ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

11 / 68
今回それなりに長くなってます。
バトルシーン?も挟みつつ内容は濃くしたつもりです。

ルビが適用されてなかったみたいで誤字指摘頂きました( ̄▽ ̄;)
今は直っているはず…

余談ですが先程Twitterアカウントを作成しました(‪@kokuren_hameln‬)
よろしければフォロー等お願いします^^*

それではどうぞ


第9話

保存日時:2017年01月11日(水) 11:38

 

「先輩…」空港でテレビのニュースを見ながらそう呟いたのは雪菜だった。自分がいなくなった日に絃神島の市街地で3体の吸血鬼の暴走事件があったらしい。紗矢華のことを疑うわけではないが今までのことを思い出すと古城が無茶をしでかすのではないか心配せずにはいられなかった。

すぐにでも帰りたい雪菜とは裏腹に、絃神島行きの空の便にはどれも延期を意味するマークがついていた。

事件が落ち着くまでは、当たり前のことだが人や物の出入りには厳しい規制をかけるらしい。

「はぁ…」無意識か雪菜の口からはため息がこぼれた。

「姫柊 雪菜さんですか?」

「そう、ですけど…」怪しい男達に声をかけられ身構えた雪菜だったが特区警備隊(アイランド・ガード)のマークが胸についていることに気づき警戒心を解いた。

「こちらに」そう言って男は雪菜をある場所へと連れていった──

 

 

「今日は夏音ちゃんと約束あるから先行くね!」

朝食を食べ終わりそれぞれ学校へ行く準備を始めていた古城と紗矢華に向かってそう言うと凪沙は一足早く外へと出て行った。

「その、昨日はごめんなさい。暁 古城…」

2人になったのを確認して紗矢華は古城に声をかけてきた。どうやら昨日の帰りのことを気にしているらしい。

「いいんだよ、それよりまだ抜けないのか?その癖」過ぎたことはあまり気にしない質の古城は簡単に紗矢華を許し、またフルネームで自分の名前を呼んでいることを指摘する。

「あ、その…まだ恥ずかしいっていうか…」

「嫌だったらそのままでいいからな、ほんと」

「嫌じゃないわよ!」気遣ったつもりがなぜか怒られて古城はどうしたらいいか分からなくなる。

「いいから、行くわよ」

「そうだな」その話はもう終わりだと言わんばかりに外へと出て行った紗矢華に続き古城も外に出る。こうして、2人で外を歩くのも少し前までは考えられなかったが慣れてしまったものだ。

大した会話もせず教室に着いた2人はそれぞれの席へと向かい周りの友達と会話に花を咲かせる。

不器用な紗矢華だが古城や浅葱の頑張りもあり数人の友達はすでに出来ていた。

担任の那月が入ってき、事務的にホームルームを終わらせたところで始業のチャイムが鳴った。

 

4コマの授業を受け、昼休みになり他の生徒達が騒がしく昼食を取っているときだった。古城は授業中に届いたと思わしきメールを見つけ内容を確認する。大体の内容を頭に入れた古城は素早く紗矢華をアイコンタクトで呼び出した。

自動販売機の横のベンチに座り、2人は周りに誰もいないことを確認する。

「どうしたのよ、いきなり」

「人工島管理公社から調査の結果が送られてきた」そう言いながら古城は紗矢華の方へとメールの内容を向けた。

そのメールに書いてあったのは、レイハーネの家族構成や貴族としての功績や戦績といったものから周囲からの評価、そして古城達にとって一番大事な彼女の眷獣の能力など多岐にわたった。

「この能力、直接的な攻撃力はないけど旧き世代同士の直系だけあって凄い能力ね」メールの内容を見ながら紗矢華は微妙な顔をする。

レイハーネの持つ眷獣は旧き世代の直系子孫としては数が少なく、たった3体しかいない。しかし、触れた相手を意のままに操ることが出来る魅了(チャーム)系能力の麗楼(オニロポロス)自分の魔力や外部の魔力源から魔力を吸収し対象とのリンクを作り対象に魔力を供給する 意思を持つ武器(インテリジェント・ウエポン)権威の祝宴(エクソシア・ジョルティ)そして人1人分程までの物体を任意の場所へとテレポートさせる天啓への反逆(アポカリプス・プロドシア)どれも強力すぎる眷獣だ。

「そうなのか?」

「まったく、とにかくこれで彼女の手口は大体分かったわね」紗矢華はあまり相手の強さを理解出来ていない古城に呆れながらも話を進める。

「空間転移系の眷獣の能力でこの国の検問をすり抜けて不法入国。そして、吸血鬼にその身体のキャパシティ以上の魔力を供給し軽い暴走状態を引き起こさせて魅惑(チャーム)系の眷獣の能力によって擬似的な吸血鬼の使役を実現してるのよ」

「そういうことか…」

「まだ彼女の危険性が分かってないみたいだから教えてあげるわ。あなただって吸血鬼なのよ?つまり、一昨日会った吸血鬼みたいになる可能性があるってこと。それに1つ1つの過程が単純だからこそ1度ああなってしまったら元に戻すのは至難の業なのよ?」

「うっ…」今更になってレイハーネの危険性を理解してきた古城は紗矢華の言い分にぐうの音も出なかった。

そんな古城を助けるかのように昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったのだった──

 

午後の授業を受けている間古城は色々と考えていた。

家庭環境に歪みこそあるものの、滅びの王朝の貴族の吸血鬼があんなことをする理由と目的が分からないのだ。

「はぁ…」自分の頭では考えても無駄だと思った古城は考えるのを諦め窓から外を眺めていると前の席の浅葱が声をかけてくる。

「ちょっと古城、昼休み煌坂さんとなにしてたのよ。この前家に来た時も一緒だったし」こんな状況でも恋敵の動向にしか興味が無い浅葱。

「ああ、ちょっと例の吸血鬼暴走事件のことでな」

「なにかあったの?」

「別に大したことはないんだけどな、そんなこと気にせず授業ちゃんと受けようぜ」

「なら、いいけど…、っていうか外眺めてたあんたにそんなこと言われたくないわよ」まだ若干心配はしているのだろうがこれ以上は追求しても無駄と分かったのか浅葱はすぐに前を向き直った。

そんな仲の良さそうな2人を遠くから眺めていた紗矢華はなぜか無性にもやもやしていた。

 

午後の授業も終わり、これからバイトだという浅葱と基樹と別れ1階の下足箱へと向かい早々と帰ろうとしていた古城の携帯が鳴った。

「もしもし?」

「暁様ですか!!」緊迫した声を上げたのは昨日の会議で前に立っていた男だ。

「どうかしたのか?」

「現在、複数の箇所で歪な魔力濃度の増幅を感知しました!車を向かわせてあるので至急向かってください!」それだけ言い終わると電話は切れ、焦る古城は紗矢華の手を引っ張り人工島管理公社の迎えの車に乗り込む。

「それで、何箇所あるんだ」

「5箇所で魔力濃度の上昇を計測中です」事務的に告げる運転手の表情にも焦りが見える。

「クソッ…多いな」

「5箇所って…こないだの吸血鬼みたいなやつが!?」古城の反応を見て紗矢華も状況を察したようだった。

「ああ、姫柊もいないのにどうしたらいいんだよ…」

「2箇所で特区警備隊との交戦を確認。吸血鬼部隊を派遣しましたがいつまで保つか…」運転手が告げる言葉は状況が芳しくないことを示していた。

「迷ってても仕方ないか、オレが近いところから潰して回る。とりあえずなんとか持ちこたえてくれ」

「そうね、それしかないわね。私も1人で行くわ」そう言うと紗矢華は車外へと出て行き1番近い場所へと走っていく。

「そういうことだ、オレも早く連れてってくれ」運転手は古城のその言葉で車を走らせた。

「那月ちゃんは今どこにいる?」

「南宮さんは今諸用で国外に…」

「まじか…それで午後は学校にいなかったのか」古城は出張という名目で那月が午後からいなかったことを思い出した。

「暁様、あそこです」煙の立っている場所を運転手が指さした。

「ここまででいい、なるべく周りの人達の避難を早く終わらせてくれ」そう言い残すと古城は走り去る。

目的の場所へと着いた古城は2人組の吸血鬼が眷獣を出し暴れているのを見つけ、周囲の避難が既に完了している事を確認する。

「こっちは時間がないんだ、悪いがとっとと終わらせてもらう」

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の血脈を継ぎし者、暁 古城が汝の枷を解き放つ――! 疾く在れ(きやがれ)黄金の獅子(レグルス・アウルム)双角の深緋(アルナス・ルミニウム)!!」古城の持つ12体の眷獣の中でも攻撃力に特化した2体が姿を現し2人組の吸血鬼を蹂躙していく。魔力を供給されいかに魔力濃度が上がっていても普通の吸血鬼では第四真祖の古城には手も足も出ないのだ。

一瞬にして片付けた古城は息をつく暇もなく次の場所へと向かい順調に数を減らしていき5つ目の紗矢華がいる場所に到着した。

「大丈夫か、煌坂」

「待ちくたびれたわよ」

「結構早かったと思うんだけどな」

「まあ、いいわ。気をつけなさいよ、あの吸血鬼他とは違って元が貴族レベルの吸血鬼よ」そう言って古城に注意を促す。

「そうみたいだな」そう言うと前方の大きな眷獣を3体従えている吸血鬼に注意を向ける。

「強化された真祖級の眷獣が3体…部が悪いにもほどがあるわね」

同じ真祖級の眷獣同士の戦いでは魔力供給のない古城の方が部が悪い。そのことをしっかりと分かっている紗矢華。

「来るわよ!」紗矢華が言い終わらないうちに馬型の眷獣から2人に向けて雷撃が飛んでくるすかさず古城の前に飛び出だ紗矢華は煌華鱗の擬似空間断裂による盾で自分たちを守る。それで攻撃が終わることがあるわけもなく2人は周囲を無数の短剣に囲まれる。意思を持つ武器(インテリジェント・ウエポン)である短剣達は一斉に2人を串刺しにせんと飛んでくる。紗矢華の煌華鱗による擬似空間断裂の盾は絶対的な盾であるが、一瞬しか機能せず一方向にしか展開できないという欠点があるため紗矢華に防御する術はない。

焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)の血脈を継ぎし者、暁 古城が汝の枷を解き放つ―――! 疾く在れ(きやがれ)神羊の金剛(メサルティム・アダマス)!!」二人の周りに金剛石でできた厚い防護壁が形成され迫り来る全ての短剣を反射する。

「大丈夫か?」古城は抱き寄せていた紗矢華に一応の確認をするが、今の一瞬の攻防でも古城たち2人が劣勢なのは明らかだった。

「クソッ…」苦し紛れに呼び出していた神羊の金剛(メサルティム・アダマス)の金剛石の結晶を散弾のように射ち出し攻撃するが全て短剣の群れに叩き落とされてしまう。

眷獣の実体化を解き古城が少し油断した時だった、背後から3体目の眷獣が攻撃を仕掛けてくる。

「集中しなさい!」辛うじて煌華鱗で受ける紗矢華だがケンタウロスの姿をした眷獣の攻撃を防ぎきれず古城と共に空中へと投げ出される。

それを待っていたかのように空中の2人へと全方位から殺到する短剣の攻撃から紗矢華を守ろうと古城は紗矢華を抱き抱えた。

甲殻の銀霧(ナトラ・シネレウス)!!」咄嗟に吸血鬼の霧化を司る甲殻類の眷獣の力を使い紗矢華と自分を霧にして回避を試みた古城だったが身体の至るところを切り傷が埋める。

吸血鬼の霧化の能力は強力だが、同格以上の相手には効かないという性質がある。

「暁 古城!!」自分を守って傷ついた古城に駆け寄り狼狽える紗矢華を雷撃が襲ったがなんとか煌華鱗による擬似空間断裂による盾で防ぐ。

倒れる古城を庇いながら、2発目に備えた紗矢華の耳には鈴の音のような声が聞こえ、空から青い制服の少女が落ちてくる。

「――獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

吸血鬼の背後に降り立った少女は美しい祝詞を口にしながら手に持っていた槍で吸血鬼を貫いた。

「お二人共大丈夫ですか?」少女は眷獣の実体化が解け危険がなくなったことを確認し道路の真ん中に座る古城と紗矢華に声をかけた。

「姫柊…悪い、助かった」

「まったく…先輩は私が目を離すとすぐにこうなんですから!無茶をしないでくださいって言ったのに!」瀕死の古城に遠慮もなく怒る雪菜。

「どうして雪菜がここに?帰ってくるのは今日の夜じゃ…」

「空港で待っていたら南宮先生がいらっしゃって、私をここまで飛ばしてくれたんです」

「那月ちゃんか」そう言いながら古城は自分が昨日の会議の後に雪菜を連れ戻すように言ったのを思い出した。

「本当に、私が間に合っていなかったらどうなって…、誰ですか!?」

背後から近付いてくる人影に気づき警戒する雪菜。

「お前と会うのは初めてか、獅子王機関の剣巫。私はアシュラー・レイハーネ、滅びの王朝の吸血鬼だ」

「滅びの王朝の吸血鬼がどうして─」

「気をつけろ、姫柊!吸血鬼を暴走させて操ってたのはそいつだ…」紗矢華の手を借りなんとか立ち上がった古城は雪菜に必要なことだけを伝える。

「なかなかに頑張ったようだが、その傷でどこまでやれるかな?」不敵な笑みを浮かべたレイハーネは美しい人魚の姿をした眷獣と共にその場から消え、近くのビルの屋上へと座る。

「降りてこいよ!レイハーネ!!」

「先輩!」憤る古城だったが周りからレイハーネの能力によって強化された大量の獣人が現れ3人を囲んだ──




久々?のバトル回となりましたが次回も続けてバトル回です。
そして!次回はストブラらしく吸血シーンをぶち込んでいく予定ですので期待して待っていてください^^*

古城の眷獣の名前が星座のγ星やα星の名前+ギリシャ語ということでレイハーネの眷獣にもギリシャ語を適用しています。
それなりに考えてつけたのですが…あまり厨二病的センスはないため違和感を感じる方がいたら教えてください笑

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。