女子力は、神をも屠る物理破壊力   作:麻婆牛乳

6 / 25
 


お気に入りの欄という物を知り、驚いております

閲覧有難う御座います、精一杯頑張りますね!




手を抜かざる事、獅子の如し

 

 

1時間半後、あたしは何もやる事が無くなった為、身体能力を調べようと部屋で出来る筋力トレーニングをしていた。

 

腕立て伏せ……余裕過ぎる、千回や万回でも休憩を挟まずに出来そうだ。

 

逆立ち……問題なく出来る、腕や体を震わせる事も無くビシッと決まる素晴らしいバランス。

 

腹筋……最早、誰かに引っ張られる様に力を使わず体を起こす事が出来る。

 

 

 

ならば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞ!」

 

「えっあっ!ちょっと待ってっ!」

 

 

 

プシュッ、と音が鳴り響く扉。

 

その向こうからツバキさんがあたしを見て、眉間の皺を増やしていた。

 

 

 

「……何をしているんだ」

 

「いやっ、あは、あははは……」

 

 

 

あたしは逆立ちをしていた。

 

それも只の逆立ちでは無く、片手……それも指2本のみを使用した逆立ちである。

 

その体勢のまま手首のスナップを効かせ、半回転して着地してみせる。

 

 

 

「ゴッドイーターって凄いですね……こんな事を疲れも無しに出来るなんて……」

 

「ゴッドイーターでも出来ないぞ普通……」

 

 

 

ツバキさんは目頭を押さえて唸る。

 

あたしは申し訳なく思い、深々と頭を下げた。

 

 

 

「まあいい、これから昼食後訓練を行う」

 

「はいっ」

 

「1ヶ月分の食券を与える、無くしたら支給されなくなるから大事にする様に」

 

 

 

そう言って渡されたのは紙の束。

 

というか無くしたら絶食確定ですか。

 

 

 

「昼食を終え次第神機を受け取り訓練所へ来るように、以上だ」

 

 

 

バッ、と敬礼するあたしをよそにツバキさんは立ち去っていく。

 

取り敢えずあたしは食券を1枚取り出し、財布も部屋に置いて鍵を掛けてから部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、あんたも昼食か」

 

「ああ、確かコータやっけ?」

 

 

 

それなりに人が居る食堂で塩茹でされたでっかいトウモロコシにかじりついていたあたしの隣にコータ、藤木コウタが座る。

 

ゴッドイーターになれても食事事情は厳しい物なんだなぁ、と噛み締める。

 

 

 

「あんたエレナって言うんだってな、挨拶が遅れたけど宜しくな」

 

「名前、誰から聞いたん?」

 

「博士だよ、あんたは俺の同期で期待の大型新人だって一人で盛り上がっていたよ」

 

 

 

うん、期待の大型新人っておかしいよね……等と談笑しながらトウモロコシを平らげ、コータより先に立ち上がる。

 

 

 

「ほな、あたしは先に訓練行ってくるで」

 

「おう、頑張れよ!」

 

 

 

互いに手を振り、食器を片付けてメンテナンス部へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたよ!」

 

 

 

リッカが腕を振りながらあたしを呼ぶ。

 

傍らには、先程よりもかなりゴツくなった神機が置かれていた。

 

 

 

「頼まれた通り、剣と銃は重量級のバスターとブラストに装甲もタワーシールドに変えておいたよ……でも、持てる?」

 

「どれどれ……」

 

 

 

神機を試しに持ち上げてみると、その見た目とは裏腹に簡単に持ち上がる。

 

というか、完全にあたしの身長を余裕で超える大きさなのにこんなに簡単に持ち上がるのは違和感しか無い。

 

 

 

「何で、簡単に持ち上げるの……?」

 

「…………」

 

 

 

表情を固めるリッカに無言で返す。

 

正直な所、フォークが肉厚になっただけ……という感想を述べたかったが、喉元で抑える。

 

 

 

「……あんがと、これからも宜しくね」

 

「……う、うん」

 

 

 

自分の身長よりは大きな神機を担いで出て行くあたしは、呆然とするリッカの目にはどう映っていたのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……随分と体格に合わない物を持っているな』

 

「……ごめんなさい」

 

『まあ、扱えるのなら問題は無い』

 

 

 

訓練所はそんなに広くは無く、少し高台が見受けられる程度だった。

 

上方にあるガラス張りの部屋からツバキさんが見下ろしている。

 

 

 

『まずはウォーミングアップだ、移動や神機を振り回して慣れておけ』

 

「はい」

 

 

 

神機を担ぎ走ってみると、適合試験以前よりもかなりのスピードが出る上に疲れも無い。

 

次に部屋のすみに移動し、踏ん張って向かい側にジャンプしてみる。

 

と━━

 

 

 

 

 

 

「へぶぅ!!!」

 

『!?』

 

 

 

ビタァン!という音と共に、あたしは向かい側の壁に激突した。

 

思わず、神機を途中で取り落とす。

 

 

 

『大丈夫か!?』

 

「あだだだだ……大丈夫れす……」

 

 

 

顔をおさえ、神機を拾って立ち上がる。

 

ジャンプ力が明らかにおかしい、立ち幅跳びの世界記録がこわれる。

 

 

 

『身体能力にタフネス……異常だ……』

 

「しかし軽いなー神機って」

 

『しかも重量級の神機を枝を振る様に……』

 

 

 

ツバキさんが驚きの連続を繰り返しているが、出来る物は仕方ないのだ、うん。

 

と━━

 

 

 

『今から訓練用のダミーアラガミを出す……剣か銃、好きな方で倒せ』

 

 

 

部屋の中央、その床から何かが生まれ出てきた。

 

━━ダミーアラガミ━━

 

 

 

『取り敢えず初めてのアラガミ戦だ、動きは止めてあるから安心しろ』

 

「はっ、はい……」

 

 

 

少し、身がこわばる。

 

何度か、アラガミを目にはしてきたが逃げることしか出来ない相手だった。

 

しかし今度は、狩る番なのだ。

 

 

 

「……行くでッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天井の高い部屋を見上げて踏ん張り、跳ぶ。

 

最高点に到達し、神機を振りかぶる。

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアアアアッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事だから、こいつはお前に任せる」

 

「えぇ…………」

 

 

 

数分後、あたしは神機を持ったままツバキさんの後ろで縮こまって俯いていた。

 

話し終わったツバキさんはあたしの肩に手を置き、あくまでも優しく

 

 

 

「お前のせいじゃない」

 

 

 

と言って去って行った。

 

取り残されたのはあたしと、黒髪の男性。

 

 

 

「……あーなんだ、雨宮リンドウだ、宜しく」

 

「……エレナ・コルテーゼです……」

 

 

 

位置はロビー、ヒバリさんの後ろに当たるラウンジの様な場所だ。

 

リンドウさんは頭を搔きながらあたしを見た。

 

 

 

「さっきのは本当に、お前が?」

 

「……ご迷惑をお掛けしました……」

 

 

 

数分前、訓練所に居たあたしはダミーアラガミを粉砕した……文字通り、粉砕である。

 

それだけに飽き足らず、神機を叩き付けた衝撃が訓練所を揺るがし、頑丈な訓練所は無事だったのだが、ツバキさんの居た部屋のガラスを振動だけで砕き、極東支部全体を揺らした。

 

その振動から地震か、アラガミの襲撃かと支部の人達が慌てふためき、場内放送で何でも無いと放送され鎮静化させたりした。

 

そんな威力を叩き出した神機だが、全く壊れた気配は無く新品同様である……リッカすごい。

 

 

 

「あー気にするな、知っているのは俺と姉上だけだから、な?」

 

 

 

ポンポンと頭を叩かれる。

 

その優しさが涙腺にクる。

 

 

 

「兎も角、お前は俺の第1部隊に配属された……訓練の続きも兼ねて、一緒に出撃しようか」

 

 

 

こくり、と頭を下げるとリンドウさんはヒバリさんの所へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーエレナちゃん!久し振りだな!」

 

「おー、アツシやん久し振りー」

 

「なんだ、知ってるのか?」

 

 

 

ヘリポートで出会ったのは、此処へ連れて来てくれたヘリパイロットの敦だった。

 

 

 

「さあ乗った乗った、直ぐに出発だ!」

 

「おう、宜しく頼むわ」

 

「よろしくなー」

 

 

 

乗り込むと、数秒後には空の上。

 

やはり、敦は中々の熟練パイロットなのか。

 

あたしも随分と気分が晴れてきた。

 

 

 

「とうとうエレナちゃんまでゴッドイーターになったかー、大物になれよ!」

 

「ははは、ある種もう大物にはなってるな」

 

「言わんといてリンドウさん……」

 

 

 

そんなやりとりをしている内にも、ヘリはぐんぐんと速度を増している。

 

 

 

「心の準備は大丈夫か?今回の目的地は近いからあっという間に到着するぞ」

 

「はい、随分リラックス出来ました」

 

「おーこりゃ確かに大物の風格だ、あっという間に追い抜かれるかもなぁ」

 

「冗談は休み休み行って下さいよリンドウさん!アンタを追い抜くなら、オリンピック全種目で金メダル総ナメにする方がよっぽど簡単だぁ!」

 

 

 

3人の大爆笑がヘリ内に響き渡る。

 

良かった……この職場なら、あたしは上手くやっていけるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命令は3つ、死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ、運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ、だ」

 

「リンドウさん、4つになってんよ」

 

「んあ?あーまあいいさ、とりあえず死ぬな、それさえ守れば後は万事どうにでもなる」

 

 

 

大雑把な命令だが、理に適ってはいる。

 

 

 

「初出撃の新人に出す命令やないよね?」

 

「いーんだよ、自分で考える事も大事だ」

 

 

 

前に広がるのは建物が幾つか見える場所。

 

贖罪の街、というらしい。

 

 

 

「今のところ、此処に居るのははぐれたオウガテイルが1体だけだ。危なくなったらケツは持ってやるが、倒すのはお前がメインだ」

 

「りょーかい、隊長殿」

 

「最後まで、油断はするなよ」

 

 

 

最後の真剣な一言に頷いて返し、神機を構える。

 

広くは無い街だが、まずは捜索から始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……居た」

 

 

 

リンドウさんの声に足を止め、見渡すと広場のあたし達の位置から対角線上に白い何かが居る。

 

あれが、オウガテイル。

 

 

 

「好きにやってみな、俺は後ろについている」

 

「了解」

 

 

 

距離はおおよそ50mといった所か……此方には気付いていないが、キョロキョロと辺りを見渡しているのが見える。

 

奇襲は難しいか……だが一気に距離さえ詰められるなら、避けられる前に刃は届く筈。

 

 

 

「力は……これ位かな」

 

「……?」

 

 

 

不思議そうにあたしを見るリンドウさんをよそに、脚に力を調節して込める。

 

 

 

「━━行くで!」

 

 

 

ドンッという音と共にあたしはオウガテイルに向かって跳ぶ。

 

距離感が心配だが、飛び越えたらその時だ。

 

そう思っていたが━━

 

 

 

「……え?」

 

 

 

オウガテイルがこっちを向いた。

 

まさか、跳んだ時の音でバレたのか!?

 

 

 

「エレナ、下がれ!!」

 

 

 

いやいや無茶言わないでリンドウさん、あたし空中で高速移動中だよ?

 

躊躇ったが覚悟を決める、このまま振り抜く!

 

 

 

 

 

ドォン!という破壊音が響く。

 

オウガテイルは、仕留めていない……目測が少しズレてしまった様だ。

 

 

 

「……まだやっ!」

 

 

 

バスターを地面から抜き、全力の横薙ぎを動きを止めて目を丸くしているオウガテイルに見舞う。

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

オウガテイルの上半分が消え、消えた半分は遠くにあった街の壁に張り付いていた。

 

 

 

 

 

 




 


コウタ「あれ?俺の訓練は?」

ツバキ「……急遽中止だ」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。