それにしても2017年のハロウィンイベント。まさかの展開に驚きが隠せなかったですね。まさか、ピラミッドの上に姫路城が乗っかかるとは。その前に行われた剣豪も良かったなぁ。10月は楽しかった………。
11月。今のところ復刻クリスマスで終わってますけど、この後に今年のクリスマス。その後にセイレムって感じですかね? どんなシナリオになるのか、今から楽しみにですね!!
「く――――はははは!! 甘い! 遥かに甘いぞ勇者エリザベート一向よ!!」
「な、何ッ!? これもう終わりでしょ!? 最終局面で感動の再開を果たしてハッピーエンドのはずでしょ!?」
謎の男の叫び声に狼狽えるのは、今回の物語の主役。彼女に一度勝ってしまったことで自慢の城にピラミッドを逆さまに建設され、ここに来るまで色々と修業(?)を経て、それなりにマシになったことで秩序・善属性となった竜の勇者。一世代古い清く正しい勇者の武装、ぶっちゃけると露出の多い鎧。ビキニアーマという完全にちんちくりんな彼女には過ぎた代物を着込んで今回は参戦している。
「ちょっと!! 確かにちょっとレトロかもしれないけど、ちんちくりんとか言う必要なくない!? というか、地の文はしっかりと描写しなさいよ!!」
いやだって、今回ばっかりは擁護できないしおすし? そもそも、槍エリザと術エリザでオーバーレイネットワークを構築して、エクシーズチェンジ! ブレイブ・エリザ!! とか誰が想像できたか。初見の人は予想できたか? 否、出来なかったに違いない。というか、既に2017年のハロウィンイベントのガチャ報告をしないといけない時期なのに、復刻イベントを投稿している時点でテンション下がってるというか。ぶっちゃけ、早く亜種並行世界のガチャ報告も書きたい(切実)。
「ああ。全くだな地の文よ。それじゃ、このまま俺が勝利して城下町をもっと面白おかしい国にして………」
「させるわけないでしょ! てりゃ!!」
はい、ちゃんと仕事に戻りま~す。さて、遂に痺れを切らした勇者エリザベートが声のした方に自身の持つ剣を投げつける。剣を投げる勇者とはこれ如何にと思うかもしれないが、今回は偶発的にセイバーになっただけなので、特に剣術が得意になったというわけではない。自分の身に過ぎた剣を全力で投擲することで、それはかなりの破壊力を秘めた一撃になる。加えて、今回のイベントによって彼女が与えるダメージは2倍。たとえアーチャーを敵に回したとしてもそれなりにダメージを与える一撃が男に迫る。
―――だが、勇者エリザベートの一撃は彼に届くことはない。投げ飛ばされた剣を軽くかわし、あろうことかその勢いを殺すことなく柄を掴み、彼女に斬りかかる!!
「え――――?」
「っ、お嬢早く逃げろ!!」
数十メートルはあった距離を一瞬で詰め、そのまま上段から剣を振るう男。いち早くそれを察した緑の外套を着込んだ青年。アーチャー・ロビンフッドがエリザベートを抱えて飛び、ギリギリのところで回避に成功する。それを見た謎の男は、愉快そうに笑いながら剣を投げて返した。
「ははっ! 流石は(元)我がサーヴァント! この程度の一撃は躱されて当然だなぁ!」
「そいつは光栄なことで。んで? 何でアンタがそっち側に付いてんだよ?」
事と場合によっては。ロビンは暗にそう言いながら、腕に装着したボウガンに手を掛ける。相手が慣れ親しんだ人物であったとしても、自分の目的の為であれば容赦なく殺す。それが、無辜の民を守らんとした無銘の英霊。ロビンフッドが持つ唯一の矜持。それを理解しているからこそ、自身に向けられる殺気が心地よく男は感じた。
「知れたこと。今回の俺は、クレオパトラさんがやられた時に現れる隠しキャラとして参戦している! そう、ゲームで言うところの裏ボスという奴だな!」
「は、はい!? 裏ボスですか!?」
彼の発言に釣られるように露出の多い法衣に身を包んだ褐色肌の女性。エジプトを誇る魔術師の英霊、ニトクリスが驚いて声を荒げる。ゲームという存在にあまり触れていない彼女だが、それでも言葉のニュアンスは察することが出来ただろう。
――――そして、こういったものは裏ボスの方が強かったりするのである。前回は余裕が無かったので出番が無かったが、今回はそんなことは言わせない。全力で、眼前にいる勇者一行を薙ぎ払おう。
「さぁ! 本当の最終決戦と行こうじゃないか!!」
この場に集まった多くの英霊。その全てを敵に回し、俺は六人のサーヴァントを召喚して彼らに戦いを挑むのであった。
「あ~~~楽しかった! もう、このさ! あいつらのすげぇ嫌がる顔を見るのがすげぇ楽しかった!!」
「もう、鬱憤が溜まってたとはいえ、あんまり酷なことしちゃ駄目だよ?」
「そういうブーディカも楽しんでおったではないか。かくいう余も楽しかったがな!」
慣れ親しんだ召喚場にて、俺はいつもの二人と。ブーディカさんとネロと言葉を交わしている。今回行われているのは、去年の今頃開催されていた秋のメインイベント。何故かセイバーに転職したエリザベート共に、クレオパトラさんが占拠したチェイテ城を取り戻そうというストーリだった。結果としては、いつも通り俺たちが後方支援をして、カルデア組が敵を粉砕するというシンプル・イズ・ベストな作戦で物語は幕を下ろした。敵側に一騎当千の円卓の騎士がいたとはいえ、こちらに彼らの王様がいたのが幸いした。
~~~チェイテ城 広間にて~~~
『………何をしているのですか、このヒトヅマニア達』
『わ、我が王!? ち、違うのです! これには湖よりも深い事情が……』
『ああ………私は悲しい。こんな失態を王に見せることになるとは……』
『問答無用!! そこに直りなさい! この馬鹿騎士達!!
「………色々あったな。去年のハロウィン」
「そうだね。まぁ、今回は去年の焼き直しだから、今年はまた別なんだけど、一体どんなことになるんだろう……?」
「エリザベートはどこぞの騎士王の如き速さで増えておるからな。今年は今年で増えるのではないか? 何故か余が記憶している姿であれば、バーサーカーの適性もあったからな」
増殖するGならぬ、増殖するEと化したエリザベート。そもそも、何でハロウィン=エリザベート創造イベントになったのだろうか。謎の多くなってしまったイベントではあるが、これから行うことにはそれほど影響を及ばさないので捨て置く。
今回行おうとしているのは、その2016年のハロウィンで登場したサーヴァント達がピックアップされているガチャだ。俺たちは去年の内に、星5であるクレオパトラさんを召喚している。礼装も去年の余りを使えばいいので、今回のガチャはスルーしても構わない。だが、今回は譲れない物があってこの場に立っている。それは、クレオパトラさんによって占拠されたチェイテ城の門番していたランサー。ヴラド三世を召喚するためである。
「色々あったけど、やっぱりヴラド公は召喚しておきたいからな。バーサーカーじゃないけど、ランサーはランサーでいてくれると助かる」
「うちはもうランサーは必要ないと思うけどね。そういえば、念願のランサー・玉藻だってスキルレベル、全然上がってないないじゃない」
「スキル石が足りないんです~~。ついでにQPも足りないだけなんです~~」
「うむ……この間のネロ祭。結構な回数を回しておったが、一瞬で溶け落ちてしまったからな。ルーラーの育成というのはまこと鬼門よな……」
この間の嫁セイバー。ネロ・ブライドを召喚した時に行われていたイベント。通称ネロ祭ではボックスガチャという、簡単に言えば種火もスキル石、加えてQPもがっつり稼げる素晴らしいイベントがあった。実際に回した回数は80。一箱開けるだけで金色のスキル石が1つ手に入るので、確実に80個はスキル石を入手しているはずなのである。
にもかかわらず。その殆どが消費されてしまっているのが現状だ。というのも、今までスキルレベルの上昇を放置していたジャンヌ。それから、何故かルーラークラスに転職したホームズさんの育成をしてしまったからだ。ルーラーのスキル上げには各クラスのスキル石を5個ずつ必要になる。つまり、二人で合わせて30個も持って行かれたのだ。加えて、2人は最高レアリティである星5のサーヴァントだ。つまり、それ相応にQPを持っていくのだ。
確かに二人のスキルレベルを上げたことで大分戦闘が楽にはなった。だが。それに見合った代償が想定したものよりも大きかったというだけで。ネロ祭みたいなイベント、また開催してくれないだろうか。
「さてと、ぐだぐだ言ってないでガチャ回すかね」
「そうだね。今回は貴重な10連召喚一回だけでしょ? マーリンに感謝しないとね?」
「全くだ。我が師ながら、よくやってくれてるよ。………な? 貴方もそう思わないか?」
後ろを振り向きながら、俺は入り口でずっと待機していた人に話しかける。召喚場の入り口。そこには白銀の鎧に身を包み、短髪のブロンドヘアーに青い瞳の青年が立っていた。今は戦闘時ではないため愛剣を携えてはいないが、彼の持つ剣こそ、彼の騎士王の持つ星の聖剣と対を為す業物。刀身には疑似太陽が搭載されていたり、彼自身の技と剛力で幾たびも活路を切り開いてきた。そう、彼こそは――――
「まあ、そんな後ろにいなくていいからさ。もっとこっちに近寄ってくれよ。ガウェイン卿」
「御意。しかし、マスターもそこまで畏まらないでください。確かに、私は円卓に名を連ねる騎士ではありました。ですが、今は貴方に使えるサーヴァントの一人。ですので、貴方にはそう接していただきたい」
全世界に名を轟かせる円卓の騎士が一人。太陽の騎士ガウェイン。日がが出ている環境において無類の強さを発揮する最強のセイバーの一角を担う剣士だ。前々から、ガウェインを召喚しようとは思っていた。しかし、その悉くがピックアップスルーされるという地獄を見たため、この間マーリンが用意した大量のプレゼントの一つ。好きな星4サーヴァントが確定で1人召喚可能な呼符を用い、彼を召喚したのだ。
召喚された直後の彼は、騎士王であるアルトリアを見て号泣したり。月の聖杯戦争の記憶が少しは残っているのか、一部のサーヴァントにも挨拶をして回ったりと。色々と人気の高い人である。それもそのはず。少し天然なところを覗けば普通にイケメンなのだ。ここにいる職員でさえ一目惚れする程度にはイケメンだ。同じ男である俺から見てもカッコイイのだから、無理もないだろう。
「う~む。相変わらず其方は堅苦しいな。もう少し砕けて話せぬのか?」
「まあまあ。まだここに来て間もないから仕方ないよ。それより、ここでの生活には慣れてきた?」
「はい。まさか我が王や円卓の騎士達と再会し、かの勝利の女王である貴女と交流できるとは。私個人としては嬉しい限りです」
恥じらうことなく言うガウェイン卿のセリフに、ブーディカさんの表情が緩む。あの人は自分の行ってきたことを誇ることをしない人だが、ここまで言われて悪い気はしない。嬉しそうに。そして照れたように笑みを浮かべながら頭を掻く。
「さてと、そろそろガチャを回すから三人とも護衛役よろしくな」
「うむ! 其方には余が付いておるゆえ、安心してガチャを回すが良い!」
胸を張りながら言うネロの心強さに安堵しながら、俺はこの日の為に残しておいた呼符と聖晶石を開放する。あの時。フランスで再開を約束したバーサーカーの彼とも契約を結びたいが、今回はランサーの方を優先する。というのも、彼は俺が良く知る月の聖杯戦争に参加した英霊の一人だからだ。星4以下だと、彼を召喚したようやくコンプリートになるため、ここで何としても召喚しておきたい。
「まずはマーリンからもらった呼符十枚! 行くぞおらァ!!」
手に握った黄金に輝く札をばら撒く。それに含まれた膨大な魔力を飲み込み、システムは今日も元気よく起動する。一本、または三本に分かれる。だが、召喚されるのは全て星3のカードばかり。イベントを有利に進めるための星4のイベント礼装が出ることもない。何ということだろうか、前回の話で感動してゲットした呼符が全て消えてしまった。
「………もしかしなくても、今回はガチャ運が悪いのか。普段なら、呼符による十連召喚で礼装が、今回は一枚は出るはずなんだが」
「まあ、この間星5のサーヴァントを出したばかりだからな。それに、この間から研砥のガチャは成功が多い。この辺りで落ちておかないと、新年が怖いぞ?」
「恐ろしいこと言うな……! 俺は今、正月に来るであろうメルトリリスピックアップに備えて貯金してるんだからな………!」
この間のブライドのピックアップから早二カ月。毎月野口を三人ずつ貯蓄している俺にネロのセリフは効く。ここで余談だが、正月のピックアップガチャには新しいサーヴァントが一人か二人追加され、それとは別に復刻される人が多いのだ。現に、今年の正月はイスカンダルやイリヤが再登場していた。特殊な特異点で出会った人と再会出来る唯一の機会だ。その時を迎えるためにも、今は可能な限りの投資や聖晶石の無駄遣いは控えたい。だから、願わくば呼符で召喚されることがベストだった。
だが、現実はそう簡単に物事が運ぶはずがない。結局、呼符による召喚は失敗に終わった。ならば、次は最初で最後の十連に挑むしかない。
「…………ふぅ。改まってやってみるとなるとさ。やっぱり、失敗したらと思うと怖いわ」
「しかし、ここで撤退するのはよろしくないかと。一度決めたのなら、最後まで貫き通していただきたい」
「分かってるって。たとえ爆死する結果に陥ろうと。回さなくて後悔するくらいなら、回して後悔したいからなァ!!」
花の魔術師にして我が剣の師匠が一人。マーリンが渡した30個の聖晶石が入った封を解き、その全てをサークルに注ぎ込む。膨大な魔力が込められた石を吸い込み、先ほどとは打って違いキラキラと輝きながら稼働する召喚システム。このガチャが失敗に終われば、次にランサー・ヴラド公が召喚可能になる日は遠のく。何としてもここで召喚しておきたい………!!
「っ、ここで星4のイベント礼装! 最低保証の星4確定が消えたか……!」
「まだだ。まだ召喚は終わっておらぬ!」
「そうだよ! 最後まで諦めなければ奇跡は起こる! 腹が立つことだけど、この間のネロ公を思い出して!!」
「そしてさりげなくディスられたぞ余!?」
二人の心強いエールを糧に、最後まで食い見るように召喚サークルを睨み付ける。どこぞの某ランチャーではないが、目から熱線が出そうなくらいに睨み付ける。
「引けば老いるぞ。臆せば死ぬぞ。強請るな、勝ち取れ。さすれば与えられん―――!」
「それ、別の作品のセリフのような。というか、結構古いネタだよね……?」
「まあ、分かる人がいれば良いかと。私としても、あの作品は面白いと思いますよ」
「えっ、円卓の騎士って漫画読むんだ」
呪詛の如く呟きながら、眼前に現れるカードを必死の思いで睨み付ける。今回で来なかったら、本当に彼とは“縁”がないということになってしまう。そんな現実、認められるものか。是が非でも彼を召喚したい一心の俺。そんな俺に、ある奇跡が起こる。回数にして6回目。十連召喚も後半に入った直後。銀色の槍兵のカードがバチバチと音を立てる。眩い光を放ちながら銀は金へと姿を変える。
―――星4以上のランサーの召喚が、ここに確定した。
「ヴラド公――――!!! 宝具発動と同時に無敵貫通が付与されるヴラド公―――!! 王ではなく武人としてヴラド公―――!! 頼むから来てくれヴラド公―――!!」
「………あそこまで行くと、一種の狂気よな。将来、“座”に迎えられるならバーサーカーではないか?」
「いえ、もしくは物欲センサーに抗うアヴェンジャーかと。どちらにしても、我々としては複雑な心境になりますが」
「いやいや! そういったことならキャスターとかでしょ!? ネロ公はともかく、ガウェインまで何言ってるの!?」
段々騒がしくなる召喚場。何だかいつものようにぐだぐだし始めてきたが、あまり気にしないで目の前に現れんとする英霊の召喚を見守る。カードから黄金の粒子が溢れ出し、それが新たに召喚されるサーヴァントの姿を形作ってゆく。
召喚された際、最初に目についたのは異常なまでに刺々しい鎧だ。敵味方であれ、触れた者全てを貫くと言わんばかりに鋭利な鎧。それは胴体や肩のみならず、指先やつま先までも覆われている。後ろで一つに纏められた白い髪に、血のように赤い両目。獰猛な笑みを浮かべながら、目の前に降り立ったサーヴァントは口上を述べる。
「サーヴァント・ランサー。ヴラド三世である。
友よ。あらゆる不徳、すべての不義を糾す戦いを始めよ」
「ヴラド公―――!! かっこよくて悪属性のサーヴァントを容赦なく串刺しにするランサー・ヴラド公――――!!」
「む? 貴様は彼の特異点にて、カルデアのと敵対していたアトラスのマスターか。吾の召喚をここまで喜ぶマスターがいるとは、物好きな者もいたものだな」
「何を言っているのですか!! むしろ、召喚するのが今年になってすいません! 去年もヴラド公を狙っていたのですが、何故かクレオパトラさんが来るという結果になってしまい……」
「構わぬ。吾を召喚しようと躍起になっていたことは事実のようだ。なればこそ、我が祖国、ルーマニアの大地を護りしこの槍。貴様に預けるには相応しいだろうさ」
カッコよく笑うヴラド公から放たれる“漢”のオーラに圧倒される。この人はこういうことをあっさりと言ってしまえるから卑怯だ。俺がいつまでも言えないことをさりげなく言う。それがとても羨ましくて、憧れたくなる。
「何はともあれ、これからは貴様がマスターで吾がサーヴァントだ。良き指示を期待するぞ、マスター?」
愉快そうに笑いながら、召喚されたヴラド公は後ろにいる三人の元まで下がる。だが、目の前に立つ青年を見た瞬間。一瞬にして喧騒が収まった。9回目でまたイベント礼装が出てきたのを確認した俺は、後ろが気になって振り返る。すると、そこには互いの獲物を手に取ったヴラド公とガウェインがいた。どちらも一歩踏み込めば戦闘が始まるくらいに張り詰めた空気だ。一触即発な状況になったことに驚きながら、二人に声をかける。
「ちょ、何やってんだ二人とも!? ここで召喚される前に何があったとしても、頼むからいざこざを起こしてくれるなって、少なくともガウェインには伝えたよな!?」
「ええ。ですがマスター。私に戦うつもりはありませんが、目の前の彼はそう言うわけではないようなので」
太陽の聖剣。
「はっ。吾と貴様とは多少なりとも因縁がある。どうだ、己の主を正すことなく消えた忠犬が如き騎士よ。今の貴様に、主を正すだけの気勢は持ち合わせているか?」
「確かに、私は、私たちは我が王に頼りすぎた。二人目の王にも、私はただ彼の剣であろうとした。しかし―――」
懐かしい記憶を思い返すように目を閉じ、再びその瞳を開く。握られた聖剣からは炎が溢れ出し、眼前に立ちはだかる男を斬り裂かんと言わんばかりの殺気を放つ。毅然とした態度のまま、ガウェインは自身の気持ちを吐露する。
「ーーーしかし、三度目はない。私は黒鋼研砥というマスターに仕えるサーヴァントであり、彼の敵を焼き尽くす騎士だ。だが、彼が道を誤ったというのであれば。私は我が聖剣の輝きを以てそれを正す。たとえ、そうなったのがマスターの意思だとしても」
今度こそ、私は誤った選択をしない。ガウェインは眼前に立つ槍兵にそう言い放つ。その強い意志に応じるように聖剣から漏れ出れる炎も猛る。ガウェインの返答を聞き届けたヴラド公はしかめっ面を消し、少しだけ笑みを浮かべてから槍を消す。同時に殺気といったものも消え去り、戦闘が始まるという雰囲気は消え去った。
「そうか。ならばよい。何、いつぞやの聖杯戦争での貴様の在り方を見たが故な。何分、武人として呼ばれた吾は気性が荒い。今の問答は、今の貴様に対して無礼であったな」
「いえ、これからは共に肩を並べて闘うのですから。気になったことを聞くということはおかしなことではありません。それでは、失礼ながら私がこの施設の案内を務めさせていただきます」
「うむ。………一度、彼の騎士王とやらとも会っておきたいものだな」
「是非。きっと、我が王もお喜びになるかと」
さっきまでの空気はどこへやら。愉快そうに笑いながらガウェインとヴラド公は召喚場から立ち去っていった。目の前で行われた展開についていけず、そのまま彼らを見送ってしまったが。特に問題を起こす人たちでもないし、恐らくだが問題は無いだろう。
「それにしても、さっきのはちょっと肝を冷やした。まさか、ヴラド公とガウェインに因縁があるなんて……」
「余やキャス狐もそうだが、こことは違う聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントだからな。多少なりとも、そういったことがあっても仕方はないであろう。エリザベートと彼の串刺し公に、因縁があると同じようにな」
「だからと言って、まさか召喚された直後に問答を始めるとか予想できるか。あ~良かった。ここで暴れらたら溜まったものじゃないからな」
どこか遠い目をしながら言うネロに、俺は少しだけ胸が痛くなる。多少は覚悟していたことだが、自分の呼び出したサーヴァントが互いを傷付けあうのを見るのは辛い。それが仕方のないことだとしても、そうなる宿命だとしてもだ。
「………さてと、召喚も終わったし。そろそろ部屋に戻ろうか。早く周回して次の戦いに備えないと」
「そうだな。………ところで研砥。その、頭に乗っている茶色い毛玉は何だ?」
「は? 毛玉?」
ネロに注意されて初めて気が付いたが、何やら暖かいものが自分の頭に乗っている。何だろうと適当に触ってそれを拾い上げ、自分たちに見えるように取り出す。ふさふさした茶色い毛玉だと思っていたが、その表現は少しばかり改める必要がある。正確には、どこか原始人みたいな衣装に、何故か棍棒を持った茶色い熊のような人形だ。こう、名状しがたい熊人形のようなものと評したほうが良いかもしれない。
「………何か嫌な予感しかしないから、ペンテシレイアさんのところに放り込んでおくか」
「ちょ!? お前なんつー
「力の殆どを吸い取られた哀れな人形に言われたくはない……。それより、相方の女神様はどうしたんだよ? ぶっちゃけ、あっちが本体だろお前?」
「霊核的にはこっちなんだけどなー。それよりアルテミスか? いや、何でか俺の方が先に召喚されちまってな。あいつ以外の上に乗ったことがなかったから、偶には別の誰かでもいいかなああああぁぁぁぁぁぁ!?!?」
素朴な疑問を目の前にいる名状しがたい熊人形のようなものに尋ね、その答えを聞いている時だった。どこからとなくフワリと舞い降りた女性が熊人形を取り上げ、両手を使ってそれを万力の如く握り締める。小さい体の熊人形はそれを一身に受け、苦悶の声を上げる。だが、それを実行している女性は聞く耳持たんと言わんばかりに締め付け続ける。
「もうっ! ダーリンが先に召喚されるのは仕方ないけど、私がいない数分の間に浮気だなんて! 許さないわよ~~~!!」
「ちょ、おまやめろ!? 出ちゃう! 人形じゃないけど綿みたいなの出ちゃう~~~~!!」
目の前に行われているコントに追いつけず、二人(?)の行いをただ見続ける俺たち。数分後、少しは気が収まったのか。熊人形を自分の頭の上に乗せた女性はハッと現状を認識し、照れ笑いをしながら熊人形を肩に乗せ、仕切り直すように咳をする。
「え、え~と。色々とやっちゃったけど、一からやり直しても構わないかしら? 構わないよね?」
「え、あっ、はい」
「やたっ! ありがとねマスターさん! それじゃ、やり直すわよダーリン!」
「いや。暴走したのお前だけだからね?」
漫才のようなやり取りをするように二人に俺は苦い笑みを浮かべる。仕切り直すということは、召喚された際のあれもやり直した方が良いのだろう。なら、一からやり直すとしよう。
サークルの中央に出現したのは、胸元が露出しノースリーブのワンピースによく似た服をきた白髪の女性。サファイヤのように澄んだ青い瞳に、手に握られた輝かしい弓。そして、抜群のスタイルを誇る女性の肩に名状しがたい熊人形のようなもの。
「ちょっと待て! 何で俺の名称が名状しがたい熊人形のようなものなわけ!?」
「ダーリン! 静かにするっ!!」
「グホォォッ!?」
――――閑話休題。抜群のスタイルを誇る女性の肩に乗る、原始人が着ていたそれによく似た民族衣装に、小さい棍棒を握りしめた熊。信じられないかもしれないが、あっちの方が本体だったりする。そんな摩訶不思議な召喚のされ方をした英霊の名は―――
「はーい! アルテミ……じゃなかった、オリオンでーす!」
「ペットとかぬいぐるみとかのオリべえでーす。よーろーしーくー」
「………まさか、こんな短期間に星5サーヴァントを召喚することになろうとは。それにオリオン&アルテミスさん? ピックアップスルーもいいとこだなぁ」
若干思考を放棄しながら、俺は溜め息を漏らしつつ目の当たりにした光景を理解する。いや、まあ。前回の玉藻さんという結果があった。だから、一重にピックアップスルーで新たな星5サーヴァントが来るという事態は理解している。だが、まさかクラスごと違うとか思わないだろう。
「何はともあれ、こちらは貴方たちの召喚を歓迎します。よろしくお願いします」
「はいはーい! 大分時間が掛かっちゃったけど、お団子の時以来ね! これからよろしく~!」
「相変わらずのハイテンションだなぁお前。まあ、こんななりで力の大半を奪われちゃあいるが、一応俺が本体ってことになってる。そこんとこよろしくな」
「おう。とりあえずオリべぇはペンテシレイアさんのところに放り込んでおくわ」
「おい馬鹿ヤメロッての!! もしかしなくてもギリシャ男性特攻とかいう、俺やヘラクレスみたいなのしか通じねぇ女のとこに連れてくんじゃねぇ!!」
本気で怯えているのか、ぷるぷると震えるオリオンを見て少しだけ優越感を感じる。この間の水着イベントでは散々やらかしてくれたからな。少しばかり意地悪をしても問題ないだろう。
「さてと、新しい人が二人も来てくれたし、今日はパーティーでも開くか」
「そうだね。それじゃ、行こっか」
「うむ! 月の女神と狩人よ! ブーディカの料理は美味しい故、楽しみに待つが良いぞ!」
「あら、それは楽しみ~! ここで食べたお団子も美味しかったから、すっごく楽しみだわ~!!」
「それじゃ、俺はここの探検でもしてくるかね。あわよくば美しい女性とお近づき、すいません! 俺も付いていきまーすッ!!」
何かやらかしそうになったオリオンに弓と刀をちらつかせる俺とアルテミスさん。身の危険を感じた哀れな人形は、定位置であるアルテミスさんの肩の上に乗る。喋る熊人形擬きから、名状しがたい熊人形のようなものに出来なかったことを残念に思いながら、俺たちは食堂に向けて歩き出すのであった。
~~~
「………ふぅ。今日も一日生き残ったな」
慣れ親しんだ自分のマイルームに置かれたベッドに寝転がりながら、俺は今日もハードだった一日を思い返す。マーリンのおかげで召喚できたガウェインに加え、ヴラドさんにオリオンたちのレベルを上げるため、ここ一週間は種火狩りに出かけていた。おかげで、エレナさんと頼光さんの絆レベルが9に達したり、最近だと戦闘に連れて行けなくなって暇になったキャットが暴走したのを宥めたりと。色々と忙しい日々を送っていた。旅を始めた頃には無かったが、今はこの日常が楽しいと感じている。だというのに――――――
「なんで、こんなにも嫌な予感がして止まらないんだ?」
「………まったく、相手は死にぞこないの魔神柱だというのに、何をビビってるんだが。ギフトガウェインとか、殺生院キアラとかの方がよっぽど恐ろしいっての」
くだらないことを考えている暇があれば休む。愛用のコートを椅子に掛け、手早く寝間着に着替える。
―――何はともあれ、今日はもう終わりだ。いつ戦闘になっても大丈夫なように。早く休むとしよう。
季節はもう10月。そろそろ新しいハロウィンとかも始まる季節だ。今年はどんなエリザベートが出現するのだろうと呆れつつも、俺は布団を強く体に巻き付け、眠りに着いた。
―――地獄を見た。ただただ、この光景を一言を表現するのであれば。それは地獄だ。燃え盛る大地。山のように積み重なる兵士たち。腐敗臭がこの場を包み込み、想像を絶するような“死”の匂いが充満していた。いつぞやの夢の世界で見たエミヤの過去や、特異点冬木で見たあの世界よりも濃い“死”の匂い。精神の弱い者が見れば悲鳴を上げずに失神するレベルだ。旅を続けた末、ここまで精神が太くなった俺でも吐き気がする。ここは一体どこで、何が起こっているのか。それを考えていると、目の前に黒い人のシルエットが現れる。
『………無礼者め。人の夢に入り込み、私の記憶を覗くか』
「こっちだって好きでやってんじゃねぇよ。つか、テメェは誰だ? お前がこれしたんじゃねぇのか?」
声が重なって聞こえる。マーリンのように自在に人の夢に入り込めるのではなく、これは契約したサーヴァントの記憶を見ている現象に近い。普通、相手には自分の存在に気付くことが無いが、今回は別のようだ。シルエットからでは分からないが、どこかで会ったような気がする。
「この、見るからに地獄にしか見えない風景はお前の心象世界か? これが深層心理に刻まれるなんて、よほど無残な一生を送ったんだろうな」
『貴様に言われるまでもない。私は、私として世界を渡り歩いた。その果てにこの世界は私の内面に刻まれ、復讐するだけの力と機会を得たのだ! 貴様なぞに、貴様なんぞに邪魔立てはさせん!!』
「はっ、安心しろよ。それは俺の役目じゃねぇ。俺はあくまで裏方。主役や美味しいところは全部。あいつが持って行くからよ」
何故か、俺に対し怒りの念を込み上げる男に対し、俺は挑発するように男を嘲笑う。恐らくこれは、特異点が見つかる直前に見るという夢なのだろう。狭間がオルレアンで邪ンヌの夢を見たというし、間違いはないだろう。
それにだ。ここで死ぬつもりはないが、ここで倒れたとしてもカルデアのマスターである狭間がいる限り、物語は続いていく。俺はあくまであいつのサポートをするモブなのだ。いつ運命とやらに切り捨てられるか分かった物じゃない以上、いつでも死ぬ覚悟は出来ている。だというのに、目の前に男は俺の返事を聞いた直後、愉快そうに笑った。まるで、何も理解していない子供を見て笑う親のように、馬鹿にして笑った。
『愚かな。既に、カルデアの勇者は悪夢に沈んだ。貴様が出る幕などありはしない』
「……あ? 今、何て言った?」
挑発していたさっきの表情から一変。言葉を発すると同時に殺意を混ぜ込みながら、目の前の男を睨み付ける。今の発言が正しいのなら、あいつは。狭間は悪夢に墜ちたと聞こえた。それはつまり、いつぞやの監獄塔のような事件になっているということだろうか。
『信じられぬというのなら、この夢から覚めたあとに尋ねるといい。そして狂い泣け。非力な自分を呪い、目の前で勇者が朽ち果てる様をな!!』
「っ、待ちやがれ! こんの、外道が――――――!!」
高笑いをしながら消えていく男の気配。逃がすものかと抜刀して斬りかかるも、シルエットを斬り裂いただけで手応えは感じない。徐々に薄れていく地獄の景色に舌打ちを漏らしつつ、現実世界で何が起こっているんだと。俺は少しだけ焦りを感じるのであった。
というわけで、今回の復刻ハロウィン2016では念願の星4ランサー! 領主ではなく武人としての頃のヴラド公と、何故かピックアップスルーで来ちゃったオリオン&アルテミスという結果になりました!! 呼符10枚と十連召喚一回でこれは大勝利!! けど、今年になってから急に星4以上のアーチャーが召喚されまくったせいで、育成が遅々として進まない…………。新宿が始まるまで、うちの星4アーチャーってクロエだけだったのに。急にこんなことになって驚きが隠せません。ロビンや子ギルが頑張ってくれてた時代は何だったんだ………。
あ、パールヴァティさんガチャですが。申し訳ありませんが順番を入れ替えて、次回は『英霊剣豪七番勝負』のガチャ報告をさせていただきます。ぶっちゃけると、はやく『下総国』の報告がしたくてですね……。いえ、Twitterを見てくださっている皆様なら既にご存知かもしれませんが。それでも、書きたくなってしまったので。私情を挟んで申し訳ありませんが、パールヴァティさんピックアップガチャは次々回に持ち越しになります。ご了承くださいませ。次のイベント用に石貯めてたんですけど、何でか知らないうちに回してましたよ。いやぁ………ストーリーを終わらせて、あの結末を見て回さないって選択肢ってあるんですかねぇ?
そういえばあの頃、今年のハロウィンは何ザベートが配布されるんだろうだとか。今年はワダアルコさんのイラストはどうなってるんだろうとか。玉藻のモーション変更とか、『変化A』→『呪層・黒天洞』に変化したりとか、あわよくば霊衣開放でゴスロリ姿にならないかなとか。色々と考察していましたが………。まさか、あんな大事件になろうとは。刑部姫が出てきた時は驚きましたが。まあ、イベントなんで十連一回は回しましたよ。こちらもTwitterを見てくれてる人なら知ってるかもしれませんが、ちゃんと小説形式で発表しますので少々お待ちくださいね。
ちなみに、本編で書いた6人のサーヴァントは、前衛から順にブーディカさん・術ギル・静謐・エミヤ・赤ネロ・ホームズさんです。私のところでの基本的なスターティングメンバ―を相手にどこまで戦えたのか。それも少し書こうとは思ったのですが、あまりにも長すぎるためにカットしました。これ書くくらいなら本編進めろって、友人にも言われましたしね(苦笑)
ここまでの既読、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!!