もっと長く書きたいんですが…申し訳ない。
それではどうぞ!
雪菜や紗矢華がなんとか勝利を掴み取った頃、ラ・フォリアはいつものように悪戯な笑みを浮かべていた──
「あなたは先ほど、どうして魔族の肩を持つと質問されていましたね。それは簡単なことですよ、私が古城を好きだからです」
「ふざけるなよ、アルディギアの王女!」
「はい、もちろんそれだけではありませんよ。反魔族主義を掲げるあなた達エジプト連合と手を組むよりもこの国と仲良くする方がお得だからです」
「損得だけでお前達は魔族に肩入れするのか!」
「そう熱くならないで下さい」
ラ・フォリアは涼しい顔で頭上から落ちてくる雷撃を躱しながら続ける。
「あなた方は魔族に恨みを持ち殲滅するために集まった集団。今の世の中には残念ですが争いは必要ないのです」
「目の前に降りかかる火の粉を振り払おうとするのは当然のことだろう!」
「年増のおば様はこれだから困りますね」
「誰が年増だ!」ラ・フォリアのいつもの口車に乗せられヌトの怒りに呼応するように雷撃の威力が跳ね上がる。
戦いが始まってからもう10数分が経とうとしているがラ・フォリアはただヌトの攻撃を避け続けるだけで自分から攻撃をしかけようとはしない。
「なんの真似だ!ちょこまかと!」
「いえ、この際ハッキリさせておこうかと思いましたので。エジプト連合の中では一番の穏健派であり、母国のことを一番に考えるあなたがなぜこのような戦場へと出てきたのか」
「だから、第四真祖の存在を危ぶんでこうして抹殺しに来てるんだよ!」
「そうですか、あなたはおそらくアトゥムに利用されているのですね。そういうことでしたらもうあなたと話すことは何もありません。すぐに終わらして差し上げましょう」
ラ・フォリアは言葉通り今までと態度を変え胸元から黄金の装飾が施された呪式銃を取り出した。
「そんな銃1つで何が出来る!」
「あなたは戦場に出てくるべきではなかったのです」
ヌトは天空を司る女神。
彼女は天候を自由に操作できるという絶大な能力を持っているが、こと戦闘においては雪や雨を降らすだけでなんの効果もない。せいぜいがこの戦い中ずっと放ち続けている雷撃を天から呼び落とす程度しか攻撃手段を持たないのだ。
「我が身に宿れ、神々の娘。楯の破壊者。雹と嵐。勝利をもたらし、死を運ぶ者よ!」
戦場にラ・フォリアが奏でる祈りの詩が、美しく響き渡る。
その声に呼応するかのように彼女の呪式銃からヌトの雷撃よりも眩い黄金の輝きが溢れ出す。
「
ラ・フォリアは自身の身に精霊を宿すことにより、精霊炉と同じ力を1人で扱うことが出来る。そうして得た膨大な霊力を武器の霊格へと供給することで一時的に己の武器を聖剣レベルへと引き上げる支援兵器、それが
彼女は降りかかる雷撃を銃身から溢れ出る刃ではじき返し一瞬のうちにヌトの目の前へと迫り、いとも容易く彼女の身体を両断してしまった。
「あなたはこれからの世界に必要な人材です。そこに横たわったまま自らが何をすべきなのかよく考えなさい」
わざと急所を外し殺さずにおいたヌトに向かってラ・フォリアは諭すようにそう言うとすぐにその場を去っていった──
「すみません、こちらは終わりましたのでそちらに1度帰還したいのですが」ラ・フォリアは耳についた通信機に手を当てまるでホテルのロビーへと電話するような気楽さで浅葱に連絡をとる。
「わかりました、すぐに」
浅葱が言葉を終えないうちにラ・フォリアの身体を紫色の魔法陣が包み込み、吸い込まれるようにして消えていく。
彼女から空間転移魔術特有の違和感が消えた時、目の前には基樹が立っていた。
「ご苦労さん、まさかあんたが1人やってくれるとはな」
「当然です、同盟国の代表として古城1人に全てを任せるわけにはいかないですから。もっとも相手が弱かったと言われればそれまでですが」
「いいや、助かったよ。奥で休んでてくれ」
「それには及びません。私をすぐに別の場所へ」
「待て待て、そこまでする必要ないだろ?」
「奥に倒れているのは雪菜と紗矢華でしょう?古城はまだ闘いを続け敵戦力も未だ多く残っている。戦える者は戦場へと出るべきです」
「わかった、あんたがそう言うなら好きにしてくれ。那月ちゃんアスタルテを借りるぜ?」
「今は了承などいらん、お前が指揮をとっているんだ好きにしろ」
そうしてラ・フォリアとアスタルテという珍しい2人組はまた戦場へと身を投じた──
「上へ逃げれば大地から離れれば、私の能力はとるに足りない能力とでも思いましたか?空中には微量ですが砂埃が含まれているのをお忘れなく」
地面に叩き落とされた古城を見つめながらゲブは独り言のように呟く。
「そうか、それは盲点だったよ。なら─」
古城の身体から膨大な魔力波が吹き出し、大気が震えた。
そして周囲に金剛石で出来た盾を展開する。
「お前の攻撃はこれでもうオレには届かない」
ゲブの周囲から古城へと数千の岩槍が飛んでくるが、古城の前で全て砕けてしまう。
障壁の中に槍を生成しようにも空中の微量の砂塵は古城の魔力波によって吹き飛ばされてしまい1本の槍を生成することさえままならない。
「余裕かましてんじゃねーよ、クソガキがぁぁっ」
ゲブはつい数分前までの冷静さを忘れさせるような怒号をあげ地面を真っ二つに割りその中に古城を閉じ込めようと試みる。
しかし、古城は重力制御の能力によって宙に浮いたままだ。
「もういい加減諦めたらどうなんだ、お前よりさっきのやつの方が断然強いよ」
その言葉に何かを感じたのかゲブを中心に半径2キロほどの地面の表面がだんだん不安定になっていく。
「無茶苦茶しやがるな…こいつ」このままではすぐに撤退した聖環騎士団にも被害が及ぶと判断した古城は新たな眷獣を召喚した。
古城の後ろから溶岩で構成された琥珀色の牛頭神が現れ広範囲の地面の歪みを上から溶岩の層を作り、無理やり安定させる。
「我慢勝負といこうじゃありませんか、第四真祖!」ゲブが古城の方へそう叫んだときには既に古城の拳が彼の身体を貫いていた。
「ひ、卑怯な…」
「あんたバカだろ、あんたの理屈に付き合う理由はないんだよ」
古城は拳をゲブの身体から引き抜きすぐに浅葱へと連絡を取る。
「古城?どうしたの?」
「もう1人片付けた、他の連中は?」
「姫柊さんと煌坂さんとアルディギアの王女様が1人ずつ」
「そうか、さすが…」古城は浅葱が意外にも喜んでいないことに違和感を感じ言葉を止めた。
「姫柊さんも煌坂さんも結構な重症、命に関わることはないけどすぐに戦線復帰ってわけにはいかなさそう。王女は二人目の迎撃に行ったわ」
「姫柊も煌坂も頑張ってくれたんだな」
「うん、どうする?一回戻る?」
「いや、すぐに次の場所に送ってくれ」
「わかった」
程なくして古城の身体を紫色の魔法陣が包み込み新たな戦場へと古城を誘った──
午後からは少しお気に入り数やUAも増えたので既に投稿している23話分の文章を再構成できたらなと考えています。
最初の方の文章は見るに耐えなかったと思うので…
もし、そういえばここどうなったんだ?とかいうのがありましたら感想等で質問頂ければ今回の再構成で新しく場面が加わるかもしれませんのでもし何かあれば言ってください^^*
今晩、少し長めの話を更新して明日からは今までとは違うボリューミーなアトゥム戦へと移行すると思うのでもう暫く退屈な話にお付き合い下さい。
13時にはキャラ紹介の方も更新しておきます!
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