女子力は、神をも屠る物理破壊力   作:麻婆牛乳

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3の追加情報出ましたけど……新キャラのクレアさん、あの胸でランドセルはいかんでしょ。

おじさん許しませんよ(大歓喜)





あの子とあたし
みんなにひみつのわるだくみ


 

 

 

次の日、あたしは1人で任務に出ていた。

 

贖罪の街でのクアドリガ討伐、飛来するミサイルをハンマーで爆発ごと薙ぎ、装甲で防いだりしながらミサイルポッドを執拗に狙っていた。

 

 

 

「うーん……ミスったなぁ」

 

 

 

しかしハンマーを振っても銃撃しても、ミサイルポッドに当たらず狙いを間違えたと後悔する。

 

気を取り直してハンマーを点火する。

 

 

 

「えぇいやあああっ!!」

 

 

 

クアドリガの左前足目掛けてフルスイング。

 

機械のような部品と肉片を撒き散らしてクアドリガが横向きに倒れ込んだ。

 

 

 

「さぁて、ご飯やよー」

 

 

 

大きく口を開いた神機がクアドリガの胴体深くまで噛み付き、そのまま食い千切る。

 

コアごと体の半分を持って行かれたクアドリガは体が崩れていく。

 

 

 

『うーン、固いのにぬるぬるしてて変な食感』

 

「食べながら話せるんかいな」

 

『お前らと違って口で喋ってないからナ』

 

 

 

さもありなん(それもそうだ)

 

討伐対象を倒すと同時にバーストしてしまった為にロッソが話せる様になっていた。

 

 

 

『……ン?』

 

「どしたの?」

 

 

 

神機が明後日の方向を向く。

 

つられてそっちを向いてみると……

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 

女の子と目が合った。

 

突然の遭遇に瞬きを繰り返す。

 

 

 

『……マジかヨ……』

 

「……知り合い?」

 

『知ってるっちゃあ知ってル……』

 

 

 

女の子はボロボロの服……ですらない布きれを纏い、こちらに向かって歩を進める。

 

何故かあたしもこの子を知っている気がするが、何故かは全く分からない。

 

 

 

「………………」

 

 

 

女の子は崩れかけているクアドリガの亡骸を指でつついていたかと思えばこちらを向き、口に手を当てて体を揺らしている。

 

神機が口を出し、何やらモゴモゴしている。

 

 

 

『コイツにコアをやるゾ、いいナ?』

 

「え?」

 

 

 

あたしが聞き返すよりも早く、神機からクアドリガのコアが吐き出される。

 

少し歪な形をしたコアは地面を転がり、女の子は目を輝かせてコアを拾い上げた。

 

 

 

「あ……そっか、なんでか他人のような気がしないと思ったらそういう事なんや」

 

『あア……こりゃあ忙しくなるゾ』

 

 

 

コアを1口でパクリと食べ、女の子は満足そうに笑顔を見せる。

 

親近感を覚えたのはこのせいだ、この子は人の形をしたアラガミなんだ。

 

 

 

「でもなんでコアを食べるん?別に残ってたクアドリガの体を食べれば良かったのに」

 

『コイツは特別ダ、人類……いヤ、この星を滅ぼす存在だからだヨ』

 

 

 

星を滅ぼすアラガミ━━

 

確か博士から聞かされた事がある、アラガミ同士で捕食を重ねていった先に地球を飲み込む程の大きさになった《ノヴァ》が起こす《終末捕食》。

 

しかしそれにしては……随分と小柄だ。

 

 

 

「この子が終末捕食を……?」

 

『ンー、ちと俺では説明し辛いナ……そういう点に詳しい奴は居ないのカ?』

 

 

 

ふむ、そういう事なら連絡を取った方が良いか。

 

無線を取り出して博士に通信を入れる。

 

 

 

『どうしたんだい?約束の時間にはまだ10,800秒程早いはずだよ?』

 

「ああごめんな博士、なんか今珍しいアラガミを見つけちゃって……」

 

『珍しいアラガミ……?』

 

 

 

午後から会う予定だった博士に繋がる。

 

少し困惑した様な声を出したので、特徴を説明しようとした━━が。

 

 

 

『まあまた後で会うだろう?その時に教えてあげるから取り敢えず帰ってくるといい』

 

「あ、うん」

 

 

 

そう遮られて通信は途切れた……かと思えば無線のコール音が間髪入れずに鳴り響く。

 

 

 

「はーい?」

 

『よし、話してくれるかい?こっちの回線なら傍受される危険性は無いからね』

 

「傍受?」

 

 

 

そうしている間にも神機からコクーンメイデンやザイゴートのコアが吐き出される。

 

さっきついでに狩った小型アラガミのコアだが、女の子はどれもこれもおいしそうに口に運ぶ。

 

 

 

「まあええか、取り敢えず真っ白い人の形をしたアラガミで、コアばっか食べてる……後、神機が言うには星を滅ぼすとかなんとか」

 

『……特異点……!!』

 

「とくいてん?」

 

 

 

目の前の女の子を見て首を傾げる。

 

手足や髪まで真っ白く、コアを頬張り爛漫な笑みを浮かべるその姿はまるで天使の様だ。

 

食べてるのはアラガミだけど。

 

 

 

『兎も角連絡してくれたのが僕で良かった、手持ちのコアを全部あげて餌付けしておいて欲しい。コミュニケーションは取れそうかい?』

 

「んー」

 

 

 

足元に転がっているコアを左手で掴んで差し出すと、おっかなびっくりそれを掴む。

 

 

 

「それ、ごはんやよ」

 

「……ソレ……ゴハン……ヤヨ?」

 

「ご・は・ん」

 

 

 

どうやら言葉は発する事が出来る様なので、コアを指さして言葉を教える。

 

女の子は頭を揺らしながらコアを見つめ、一呼吸置いてコアを空に掲げた。

 

 

 

「ゴハン!!」

 

「うんうん、ごはんやね」

 

『誰とも喋ったことないんだろうナァ、俺みたいに人間の多い所に居た奴とは違うしナ』

 

 

 

ロッソの一言で不意に同情心が芽生える。

 

こんな荒野に常に1人、それも周りが敵だらけでは非常に心細かっただろう。

 

 

 

「なんか、可哀想やね……」

 

『そうでもないサ、そもそも生まれた時からこの調子なら辛いとも思わんヨ』

 

『成程、今喋っているのがエレナ君の神機だね……兎に角、留めておいてくれたお陰で特有の反応がキャッチ出来たからを追跡が可能になった。帰ってきたら話すとしようか』

 

「ゴハン!ゴハン!」

 

 

 

女の子は嬉しそうにコアをねだるが、流石にもう手持ちのコアが無い。

 

身振り手振りで伝えると、少し残念そうな顔をしながらあたしの左手を掴む。

 

 

 

「……おわあああっ待った待った!!!」

 

 

 

女の子があたしの左手を包帯ごと噛み付こうとしたので驚いて振り払う。

 

女の子はキョトンとしてこっちを見る。

 

 

 

『どうしたんだい!?』

 

「左腕を食べられそうになった!」

 

『……ああ、エレナ君の左腕にコアがあるからなのか……それともプリティヴィ・マータの素材を使った包帯だからかな……?』

 

「なにそれ、この包帯ってアラガミの素材で出来とるんかいな!」

 

『耐久性の確保に必要だったからね……まあそれは置いておいて早めに戻ってくると良いよ』

 

 

 

まだまだ女の子はお腹を空かしている様だが現状ではどうしようもない、博士の言う通り早々に帰投するとしよう。

 

女の子に手を振りじりじりと後ずさる。

 

 

 

「帰るよ、またね」

 

「マタネ……?」

 

「うん、またね」

 

 

 

そう言いながら距離を取っていくと女の子は自分の手を閉じたり開いたりしながら見つめる。

 

そして、あたしに向かって手をブンブンと勢い良く振りながら叫んだ。

 

 

 

「マタネ!」

 

「……覚えるの早いなぁ」

 

 

 

背中を見せると襲われる気がしたので後ずさりしながらヘリの合流地点へ向かう。

 

女の子はこちらが見えなくなるまで、ずっと笑顔で手を振り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて━━」

 

 

 

アナグラに帰投したあたしは博士の研究室で座っていた。

 

目の前の金属のコップにはコーヒーが注がれており、向かい側には博士が立っていた。

 

 

 

「まずはその包帯の話からしようか……左腕に巻いてある包帯はプリティヴィ・マータ、リンドウ君が閉じ込められたあの任務で大量に出現したアラガミのマント部分を使用したんだ」

 

「ぷ、ぷりてぃヴぃ?」

 

「あの時までは極東周りには出現報告も上がってすらいなかったから知らないのも無理はないね……回収されたエレナ君の神機からそのアラガミの素材を頂戴して、包帯に仕立て上げたんだよ」

 

「そりゃあ布よりも硬い訳やね」

 

 

 

うんうんと納得、素材を勝手に使われたみたいだけどまあいいか。

 

そして次の話が本題だ。

 

 

 

「さて……まず約束して欲しいんだけど━━」

 

「今からの話は内密に、という事やんな?」

 

「うん、分かっているなら大丈夫だね」

 

 

 

うんうんと博士は嬉しそうに頷く。

 

内緒話というのは心が躍るのだろう……内容が物騒でなければあたしも笑顔で聞けたのに。

 

 

 

「風説とされている《終末捕食》は実は空想の話じゃあないんだ、噂とされている話とは少し違っているという点を除いて結末は同じ……アラガミによる地球の捕食は起こり得る」

 

「………………」

 

「全てを食らい尽くして人類をも滅亡させた後、残るのはアラガミの居ない世界……それが生物の居ない地球になるのか、それとも地球そのものが消えて無くなるか……実に興味深い観察対象だけどそれだけは避けなければならない」

 

 

 

色々と想像してはいたがスケールが大きすぎる、流石にあたしの手に負える様な話では無い。

 

が、1つ疑問があった。

 

 

 

「あの女の子がノヴァって事なん?それにしてはあまりにも小さすぎるんやけど……?」

 

 

 

そう、聞いていた地球を包み込む程の大きさとはほど遠い、彼女はあたしより少し大きいくらいの身長しか無かった。

 

地球どころか支部を潰せるのかも怪しい。

 

 

 

「その子は、《特異点》はノヴァのコアなんだ。それが現れたという事はノヴァが完成、若しくは完成間近なんだろうね」

 

「……え、メッチャやばない?」

 

 

 

つまりあの女の子が現れた時点で地球がおしまいになるカウントダウンが始まったという事。

 

今この時にでも地球が終了する可能性がある。

 

 

 

「今は大丈夫みたいだね、一定のルートを行ったり来たりして食欲を満たしているよ」

 

「……やりたくはないんやけど、あの子を捕食したら地球は助かるんかいな?」

 

「いいや、すぐに新しい特異点が生まれるだけだ……あの子をそのままノヴァから遠ざけておくのがベストかつ現実的だね」

 

 

 

ノヴァから引き離す……そもそもあたしはノヴァの位置を知らない。

 

それに、あの子を誘導する方法があったとしても上手く出来るか自信が無い。

 

悩みに悩み抜いた結果━━

 

 

 

「博士、あたしは何をすればいい?何をしたら地球を……皆を助けられるんかな?」

 

 

 

素直に、博士に頼る事にした。

 

博士は顔を至近距離まで近付けて口角を上げる。

 

 

 

「嬉しいね、丁度《共犯者》が欲しかったんだ」

 

 

 






もしエレナがエミールのキャラクターエピソードをやったらエミール君の頭が消し飛びそう。



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