さぁ皆さん! これで2017年のガチャも最後! まさか、というよりも大体分かってたかもしれない冥界の女主人、エレシュキガルが実装&ピックアップされた2017年クリスマスピックアップガチャです! ですが、今回のピックアップにはまさかの要素が混じっており……? 何はともあれ、本編スタートです!
クリスマス。それは大人から子供まで分け隔てることなく愛されている日である。深夜に寝静まった子供たちにプレゼントを運んだり、大人は普段より少しだけロマンチックな一日を過ごす。友達以上恋人未満である若者たちはこれ機に一線を越えようとしたりと、様々なことで記念日になりそうな時期だ。勿論、そういったイベントを見過ごす者はこのアトラス支部でも少なくない。初めてのクリスマスは夢の中だったり、その次はオルタ化したジャンヌ・ダルクが若返りの薬をジャンヌ・オルタ・リリィ(略)になったりと。色々と意味☆不明なイベントであった。だが、今年こそはまともなイベントにするのだと一部のサーヴァントたちは張り切って飾り着けや料理の準備を整えていた。
小太郎や呪腕のハサンといった身軽く活発な行動もできる人たちは支部内の飾りつけを担当。キャスターのギルやメディアといったキャスターは持ち前の『陣地作成』・『道具作成』スキルを用いて必要な機材や演目の順番決め、それからステージなどのセッティングを。他にもブーディカやエミヤといった家事万能な人たちはこの日の為にとっておきの料理の手はずを整えたり、ホームズはまた悪巧みをしていた教授にバリツしたりと。それぞれが忙しない日々を送っていた。
そんな中、彼らのマスターである黒鋼が何をしていたのか。それは、カルデアに所属していたサーヴァントたちのデータをこちらに転送し、何か緊急を要することがあれば即座に駆けつけられるように空間転移サークルを作成したりと。まあ色々としていたのだ。勿論、カルデアとアトラスに直接作るのではなく、カルデアのある山脈の近くに設置する。これはダ・ヴィンチからの提案であり、何らかの方法でカルデアが陥落した場合はそこからこっち側に攻め入られる可能性があるからとのことだった。尤も、あんな魔境に在るカルデアが壊滅するような目に遭うとは到底思えないのだが、万が一ということもある。それに、サーヴァントのデータをこちらに移し替えているのも、魔術協会からの通知があったからだ。
曰く。オルガマリー前所長、並びに所長代行をしていたロマニ・アーキマンの存在が確認されなかったため、人理継続保証機関フィニス・カルデアに新しい所長を送る。それにともない、危険な存在であるサーヴァントはカルデアの運営を引き継ぐ作業を行うこともあり、キャスター・『レオナルド・ダ・ヴィンチ』一騎のみを例外として残し、他のサーヴァントは全て退去させよとのことだ。無論、これは明らかにカルデアにいる
最初から繰り返すかもしれないが、今は12月の中旬。もうすぐクリスマスという一年を締めくくる最後のイベントが起こるのだ。にもかかわらず起こった事件というのは、サーヴァントをも疲労昏倒する謎の病の発症である。ナイチンゲール婦長やサンソンいった医術に特化したサーヴァントたちが勢揃いでこの病の究明に努めたが、手掛かりになるような答えを得ることは出来ず、逆に自分たちも病に侵されてしまうという事態に。更にクリスマスを楽しみにしていたジャックやナーサリー、準備をしていた多くのサーヴァントもバタバタと倒れていく様を見て、これは明らかに何者かがここを攻撃していると察知した。確認したところ、カルデアの方も似たような状況に陥っているらしい。どうにかせねばと対策を考えていた時、今にも斃れそうなのに相変わらずの空元気でウルクの健在を知らしめるギルの姿があった。彼は持ち前の
「何を以て我らを襲うのは分からないが、このままでは
「いやその奇跡は無理だろって、いきなりレイシフトとかふざけんなよギルてめぇ――! 帰ってきたら覚えとけよ―――!!」
「フハハハハハ! 小間使いの戯言など聞く耳持たぬわ! 精々冥界に魂を囚われぬように気を付けて帰って来るがよい!」
ということがあり、なんやかんやで冥界下りをすることになってしまったアトラスとカルデアの二組。さらに謎の羊によってサンタへと変化させられたアルテラと一緒にメソポタミアの冥界。つまり、そこの主人であるエレシュキガルにこの騒動を止めてもらおうと説得しに向かったわけなのだが、問題なのは今の時間軸だ。黒鋼達がいたのは2017年に対し、今回レイシフトで向かったのは第七特異点が解決して少し経った冥界。つまり、今回のシュメル熱を起こしたエレシュキガルは
なお、その際には魔獣戦線で戦死したサーヴァント等が門番として立ちはだかっていたのだが、ある階層においてはその限りではなかった。第六階層、誰も居なかったはずのこの場所にのみ。ある男が彼らを待っていたのだ。白いローブに身を包んだ
「え、ちょっと僕の扱い雑すぎないかな! 確かにちょっと黒幕の正体をバラしちゃったり、彼女にとって申し訳ないような発言をしたのは理解しているつもりだけど、それでもちょっと酷すぎるような」
「うるせえ、限凸した『起源弾』を装備した金時のバイクに轢き殺されたくなかったらとっとと要件を言えよ師匠」
「え、いやだから君も一応弟子なんだからもう少し言葉を選んで」
「よし分かった、『
「今のエレシュキガルは記憶を消えてるから説得しても効果が無い! 彼女に宿ったネルガルという神の権能が、罪の意識で弱ったエレシュキガルに取り憑いてその使命感を利用してるだけなんだ! 彼女を消して、今度は自分が冥界の主に成り代わる為にね!だが、そんなバッドエンドは私としても願い下げさ! さぁ、頑張って冥界の危機を救おうじゃないか!」
本当に弟子と師匠の会話かと思うほどに殺伐した話ではあったが、何とか花の魔術師の協力を取り付けて共に冥界下りを続行。途中で金星の駄女神が現れたような気がしたが、夏のイベントと同様うっかりなところは変わらず呆気なく出落ちした。
さて、そんなこんなでようやく冥界の底の底。深淵と称された場所にまでやって来たわけだが、そこでもさっき名前が出ていたネルガル神が邪魔をしに来た。敵として現れた以上は駆逐するだけなのだが、今のあれはこの冥界に巣食う怨念の集合体。それに対抗できるのは冥界の女主人であるエレシュキガルのみであり、その彼女が協力して貰えないことでゾンビの如く蘇ってはこちらに攻撃を仕掛けてくる。深淵の底で消えようとしているエレシュキガルを引きずり上げるべく、カルデア組は深淵の底へ。黒鋼達はネルガルを相手に時間稼ぎをすることになるのだが………如何せん相性が悪く、向こうの体力は無尽蔵なので力の質はこちらが上だったとしても、数を頼みにした戦略で潰されてしまった。
さしもの彼もここまでかと諦めかけたその時。なんとエレシュキガルが
相変わらず美味しい所は持って行くと感心しながらも、ふと終局特異点での出来事を思い出した。あの時、確かにエレシュキガルは時間神殿に姿を現していた。一瞬しか顕現していなかったとはいえ、このエレシュキガルがあの時の彼女に繋がるというのなら、ここまで切羽詰まって冥界を救う必要は無かったのではと、現実主義な黒鋼は思い立ってしまった。そのことについて意見を聞こうと羊のお兄さん(笑)を探したのだが、既にいつもの理想郷へと帰還していた。そのことに苦い笑みを浮かべながらも、黒鋼は一人寂しく冥界を後にした。エレシュキガルに礼を言う必要は無い。今回は彼女にあの時の恩を返しに来たのだから。
別れを言う必要は無い。きっといつの日か、また会える日が来る。そんな日を心のどこかで望みながら、黒鋼達は彼らに気付かれぬ内に冥界を後にするのだった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「ということがあったわけで。今回の周回場は冥界になっております」
「承知しております。周回ぷれいというのも、げえむを進めるために大事な要素でございますからね」
「けど、流石に限度っていう物があるでしょ。私、結構しんどいんだけど?」
「すまん。二人には申し訳ないとは思ってる。だけど、冥界が閉まってしまうギリギリまでお願いしたい……!!」
場所は変わり、例の如く黒鋼は召喚場にて新たな英霊の召喚を執り行おうとしていた。今回、彼の護衛に付いていたのは二人のアーチャー。一体誰の入れ知恵か、それとも本当にそっちの才能があったのか。知らない内にレクリエーションルームにあるゲームのハイスコアを叩き出してしまっている廃人ゲーマー、もとい、第七特異点でその身を散らして世界を護ったアーチャー・巴御前。それから、セイバーの相手ならば私に任せろと言わんばかりのNP回復スキル&クリティカルスターを大量に生む褐色ロリ蠱惑キス魔のクロエ。二人には今回の周回でかなりお世話になっているので、冥界周回の帰りに召喚の護衛に付いてきて貰っている。ちなみに、いつも黒鋼の隣に立っているはずの彼女は件のシュメル熱がまだ抜けきってはおらず、復活したナイチンゲール婦長が監督の下で絶対安静中である。クリスマスの準備もやり直しで、彼女が復帰する頃には再開できるだろう。
「いや、別に周回に同行するのはいいのよ。でも、あの黒いセイバーに向かって鶴翼三連をするとこう、私の中にある霊基がちょっとおかしくなるというか。なんというか、複雑な気持ちになるのよねぇ。あとで
「やめてさしあげろ。さり気なく並行世界のお兄さんの心の傷を抉るんじゃあない……!」
「それよりマスター。次の周回はいつなのでしょうか? 私、そろそろ一撃であのセイバーを落としてみたいのですが。所謂ワンパンチャレンジに挑戦してみたいです!」
「あんたもあんたで物騒なこと言うなよ!?」
目を爛々と輝かせながら恐ろしいことを言う巴御前に恐々としながらも、今回の召喚用に用意しておいた聖晶石を取り出す。今回の目標は、無事に冥界の女主人に復帰したエレシュキガル………ではなく、同時ピックアップであるキャスターのギルガメッシュを引く事である。同じくランサーのメドゥーサ(リリィ)も引ければ御の字だが、正直なところギルだけで今回のガチャは打ち止めにしたい。
「それにしても以外よね。研砥が一番レアリティの高い彼女じゃなくて、キャスターの金ぴかを狙うなんて。一体どういう風の吹き回しかしら?」
「別にそんなんじゃねぇよ。エレシュキガルとのやり取りは既に済ませた。さっき報告を聞いたが、カルデアの方は無事に召喚成功したらしい。エレシュキガルとは……まあ、そんなに話したことも無いし。あんまり思い入れもないからな。イベント礼装も欲しいし、この際ギルの宝具強化に石を使いたいってだけだ」
「それは賢明な判断かと。ここ最近、研砥殿の召喚は成功の連続で御座います。ご自身の身にあった召喚を行うのは良きマスターの第一歩と言えましょう」
「だよな。つまり、今回の俺は正しくガチャを回すという訳だよ! はっはっはっはー!」
悪趣味な高笑いをしながら、着々とシステムの起動と聖晶石をサークル内に入れる。今回は本当にエレシュキガルを狙うつもりは毛頭ない。というより、ここで新しいサーヴァントを召喚してしまえば、本当に育成が追い付かなくなるのだ。加えて、彼女の育成には『宵鳴きの鉄杭』という新素材を216本も持って行くという情報をカルデアを通して聞かされている。あいつはそれでも喜んで周回をしているらしいが、生憎と石を砕いてまで周回する気力は彼らにはない。
「そんじゃパパっと回して終わるぞー。これが終われば、また冥界でオルタ狩りだからよろしく頼む」
「はいはい。さっさとやっちゃいなさいな。すり抜けた育成する日々に逆戻りするのを期待してるから」
「残念だけど、今回のイベントでたんまりと金種火を回収したからな。新しい人が来ても一気に育成できるぞ」
「いえ、すり抜けは普通に良くないのですから、あまり滅多なことは言うべきではないと思うのですが……」
巴がこちらに気を使うように意見を申してはいたが、当の本人はそんなことはつゆ知らず。勢いに任せて十連召喚に挑んだ。だが、結果は散々な結果になってしまった。最低保証、つまり星四の礼装が出て終わるという悲劇が起こってしまったのだ。しかも、出てきた礼装は『鋼の鍛錬』というイベント礼装でもない。
「………まあ、この間まで結構な引きしてたからな。こんなもんだよ、こんなもん」
「とか言ってるけど、結構複雑そうな顔してるわよ? もしかしたら、今回は久しぶりに大爆死かもね」
「どろ率やがちゃ運が高いのを知らしめると不況を買いますからね。研砥殿も、久方ぶりに地獄を見るべきなのかもしれませぬ」
「さりげなくディスのやめてくれない? 鉄の意思を持ってる俺でもグサリとくるぞ?」
散々な言われように苦笑しながら、続けざまに二十連目の聖晶石をサークルに放り込む。次はイベント礼装が二、三枚くらいは出るだろうと淡い希望を込めて行った十連召喚。確かにイベント礼装はこの十連で出現した。ただし、星四のイベント礼装が一枚だけ出現し、他は全て既存の星三のサーヴァントと概念礼装という凄まじい結果になったが。
「……………………………………まあ、この間まで結構な引きしてたからな。こんなもんだよ、こんなもん」
「いや、動揺隠せてないからね研砥。しっかし、まさかここまで酷い有様とは。この後が不安ね」
「しかし、回さなければ結果は付いてきません。回す、回さないはマスターが決めること。ここで撤退しても私は何も言いません」」
「いや回すけどね。あと三十連は出来るし、むしろ二十連して何も得られませんでしたとかシャレにならないし」
このまま負けてたまるかと、勢いに身を任せて三十連目の聖晶石を投入する黒鋼。ぶっちゃけた話、今まで振り切れていたガチャ運が低下し始めているだけなのだが。さすがに礼装が一枚だけというのは心もとない。そも、二十連で星三のイベント礼装さえ出ないというのはいかがなものか。さすがにガチャの排出率渋りすぎだろと言わざるを得ない。
半ば自棄になりながら行った三十連目の召喚だが、なんと一回目で星五の礼装が出現。これで今回のイベント礼装は各種一枚ずつゲットすることが出来たわけだが、それでも何とも言えない空気が三人には出来ていた。このまま何も出ずに終わるのかと黒鋼が落胆したその時、三本の光のラインが黄金の輝きを纏う。通常のサーヴァントより高い霊基を持つサーヴァントの召喚に成功したことを知らせるそれは、この場にいた三人の空気を一気に明るくする。しかも、そこから現れたのは槍兵のカード。今回ピックアップされている彼女のクラスでもあったのだから溜まった物じゃない。
「え、あそこまでどん底に叩き落としておきながら大勝利するの? うそでしょ? ただのギャグよね、これ?」
「いやいやいやいやいや。さすがの俺もエレシュキガルは呼べない自信はあるぞ。だってお前、あいつ完璧にカルデア寄りのサーヴァントじゃん。アトラスが呼んじゃダメな奴じゃん」
「いえ、そう言っておきながら巌窟王殿やアルトリア殿を召喚した研砥殿に言われたくは無いのですが……しかし、まさか。あのガチャ率低下からの大勝利。この巴、感服致しました」
「だから盛り上げ過ぎだっての! どうせフィンとかだからね、これ!」
調子の良いことを言う二人のサーヴァントに言われるも、黒鋼も悪い気はしないので若干照れながら笑って帰す。しかし、本当にこんな結果を迎えても構わないのだろうか。元々キャスターのギルガメッシュ王の宝具レベルを上げるためのガチャなのに、エレシュキガルという星五を引いてしまっても、本当に良いのだろうか。
―――良いはずがない。その逆、本気で狙っていた人が召喚に成功するのは良くても。たまたま、偶然で星五を引くなど。本来あってはならないのだ。故に、この後の結果は当然だと言える。金色のランサーのカードが徐々に薄れていき、召喚に応じたサーヴァントの姿が露わになる。その姿は通常の女性よりも身長が低く。ジャックやナーサリーといった女の子に分類すべき容姿をしている。だが、それとは別に人の視線を釘付けにするような何かを秘めている。顔を隠すように黒いローブに身を包み、手に持った鎖鎌を床に置いた幼い少女は、こちらに面を向けて口上を述べた。
「ランサーのクラスで現界しました。真名、メドゥーサ。よろしくお願いします」
「うん、知ってた! ようこそメドゥーサ! 我がアトラ」
「近づかないでくださいロリコン」
「思いっきりディスられた上に冤罪だぞ!? お、俺ぁロリコンじゃねぇ!!」
どこかの漫画で見たようなやり取りをしながらも、いきなり辛辣なコメントを送ってきたメドゥーサ(リリィ)に愕然とする黒鋼。おかしい、召喚されたばかりの彼女はまだ自分たちのことをあまり知らないはず。いくら聖杯が世界を救ったカルデアとアトラスのことを多少教えたとしても、そこにいる人物の詳しい情報までは伝えないはずだ。そういった疑問を尋ねると、バビロニアではお世話になったと一言だけ告げてメドゥーサは召喚場を後にした。当然、そんなことを聞かされて黙っている人はここにはいない。メドゥーサが去った直後、クロは干将・莫耶を投影し、巴は愛刀の切っ先をこちらに付きつける。
「マスター。貴方にも性癖というものはございましょう。ですが………その……幼女趣味というのは、些か危険かと。通報されてアカBANされてしまいますよ」
「というか、私がいるのに他の女の子に手を出すとかどういう了見なのかしら? これは一つ、思いっきり
「………マスター。お覚悟を」
「落ち着け巴さん! クロのキスというのはただの魔力供給という名の医療行為の一種で会ってやましいことは一切ない! ………ん? というか、魔力供給自体はアトラスから必要な分を渡してるはずだよな? 何故にキスが必要なのん?」
「趣味ね。魔力の味というか、相性がいい人を探してるのよ。まあ結局、イリヤが一番相性がいいんだけどね~」
「それただの通り魔じゃん! いや、この間も『通りキス魔隊』とかやってたけども! それに俺を巻き込むんじゃねぇ!」
さりげなく俺の評価を下げる要素になっていたクロの言動にげんなりしながら、再び聖晶石を用意し、そして十連召喚を実行する。これで通算四十連目ではあるが、ここまで召喚に成功したのはイベント礼装一枚と、同じピックアップ対象であるメドゥーサ、既存の星四礼装だけである。ここまで絶望的なガチャというのも久しいが、逆にここを乗り越えれば目当てのサーヴァントを召喚する可能性もある。この際イベント礼装はどうでもよい、キャスターのギルの宝具レベルを上げたいがために黒鋼は一心不乱にガチャを回し続ける。しかし、そういった時にこそ物欲センサーは働くもの。四十連目で召喚されたのは、さっき召喚されたメドゥーサだった。しかも、二人も召喚してしまったのである。
「……………………ごめん、あとでちゃんと事情を説明するから。先に育成場に向かっておいてくれ」
「分かりました。
「ではお先に失礼しますねロリコン。お二人も、この後はよろしくお願いします」
「二人目に至っては隠す気も無いな! いっそ清々しいわ!」
そしてやっぱりディスされる現状に五体投地で感情を表現する黒鋼。それに苦い笑みを浮かべる巴と、対照的に大笑いするクロエ。同時ピックアップなのでこういったこともありえる。だが、流石にメドゥーサの方にガチャが振り切りすぎではないだろうか。そろそろ今回のガチャ用に取っておいた聖晶石も尽きる。クリスマスイベントはボックスガチャという、周回した数だけマスターの思いにこたえる素晴らしいイベントなので、周回用に石を買ってしまう者もいるのだ。なので、ぶっちゃけた話。ガチャを回すよりか石を砕いて周回した方が良いというマスターは少なからず存在する。
「どうしますか? ここまでのガチャ運の低下はこれまでの中でも最悪に近いです。ならば、ここで周回にその石を砕くという選択肢も」
「いいや、あくまでこの石は召喚するために用意したものだ。なら、最後までガチャに挑むべきだろう」
「で、本音を言うと?」
「ここまで爆死画像生まされながら引けるか! 意地でもキャスギルを召喚してやらァ! 爆ぜろサークル! 弾けろ物欲! バニッシュメント・ディス・ガチャァァァァァァァ!」
「さりげなく他作品のセリフを改悪して使わない方が良いと思うのですが……」
やはりというか、やっぱりというか。ここまで目当てのサーヴァントの召喚が出来なかったことがストレスに溜まってきたのか。ついに発狂しながら召喚行為に及ぶ黒鋼。最後に残された聖晶石はサークルの中に飲み込まれるかの如く注ぎ込まれ、遂に五十連目の召喚が始まった。そして、一瞬で希望は潰えた。最初の一回目で今回のイベント星五礼装が出現し………黒鋼はどこぞの団長よろしく血を吐きながら地面に倒れこんだ。
「俺はァ…………止まるぞぉ………」←orz
「その………マスター。勝負は時の運と申します。それにまだ召喚は続いております故、まだ希望を捨てるべきではないかと思いますが」
「いや、さすがにそろそろ失敗するべきよ。というか、そもそも宝具レベルを上げようだなんて考えるからすり抜けるのよ。石の管理くらいしなさいよね」
あまりの結果に加えて至極まっとうなクロエの意見が容赦なく黒鋼の心を抉る。星四のサーヴァントを狙った時にこそやってくるこの絶望的なすり抜けという悲劇はよくあるものだ。具体的に言うと、ハロウィン2017の時はランサー・ヴラド公を狙っていたはずなのにクレオパトラが召喚されたり。この間の段蔵を召喚しようとして頼光が来たりなどなど、目当てのサーヴァントが引けないことに定評があるのが黒鋼研砥というマスターである。
そうなのではあるのだが。何故か、今回はその限りではないらしい。突如として眩しい輝きが召喚場を照らす。あまりにも突発すぎるこの現象に驚きを隠せない三人を置き去りにして、一人のサーヴァントが召喚される。身の丈ほどの斧を片手に持ち、目元にまで垂れ流された金の髪に、燃え盛る炎のような赤い瞳。既に見慣れた立ち姿ではあったが、いつ見ても神々しい男が目の前に舞い降りた。
「キャスター・ギルガメッシュ。ウルクの危機に応じ、この姿で現界した。貴様の召喚に応じたのではない。付けあがるなよ、雑種」
「どうした、最後の最後でこの
「王様――――――!!」
「ぐぬっ!? くっ、貴様ァ! いかに我が認めた小間使いとはいえ不敬が過ぎるぞ! 我が魔仗の藻屑となる前にって顔をこすりつけるな! 汚いであろう!」
最後の最後で召喚に成功したキャスターのギルに、感謝のあまり頭から全力で突撃してしまう黒鋼。それに召喚されたばかりに彼が対応できるはずもなく、されるがままになってしまっているのを見て巴とクロエは苦い笑みを浮かべる。これで通算四人目の召喚に成功したわけだが、流石に五人目を引く余裕はないので今回はこれでお開きとなる。そのことでも更に不貞腐れる王様ではあったが、伝承結晶3つを贈呈すると怒りを収めてくれた。そのことに安堵しつつも、今度はQPと結晶が減っていくことに黒鋼は頭を抱えるのであった。
オマケ―――カルデア組のサーヴァントの移送完了後の一コマ
「……………ツーンなのだわ。むっすーなのだわ」
「……………どうしてこうなった」
クリスマスパーティーを終え、ようやく平穏が戻ってきたはずのアトラス院ではあったが。カルデアに所属しているサーヴァントたちの移送が終わり、こっちでの生活に付いてあれこれと説明をして回っていた時だ。現在進行形で目の前にいる女神さまに付き合わされているのである。理由は大体察してはいるのだが、問題なのはこの女神さま。どこで知ったのか知らないが黒鋼のマイルームに連れ込んだのである。自室とはいえ、こういった形で2人きりにさせられるのはあまりないことで、数多の英霊と契約した彼でさえ現状にドギマギしているのである。話題を切り出そうにも、向こうがこちらの話を聞こうとしないから緩やかに時間だけが過ぎていく。
「……なんで、なのかしら?」
「は? なんでって、何がだ?」
「何で、先に冥界から帰ってしまったのかしら? あのクリスマスの夜、カルデアのマスターにはちゃんとお礼を言った。貴方にも、ちゃんとあの時お礼を言いたかった。だから、どうして先に帰ってしまったのか。今ここでその理由が知りたいのだわ」
むっすーとしておきながら、ようはあの時のことについて聞きたいらしい。そんなことかと溜め息を漏らしそうになったが、そんなうっかりをすればあの炎槍の餌食になるだろう。いや、エレシュキガルはイシュタルと違って思慮深い女神なのでそんなことは無いと思いたいではあるが、なにはともあれ、選ぶ言葉には気を付けないといけない。といっても、彼が口に出来ることなんてたかが知れているのだが。
「幸せそうだったから。あいつと、狭間と話してるあなたが。本当に、心から幸せそうだったから。それに、言ってしまえば俺はただのオマケだ。アトラスにとっては大切なマスターの一人なのかもしれないが、あくまでこっちが向こうのサポートをするのが鉄則なんだ。アトラスとカルデアとの契約ってのは、そういうものだから」
とどのつまり、カルデアとアトラスが協力関係にあるのは契約書による協力関係だ。人理焼却から続くこの騒動に決着が着けば、穴倉の巨人はこれまでのように地下に鳴りを潜めるだろう。そもそも、黒鋼は一度世界を救おうとして死んだようなものだ。魔術世界で生きるのであれば、自分という存在の情報は可能な限り知られない方が良い。だからこそ、存在しないことになっている彼がこれからの活動には欠かせないのだ。
話が逸れたかもしれないが、要は第一から第七の特異点。それから亜種特異点も全て、カルデアが世界を救ったのだという証明に過ぎない。それに多少加担しただけの自分が、冥界の女神で。それもティアマトを倒す為に文字通りその身を粉にしてでも援護した貴女と話すなんて恐れ多いと。黒鋼は自分の言葉で彼女に伝えた。それを聞いたエレシュキガルはなるほどと頷き―――――直後、思いっきり黒鋼の頭を叩いた。
「って、貴方は馬鹿なのかしら!?」
「あいたっ!? ちょ、なんでいきなり頭を叩く! まるで意味が分からんぞ!?」
地面にめり込むかと思わないくらいに筋力値に物を言わせて叩かれた黒鋼は、さすがにそれに対して目の前の女神を訴える。見る人が見れば間違いなく止めに入るくらいの痛みだが、彼女は当然の報いだと言わんばかりに鼻を鳴らすだけだった。
「別に貴方がどこの誰だろうと、何を為したかなんて関係ないのだわ。大切なのは、貴方はあの時、私を助けるために冥界までやってきてくれたこと。カルデアにいるマスターが私を見つけるまでの間ネルガルを抑え込んでいてくれたこと。何より、その………」
思いついたことを片端から告げていくエレシュキガルだが、途中で我に返ってしまったのか。少し口をもごもごとさせた上に顔を赤くしてしまう。その一面にこっちに来ても彼女は変わらないとどうでもいいことを考えていた黒鋼ではあったが、咳ばらいをしたエレシュキガルは改めて口を開いた。
「その………あの時、貴方と話した夜は楽しかったのだわ! そ、それだけでも私には貴方にお礼を言うだけの十分な理由なの! というか、女神から感謝の言葉をもらうなんて普通じゃ絶対にありえないことなんだから、ありがたく受け取りなさい!」
「いや、俺いっつもお礼言われまくりだけど。主にケツァルさんとか玉藻さんからだけど」
「そう言えばそうだったのだわ――――!?」
効果音にがーん、と効果音が付きそうなくらい肩を落としてしてうなだれるエレシュキガル。一喜一憂し、ころころ変わるその表情は見ていて飽きない。といっても、そんな悪趣味を黒鋼は持ち合わせてはいないのでうなだれる女神さまをあやす。
「はいはい、俺が悪かったですよ。そっちは何にも悪くない、こっちが悪かった。OK?」
「いいえ、こちらも少し言い過ぎたのだわ。その………ごめんなさい」
「エレシュキガルが謝った………!?」
「イシュタルじゃないんだから、悪いと思えばちゃんとこっちから謝るわよ! あ~もう、こんなこと言うつもりではなかったのに、やっぱり貴方と話していると調子が狂うのだわ!」
ぽかぽかとこちらの胸板を殴りつけるエレシュキガル。その表情や仕草は堪らなく可愛いのだが、無意識に力加減を忘れているのか殴られている彼としては凄く痛い。一発一発が鈍器で殴り付けられているに等しいことを数分繰り返していると、流石に彼女も落ち着いたのか。再びこちらに謝罪しながら咳ばらいをした。
「コホン。え~と、そ、それじゃ色々あったけど仕切り直すわね」
「い、いや。色々どころかかなりあったと思うんだけど、って、はい俺が悪かったですなので炎槍をこっちに向けないでください!」
照れ隠しでこちらを容赦なく突き殺そうするのは相変わらずのようなので安心する反面、照れ隠し程度で殺されるのは真っ平ごめんこうむると全力で伝える。本人も多少自覚はあるのか呻き声を少しだけ漏らしたが、そんなことは知らんと言わんばかりに続けた。
「その……ようするに! 私が今日伝えたかったのは貴方への謝罪と感謝、それから………その、こ、この冥界の女主人であるエレシュキガルが! 貴方の力になってあげるってことを伝えに来たのよ! 地に臥し感謝なさい!」
「えぇ……………いや、そんなうっかりしそうな女神のお力添えなんて結構ですぅ……」
「なんで!? え!? 今のってありがとうって感謝して終わる感じよね!? どうして断るのかしら―――!?」
自分の想定外の事が起こったことに対する動揺からまた泣きじゃくるエレシュキガル。自分でも今の返しはおかしいとは思ったが、これでいいとも黒鋼は思っていた。元々、エレシュキガルはカルデアのマスターが召喚したサーヴァント。カルデアに在籍するのが難しくなったからやむを得ずこちらで預かっているだけであって、向こうにしか在籍していないサーヴァントの力を借りるのは彼としても扱いに困っているのだ。主に花の魔術師がいると知った時には全力で逃げたものだ。剣の師匠ではあるが、さすがに現実でも会いたいとは思えない。
―――けれど、まあ。ここまでこちらの力になりたいと真摯に訴えてくる人の思いを無碍にするのもあれだとは思ったので、ああいった答えを返したのだが。やはり逆効果のようだ。面倒くさいとは思ったが、事実として向こうはこちらにある借りを返したいとも言っているのだ。ならば、それに応じるのが最適解だろう。そう結論付けて、未だに泣きじゃくるエレシュキガルをまたあやしながら頭を撫でる。
「分かったよ。俺の負け、降参だ。こちらとしても戦力は一人でも多い方が良い。それに、こっちが動くときはカルデアの援護に回る時だ。その時は、全力で力を貸してもらうぞ。いいな?」
「―――! ええ! 任せない! 地の神にして、冥界の女主人。このエレシュキガルが貴方の行く道を切り拓いてあげるのだわ!」
黒鋼の降参宣言に、花が咲いたかのように満面の笑みを浮かべるエレシュキガル。その変わりように内心でチョロインという失礼なワードが頭によぎってしまった黒鋼ではあったが。さすがにそれを口にするだけの勇気はない彼は、これから共に過ごす日々に一抹の不安を覚えながら目の前の女神の相手をするのであった。
というわけで、ようやくクリスマスガチャ篇終わり! もう半年も先にある帝都イベとかアナスタシアのガチャ報告するのしんどいのだわ………。まあ、頑張って書きますが。本編にかかわりがなさそうな物(例;バレンタインや復刻版空の境界など)はショートカットしてもいいですかね? いいですよね? でないと何時まで経っても報告が追い付かないんですよぅ………
さて、次回は今更ながらの新年ピックアップ&福袋! 皆さんはこの時にどんな人が当たったかな? 何はともあれ、本編の更新も頑張りますのでこれからもよろしくお願いしま~~す!!