負傷者は居なかったよ」
「よかったぁ……」
大きく息を吐き出して安堵する。
でも、この状態では話すことは出来ないな……
「それよりもお前の怪我は大丈夫なのか?ある程度はペイラー博士から聞いてはいるが」
「ええ、もう任務にも……任務行きたいな……」
「ど、どうした?」
昨日と今日の出来事をツバキさんに説明すると、これまた難しそうな顔をする。
「上官としては喜ばしい事だが……」
「ですよね、そうですよね?」
「いや駄目だ、他の奴等の言う通り休むべきだ」
がっくりと肩を落とす。
ツバキさんに許可が貰えれば行けるかもと思ったが、現実は中々どうして厳しい。
「……神機見てきます……」
「そう気を落とすな、お前は何も悪い事をしている訳じゃあ無いんだから」
はい、と小さく呟いてエレベーターに乗る。
1週間……長いなぁ……
「あれ?いらっしゃい!」
「やっほー」
そのままの足で神機の整備室に来てみると、リッカが出迎えてくれた。
手招きするリッカの所に向かってみると、なんとも残念な姿になったあたしの神機があった。
「いやー最高記録だね、ハンマー自体に亀裂が入るわ銃口は高熱で融解してるわ……おまけに装甲も半分無くなってるし」
「我ながらやり過ぎやよなぁ……」
「ホント、逆にどうやったらここまでなるのか教えて欲しい位だよ」
「すんまへん」
おでこをペッタリと床に擦り付けて土下座。
しかしリッカは大笑いする。
「言ったでしょ怒ってないって、幸い集めてきてくれた素材も山ほどあるから思い切って大幅な改修しちゃうからね」
「お願い……あ、ちょっと神機持っても良い?」
「え?別に良いけど……」
ボロボロになった神機を持ち上げる。
結局、神機がこんな状態では出撃は無理だっただろう……整備の為の休みとでも思っておこう。
試しに目を閉じて集中し頭の中を真っ白にしてみるが、何も起こらない。
「やっぱ駄目かぁ……」
「何してるの?」
「神機と会話が出来たからまたやってみたかったんやけど……出来んなぁ」
「神機と会話……?」
不思議そうに神機を見つめるリッカ。
「神機は言ってしまえば人工のアラガミだから、意志を持っていても不思議では無いよ。流石に私も会話なんてしたことは無いけどね」
「へぇ……珍しい体験やったんやな」
「で、で、どんな感じだったの?」
リッカは目を輝かせていた。
取り敢えず覚えている事を話そう。
「まず人の形をしてて」
「うんうん」
「全身真っ赤っかで」
「うん……?」
「身長は3m位で」
「うん??」
「悪魔っぽかった」
「正真正銘の悪魔だよね?」
実際に会ったのがあたししか居ない為、証明出来る物が何も無い。
「それじゃ、神機を改修する上で何かやって欲しい事とかあるかな?ここを重点的にやって欲しいとか、ある程度の要望なら受けられるよ」
「ふーむ」
正直リッカの整備には満足しているので要望らしい物は何も無い、口元に手を持ってきて考える。
「……色を赤くするとか?」
「おっけー、要望は無いって事ね?」
「無視かいな」
冗談冗談とクスクス笑うリッカ。
「カラーリングだけ変更して後は予定通りの改修をしておくよ、暫く掛かるからねー」
「お願いなー」
リッカは隣の部屋に入ってガサゴソし始めた、恐らく素材を取りに行ったのだろう。
あたしは部屋を出る前に、神機に手を置いた。
「ありがとね、『ロッソ』」
今度は外出してみた。
うーん、ヘリからは何度も見ていたけど実際に立ってみると全然違うものだなと実感する。
少なくとも、イタリア支部の居住区よりも人が明らかに多く活気がある。
「よぉゴッドイーターの嬢ちゃん、新入りか?」
「んー、3ヶ月位前に入ったから新入りかな?」
「それなりに居たんだな、頑張ってくれよ!」
知らない人にも気さくに声を掛けられる。
フェンリルに良いイメージを持っている人は少ないだろうと思っていたけど、杞憂だったかな。
「いらっしゃい!新鮮な野菜入ってるよ!」
「クロワッサンが焼き上がりました!どうぞ見ていって下さいねー!」
凄い、食料品のマーケットまである……イタリアでは支給品の缶詰のみでしか食料品は手に入らなかったのに、進歩しているんだなあ。
「おい、あれエレナじゃね?」
「ほんとだ、珍しいね」
ゴッドイーターの人も居る、休暇を使ってこういう所で休息を取っているのか。
何もしないのも不自然なので会釈しておく。
「あら?ゴッドイーターの方ね?」
「あ、はい。見ていっても良いですか?」
「どうぞどうぞ、ゴッドイーターの人は結構お金を使ってくれるから助かるのよぉ」
成程、イタリア支部に比べると極東支部は圧倒的にゴッドイーターの数が多いからこういうお店が栄えるのか……
パン屋さんに入ってみると、出来たてのパンが良い香りをさせて食欲を刺激する。そういえば、今日は朝食を摂っていなかったな。
「クロワッサン2つ下さいなー」
「はーい、すぐ食べる?」
「うん、朝ごはんにします」
紙に包まれたクロワッサンが2つ、食べやすい様に工夫されて渡された。
代金を払い、店を出る。
「有難う御座いました!また来てね!」
「ありがとー」
パン屋のお姉さんは屈んで手を振っている。
あたし、そんなにちっちゃいかな……?
出来たてのクロワッサンを囓りながらトコトコと歩くこと数分、今度は居住区に入った。
流石に人通りは少ないが、それでも話し声は結構聞こえてくる。
「あれ?お姉ちゃんだあれ?」
「ん?」
後ろから声を掛けられて振り向いてみると、小さな男の子が居た。
「やあ、お姉さんはゴッドイーターやよー」
「ごっどいーたー?」
まだまだ小さな子供だ、ゴッドイーターの事も知らないのだろう。
「うーん、なんて説明すれば……」
「お姉ちゃん何持ってるの?」
「ああこれ?クロワッサンやけど……」
元々あまり大きくないクロワッサンだ、この子にあげてもいいだろう。
「食べてみる?」
「え?それ食べられるの?」
「うん、パリパリして美味しいで」
男の子はクロワッサンに齧りつく、そして咀嚼した後目を輝かせた。
「おいしー!?」
「でしょ?」
中々気持ちの良い食べっぷりだ、あげた甲斐があったというものである。
「親は居るのかな?」
「うん!お母さんは家に居るしお父さんはあっちで新しい家を建ててるよ!」
「そっか」
親が居るというのはいい事だ、男の子の頭を撫でながら言う。
「お父さんもお母さんも、大事にしてね」
「うん!」
男の子の笑顔に釣られてこちらも微笑む。
と、女性が走ってきた。
「ケンジ!また人に迷惑を掛けて……」
「ああ大丈夫ですよ、元気な子ですね」
恐らくこの子の母親だ、少し髪が乱れているがうっすらと化粧をしている。
「あら?貴女はゴッドイーター?」
「はい、とはいっても今は任務が受けられないので休暇中ですが」
「そうだったの……若いのに頑張っているのね」
「ウフフ、皆を守るのが夢でしたから」
「おかーさん!くろわっさんっていう食べ物貰ったよ!とっても美味しかった!」
「もう、この子ったら……」
困ったように、だけど幸せそうに苦笑いする。
ああ、あたしは素晴らしい物を守ってきたんだ。
「それでは、あたしはこれで」
「この子の相手をしてくれて有難うね」
「またね!ごっどいーたーのお姉ちゃん!」
ブンブンと手を振る男の子に手を振って返す。
幸せな気持ちと誇りを胸いっぱいに、あたしは居住区を離れていった。
「おーい、釘を追加で持ってきてくれー!」
「トタンが足りないな……誰か補充してきてくれないかー!」
数分間歩くと、今度は建設現場にやってきた。
男の人達が忙しそうに家を建てている。
と……
「あた、あたたた……」
男性の1人が材木の近くでうずくまっているのを見つけ、思わず駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「こ、腰が……」
「ん!?どうしたおやっさん!!」
他の男性が何人も駆け寄ってくる。
「多分、急性腰痛症かと……」
「あーあ、材木運びなんて若い衆にやらせれば良かったのに無茶するから……」
「うるさいわい!あた、あたたた……」
「おーい、誰か担架を持ってきてくれ!」
おじさんは担架で運ばれていった。
人数が減り、更に忙しくなっていく建設現場。
「次の材木持ってきてくれー!」
「無理だ、手が離せん!」
「こっちもだ!」
これは相当逼迫している様だ……ならば━━
「これでいいですかー!?」
「うお!?」
目の前に材木を持ってくる。
流石に、困っている人を見過ごす事は出来ない。
「よく持てたな嬢ちゃん、助かったぜ!」
「力仕事があったらあたしに言ってください、手伝いますのでー!」
そこから数時間、あたしは建設を手伝い続けた。
木材運びや鉄筋運び、セメント混ぜやらコールタールの詰まったドラム缶運び等を手伝い続け、驚異的な速度で簡易的な家屋が完成した。
後に建設業者達の間で、『怪力ロリ天使』というとっても微妙な呼称で呼ばれる事となった……