ソーマの性格が丸いのはエリック及びリンドウが無事である所が大きいです。
更にここまで甘いのは、死亡フラグをエレナが正面からぶち破っているのを見ているからです。
あれから数分後、あたしは放心状態のまま自室のベッドに座っていた。
あの後も博士は話を続けていたけど、全く頭に入ってこなかった……
「………………」
包帯を外した左手をじっと見つめる。
もう成長せず、アラガミになってしまった体━━あたしはもはや、人間ではない。
ロッソに治して貰った体の代償は、決して小さな物ではなかった。
「おい」
「……え?」
目の前にはいつの間にかソーマが居た。
いつ入ってきたのか、全然気が付かなかった。
「アカンよソーマ近付いちゃ……あたしの体、気持ち悪いでしょ……?」
「……ハァ……」
ソーマは溜息をつき、近付いてきた。
「知らんな、お前はお前だ」
「………………」
あたしは俯き、両手を握り締める。
体を震わせ、喉から絞り出す様に声を出す。
「なんで……?ソーマはなんであたしなんかの為に優しくしてくれるの……?」
出てきたのは殆ど涙声だった。
弱音を吐かないように歯を食いしばり、顔を上げてソーマの目を見つめる。
「……お前は、俺と同じだからだ」
「……おなじ?」
ソーマはあたしの隣に座った。
「俺は生まれついての化け物だ……それも実験によって生まれた、な」
「実験……?」
「そのフザけた実験でP73……特殊な偏食因子を埋め込まれた俺が生まれ、母は死んでしまった」
これには流石に驚いた、あたしと違ってソーマは産まれた時から体が普通ではなかった。
そしてそれ以上に、ソーマが自分の事を語るとは思ってもいなかったのだ。
「俺は偏食因子を生成しているから腕輪も本当は必要が無い、正真正銘の化け物だ」
「そんな事、ない……ソーマは優しい人やよ!」
「……優しい、か」
ソーマは鼻を鳴らして笑った。
「そう思うならお前の方が人らしい。見た目がなんだ、成長しないからどうした、他の奴等の為に身を粉にして助け回っているお前は人間じゃないと本当に言えるのか?」
「あ━━」
左手を握られる。
暖かい……ソーマの体温が伝わってくる。
「俺が保証してやる、お前は立派な人間だ」
「━━━━」
涙が頬を伝う、右手で拭うが後から後から止まらずに流れ出てくる。
「ごめん━━止まらない、止まんないよぉ……」
「……手の掛かる奴だ」
そっと胸元に頭を抱き寄せられる。
もう、限界だった。
「うわあああああああああああんっ!!!」
「……落ち着いたか?」
「……うん……」
ひとしきり大泣きした後、大分落ち着いたあたしはまだソーマに抱き寄せられていた。
とても落ち着く、ソーマには申し訳ないが。
「ねえソーマ、お願いがあるんやけど……」
「……何だ」
泣き腫らした目をソーマに向ける。
「今日……一緒に寝て欲しい……」
「………………」
凄く困った顔をしている……視線を泳がせ、髪を搔きながら思案している。
「ダメ……かな……?」
上目遣いで聞いてみると、ソーマは溜息をついて観念した様に言った。
「寝てる間に押し潰すんじゃねぇぞ」
「……ありがと……」
ソーマに抱き寄せられたままベッドに横になる。
「……さっき言った事、言いふらすなよ」
「うん……」
凄く恥ずかしくてソーマの顔を見れない、大きく包容力のある胸に顔を埋める。
しかし久し振りの人肌はとても心地良く、泣き疲れた事もあり直ぐに意識が落ちていった……
「君達、そこまで行っていたのかい?」
「黙れ」
次の日、早朝から小包を持ったエリックが現れた……勿論、一緒に寝ていた事もバレた。
あたしは顔を真っ赤にしながら、おふとんの中にくるまっていた。
「エレナの包帯に関して良い案が出たんだ、いやはや苦労したよ……僕の幅広い人脈をフル活用してようやく完成した至高の逸品だ」
小包を開封するエリックを、おふとんから頭だけを出して見る。
中には青くフリフリした洋服が入っている。
「コバルトゴシック、という服だよ」
「……お、お洒落だけど恥ずかしいよ……」
「いいや、この服である必要があるんだ」
小包の中から長い布を取り出すエリック。
服と同じ様に青く、どこかで見た事があるような既視感がある物だ。
「傷を隠す包帯が必要ならそれをファッションとして使えば良い、包帯にはゴシックと相場が決まっているからね……華麗な僕ならではの素晴らしい発想だとは思わないかい?」
「でも、普通の布だと耐久性が……」
「そこは安心して欲しい。この布は伸縮性耐久性通気性どれも高水準でクリアした、博士との共同開発で生まれた完璧な布だ。さあこれを着て共にまた任務へ赴こうじゃないか!」
意気揚々とエリックが部屋から出て行った。
おふとんから出て凄くフリフリな服と数秒間にらめっこした後、ソーマに話し掛ける。
「取り敢えずシャワー浴びて着替えるから、準備してエントランスで待っとって」
「ああ」
「……あ、待って!」
部屋から出て行こうとするソーマを呼び止める。
「……何だ?」
「あ、あの、その……」
「…………?」
思わず呼び止めてしまったけど言葉が出ない。
なんとか言葉を紡ごうとするが、パニックになった頭では何ひとつ浮かばない。
「……行くぞ」
「あっ……うん……」
ソーマは出て行ってしまった。
何でパニックになってしまったんだろうと思いながら顔に手を当てると、とても熱かった。
そこで、ようやく気がついた。
「そうか……あたし……ソーマの事を……」
好きになっちゃったんだ━━
「お、お待たせしました……変じゃないかな?」
エントランスにはアリサさんを除いた第1部隊の皆が集合していた。
雑談を交わしていた様だが、声を掛けた途端全員の視線があたしに集中する。
初めて着たレースのいっぱい付いた青いお洋服、左右非対称のスカートに加え、左腕と左脚には青い布を根元から指先まで巻いてある。
「おおー似合ってるよエレナ!可愛いよ!」
「ええ、とても可愛らしいわ」
「当然だ、この僕自ら見繕った服だからね」
「お前は選んだだけだろうが」
三者三様の反応が返ってくるが、概ね高評価なのでホッと胸を撫で下ろす。
ついソーマから視線を逸らしてしまう、あんな事を考えていた後ではまともに直視が出来ない。
リンドウさんが近付いてきて右手を差し出す。
「おかえり、エレナ」
「……ただいま!」
強く握手を交わし、とびきりの笑顔を見せる。
皆の為に、これからも頑張らないと!
「可愛いお洋服だね、似合ってるよ!」
「そ、そうかな……?」
任務を受け、リッカのもとへ神機を取りに来た。
ボロボロだった神機は新品同様に赤と黒でカラーリングされ、鈍く輝いていた。
「お陰で耐久性データも十分、ブーストハンマーの正式採用が決まったよ!」
「おー、やったね!」
「壊したお陰、なんて言いたくは無いんだけど怪我の功名って奴だね」
しかし、この時あたし達は知る由もなかった。
あたしから取れたデータを元にした事で、3年後にとある能力に目覚めたブーストハンマー使い達が戦闘不能に陥る事例が発生する事を━━
(詳細はBA、奥義・竜巻殺法を参照されたし)
「さあいっぱいやっつけておいで、何度でも私が修理してあげるからさ」
「うん、あんがとな」
神機が更に軽くなった様に感じる、恐らく総重量は変わっていないのだろうが、重心のバランスが改善したのであろう。
ロッソが居る限り負けはしない。
全てのアラガミを潰し、人類に平穏と笑顔をもたらすのがあたしの使命。
「さあ、行くでロッソ!」
「………………」
「……ご愁傷様」
「早く風呂入らないと風邪を引くぞ、こりゃあ」
今日は鉄塔の森でのサリエル討伐任務だった。
足を結合崩壊させてブーストで一気に距離を詰め頭部を吹っ飛ばした後、勢い余ってフィールド内の水路に着水、大きな水柱が上がった。
どうにかこうにか這い上がったが、ここの水は工業廃水も流れ込んでいた様で、全身ずぶ濡れどころか凄くヌルヌルしている。
折角の新しいお洋服だったのに……
「あーなんだ、お疲れさん」
「ほら、落ち込む気持ちは分かるけど帰りましょう、お姉さんがお昼作ってあげるからね」
「ありがとう……御座います」
とぼとぼとリンドウさんとサクヤさんの後ろを付いて歩く。
と、リンドウさんが振り向いた。
「そうだエレナ、スパッツを着用した方がいい。あれだけ飛び回ったらパンツ丸見ぶべらっ!!」
サクヤさんの渾身の平手打ちがクリーンヒット、リンドウさんは地面に転がる。
「もう!追い打ちを掛けてどうするの!?」
「……あー、わりぃわりぃ」
「……もうやだああああああっ!!!」
あたしのやり場の無い叫びは、ただっぴろい曇天の空の何処かへ溶けるように消えていった。
ブーストハンマーの問題児BA、奥義・竜巻殺法
ヒットさせると最高レベルの火力が出るが、外すと戦闘不能になるトンデモBA。
気になった方はブーストハンマーを使ってみる事をオススメ致します。