ブーディカさんとガチャを引くだけの話   作:青眼

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はい、最近の多忙っぷりにうんざりしている青眼さんデース!(白目)

いやほんと最近忙しすぎて辛い。なんで5月頃のガチャを今になって投稿してるんですかねぇ!?
さて、そんな今回はFate/Apocrypaとのスペシャルコラボイベントのガチャ報告になります。カルナさんのピックアップガチャも含めるとかなりの数を回してるのでダイジェストでサクサクっと書いていきますよ! さぁ、次は帝都、水着復刻、今年の水着、ゲッテルデメルング、福袋&三周年、鬼ランドにシンと。ネタ多いって素晴らしいなぁ!(泣)



聖杯大戦。施しの英雄はいずこへ

 

 

 

 ―――聖杯大戦。それは、ある世界戦で繰り広げられた七対七の総勢十四騎ものサーヴァントを以て開戦された聖杯戦争。“赤”と“黒”の二つの陣営に分かれて行われたこの争いはそれぞれの思惑がいくつも絡み合い、運命に翻弄されることになった。

 ある聖者は、生きとし生ける全ての生命の救済を齎さんと動き。

 ある聖女は、その聖者の野望を打ち砕かんと尽力し。

 ある少年は、数奇な運命にその生を捧げながら聖杯大戦の幕を引いた。本来ならば、その少年は己の体をこの世ならざる存在へと変貌させてある人がやって来るのを待ち続けるのだが。今回は、そんなある人を待ち続けた彼に訪れた小さな変化だった。聖杯大戦を終え、その身に宿したある龍殺しの特性から宿敵である邪竜へと変化した彼は、世界の裏側にて大戦の際に獲得した大聖杯に何らかの変化が起こっていることを察知した。なんと、大聖杯の中で自分が経験した聖杯大戦の様な物が再現されているのだという。それの持ち主である彼自身が解決に乗り込んだが、大戦に参加した数多くのサーヴァントが乱入していることもあり。自分の力だけでは手に負えないことを早々に判断した彼は、かつての自分と同じくマスターであった存在に夢の中で助力を請うことにした。結果だけで言うと、彼は無事にあるマスターと協力を得ることができた。そしてこれは、その際に行われた戦いの一幕である。

 

 

 

 

 ―――大聖杯の中で再現されたかつての聖杯大戦、舞台となったのはルーマニアという国の中にあるトゥリファスという町。そこに存在していたある魔術師の家系、『ユグトミレニア』という魔術師が活動していた城塞にて活動を開始した大聖杯の管理者ジーク。そして、その彼が夢の世界にて協力を結んだマスターである黒鋼。そして、彼ら二人に最初から力を貸してくれたのは世界最速の足と称されるまでの大英雄、ライダーのアキレウス。それから、アキレウスをはじめとして、ヘラクレスやイアソンといったギリシャ有数の英雄たちに教えを説いた大賢者。アーチャーのケイローンの計四人だった。たった四人しかいないと思うが、実際はそうではない。何故なら、夢の世界に連れてこられても黒鋼自身が契約したサーヴァントの運用は不可能ではないからだ。だが、この世界に一度に現界できるサーヴァントは限られている。そして、彼にはまだ為すべきことが残っている。こんなところで道草を食う訳にはいかないのである。

 だが、それでもジークに力を貸そうと決意したのは。どこか、自分に戦いとは何かを説いてくれた彼の英雄を思い出したからだ。尤も、その後の闘いで黒鋼が思い描いた英雄の姿に変身した時は度肝を抜かされたが。それはさておき、最初は彼の尤も信頼する赤髪のライダー。自分の事を万能の天才と称する赤い男装のセイバーといったサーヴァントと共に戦っていたのだが。今回の闘いでは『施しの英雄』や『最古の毒殺者』といった有名どころのサーヴァントが参戦している。故に、彼はあまり乗り気ではなかったがとある“王”に助力を請うた。本来ならば、そのような雑事に手を煩わせるなと一蹴されるはずだった。だが、今回に限り彼の王は目を細めながらも笑み浮かべ、二つ返事で了承した。

 ―――そして、その時は訪れた。眼前に広がるのは超巨大な空中要塞。そして、眼下には一人一人が強力なサーヴァントが蠢いている。空を飛べる者は物言わない傀儡の如く黄金の船に取り付こうと近づくが、船から放たれるレーザーや武具の数々がそれを退ける。

黄金の帆船、『天翔ける王の御座(ヴィマーナ)』の操縦席である玉座から離れた船頭に立つ王は、己に挑まんとする者を冷酷に見据える。彼の王を亡き者にせんとする者たちの力は言うまでもなく一級品だ。魔力で生み出した炎で空を自在に飛ぶのは『施しの英雄』カルナ。王とは別の世界線で縁があり、あらゆる外敵からの攻撃を防ぐ黄金の鎧。雷神インドラから与えられた神殺しの槍といった強力無比の宝具を持ち合わせた最強のサーヴァントの一人。

更にもう二人、眼前に広がる空中要塞から王を斃さんとする者がいる。この聖杯大戦で『赤』の陣営で召喚されたアーチャーとアサシン、『最古の毒殺者』で名が通っているセミラミスとギリシャの女狩人アタランテである。前者は彼女の宝具である空中要塞、『虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』の十一ある防御機構、『十一の黒棺(ティアムト・ウームー)』放たれる対軍用の魔術レーザー。それに加え、空中要塞で矢を構えたアタランテが放つ宝具、『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』によって降り注ぐ光の矢による雨霰。並の英霊ならば、この三人のサーヴァントの一人でも遭遇すれば瞬殺される。だが、その三人が一度に襲い掛かってもなお余裕を見せる彼の王は言うまでもなく“並”の英霊ではない。

王は己に近づく不敬者を財宝の一斉射という純粋な物量で退けながら、その眼と知能を以て事の在り方を詳らかにする。そして知ったのだ、自分に襲い掛かる英霊達の正体とこの世界の在り方を。その時、王の心にあったのは純粋な怒りだけだった。それは誰に対するものなのかは言うまでもない。傲岸不遜、天上天下唯我独尊を地で行く王にとって些末な事は嗤って流される。だが、王の数少ない逆鱗に触れた此度の敵は後悔することになるだろう。格の違いという、この世の真理をその目に焼き付きながら死んでいくのだから。

 

「―――よもや、ここまで(おれ)の琴線に触れる愚か者がいようとは。いや、恐らく此度の黒幕は知らなかっただけであろうな。己の悲願を為そうとしてこの世界を作り出し、その掃討にたまたま我が来ただけの事。言ってしまえばそれだけのことだが、黒幕には同情を禁じ得ん」

 

 『天翔ける王の御座』の船頭に立つのは普段は逆立てている金の髪を下ろされている。着込んでいる黄金の鎧の上半身を開放し、神の血を引く者の証である赤いラインが刻まれた肉体を恥じらうことなく見せつける。体に刻まれた紋様と同色の瞳は空中要塞に、正確にはその中に巣食う者に対して向けられている。絶対者()から放たれる殺意に物言わぬ英霊達は何も感じないだろうが、地上で戦うジーク達はそれを感じ取る。余りにも濃厚な殺気に、あのアキレウスでさえ身震いした。

 ―――それは、己の首を取ろうとする英霊共に対する軽蔑や怒りではなく。その英霊共を用いて事を為そうとする亡者に対して送られた物。誰に言っているのかはこの場に居合わせた知性を保った者達には理解できなかったが、王は独り言のように呟き続ける。慢心を捨て、油断を捨て。己に課している制約を解き放っているのは一刻も早くこの茶番に幕を下ろすために彼の王は全力を解き放とうとしている。

 

「我はな、此度の騒動なぞどうでもよい。本来ならばこのような雑事なぞに我が関わることなどありえん。だがな、此度は我を笑い殺そうとすることが多くてどうなることかと思ったぞ? よもや、これだけの贋作が蔓延る世界だとは思いもしなかったからなぁ!」

 

 近づいてくる飛行能力を持ったサーヴァントに向けで財宝を躊躇うことなく解き放ち。空中庭園から放たれるビームは『天翔ける王の御座』の圧倒的な速度を以て回避し、地上の有象無象はジークやアキレウスが蹴散らしている。高度を上げ、黄金の波紋から一振りの財宝を取り出す。赤い閃光を伴いながら顕現したそれは、柄から先が赤い光を放つ文様を備えた、三つの層から成るランスのような形状をしている。剣というには余りに歪で、槍と称するにはあまりにも短い。だが、それがそこに存在しているというだけで世界が悲鳴を上げているかのようにぶれ始めている。

 ―――否、それは勘違いなどでも何でもない。その歪な剣こそ彼の王のみが持ち得る至高の一振り。文字通り世界を斬り裂いたとされる原初の剣。その銘は、『乖離剣エア』。黄金の王にして英雄の中の英雄王、ギルガメッシュが貯め込んだ数ある財宝の中でも秘宝の中の秘宝。これを見せるということは彼が全力を出すに値すると判断した時と、怒りに満ちた時にのみ抜く数多ある宝具の中でも頂点に君臨する宝具である。

 

「貴様ら雑種の中には我が至宝たる『エア』を拝謁するに値しない者共が多いが、今回は特別だ。地に平伏し刮目するがいい。これこそ、貴様らが到達することのない地平に君臨する至高の宝具。英雄王たるこの我のみが持ち得る剣だ――――!」

 

 乖離剣の柄を逆手に持ち甲版に突き立てる。三つの層がそれぞれ回転し始め、衝撃波が赤い風を伴って吹き荒れる。風は強風から暴風へと変わり、やがて台風が如しと言わんばかりに吹き荒れる。宝具を発動する準備段階であるその隙を逃さず空中庭園からの集中砲火が降り注ぐが、『エア』が発生させる風がその全てを斬り裂く。たかが魔術如きが王を傷付けるなぞ片腹痛いと言わんばかりに迫り来る物全てを吹き飛ばし、斬り裂いていく様はまさに圧倒的の一言に尽きる。その間にギルガメッシュは瞳を閉じ、淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

 

―――原初を語る。元素は混ざり、固まり、万象織り成す星を生む―――

 

 

 

 いつの間にかギルガメッシュが足場としていた『天翔ける王の御座』は消え去り、『エア』が齎した空間変動によって宙に浮きながら佇んでいた。乖離剣を躊躇うことなく抜き取り、片手で握ったそれを天高く掲げ目を見開く。その表情は怒りのあまり笑みが浮かんでおり、獰猛に笑いながら眼下に存在するサーヴァントや建造物に向けて原初の剣を振り下ろす。

 

「―――さぁ! 死に物狂いで耐えるがいい、不敬! 死して拝せよ、『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

 ギルガメッシュの紡いだ真名に応じ、乖離剣の先に赤い銀河の様な巨大なナニカ(・・・)が姿を現す。巨大なナニカは振り下ろされた先に向かって突き進む。空中庭園から放たれる神代の魔術も、庭園自体も、英雄王を打倒せんと近づいた英雄たちも。その全てがそれに飲み込まれて消え去っていく。それはやがて、彼の見下ろした世界の全てを貫いてようやく消え去った。ただただ圧倒的だった。万物全て消滅させる神々の権能に匹敵するそれはどのような英雄も無に帰すのだ。

 

「―――クックック………フハハ………ハァーハッハッハッハ!!」

 

 とても味方のものとは思えない高笑いがトゥリファスの夜空に響き渡る。再現された世界の半分以上を消し飛ばした傷跡は深く、その様を目に焼き付けたジークたちは心が一つの言葉で合致した。

 

 

 

やっぱりこの人を敵に回したら絶対だめだ、と――――

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

「いや、さ。俺はな? そんなにガチャを回したくはないんだよ。ほんと、本当だよ。それでも必死にお金を貯めて、その度にガチャに使ってるのは他にあんまり趣味がないからなんだよ。でもな? さすがの俺でも一回のガチャで回す上限くらいは決めてるんだ。うん、今回のカルナさんピックアップで10連召喚を10回、つまるところ100回召喚に挑んだわけよ。星5が一人でも来てくれたらいいなぁとか。☆4ピックアップのアタランテさんが来てくれたらいいなぁとか。今度こそカルナさんが来ないかなぁとか。そんなこと考えてたんだ。ああ、そんなこと。考えてたのに――――」

 

 そこで言葉一度きり、黒鋼は乾いた笑みを浮かべながら後ろ振り返る。ユグトミレニアの魔術師たちが使っていた『ミレニア城塞』にある庭園の中央で酒盛りをしている二人の王に冷めた目を向け、今にも失神しそうなほどに青ざめているキャスターに同情の念を送り、血を吐いて倒れている長髪の男には侮蔑の眼差しを向けながら。今回のカルナ召喚チャレンジの結果を虚ろな表情で告げる。

 

「―――まさか、ピックアップスルーで☆5が三人も来るとか誰が予想できただろうか。太陽王オジマンディアスに、語り部のキャスターことシェヘラザード。そして、周回で毎度おなじみのエルメロイ二世と。ハハッ、エルメロイ二世に至っては今回で4人目だよ。なんでか宝具レベルが3になってた頼光さんを超えるとか信じらんねぇ。ハハッ、ほんと、なんで………なんで来ないの………カ゛ル゛ナ゛ぁ………」

「あ~よしよし。今日も来なかったけど、今回は過去最高の引きなんだから泣かないの。はい、ちーんしなしなさい。ちーん」

 

 酒盛りをしている古代王‘sの肴を作っていたブーディカがハンカチを手渡す。涙やら鼻水やらで汚くなった黒鋼の顔を、あらかじめ用意しておいたハンカチで拭きとる。傍から見ると情けないの一言に尽きるが、周りの目を気にせずにそれを何度か繰り返す。初めて実装されたいつぞやの新年のピックアップから続く施しの英雄の召喚チャレンジだが、ここまで失敗続きだともう笑うしかない。死んだ魚の様な瞳をしながら黒鋼は綺麗な青空を見上げる。それを手の空いたブーディカがよしよしと宥めているのである。

 

「オジマンディアスが来てくれたからアンデルセンとのコンボがエグイことになってるし、アサシンのニトクリスと一緒になれてシェヘラザードも大歓喜だったし。孔明はどうでもいいけど、もういいや。周回でこき使うから」

「うわぁ………散々孔明を使うことに忌避してたのに容赦がなくなってる……いや、仕方ないかもだけどちょっと酷い拗らせ方してるなぁ…」

 

 心ここにあらずと言った感じの黒鋼の有様に苦笑するブーディカ。100回の内に3人も最高レアのサーヴァントを召喚できたという事実が彼への精神的なダメージが色濃く残っている。こんなことならばいっそ、大爆死でもした方が開き直れたのにと思うことしか出来ないのが本当に辛い。

 

「―――――いっそのこと、このままカルナさんを狙いに行こうか」

「いや、さすがにこれ以上はイベント優先にしようよ」

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

「という訳で、今回は残った石でケイローンさんを狙いに行きま~す」

「確か、アキレウスやヘラクレスといったギリシャ神話の英雄たちの先生。だっけ?」

「そうそう。他にもあのイアソンとかもいたな。ギリシャ神話に出て来る英雄の大半を一人前に育て上げた大賢者、この間の闘いだと二足歩行だったけど。本当は下半身が馬になってるケンタウロス。………そういえば、ケイローンさんの弓の師匠ってアルテミスさんなんだよね。この前、本人が思いっきり自慢してた」

「えぇ………? あのアルテミスから弓を教わったの? どうやって習ったんだろう?」

 

 この場に本人がいたら目に光が灯ってない笑顔で急接近してくるだろうが、この場に居ない人の事を考えても仕方ないのでそれぞれの意見をはっきりと言っておく。女神アルテミスと言えば、なぜかアーチャークラスで現界しようとしたオリオンの霊基の大半を奪って現界した女神でこちらでは有名だ。弓の名手であり、アタランテに生まれた時に加護を与えたり、ケイローンにその技を伝えたとされ、そのケイローンが様々な知恵や技をギリシャの大英雄たちを育て上げた。

 だが、肝心のアルテミスの戦闘スタイルや弓の打ち方を見るときっとケイローンも苦労したんだろうなと思わざるを得ない。弓を投げたり、突進したりと。ハチャメチャな戦い方な上にとんでもない恋愛脳思考(スイーツ)なのがそれを加速させている。相手をするのも一苦労だろうだと思ってしまうのは無理もないと思う。

 

「さてと、そろそろガチャを回していきますか。カルナさんを引こうと思ってたから、今回用意したのは普段のイベント時と比べるとかなり少ないですけどね」

「まあ、彼は研砥がブライドを引こうとしてた時より前から狙ってた人だしね。それで、今回はどれだけ?」

「イベントと月替わりで貰えた呼符が十数枚と、十連召喚が三回分程度かな。うちにはドレイク船長がいるから、全体宝具のアキレウスを狙う必要はないから助かる。周回性能に限れば船長の方が上だからな」

 

 サクサクっと呼符を投げつけながら消化試合を済ませていく黒鋼。今回に限れば、本当にイベント前のカルナを引くために全力を費やしてたのでこちらの方には何も期待してないまである。礼装が出れば良し、ケイローンが引ければなお良し、すり抜けでカルナが引ければ更に良しという完璧な布陣なのである。尤も、最後の方は成功する確率が0に近いという点を除けばなのだが。

 何はともあれ、さっさとガチャを終えて再現英霊共を駆逐しに行く必要があるのでささっと終わらせてしまいたいのが本音だ。召喚演出も三本のラインが広がる以外は全部スキップさせている。周回を済ませたいという一心のみが今の黒鋼を突き動かしている。そして、その思いを現実にしようと召喚されていくのはイベント礼装ばかり。☆3の礼装に至っては限凸しても問題ないほどに出現している。

 

「っしゃあ! カルナさんは駄目だったが、礼装運が回ってきたァ! このまますかさず十連召喚だ!」

「中々に良い引きだね。このまま何事もなく終わるといいんだけど……誰が来るかな?」

 

 呼符による召喚が終わりすぐさま次の召喚に移る黒鋼。結果だけを見ると礼装しか当たっていない残念な結果だが、本人もその仲間たちも何一つ気負うことなくガチャを回せている。こんな素直な気持ちになれたのはいつ以来だろうか。今、黒鋼の心はとても軽くなっている。まるで空を誰かと一緒に空を飛んでいるかのような感じさえする心地の良さに、満面の笑みを浮かべながらガチャ回せる幸福感に満ち溢れていた。だからだろうか、そんな満足感で物欲を投げ捨てているからか、最初の十連召喚だというのに三本のラインに金色の光が灯る。いきなりの高レア演出に一同は目を丸くしながら、新たに召喚されたサーヴァントに期待を寄せる。

 

 金色の光から放ちながら出現したのは弓を構えた女性の絵が描かれたカード。弓兵(アーチャー)のカードから溢れた光はサーヴァントの姿を形作っていく。白くて長い髪に健康的な美しい肌。凛とした表情の女性が手にするのは真紅の日本刀。握った刀と同じ色の瞳をこちらに向けながら、彼女は口上を述べる。

 

 

 

「我が名は巴。巴御前、などと余人に呼ばれることもありましたか。義仲にこの身を捧げた者ではありますが、今は。貴方にお仕えするサーヴァントにございます」()

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

「む、ここでまさかの巴さん。これで四人目か………」

「何度もお呼ばれされてしまい、申し訳ございません。マスターはきっと、他の方をお呼びしたかったでしょうに」

「いやいやそんなことないですよ! うちは来る人拒まず来ないと必ず呼ぶがモットーなんで!」

「いや、それかなり理不尽だからね?」

 

 今年になってから回す回数も増えてきたので、こうやって宝具レベルが着実に上がっていく人が多いと周回等で楽なって来るから助かる。今回のイベントでもセイバーのジークフリートやモードレットを一撃で倒したりと、単体宝具のアーチャーの中ではクロエに次いで火力を出してくれるから本当に助かっている。

 さて、そんな巴御前が召喚された10連も終わり。次の10連に移ったのだが。ここでまさかの礼装ラッシュ。具体的には星4の天草四郎時貞が移ってる礼装が五枚揃ったり、星五のジャンヌが描かれた礼装が合計で3枚揃ったりした。今回はイベントアイテムのラインナップも豪華で、周回した際にドロップするアイテムやQPも稼げる良いイベントなので、早々に礼装が限凸出来るのはとてもありがたい。フレンド欄におけば真っ先に使われること間違いなしだろう。

 

「よし、それじゃ最後の10連に行くとしますか。今回は早々にフィニッシュが出来て嬉しいな!」

「星五を狙わなくていいってこんなにも楽しい事なんだね。うんうん、深追いは禁物だもんね」

 

 朗らかに満足げに最後の10連を行う。面倒なので召喚演出をスキップし、サクサクとガチャの結果を確認する。あとでフレンドの孔明を使ったW孔明という周回廃人編成で再現英霊達を駆逐しなければと、脳内で各クラスに合わせた編成を模索する。そんな時だからこそだろうか、スキップ演出を行っているのにもかかわらず、三本に分かれた光のラインが広がったのだ。

 

「えっ。スキップ演出で三本線ってことは、☆4以上のサーヴァント確定演出!?」

「凄いね! これでアーチャーだった文句なしだ!」

 

今更の説明で申し訳ないが、スキップ演出とは☆4以上のカードや未召喚のカードのみを出現させるシステムのことだ。つまり、この演出中に三本線が出るということは高レアのキャラクターが出現するということなのである。姿を露わにしたのは弓を構えた金色の弓兵が描かれたカード。イラストというベールが剥がされ、人の形をしたナニカが姿を現す。褐色の肌に穏やかな緑の瞳。知己的なその雰囲気から大人の男性という言葉が体現した人の様にも取れる。何度か瞬きをした後、こちらの視線に応じて口上を述べる。

 

 

 

「サーヴァント・アーチャー。ケイローン、参上しました。我が知識が少しは役立てばいいのですが………。ともあれ、よろしくおねがいします。あなたのため、力を尽くしましょう」

 

 

 

「け、ケイローン先生だ! 本当に来た!?」

「おや、私を召喚したかったのですか? それは嬉しいですが、少し照れてしまいますね。貴方の元には十分強力なアーチャーもいたと思いますが」

「いえいえ! そんな、貴方ほどのアーチャーなんていませんよ!? これからよろしくお願いします!!」

 

 召喚されたばかりのケイローンの手を握り感謝の意を示す。それに少しだけ苦笑しながらも、ケイローンは笑ってそれを肯定する。ギリシャ有数の英雄たちを教え導いたその手腕に加え、一流の戦士としての技術。更には逸話が宝具となった星座から放たれる正確無比の一射。彼が持つスキルや宝具どれもがサーヴァントの中でも一線を画している。これほど頼りになるアーチャーは五人としていないだろう。

 

「何はともあれ、とりあえずここの紹介ですね。ささっと部屋の紹介を―――」

「待って研砥。また、金色の光が!」

「おや、それは良い事ですね。これでもしアキレウスが呼ばれた面白いのですが」

 

 やはり教え子である彼と同時にピックアップされているからか。心なしか彼と共に召喚されたい親馬鹿ならぬ師匠馬鹿(ケイローン)。それに二人はやっぱりいい人だなと思っていると、召喚されるクラスが判明する。召喚されたのは残念なことに騎兵のくらすではなく、狂戦士のカード。しかも、どこか嫌な寒気がするのは何故なのだろうか。

 

「……なあ、なんだかとても嫌な予感がしてならないんだが」

「奇遇だね研砥。私もそんな気がするよ」

 

 

 

 

 

「バーサーカー・ペンテシレイアだ。先に逝っておくが、アキレウスがいるなら出せ。隠し立てすると殺す」

 

 

 

 

 

「………………………………………………………」

「………………………………………………………」

 

 召喚された白髪に掻爪の様な鋭い刃物を添えた狂戦士。アガルタと呼ばれた地底世界にて縁を結んだアマゾネスの女王ペンテシレイアの登場に辺りは静まり返る。トロイア戦争におけるヘクトールの増援として駆け付けるも時すでに遅く。仇討ちというのも変だが、彼を打ち取った人類最速の英雄『アキレウス』に勝利を挑むも敗北。そのまま戦士として朽ちるのを彼女を望んだが、アキレウスは兜を被っていたペンテシレイアのそれを剥ぎ、死ぬ間際の彼女に『美しい』と一言添えたという。

 アマゾネスとは屈強にして誇りある部族。美しさをかなぐり捨て一人の戦士としてあらんとした彼女にとってその言葉は最大の侮辱に等しかった。以後、英霊の座に登録した彼女のはアキレウスを確実に殺害するためにあるスキルを獲得した。それが霊基再臨第三段階時に会得するスキル『軍神咆哮』である。彼女の体に流れる軍神アレスの血を呼び覚まし行う咆哮により味方の攻撃性能を上げると同時に、ギリシャに属する男性サーヴァントに対し特攻能力が付与される。これは、アキレウスとそれに類する者たちを根絶やしにするという彼女の精神の現れらしい。

 さて、ここで一つ大変なことが起こる。何を隠そう、いましがた召喚されたケイローンはアキレウスを育て上げた。先ほども言ったが、ギリシャ有数の英雄の卵たちを大英雄にまで育て上げた師なのである。つまり、当然なことに彼に対してもこの特攻能力の範囲内に存在する。つまり、彼女が忌み嫌う存在に類する者であり、狂化EXのクラススキルが全力で駆動するのである。

 

「アキレウス………そこにいたかアキレウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

「やれやれ。私の知らぬ間に、彼はまた戦場で何か失態をしたのでしょうか。女性を辱めるような趣味は無いと思っていたのですが」

「いや、そんな呑気なこと言ってる場合ですか!? ブーディカさんは時間を稼いで! 俺は今すぐギルを呼んでくる!」

 

 手元の端末で霊基登録してあるサーヴァントを呼び出す間の守護を黒鋼は命じ、返事なくそれを受諾したブーディカが無数の車輪を展開してペンテシレイアの攻撃の一つ一つを防ぐ。半ばギリギリところもあるが、それは仇敵と接敵した際の彼女の全身全霊を籠めた一撃の数々だからだろうか。あの時の、亜種特異点の時と比べても迫力が違い過ぎる気がしてならない。これでまだ再臨状態が第一段階なのだから、最終再臨の際における火力なんて物は想像したくもない。それを興味深く観察していたケイローンは、あろうことか車輪の守護の外に身を乗り出した。

 

「ちょ、ケイローンさん!? あんた何やってんですか!?」

「いえ、私は教えてばかりで自分から戦ったことはあまりないのです。加えて、今は霊基再臨もしていない。なので、彼女には申し訳ありませんが。リハビリの相手をしてもらおうかと」

「そんなことしたら本当に死んじゃうよ!? 早く下がって――――」

「アキレウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」

 

 微笑みながら死地に出向くケイローンを諫めようとする二人だが、時すでに遅し。怒りに狂いながらもキレを損なわない武術の数々がケイローンを殺害しようと迫る。両腕の二つしか使われていないのは理解しているが、それが残像の様に消え無数にも増えた拳の数々が彼を襲う。一撃でも直撃すればすぐさま霊核が砕け散り、再召喚の手はずを整えなければと黒鋼は無残に砕け散るケイローンの姿を幻視する。

 だが、なんということだろうか。ケイローンは迫り来る凶拳の数々を自分の体の外へ向くように手を手で押すだけでそれを制する。拍手の様な甲高い音が召喚場に響き渡り、自身の攻撃が弾かれていることを知った彼女が更にて数を増やす。拳だけでなく今度は足を、それでも通じなければ足枷に繋がれた鉄球を振るう。しかし、その全ては柔らかな笑みを浮かべながら淡々とケイローンによって処理される。怒りの中に焦燥が生まれ、少しだけ攻撃が雑になったその隙をケイローンの『心眼』は見逃さない。ペンテシレイアの腹部に掌底を当て、それを抉る様に手首を捻りながら打ち込む。

 

「が、はぁっ!?」

「まだまだ未熟ですね。いえ、失礼。貴女が弱いという訳ではないのですが、そこまでの技の冴えを自ら狂化することです手放すなど愚策ですよ?」

「黙れアキレウス! 何故、今の一撃で私を殺さなかった! また、また貴様は私を! アマゾネスが女王ペンテシレイアを侮辱するかァッ!!」

 

 憎悪に満ちた殺意を隠すことなく解き放ち、壁際にまで弾かれたペンテシレイアが疾駆する。それに溜め息をもらしながらケイローンは今度は自身の構えを取る。そして、何か思いついたように後ろに居る黒鋼に視線を向け、にこやかに微笑みながら呟く。

 

「丁度よい機会です。マスター。貴方の指示通りに私を動かしてみてください。貴方のマスターとしての力を私に示してください。大丈夫です、私は教える者であり戦いにはまだ不慣れです。共に学び成長していきましょう」

「いや、こんな時でも教師性能発揮しなくていいからってもうきたぁ!?」

「あ~もうやるしかないね! 腹括って行くよ、マスター!」

 

 こうして、召喚されたばかりのケイローンを用いた戦闘訓練が突如として始まるのであった。なお、騒動から数分と経たずに増援がきて何とかペンテシレイアを抑えることに成功したが、ケイローンのジャンヌに近いスパルタ系の教育法の震えが奔った黒鋼なのであった

 




というわけで、今回引けた方々はこちら!
コラボ直前カルナピックアップ
☆5オジマンディアス
☆5シェヘラザード
☆5諸葛孔明
☆4アタランテ×3

アポコラボ(本番)
☆4ケイローン
☆4巴御前
☆4ペンテシレイア


 いやね。俺カルナさんに嫌われてるのかなって思うくらいの引けてないですよ。なんですか三回連続☆5すり抜けって。馬鹿なの。阿呆なの。死ぬの? いや、☆5引けてるんだから文句言っちゃいけないかもだけどさ。どうしてカルナさんでないのぉぉぉぉォォォォォ!!(血涙) CBS2018でもカルナさん引きたかったのにアーサー王引くし……辛いなぁ。
 あ、そういえばこの時って声優の悠木碧さんがカルナさんを五人引いて話題になりましたよね。流石、カルナさんのマスターの声を担当していたことはある……ま、財力が違い過ぎるだけなんだけどね!

 一応次回は帝都聖杯奇譚ガチャを投稿予定です。できれば12月中に書き終えたいけど、どうせ新年あたりになるんだろうなぁ……これからも、こんな作者をよろしくお願いいたします!!


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