今回はまさかの
それでは、本編をどうぞ!!
「……………………………………………………」
俺は今、瞑想をしている。胡坐をかいて両手を使って横長の輪を作る。目を閉じ心を空にし、軽く深呼吸をしながら息を整える。音楽も掛けず、静かな道場になっているマイルームの中。俺はひたすら集中力を研ぎ澄ます。
脳内でイメージするのは、腰に差した刀を勢いよく振り抜き、それを横に一閃すること。それが、俺の魔術回路を開くスイッチのイメージだ。魔術回路を開くイメージは十人十色。自身が最もイメージしやすいこと。ないし、体に染みついた動きがきっかけとなる。俺は幼いころから剣術を学んでいたから、それがきっかけとなっている。
「……………………………………………………」
息を整え、開いた魔術回路に魔力を流していく。この時、想像するのは細い管だ。あらゆる機械に取り付けられている回路に流れる信号のように。体内に張り巡らされた血管に血液が流れるように。体内の神経に魔力の籠った水が流れる感じを想像する。これは、込める量が少なすぎても多すぎても駄目だ。少なかったら起こした魔術回路が働かないし、多すぎたら回路が負荷に耐え切れずに暴走する。
「……………………………………………………っ」
少し雑念が入った。回路に魔力が入りすぎて痛みが奔る。痛みで少し顔を顰めるが、すぐに回路の魔力を減らすように努める。コップに注ぎすぎた水が少しずつ減っていくのを想像する。水位が少しずつ下がっていくのと同時に、痛みが少しずつ引いていくのが分かる。一連の動作を終えた後、再び深呼吸を繰り返してから閉じた瞼を開く。少しだけ回路が暴走したせいか。左腕に痺れた気がしたが、手を軽く振って痺れを振り払う。
「………よし、準備運動はこれぐらいでいいか。
両手を握りしめるように構え、その中に魔力で構成された木刀を創造する。
「――――――ふっ!!」
その場で止まることなく、突き出した腕を引き戻して木刀を構え直す。少し乱れた息を整え、投影した木刀を消す。両手に籠った力を抜き、手首をぶらぶらと振って指を動かす。何の異常も感じられることなく今朝のトレーニングも終わる。これは、人理焼却を防ぐ旅が始まった頃からしていた訓練だ。回路を開いて魔力供給しか出来なかった俺は、こうやって地道な事を積み重ねていた。実戦訓練で散々エミヤと
集中しすぎたせいか額から汗が流れてきた。それを軽く腕で汗を拭うと、マイルームの扉がゆっくりと開いた。外からやって来たのは、いつもの露出の多い黒衣ではなく、白いワンピースに額に付けていた仮面を外した少女。静謐のハサンだった。
「マスター。そろそろお時間です。召喚の準備に入るよう、ブーディカさんが呼んでいましたよ」
「ん、了解。いつも伝達係みたいなことさせて悪いな、静謐」
「いえ。私は、マスターのお役に立てることが嬉しいので」
「相変わらず自己評価の低い奴だなぁ。ま、俺とよく似てるかもしれないが……」
頭を掻きながらマイルームの立体映像を消し、マイルームの景色を元に戻す。簡素なベッドとソファー。細々とした私物しか置かれていないマイルームに戻ったが、元々こんな感じの部屋だったから問題はない。クローゼットからいつも着ている黒コートを取り出しながら部屋を出て、その前にいる静謐の頭を軽く撫でる。
「わっ…………」
「そら、早く行くぞ静謐。あと、俺にも言えることだけど、あんまり低く自己評価すんなよ? 俺は他の誰でもない、
静謐に聖杯を2つ注いで、レベルを80にまでしたのはその為だ。最初から最後まで、この旅を一緒に過ごしてきた仲間だからこそ、俺は静謐を信頼している。だから、あんまりそんなことを言わないで欲しい。そんなことを思いながら彼女の前を歩いていると、後ろから何か囁かれた気がした。
「っ、――――――」
「ん? なんか言ったか?」
「いいえ、何も。何も言ってませんよ。我が主。では、参りましょう。我が主」
「………ああ。行こうか、静謐」
「ありがとうございます。我が主。全て、この身を賭してお慕いします。黒鋼研砥様」
「さてと、準備はこれで完了だな。とっとと回すぞ~」
「あれ、今回はかなり軽いね研砥? 今回のピックアップされてるサーヴァントって、あんまり興味がなかったりするの?」
召喚場まで案内してくれた静謐と別れ、聖晶石が大量に入った箱を持った俺は、いつでも投げ入れるように準備を整えていると、先に部屋にいたブーディカさんが尋ねて来た。俺はそれに応じるように首を軽く横に振りながら、彼女の質問に答える。
「いや、やっぱりこっちにも来て欲しいけどね。何より、今回のピックアップされてるサーヴァントは俺にとって……。いや、
今回、出現確率が補正されているサーヴァントは、俺たちの中でも初期から支えてくれたあの人が、『シャーロック・ホームズ』がピックアップ対象なのだ。そのついでと言っては失礼だが、各特異点で登場したサーヴァント達のピックアップもされている。俺と狭間たちが初めて一緒に戦った『炎上汚染都市 冬木』から、この間発生した亜種特異点Ⅱの『伝承地底世界 アガルタ』までの各特異点が対象だ。
ちなみに、既に家にいるホームズの天敵。『ジェームズ・モリアーティー』は全力で召喚を妨害しようと画策してたので、サクッと令呪を2画使って自宅謹慎とレポート作成を任せてきた。この間、なんか変な空間にレイシフトしたから余計なレポート書く必要ができたが、イラッと来たからやってしまった。だが、悪いとは思っていない。
「ホームズさんはともかく、今回は騎士王が。アルトリアさんが来てくれる可能性が高いからね。結構ガチで回しに行くぜ」
「いや、無理にあの子たちを当てに行かなくても良いんだよ? この後、今年の水着イベントが待ってるんでしょ?」
「そりゃそうだけど。水着のネロとかも欲しいけど、今年はブーディカさんがいないしねぇ。ま、余った石を叩き込もうとは思うが、そんなにやる気が起きないんだよな~」
ガチャを回す前に軽くお喋りをする俺たち。次に行われるイベント、『デッドヒートサマーレース』なるイベントだが、新規で来たサーヴァントは7騎。その中で来て欲しいのはネロとかノッブくらいなものなので、あまりやる気が起きないのだ。というか、去年の水着イベントを見る限り、どうしようもない駄目イベントになりそうで怖い。そんなことを考えていると、何故かブーディカさんが照れたように笑っていた。
「って、どうかしたのかブーディカさん? 何かあったか?」
「え!? ううん! なんでもないよ!? なんでもないから! ね!?」
「お、おう……。と、とりあえず10連回してみますか」
やたら念を押してくるブーディカさんに驚きながらも、残っている140個近く残っている石の中から石を30個取り出す。この間の福袋召喚で購入した石の余りと、ランサーの玉藻さんを割と序盤に召喚したので、割と石が残っているのだ。これだと1人くらいは高レアサーヴァントを召喚できそうな気がする。
取り出した30個の石をサークルに向けて放り込む。最初の10連はただの運試しだ。どうせ☆4礼装しか出ない悲惨な結果になるだろうと諦めながら回してみる。何回か礼装やサーヴァントが召喚される中、回の期間限定☆4礼装、『アフタヌーン・パーティー』の出現を確認する。イラストを見る限り、冬木で消えてしまったオルガマリーさんが映っていた。久しぶりに見た顔に少し笑ってしまったが、その次には金色のカードが飛び出してきた。
「出てきたのはアーチャーか。……☆4だと、まだアタランテさんが来てくれてないなぁ。子供好きな人だから、来てくれると助かる」
「オケアノスで色々お世話になったアーチャーの人だよね。確かに強いし、私も会いたいかな」
これから召喚される人に期待を寄せながら待っていると、カードから光が溢れ出してその体を形作っていく。まず、俺たちの視界に現れたのは赤いロングコート。褐色の肌に、体色とは真逆の逆立てた白髪。そして、両手にそれぞれ握られた白と黒の双剣。見覚えがあるシルエットから現れたのは、俺たちがよく知る人物。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。」
「…………これはまた、反応に困るマスターに呼ばれたものだな」
「そりゃ俺のセリフだ。というか、今年になってアーチャーの召喚率高くね俺?」
「まぁまぁ。私は何度も会えて嬉しいけどね?」
この間召喚に成功したアーチャー。エミヤの登場に少し苦笑しながらも、俺たちはそれぞれハイタッチを交わす。去年、終局特異点での最終決戦を終えた後、エミヤは一度『英霊の座』に帰ったので、実は少し寂しい思いをしていた。だが、この間の『ぐだぐだ本能寺』を経て再召喚されたため、この召喚場での出会いはこれで3回目になる。ここまで顔を合わせていると、腐れ縁とでも呼べそうだ。
「あ~エミヤ、後でこっちにいるお前と統合することになる。だから、先に工房で待っていてくれるか?」
「了解したマスター。あと、私の事は余り気にしないことだ。君と共に戦った記憶はあるが、そういったことは割り切りが重要だ。これからも、ここにいる私と共に戦ってくれ」
いつものようにニヒルに笑いながら、エミヤは召喚場の後ろに立ち並んだ。せっかくここに呼ばれたのだから、召喚が終わるまでは立ち合いたいらしい。最後まで面倒を見るエミヤらしいことだと思いながらも、残りの召喚を見守った。だが、結果としては既に召喚されたサーヴァントや礼装が出てくるだけで、これといった結果を残すことは出来なかった。
「ま、こんなもんか。エミヤを召喚できたからまだマシだしな」
「悪かったな性能の低いサーヴァントで。だが、それで諦めれるほど、君は諦めが良い方ではないだろう?」
「勿論。それじゃ、どんどん回していくぞ~~!」
最初の10連は所詮運試し。それでエミヤという☆4サーヴァントの召喚に成功しているのだ。ならば、次にはもっと良いサーヴァントが召喚できるに違いないと信じ、俺は再び30個の石をサークルに放り込む。だが、これはあまりというより、相当悲惨な結果に終わってしまった。なにせ、最初に☆4の『封印指定執行者』という礼装が出てから、全て☆3のサーヴァントと礼装ラッシュだったのだ。まぁ、今回で5枚目の登場だったので、限界突破出来たのが不幸中の幸いだった。
というか、初回と今回でダレイオス三世の宝具レベルがカンストしてしまったのだが。これはあれか。そろそろ高レアが出ないから、☆3以下のサーヴァントも育てろということか。最近、マタ・ハリさんとかスパルタクスとか育ててるのにな~。
「残りの石は80か。む~……。そろそろ10連を諦めて、呼符チャレンジに切り替えるべきか………?」
「少なくとも、今回の呼符は半分6枚までは使うんだよね? 石はもう半分近く使ってるし、そろそろやめるべきだと思うけど……」
「やめておけブーディカ。私たちのマスターは、これからのことを全く考えず召喚を繰り返す阿呆なマスターだぞ? 止めても無駄なだけだ」
「その無駄な召喚でお前が来たんだけどな。まあいいや。とりあえず、これで最後にするから10連回すぞ~。ピックアップ対象を『特異点F』に変更っと」
残りの石がついに50を切ることになってしまったが、それは仕方がないことだと割り切って、本日3度目の10連ガチャを開始する。今まではホームズ単体のピックアップガチャを回していたが、最後の最後で『特異点F』、冬木で遭遇したサーヴァントがピックアップされているガチャに切り替える。このシステム、一度切り替えたら二度と変更できないので、あまり使いたくはなかったのだが、10連最後のガチャということで切り替えてみた。
このガチャだとキャスターのクー・フーリンや、既に召喚されたエミヤ。それから青と黒の騎士王等がピックアップに追加されている。といっても、既にエミヤが召喚されている以上、もう金色のサーヴァントカードは出ないだろうと割り切っているのだが。
「お、☆5の概念礼装が出てきたな。え~と、『カルデア・アニバーサリー』……?」
「……これはまた、少々反応に困る礼装だな」
「そう、だね。全く、な~んでここにいない人が映ってるんだろうね?」
飛び出して来た礼装を見た後、エミヤとブーディカさんが苦笑した。多分、顔は見えなかったが俺も似たような表情だっただろう。この概念礼装に移っているのは、カルデアにいるマシュとダ・ヴィンチさん。それから、
零れそうになった涙を、左腕で目元を強く拭う。つまらないことを考えても仕方がないと割り切ろうとして頭を軽く振ると、突如として眩い光と突風が召喚場内に吹き荒れた。何事かと身構えていると、正面のサークル上に金色に輝く騎士が描かれたカードが鎮座していた。
「なっ、ここで☆4以上のセイバーだと!?」
「ピックアップされている高レアセイバーはたったの2人。これは、まさか彼女が来るの!?」
「落ち着け2人共! ここでジークフリートが来たら心苦しい気持ちになるだろうっ!」
俺とブーディカさんの期待に鋭いツッコミをするエミヤ。あの時の、まだ人理焼却を防ぐ旅を出て間もない頃の事を思い出して笑っていると、ついにセイバーの召喚が始まった。
強風を巻き起こし、眩い光を溢れさせながら現れ、まず目に捉えたのは青と白で彩られたドレス。足元にまで伸びたロングスカートに、徐々に収まっていく強風を束ねた、風を纏った透明な剣。後ろで1つに纏められた金色の髪に、ブーディカさんとよく似た翡翠色の瞳。キリッとした表情の
「問おう。貴方が私マスターか?」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
この場に居合わせた、俺を含む3人は言葉を失っていた。確かに、目の前にいる彼女が召喚される可能性はあった。だが、彼女は今回の目当てのサーヴァント。ホームズと同じ☆5のサーヴァントなのだ。召喚されることは稀で、多分今回も失敗だろうと思っていた。にもかかわらず、こんなにもあっさりと召喚してしまったことに驚きが隠せなかったのである。
呆然と立ち尽くす俺たちを見たせいか、目の前に降り立った騎士王は首を傾げながらおずおずと尋ねてきた。
「すまない、もしかして貴方の呼びたいサーヴァントではなかったのだろうか。無反応だと、少し困ります」
「あ、ああ。悪い、ちょっと本気で驚いて立ち竦んでた。え~と、確かに、俺は貴女のマスターだ。よろしくお願いします」
「別に、そこまでかしこまらなくても構いません。召喚に応じる際、貴方たちのことは聖杯からの知識提供で知っています。サーヴァント・セイバー。真名、アルトリア・ペンドラゴン。これより、我が剣は貴女と共にあります。良い指示を期待していますよ」
少しだけ素っ気なく言いながら、アルトリアさんは毅然とした態度で頭を垂れた。彼の騎士王にそんなことをさせるつもりはなかったので、すぐに顔を上げるように言うと、彼女は驚いたように目を丸くした。
「驚きました。貴方もここに召喚されていたのですね。アーチャー」
「まあ、な。この私はここでは3度目の召喚になる。だが、まさか、君が召喚される時に居合わせるとはね。いやはや。ここまで来ると腐れ縁かもしれんな。そうは思わないかセイバー?」
「確かに、そうかもしれませんね。私としては、貴方に会えて。そして、共に戦えるのは喜ばしいことです」
「…………全く、君は変わらないな」
苦笑しながらもどこか嬉しそうに笑うエミヤ。アルトリアさんも旧友と会ったような笑みを浮かべていた。その在り方は、横から見ているだけでも仲の良いコンビに見える。その様子を見て少しニヤついていると、召喚場にまた風か起こっていることに気づいた。
「ん? また風が―――!?」
そよ風のように吹いていたそれに気づいた直後、いきなり勢いが増して暴風に変わる。それもただの風ではない。召喚サークルの中心から吹き荒れるそれは、禍々しい赤黒い魔力を帯び、3本に分かれた光のラインをも飲み込む。
この風の勢い。それが発する禍々しい赤黒い魔力の風。それにはとても見覚えがあった。最初の特異点。そして、この間の新宿で会った彼女の放っていた者に酷似していた。どこか懐かしい魔力の感じに苦笑いしながら、俺はサークルに向かって歩き出していた。
「な、下がれ研砥! その風は危険だ!」
「大丈夫だよエミヤ。―――彼女は、敵じゃあない」
いつもの双剣を投影したエミヤが俺の前に出ようとしたが、俺はそれを言葉で制する。いつもの俺だったら、エミヤや他のサーヴァントたちの言い分を聞いていただろう。だけど、こればっかりは譲れなかった。ここで引いたら、きっと後悔すると思ったからだ。
赤黒い風を帯びた光のラインが束なり、同色の光の柱が立ち昇る。柱の中から現れたのは真っ黒な鎧。腰と手の先に広がる血のように赤いラインに、鎧と同じカラーの西洋剣。色素を失ったように青白い肌に金色の髪。そして、頭部に装着されたバイザー。圧倒的な威圧感を放ちながら、サークルの中央に降り立った彼女は、口を開いて俺に告げた。
「………召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターというヤツか?」
「………なんだ、結構近い再開だったな。オルタ」
「貴様か、
「ああ。まあ、これからよろしく頼むな」
バイザーを取り外して素顔を晒すアルトリア。先に召喚した青いアルトリアさんの性質が、ある事件をきっかけに反転。所謂オルタ化したのが目の前にいる黒い騎士王だ。最初の特異点では敵として立ちはだかり、その後でサンタになったり私服を着て新宿の街を闊歩したりと、色々とやりたい放題していたが、その実力は一級品。世界最強の聖剣を躊躇することなく振るう鬼のような人だ。
目の前の召喚に応じてくれた黒いアルトリアのことを振り返っていると、面白い物を見つけたように笑いながら、彼女は黒に染まった聖剣を青いアルトリアに向けて振るった。
「ふっ―――――!!」
「っ!? はぁっ!!」
自分に向けられた殺意に気づいたアルトリアさんは、風の鞘に包まれた剣を持って黒い聖剣を迎え撃つ。彼女たちは性質こそ違えど、元は同じ存在。互いの力は拮抗することになり、自然と鍔迫り合いとなる。時折、火花を散らして剣をぶつけ合いながら、2人は言葉を交わした。
「何故、このタイミングで斬りかかって来るのですか! 黒い私!!」
「なに、目障りな女がいたのでな。少々、消し飛ばそうとしただけだ!!」
互いに何合も剣をぶつけながら、2人は距離を取った。加減をしている場合ではないと判断したのか、青いアルトリアさんは風の鞘を開放し、包まれた剣を解き放つ。刀身が黄金の光に包まれた、黒いアルトリアとは真逆の性質を持つ聖剣。誰もが一度は聞いたことのある剣、『
アルトリアさんの一撃は白と黒の双剣を交差したエミヤが受け止め、黒いアルトリアは愛剣を抜刀したブーディカさんが受け止めた。二人の攻撃を止めて安堵したのか、エミヤは息を吐きながら呟く。
「そこまでだ2人とも。別に戦うなとは言わんが、
「………ふん、それぐらい分かっている。ただ、少し体を動かしたかっただけだ」
「……申し訳ありません。少々、頭に血が上ってしまいました」
通常とオルタ化した2人のアルトリアは、申し訳なさそうに頭を下げた。それを見届けた後、エミヤは苦笑しながら投影した双剣を消した。だが、黒いアルトリアの相手をしていたブーディカさんは、無言なまま黒いアルトリアを。その後に普通のアルトリアさんの手を引っ張った。
「……………? あの、どうかしましたか?」
「……ああ。そういうことか。しまったな、私としたことが失念していた――――」
戸惑うように首を傾げる普通のアルトリアさんと、何か悟ったように死んだ魚のような眼をする黒いアルトリア。直後、手を取っていたブーディカさんは、2人のアルトリアを思いっきり抱きしめた。
「あ~~~~~もう!!! 2人とも可愛いな~~~~~~~!!!」
「ふむぅ!? ~~~~!?!?!?」
「
力強く二人のアルトリアを抱きしめるブーディカさん。それを初めて受ける普通のアルトリアさんは困惑して手をバタバタしているが、黒いアルトリアはされるがままにブーディカさんの胸に飲まれている。鬱陶しそうな顔をしてはいたが、どこか照れたように頬を赤くしているのを俺は見逃さなかった。遂に召喚されたブリテンの騎士王。ブリタニアの女王であるブーディカさんの後輩にあたる彼女達を全力で可愛がる様子を見て、俺は苦笑した。
「全く、イギリス系のサーヴァントの。中でも円卓の騎士達に関してはいつもあんな感じだよなぁ。まぁ、見慣れたけどさ」
「確かにそうだね。だが、それは彼女の性格だからだろう。それに、今に始まったわけでもないだろう?」
「そりゃそうだけどさ。毎度やらされてる彼女達の身にもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
遠くから彼女たちの様子を感想を言っていると、いつの間にか隣に立っていた男と会話していたことに驚いた。馴染みのある声だったから違和感なく受け答えしていたが、その声はここにはいないはずの声だったのだ。冷静になって幽霊かと思って飛び退いてしまった。聞き間違えたと思ったが、飛び退いた先に目が捉えた姿を見た時、感動の余り涙を流してしまった。
いつもの青黒いコートとスーツに身を包み、その背後には大量にある謎のルーペのような物。右手に持った剣のように細く鋭い杖に、どこか遠くを見据えたような目つき。亜種特異点Ⅰの『新宿』以来、カルデアに腰を据えたはずの彼がここに立っていた。
「せっかくの再召喚だ。ならば、改めて自己紹介をするべきだろう。サーヴァント、ルーラー。真明『シャーロック・ホームズ』。私は探偵だ。英雄を望んでいたのなら残念と言う他ないが、探偵や推理家を所望なら、君は良いカードを引き当てた。………すまない、帰宅に少々、時間が掛かってしまったね。諸君」
どこかはにかむように笑いながら、
「ああ。お帰り、ホームズさんっ!!」
「ただいま。ああ………。やはり、カルデアよりこちらの方が、私の性に合っている。これからもよろしく頼むよ。私たちのマスター」
~~~おまけ~~~
青と黒のアルトリアを召喚してから数日後。黒鋼は自身がしてしまったことの重大さに、愚かさを割と本気で悔いていた。考えれば当たり前のことだったのだ。この間来てくれた2人より前にも、リリィとサンタオルタというアルトリアはいたのだ。そして、彼女たちはとても食欲が強い。つまり、それが一気に2人も増えたということは。自然と
「おい、そこのシェフ共! ハンバーガー1ダース追加だ!!」
「すいませんアーチャー。チキン南蛮定食ライス大盛りと、唐揚げ定食ライス大盛りを追加で!」
一気に増えたオーダーに四苦八苦しながら、食堂に集まったサーヴァントたちは黙々と調理を進めていく。だが、あまりにも注文された量が多すぎる。品の数は18。だが、ここにいるのはオルタ込みでエミヤ2人とブーディカ。それと黒鋼の4人だけだ。ご飯や味噌汁なら作り置きがあるから大丈夫だ。しかし、それ以外となると新たに品を作る必要がある。1からしていては時間がかかりすぎてしまう。単純に、調理できる人の数が足りないのだ。
「おいエミヤズ!! そっちはどうなっている!」
「ハンバーガーは俺に任せておけ。もうすぐ5つ完成する。オマケにフライドポテトを付ければ少しは持つだろう」
「こっちはもうすぐ唐揚げができる! ブーディカはどうだ!?」
「パンケーキ2枚はできるかな!! 研砥! とりあえず完成した物から持って行ってくれるかい!?」
「了解!! あ~もう! 忙しいなァ!!!」
あまりの忙しさに目を丸くしながらも、黒鋼は完成して皿に乗せられた料理を丁寧に。かつ、迅速に配布していく。とりあえず、注文された半分をこなすも、今度はアルトリア以外のサーヴァントがオーダーを告げる。
「すまないマスター。カレーうどん定食を1つ頼む」
「マスターさ~ん! メープルシロップとチョコレートのパンケーキ2枚ずつお願いしま~す!」
「おい、私のターキーはまだか?」
「了解了解!! 早く持ってくるから少し待っていてくれよ!!」
次から次へと
何事かと、厨房にいた料理人たちの視線が一斉に集中する。直後、この場にいる誰もに笑みが戻った。何故なら、その先には見慣れた料理人の制服に袖を通した、3人の女性がいたからだ。
「ごわははははは!! 待たせたなご主人! ご主人からの愛が最も大きいキャットが助けに来たんだワン!!」
「救援に来て欲しいと言われたから、文字通り飛んで来たわ! 後は私に任せなさい!!」
「マスター! 母が助けに来ましたよ!!」
初めからタマモキャット。エレナ・ブラヴァツキー。そして、源頼光。ここにいるのは料理レベルがとても高いサーヴァント達だ。ここにいる人たちにも引けを取らないレベルの高さを誇る料理人達が一気に3人も増えた。心強い援軍だ。そのことに安堵した皆に笑顔が戻る。そんな中、黒鋼はある人物に目が移っていた。
「あれ、そのエプロンどうしたんだキャット? いつもの白エプロンじゃないみたいだが」
「お、そこに目が行くとはさすがご主人! これはだな! 私とご主人との絆が最高値に達した時にのみ着用が許される最強のエプロンなのだな! 所謂、キャットとご主人との愛の証だな!!」
「え゛」
「何照れるなご主人! 誰が何を言わずともキャットがご主人の最強にして最可愛いペットなのは自明の理。ご主人のキャットとして、この事態を瞬く間の内に解決してみせるとしよう!!」
バーサーカー特有のズレた思考から発せられた言葉に動きが止まる黒鋼。それもその筈。何故なら、ここにいる彼女を前にして、その発言は自殺行為に等しいからだ。
「あらあらまぁまぁ。キャットさん? 今のお言葉、詳しくお聞かせもらえないでしょうか?」
「うん? どうかしたのか源氏の武将母よ。キャットは野生に溢れているので物忘れも早くてな。ご主人や料理のこと以外は余り覚えていないのだワン!」
「うふふふ、とぼけますかこの野狐? 貴女には料理の師事をしていただきましたが、我が子を狙う不届き者ならば仕方がありません。心苦しいですが、この頼光。鬼になりましょう………!」
「おいおいおい!! なに頼光さんの地雷踏み抜いてんだよキャット!? こうなったら金時呼ばないと止まらないぞ!?」
「なに、任せるがよいご主人。さて、そこのバサカ源氏よ。お主も料理人としてこの厨房に立っているのならば刀など無粋な物を抜くでない。料理人は料理人らしく、料理を以て吾輩に挑むが良い!!」
「良いでしょう。源頼光、推して参りますっ!!」
かくして、キャットの考えなしの発言が招いたこの事件は、互いがこのオーダーの数をどれだけこなせるかという競争になり、最終的に引き分けになってしまい、決着は次の機会になった。いつからここは食戟次元になったんだと、一人頭を抱える黒鋼の姿がそこにあったんだそうな。
というわけで、今回のホームズガチャは大勝利!! なんとエミヤ2人目と、青と黒のアルトリアが1人ずつ。それに加えてホームズさんが来るという大勝利!! しかし、この頃はまだ気づいていなかったのです。よもや、今年の水着ガチャがあんな結果に終わることになるなんて………………!!
あと、オマケのストーリーは割とマジでありそうな組織事情です。ここには書いてませんが、リップやサンタオルタがいたところに、バニヤンとアルトリアが2人も入りましたからね。厨房も大忙しですよ。ハードワークすぎてマスターの黒鋼君のストレスがマッハ。これは、過労でダウンするのも近いか………!?
それから、知らない内にキャットの絆レベルがカンストしてました。種火周回でいっつも使ってたからなぁ。少しの間お休みです。とりあえず、スキルレベルカンストを目指さないとな~。
ここまでの読了、ありがとうございました!!
次回もお楽しみに!!