ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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今回少し長めです!

それと今回で第2章再来の零編が終わります!まだこのタイトル名にあまり納得が言っていないので感想欄とかでタイトル名考えてくれる方を募集中だったり…なければこのまま行きます笑

それではどうぞ!


第14話

1日で一番気温が高くなる2時ごろ項垂れながら歩く1組の男女がいた。

「暑い…溶けちゃう…」

「暑いな…」

「第四真祖の古城くんでも陽射しは結構くるんだ」

「まあ、吸血鬼だからな。そういえばお前も吸血鬼だったな…」

当たり前だが零菜は古城の娘なので吸血鬼だ。

パーカーで直接の陽射しを避ける古城とは違い、直射日光を浴び続ける零菜は気だるげだ。

「とりあえず早く行こうよ、屋内なら涼しいでしょ」

「それは賛成なんだけどさ、お前どこに行こうとしてる?」

「えっ……」

「当ても無く歩いてたのか、ショッピングモールはこっちだ」いつものノリで歩いていた零菜はここが零菜の住む世界の20年前だったことを思い出す。

「はははー、ぼうっとしてたよ」

「なんか見た目だけじゃなくて色々姫柊に似てるよな」

「え?」零菜の顔から察するに自分が母親に似ていると言われるのはあまり嬉しいことではないらしい。そんなことを知らない古城は1人で続けた。

「いや、なんか少し抜けてるところとか好きなものも似てるみたいだしさ」

「似てないよ!」

「そんな怖い顔するなよ、もう言わないからさ」古城は何故彼女がそんなに雪菜と似ていることを嫌がるのか分からないがこれ以上言うと怒らせるだけなのでやめておく。

「ほら、ここだよ」

「おー、おっきい」

「で、どの店に…」

「とりあえずあそこでアイス食べよ!」島で一番大きいショッピングモールに来てテンションが上がったのか零菜は暑さを紛らわそうとすぐ近くのアイス屋へと走っていく。

絃神島は年中暑いため氷菓がよく売れるため春でも列が出来ていることは珍しくない。

例に漏れず短い列ができていたので最後尾に並ぶ。

「どれがいいと思う?」

「その辺の人気とか書いてるやつでいいんじゃないか?」

「古城くんってそういう人なんだー、もっと冒険しようよ冒険!」特に食べたいものがないときは人気だとかオススメと書いてある商品を無難に選ぶ古城に零菜が文句を言ってくる。

2人は少しの間列に並びそれぞれ好きなものを注文し、商品を受け取り外のテラス席へと座る。

「なあ、零菜それなんの味だ?」禍々しい黒色のアイスの中に緑の固まりが混ざっている奇妙な食べ物を指して古城が聞く。

「これ?なんかイカスミ味のアイスにペパーミントのポップキャンディが入ってるんだってー」

「お前、よくそんなもの頼むな…」

「イカスミの鮮度には自信あるみたいだよー?」

「そうか…」呆れる古城の前で零菜が禍々しいアイスを口に入れた。

「うっ…おぇっ…」

「どうした?美味いか?」

「う、うん。美味しいよ!古城くんにも分けてあげる」

「いや、待て。さっきおぇっって言ったよな!?まずかったからってオレに食べさせようとするな」

「えー…」ボヤきながら古城が無難に選択したバニラアイスを羨ましそうに見る零菜。

「あー…、ほら変えてやるよ」見かねた古城は仕方なく零菜と自分のアイスを交換してやった。

「古城くん、ありがとっ!やっぱり古城くんは優しいね」

「これで腹壊したら恨むからな…」

「んー!やっぱりアイスはバニラだよねー、うまいっ」古城の言う事など無視し受け取ったアイスを零菜は上機嫌で食べている。

それを見て古城もアイスを口に運ぶ。

「ぐっ…おぇっ…」イカスミアイスだけの味ならなんとか食べれるが、その間から飛び込んでくるペパーミントの辛さがなんとも言えない不協和音となり吐き気を誘う。そのうえポップキャンディが口の中で弾けているのだからもう何が何だか分からない。一口目を食べ終わった古城は第四真祖になってから初めて命の危険を感じていた。

「どしたの?古城くん」元は古城のものだったバニラアイスを一瞬にして完食した零菜が首をかしげてこっちを向いている。

「お前な…」古城はそう言いながら捨てるのも勿体ないので残りを一気にかき込んだ。

「ごめんごめん、凄い味だったね」なんとか味を感じる前に飲み込み一息をつく古城に零菜が手を合わせて謝ってきた。

「もう、いいよ」

「じゃあ、気を取り直して買い物に行こー!」

「悪い、その前にちょっとトイレ」そう言うと古城はトイレへと走っていった。

「散々な目にあったな…」まだ喉の奥の方でポップキャンディがパチパチと弾けている感覚がしアイスの味を思い出してしまった古城を再び吐き気が襲う。

なんとかそれを堪えトイレの外に出る。

「古城くん遅かったね、他の人とどっか行っちゃおうかと思ったよ」

「行きたきゃ行け」怒っているのか少し古城は不機嫌だ。

「ごめんごめん、これからキッチリお返し選びは付き合うから、ね?」

「はぁ…頼むぞほんと」何故かこの女の子に謝られるとすぐに許してしまう古城だった。

「最近その3人が欲しそうにしてる物とか、なんかある?」

「浅葱は食うのが好きだし、姫柊も煌坂も女子だしチョコは好きだろ?だからチョコでも買いに行こうかと思うんだが」

「なんで古城くんはそんなに短絡的なの…」

「そんなんじゃ、皆古城くんから離れちゃうよ?」

「怒られるのは困るな、3人とも怒らせると面倒だしな」

「そういうことじゃなくてー…、とりあえず最近無くしたものとか古城くんが3人と話してて気になったこととかないの?」

「あー、それなら…姫柊はオレの肋骨でできた指輪が割れたな」

「肋骨!?ママってどんな趣味なの…、ほ、他は?」

「浅葱は…ピアスか?」古城は、昨日浅葱と話をしたときに何故か気になったピアスのことを思い出した。

「指輪とピアスか…紗矢華さんは?」

「煌坂はー…ポニーテール?」

「え?」

「いや、だから長いポニーテール」

「へ?」

「いや、だから煌坂といえば長いポニーテールかなーって」

「古城くん、ふざけてる?」

「いや、別にふざけてないぞ!?オレは思ったことをだな」

「ふーん…」何故か白けた目で見てくる零菜の視線が痛い。

「なら、髪飾りとか?でも指輪、ピアスときて髪飾りはちょっとなー」

「髪飾りじゃダメなのか?」

「チョロい紗矢華さんなら、それでも喜ぶとは思うけど…。とりあえずお店行こっか」

「チョロいって言うなよ…」そう言うと零菜はアクセサリーやジュエリーが並ぶ高級感漂うフロアの一角へと古城を連れてきた。

「お客様どうされました?彼女さんへのプレゼントですか?」

「彼女?私古城くんの娘…」

「娘さん!?」

「なに馬鹿なこと言ってるんだお前は」この年でこんな大きな娘がいるなんて思われたら一溜りもない古城は零菜の頭を掴んだ。

「ははは、ついうっかり…。ただの友達です、彼がバレンタインのお返しになにかあげるものを探してるんですけど」

「左様でございますか、どんな方でしょう?」

「えーと、1人はスタイルのいい金髪、もう1人が黒髪ロングで…」

「お1人じゃないんですか!?」古城が何気なく質問に答えていると店員さんが驚きの声を漏らした。

隣にも美女を連れその子以外にもまだ何人かの女の子をこの年で囲っているとなれば驚くのは当たり前だろう。

「ちょっと、すみません」

「な、なんでしょう…」

「あの人、第四真祖の暁 古城です」驚く店員を引っ張り彼女にしか聞こえない声で零菜はそう告げる。

「あっ…」少年の身分が分かり納得したのか店員は平常を取り戻す。

国王や、真祖というものは後宮、俗に言うハーレムというものを持っていることは少なくないからだ。

「それで、種類とかは決まっておられますか?」

「ピアスと指輪は決まってるんですけど…もう1人に何をあげるかは決まってないんです」この手の話はよく分からない古城は話になかなか入ることが出来ない。

なにやら、零菜が店員と話をしているためとりあえず彼女に任せることにしたらしい。

1通り話をしたらしくいくつかのピアスと指輪を店員が持ってくる。

「お客様、お気に召すものはございますでしょうか」

「そう言われてもな…」鈍い古城にはどれも同じに見えてしまう。

「もう!その人が着けてるところを思い浮かべて一番似合いそうなものを選ぶの!」見かねた零菜が古城を店員さんの前へと押していく。

「うーん」

「でしたら、こちらはいかがでしょうか」ピアスの代わりに出されたのはイヤリングだった。

「うーん」古城はなかなか決めれない。こういうときにすぐに決められないのは古城の悪い癖だ。

「ピアスより、イヤリングの方が長く使えていいんじゃない?」真剣に悩んでいることを汲み取った零菜は古城に少しアドバイスをする。

「なら、この中から選ぶか…」そう言って古城は指輪とイヤリングを1つずつ指定した。

「嘘っ、古城くんすご…」奇しくも古城が選んだのは選択肢の中で一番高い品物2つだったのだ。

「あとは煌坂のか」そんなことを知らない古城は紗矢華の分を選ぼうとする。

「背が高くて長いポニーテールが特徴の人なんですけど」

「少しお待ちくださいね」零菜の伝えた情報を下に店員はショーケースから商品を取り出し古城の方へと持ってくる。

「こちらの髪飾りか、こちらのネックレスか、ブレスレットどれになさいますか?」

「うーん」さっきと違い種類が違うものを呈示された古城は余計に分からなくなってしまう。

「もう全部あげちゃえば?」零菜がふざけてそんなことを言う。

「それもありか…」

「え!?」悩んでいる古城には零菜の冗談が通じていないようだ。

「じゃあ、それ全部…」

「待って古城くん!せめてネックレス1つかブレスレットと髪飾りのセットの二択にしよう」散財しそうになる古城を慌てて止めた零菜。

「そうか?お前がそう言うなら…ブレスレットと髪飾りの2つにしようかな」零菜があまりにも必死なので古城は後者にすることに決めた。

「分かりました、ではこちらの2つで」

「ねぇ、古城くんなんでブレスレットと髪飾りにしたの?」

「それは、2つもらった方が嬉しいだろ?」

「あっ…そういう…」少し期待した零菜は古城の答えに転けそうになった。

「あの…ラッピング等はどうしましょうか」

「零菜、オレは分からないからお前に任せてもいいか?」

「うん、いいよ」そう言うとニヤニヤしながら零菜は店員の元へと向かいなにやら楽しそうに話を進めている。

「なんとか買えたか…」目当てのものを買えたことと、3人に怒られるという最悪の結末を迎えずに済むことに対する安堵感に襲われる古城。

「古城くんー、終わったよー」1通り話がついたのか自分を呼ぶ零菜の元へと古城は向かった。

「それでは、お支払いの方ですが。4点とラッピング代を合わせまして──」古城の記憶はそこで途切れていた──

 

「やばい…」

「どうしたの?」

「見たこともない数字を見た気がする」直感で古城が選んだものはどれも最高級品であり全部合わせて百万円を軽く越えていた。

皇帝の古城からすると特に高い買い物をしたわけでもないのだが元が庶民の古城は金額を見た瞬間記憶が飛ぶくらいの衝撃を受けたのだった。

「まあまあ、古城くん今お金持ってるしね?」

「持ってても限度ってもんがあるだろ…」

「古城くんったら、貧乏症なんだから。でも、3人はきっと喜んでくれるよ?」

「だといいんだけどな…」雪菜たち3人が喜んでくれると聞いて少し気が楽になった古城。

「とりあえずご飯食べて帰ろ?」

「ああ…、あそこに入ろう」期せずして大金を使ってしまった古城が珍しく自分から選んだのは安いラーメン屋だった。

いつもならチャーシュー麺の大盛りに炒飯をつけ餃子も頼むくらいの勢いの古城だが、先ほどの罪滅ぼしのつもりか今日は普通のラーメンの並盛を頼む古城だった。

「あちゃー…」古城がなかなかに気にしていることに申し訳なさを感じたのか零菜が古城の器に自分の煮卵とチャーシューを忍ばせた。

「ああ、気を遣わせちまったか?」

「ちょっとね」

「お前も気を遣ったりできたんだな」

「なんか、それちょっと心外なんだけど」

そんな話をしながらラーメンを啜った古城たちはそのまま家に帰り1日出歩いた疲れもありすぐに寝てしまった──

 

「ん…もう朝か」隣に裸の零菜が寝ていないことを確認した古城は洗面台へと向かい顔を洗い、朝食の準備をする。

なかなか起きてこない零菜を叩き起し2人で簡単な朝食を食べたあと、他愛もない話をし、ゴロゴロしていると昼前になってしまった。

「なあ、零菜?」古城は昨日取ってやった姫柊とお揃いのストラップで遊んでいる零菜に声をかけた。

「どうしたの?古城くん」

「いや、なにやってるのかなーと思ってさ」そう古城が言った時だった、零菜の身体を青白い光と魔法陣が包んだ。

「あ、思ったより早いなーはしゃぎすぎちゃったかな。そろそろ時間みたい帰らなきゃ」

「もう行っちまうのか」

「うん、寂しい?」

「どちらかといえばな」

「でも、またすぐ会えるよ」

「すぐ?」

「うん、あと5年くらいしたらね」

「じゃあ、それまで待ってるよ」

「じゃあね、古城くん。久々に2人で出かけられて楽しかった。ちゃんと今日中にお返し配るんだよ?」

「オレもなんやかんや楽しかったよ、母親とは仲良くしろよ」

その古城の声を最後に零菜は20年後の未来へと帰ってきた。

「どうだった?零菜。2回目の過去は」

「楽しかったよ?邪魔者もいなかったしね」

「それはそうと雪菜さんが呼んでたよ?」

「え、ママが…」萌葱の言葉に露骨に嫌そうなする零菜。

避けては通れないため雪菜の待つ部屋へと零菜は向かう。

「ママ…?」

「そこに正座しなさい」恐る恐る扉を開けた零菜に予想通りの声がかけられた。

「全く、誰に似てこんな娘に…」

「雪菜、それくらいにしといてやれ。零菜も反省してるよ」雪菜の叱責を遮ったのは扉にもたれ掛かる古城だった。

「あっ…」古城が終わりと言えば終わりなのだ。雪菜は古城に逆らうことが出来ない。

「もう少し親子なんだし仲良くな」そう言うと零菜を部屋の外へと出て行かせる。

「すみません…恥ずかしところを…」

「零菜のことを大切に思ってのことだろ、それくらい分かってるさ。

でも、零菜も来年は高校生だしそろそろ好きにさせてやってもいいんじゃないか?」そう言うと古城も部屋の外へと出て行ってしまう。

「おい、零菜」

「なに?古城くん」

「忘れ物だ」そう言うと古城は零菜の下着を投げてくる。

「え、古城くんこれずっと持ってたの!?変態…あっ…」下着の中に包まれていたのは古城が取ってくれたねこまたんのストラップだった。

「ありがと、大切にするね。あと…もう少しママとは仲良くするようにする」

「ああ、来週休みなんだけどどっか行くか?」

「うん!」

「あ、雪菜のやつも一緒だからな」

「うげー…」

「さっき仲良くするって言ってただろ?じゃあ、オレは雪菜に話してくるよ」そう言うと古城は雪菜の部屋へと戻っていった──

 

 

「はあ…なんか疲れたな、少し寝るか」そう言って古城が自室へと向かおうとした時だった。

「たーだいまー!」玄関のドアが開き凪沙が飛び込んでくる。その後に続いて雪菜と紗矢華も中に入ってくる。

「先輩、ゆっくり休めました……、先輩?」

「どうした?姫柊」

「どうして先輩の前に下着が落ちているんですか?」

「あ…零菜のやつ!」古城は雪菜に言われ足元に落ちているピンクの下着に気づく。

「どうしたの?雪菜」

「先輩が私たちがいない間に女の子を連れ込んだんです!」

「古城くん!?」

「やっぱり変態なのね、あなた!」

「いや、待て違うんだこれは…」

「先輩はやっぱりいやらしい人です!!」そう言うと雪菜は雪霞狼を持ち出し古城へと向けた。

昼の絃神島に古城の叫び声が響いたのだった──




なんとか更新できました( ̄▽ ̄;)

明日は確実に更新が出来ません!すみませんほんと…

さて、短いですがこれにて2章は終了です。
ただただちょっと未来に触れたくなったからという理由とホワイトデーの話が書きたいからという理由で入れさせていただきました笑

次回幕間の割には長い話が一話になるか3話に分割するかは迷っていますがホワイトデー回です。それぞれのヒロインと古城の距離がどうなるのか期待していただけると嬉しいです!

長くなりましたがこの辺で!1日更新できないので感想とか質問とか評価とか…いただけると日曜日に全力更新するので、お願いします!!

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