ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

20 / 68
今回から新章です!
ストブラは色々といい設定があって話が作りやすくて助かりますね。
UAもそろそろ9000になります、ありがとうございます^^*

それではどうぞ!


人間戦争篇
第18話


「先輩起きてくだ…えっ、先輩が珍しくこの時間に起きてる!?」

「そうびっくりすることでもないだろ、昨夜は全然眠れなくてな気づいたら朝になってたんだよ」

「そうですか、先輩がちゃんと起きられるはずないですもんね」

「さらっとひどい事言うな姫柊は」

「すみません…、体調大丈夫ですか?」

「ああ、眠たいけどなんとかな」

「そうですか、今日は昨日も言いましたけどお昼すぎから人口島管理公社の方々との会議があるので二度寝しないでくださいね」

「わかってるよ、先朝飯食べててくれすぐ行くから」

古城は重たい頭を抱えながら顔を洗いなんとか眠気をとばそうとする。身体は昨日の吸血行為によってこれまでに無いくらい元気なのだがそれと眠気とはまた別問題なのだ。エナジードリンクを飲んで無理やり徹夜しているときのような不自然な感覚に襲われながら雪菜たちが待つリビングへと向かう。

「あ、古城くんおはよ。朝はパンにする?それともご飯?」

「今日はコーヒーだけでいい」

「ちょっと待っててね」凪沙がキッチンに走って行くのを横目に古城は席についた。

「おはよう2人とも」

「おはよう古城」

「ちゃんと起きられたんですね」

「で、何見てるんだ?」真剣にテレビを見つめる2人に古城は気になって説明を求めた。

「今からラ・フォリアさんがテレビに出るんだってー、はいコーヒー置いとくね」

「ラ・フォリアが?」

「まあ、見ておきなさい。私達にも全く関係の無いことじゃないみたいよ、ほら王女がでてきたわ」

紗矢華の言葉のあとすぐにテレビにラ・フォリアが映った。

なにやら話をしているようだがカメラのところまでは聞こえないのか何を話しているのかは分からない。

画面の右上の方に(LIVE エジプト連合と北欧アルディギア王国の間で臨時会談)と書いてある。どうやらアルディギアとどこかの国か集団が話をするらしい。

「おい、あの気持ち悪い仮面付けてる奴らはなんだ?」画面が切り替わりおそらくエジプト連合と思われる人々が映る。

「先輩、知らないんですか?エジプト連合は九柱神官(エネアド)と呼ばれるそれぞれ違った仮面を付けた9人の神官が取りまとめているエジプトを中心とした対魔族組織なんです」

「そんな組織がアルディギアと何の話が?」テレビを見るだけでは何が起こっているのかよく分からない古城は誰に聞くでもなく独り言のようにそう呟いた。

その呟きに意外な人物が返答した。

「あちら側が和平協定、いわば同盟を破棄したいと持ちかけてきたのですよ」

「そうなのか…って、え!?」テレビの方からではなく玄関の方からここにいるはずがない声が聞こえてきたのだ。

「お久しぶりですね、古城。紗矢華も雪菜も凪沙も元気でしたか?」

「お、王女!?どうしてこんなところにいらっしゃるんですか?会談中じゃ…」

「少し困ったことがあったので夏音に影武者を任せてきました」

「困ったことですか?先輩となにか関係が?」

「ええ、私達アルディギア王国とエジプト連合は長年魔族との戦いにおいて常に最前線を張ってきました。聖域条約が成り立っているのも3つの夜の帝国(ドミニオン)と我々の間、つまり魔族と人間との間にあまり戦力差がないことが理由なのです。しかし四つ目の夜の帝国(ドミニオン)が出来たことによりその均衡が崩れつつあるのです」

「それが、そのエジプト連合とアルディギアの同盟破棄になんの関係が?余計に仲良くしないと行けない気がするんだが」

「私達アルディギア王国のスタンスはどちらかというと親魔族派なのですが、エジプト連合は宗教上の理由も相まってかなり反魔族派なのです」

「そこで歪みが生じているということですか?」

「そうですね…」ラ・フォリアは珍しく思い悩んだような顔をした。

ラ・フォリアの言葉を待ち古城たちを沈黙が包もうとした時テレビからラ・フォリアが今さっき説明したことと同じようなことが聞こえてきた。

「まあ、なんだラ・フォリアも疲れてるだろ少し休んでくれ」

「では、古城の好意に甘えるとします。話はまた後でしましょう」

「煌坂、ラ・フォリアを姫柊の部屋にでも連れて行ってやってきてくれ」

「分かったわ、王女こちらに」紗矢華がラ・フォリアを連れて行ったのを見届けて古城たち3人はテレビへと注意を向ける。

どうやらエジプト連合側は不確定要素の第四神祖をこの世から消すことでほかの夜の帝国(ドミニオン)との均衡状態を保つべきと考えているらしい。

「なあ、姫柊このエジプト連合っていうのはアルディギアと同じくらい強い組織なのか?パッと見ただのカルト集団にしか見えないんだが」

「先輩はもう少し色々と勉強してください。知らないことが多すぎます」

「勉強する気はあるんだけどな…」古城は呆れる雪菜に申し訳なさを感じつつも視線で説明を促す。

「エジプト連合は名前の通りエジプトを中心とした反魔族主義を掲げる組織です。アルディギア王国のように魔導技術に優れていることはないのですが、代々優秀な過適応能力者(ハイパーアダプター)がよく生まれる傾向にあり、噂では人工的に過適応能力者(ハイパーアダプター)を生み出せるというのも聞いたりします。特に九柱神官(エネアド)と呼ばれる9人はそれぞれエジプト神話に出てくる九柱神に則った能力を使うことができ、ひとりひとりが真祖の眷獣と互角程度の実力を持っているとされているとても強力な組織です」

「まじか…そんなのに狙われてるのか…」自分が実はかなり危ない状況にあると知り古城の顔が青ざめた。

しばらくしテレビの中継も終わり、ラ・フォリアも長旅の疲れをそれなりに癒し紗矢華と帰ってきたところでちょうど昼時になったためラ・フォリアを加えた5人で昼食を食べた。

「先輩、そろそろ時間です」

「すっかり忘れてた、行くか…。煌坂はラ・フォリアについておいて…」

「どこかに行くのですか?古城」

「ああ、ちょっと国のお偉いさんたちに呼ばれててな」

「そうですか、なら私もご一緒させていただけないでしょうか。先ほどの話もそこで」

「そういうのいきなり大丈夫なのか?」

「ええ、古城がよければ問題ありません」

「わかった、オレから連絡入れておくよ」

こうして凪沙以外の4人はキーストンゲートへと向かった。

「ラ・フォリア様こちらへ」

「なんの連絡もなく来てしまいすみませんね」

「いえ、ちょうどアルディギア王国の方に連絡をとろうと思っていたところなので」

「暁様もこちらへ」

「ああ、姫柊と煌坂は外で待っててくれ。あとで話す」雪菜と紗矢華の2人を外で待たせ、いつものようにこの国の上層部と言われる男達が待つ部屋へと古城はラ・フォリアと共に入っていった。

ラ・フォリアを隣に座らせ、古城は会議を始めるよう合図を出した。

「では、始めさせていただきます。今回エジプト連合からこのようなものが届きました」そうして目の前のスクリーンに映し出されたのは奇妙な仮面を被った1人の男だった。

「我々エジプト連合は第四真祖が治める第4の夜の帝国(ドミニオン)に宣戦布告を申し出る。我々も罪もない一般人の血を流すことは望まない、よって今日より5日間猶予を与える。それまでに第四真祖 暁 古城の身柄を差し出せば宣戦布告及び攻撃命令は取り下げる。それでは、正しい選択を期待する」業務連絡のように淡々とした声が部屋に響き渡った。

「以上です、今回暁様の身柄を引き渡した場合でも、エジプト連合の性格上この国は多大な被害を受けると予想されるためあまり得策とは言えないでしょう」古城はここにいる人間がいきなり敵になると思っていたためその一言に安心する。

エジプト連合は反魔族主義を掲げる組織であるため、魔族特区や親魔族国家等を嫌う傾向にあり多くの親魔族国家を半ば植民地扱いしていることでも有名なのだ。

たとえ古城の身柄を渡したところでこの国に何もしないとは考えられない。

「じゃあ、オレ達はそのエジプト連合っていうのと戦うしかないのか?」

「それはそうなるのですが、我が国はまだ国防機能が心許ないため…」

前回の吸血鬼暴走事件、レイハーネとの戦いでもわかったことだがこの国には現在戦える人間があまりいないのだ。

古城1人の戦力はとてつもなく大きいがあらゆる場所で戦いが起きてしまうと古城にも手の回らないところがでてくる。

それはこの国の1番の欠点でもあった。

「あのさ、色々と考えてたんだけど」部屋中があまり良くない雰囲気で満たされていたところを古城の声が響く。

「どうしましたか?暁様」

「アルディギアはそのエジプト連合ってのと同盟を破棄したんだろ?なら、オレ達がアルディギアと同盟を結んでもなんの問題もないよな」

「し、しかしアルディギア王国の方がそんなことは…」

「よく決めてくれましたね古城。私達アルディギア王国は第4の夜の帝国(ドミニオン)が生まれた時からこうなることを予想していました。そして、エジプト連合との同盟関係がなくなった場合この国と同盟を結ぶことを決めていました」

「ラ・フォリアはそこまで読んでたのか、さすがだな」古城は以前ラ・フォリアが同盟を持ちかけてきていたことを思い出した。

「はい、ですからあなた方がよろしければすぐにでも同盟を結ばせていただきます。その際は各種魔導兵器をこの国の沿岸部に配置させ精霊炉を利用した擬似聖剣(ヴェルンドシステム)の情報も開示し国防のお手伝いもいたします」

「おぉ…」完全に窮地に立たされたと思っていたところに光が見え何人かが喜びの声を漏らした。

「ほんとにいいのか?ラ・フォリア」

「ええ、古城が私を娶ってくださるのなら」

「いや…それは…わかった、考えとくよ」

「お願いしますね?」背に腹は変えられない古城はまたラ・フォリアのペースに載せられ恐ろしい約束をしてしまう。アルディギア王国の現国王ルーカス・リハヴァインの恐ろしい怒り顔が想像でき古城を寒気が襲う。

「では、その方向でお願いします」

「分かりました、急ぎ国王に話を伝えます」

「悪いな、オレが他の夜の帝国(ドミニオン)みたいに強い吸血鬼とか血の従者を揃えてなくて」

「あら、古城。もう雪菜はあなたの血の伴侶になったのでしょう?」

「うっ…ラ・フォリア、なんで知ってるんだよ」

「さあ、どうしてでしょう」笑いながらラ・フォリアが本国に連絡を取りに部屋の外へと出て行った。

「で、そうなると国民の被害をどう抑えるかだな」

「はい、そちらの方は問題ないかと。島の外縁部で迎撃にあたれば被害は最小限に抑えれます」現在絃神島の周りにはカインの遺産である大きな人工島がそのまま残っている。つまりそこで迎撃に当たるということなのだろう。

「万が一島内に侵入された場合はどうするんですか?」

「それなら、那月ちゃんに頼んで別の空間に送ってもらえばいい、そこでこっちの誰かと戦わせる」

「では、その方向で私たちは特区警備隊(アイランドガード)と万が一に備えた避難誘導の詳細を取り決めます、暁様はラ・フォリア様とお話を」

「わかった、また何かあれば呼んでくれ」

それだけ言い残し古城は部屋を後にし外で待っていた2人に詳細を伝えた。

「エジプト連合と戦争ですか…」

「大丈夫だ、戦争っていっても大半はオレがなんとかする。悪いが姫柊も煌坂も手伝ってくれるか?」

「はい、もちろんです。私は先輩の監視役ですから」

「仕方ないわね、私も付き合ってあげるわよ」

あまり2人に危険な目にあって欲しくはないのだが頼るところも他にないので仕方がない。

2人に感謝しているとラ・フォリアが帰ってくる。

「どうだった?」

「お父様はあまり良い顔をしてはいませんでしたが、状況からすぐに了承していただけました。おそらく明日の夜にでも魔導兵器を載せた空母が到着するはずです、お父様の好意でアルディギア聖環騎士団の精鋭500人もお貸しいただけると」

「そうか、それは助かる。ラ・フォリアはどうするんだ?」

「私も戦場には出ますよ」

「「「え!?」」」

「いやいや待てラ・フォリアお前何言って」

「いいですか古城、一国の主であるあなたが最前線に出るのです。私が出なければ笑いものもいいところです。それに…こんな楽しそうなこと見逃せません」

「王女…やっぱりただ楽しんでるだけじゃないですか…」

「冗談ですよ、古城この戦いの勝利を願っていますよ。私は明日からアルディギアの指揮を取らねばいけませんのでこれで」

そう言うとラ・フォリアは古城にハグして去っていった。

「先輩…?鼻血出てますよ?」

「えっ!?いや違うぞ?これは」

「いいから拭いてください」雪菜はハンカチを古城に渡した。

「悪いな…」

「古城、とりあえずエジプト連合について調べられることは調べるわよ。後手に回って勝てるほど甘い相手じゃないのは確かよ」

「煌坂の言う通りだ、とりあえず色々調べないとな」

そうしてとりあえず3人は家へと帰ることにした──





もしこの作品を気に入ってくださっている方がいらっしゃれば評価お願いします!

あとでキャラ紹介の方を更新しますのでそちらも覗いていただければと思います!
次回からバトル回になると思います、期待してお待ちください!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。