日にち分けて書いてたんで大分文章おかしいと思いますが、誤字とかあったら教えてください。
「いつまでそうやって寝ているつもりだ?」
聞きなれたがあまり聞きたくはない声が古城の鼓膜を揺らす。
頭の下の心地よい柔らかさを感じもうひと眠りしようと彼は目を瞑ろうとしたが声の主がそれを許さず頬を強く叩いてきた。
「痛っ…、那月ちゃん!?
古城は自分の目の前にある光景に面食らったように言葉を途切れさせた。
「どうした?まるで得体の知れないようなものを見た顔だが」
「いや、大きくなった那月ちゃんの膝の上に頭を乗せてるってどういう状況なんだ?」
「粉々になったお前を回収し監獄結界に引きずり込んだ。そんなことも分からんとは…」
心の底から呆れたような顔をした那月は無雑作に立ち上がる。
必然的に那月の膝から床へと頭から落下した古城は思わずうめき声をあげた。
「南宮先生も乱暴だなぁ…」
ボーイッシュなショートカットの頭を掻きながら暗闇から優麻が歩いてくる。
「いきがって出て行った割になんの健闘もできないやつなら当たり前だ」
なんの反論もできないと外国人風に両手を横にあげるジェスチャーをする優麻の顔が笑っていないことに気づいた古城は文句を言わず那月へと疑問を投げかける。
「正直舐めてたの否めない。でもなんか掴めたんだ、もう1回やれば──」
「どこまでも悠長だな、暁。お前に与えられたチャンスはさっきの瞬間だけだ、次は向こうも本気でくる」
「でも、やるしかないだろ!」
那月は何度目かのため息をつき古城の鳩尾へ太い銀鎖を突きつけ黙らせる。
「仙都木、頼めるな?」
「元々そういう手筈ですからね、ボクは最悪古城が無事ならそれでいい」
優麻らしくない一言を残し、彼女は奥へと消えていく。
「暁、私はもう少し期待していたんだがな」
「え?」
「いや今となってはどうでもいい」
その後珍しく那月から昔話を聞いてから二人の間に静かな時が流れた。
その静寂の中先に口を開いたのはやはり那月だった。
「そうだな、最後の補習とするか」
「最後?」
古城は自分の耳を疑いたくなるような言葉を聞き思わず聞き返してしまう。
「以前この姿を見せた時のことを覚えているか?」
那月は古城に構わず話を続けた。
「あの続きをさせてやる、せめてもの餞別にな」
「待ってくれよ、那月ちゃん──」
「グズグズするな、時間が無い。少し喋りすぎたな」
そう言うと那月は古城の方へ両腕を伸ばしてくる。
いつもの幼女の姿とは違い歳相応の妖艶さを身に纏った彼女に思わず古城も胸の高鳴りを覚えた。
「私が吸血鬼に血をやることなど未来永劫ないことだ、気が変わらないとも限らんぞ?」
この状況を楽しむかのように笑みを浮かべていた那月の顔はノってこない古城を見て呆れたものへと変わる。
「あまり教師に恥をかかせるなよ、暁」
またしても古城は下を向いたまま何を言おうともしない。
「それとだ、お前は第四真祖である前に私の教え子。そもそもまだまだ子供だ無理なときは大人に頼ればいい」
那月は痺れを切らしたように古城を抱きしめた。
いつもとは雰囲気の違いすぎる自分の恩師の姿に古城は驚きを隠せない。
「かわいい教え子のために自分が何かをできるというのは教師冥利に尽きるものだろう?」
耳元でそう告げられた言葉は掛け値なしで那月の本音なのだろう。
今まで幾度となく自分たちを助け導いてくれていたことを古城は思い出す。
「なあ、那月ちゃん。不出来な生徒で悪かったよ」
「まったくだな。不出来な教え子を持つとこれだから困る」
お互いに見つめ合い涙目になった古城は様々な思いを断ち切るように那月の首元へと噛み付く。
彼女の血は雪菜や紗矢華、ラ・フォリア等今まで吸ってきた誰よりも濃い魔力を秘めていた。
「これはお前に対する罰だ、不甲斐ないお前自身に対するな」
「え?」
吸血されても尚余裕を浮かべていた那月は最後に古城を強く抱きしめると優麻が消えていった奥の部屋へと歩いていく。
「さて、
その言葉とともに古城を空間の歪みが襲った。
「空隙の魔女と仙都木阿夜の娘ですか、陰湿な魔術を用いるあなた達が姿を見せるとはどういう風の吹き回しですか?」
ビルの屋上へと座りながらこちらを見る巫女装束の女はそう口にした。
「教え子の借りを返しにきた、
那月の背後に大きな金色の鎧騎士の姿をした守護者が現れる。
「
優麻も那月同様に守護者を召喚し自分を見ながら座る彼女へと相対する。
「行くよ、古城は殺させない」
優麻が自らの守護者を突撃させる。
その後不自然な感覚が彼女を襲い、次の瞬間守護者が吹き飛ばされた。
「たかがその程度ですか」
「どうかな?ボクも無闇にやられてる訳じゃないんだよ」
優麻が悪戯な笑みを浮かべる。
「
優麻はそう言うと
「今のうちに攻撃しないのですか?」
「こんな簡単に倒せると思うほどボクは傲慢じゃないよ、その服色んな術がかかってるんだろ?」
「さすがは魔女といったところですね」
「仙都木、時間がない早く来い」
那月に呼ばれ優麻は一度古城と那月の所まで戻ってくる。
古城は直感的になにか取り返しのつかないことが起こることを予感した。
「我が名は空隙。永劫の炎をもって背約の呪いを焼き払う者なり。汝、我が苟且の躰を裂き、
那月の小さな身体を無数の魔法陣が覆い始め、その胸元へ守護者である
古城をも凌ぐ程の魔力の爆発が那月がいた場所を中心に発生する。
「那月ちゃんは!?」
古城の脳裏に仙都木阿夜の最期の記憶が過る。
「大丈夫だよ、ボクも初めて見たけどあれは最上位の魔女にだけ許された奥の手《再契約》だよ。守護者の一部を自らの体内に取り込むことによって守護者との霊的パスを強めて限界以上に能力を引き出すんだ」
爆風が晴れ中から成熟した那月が姿を現す。
「この身体でこちらの世界にくるのも久しぶりだな、感傷に浸りたいのも山々だがそんな時間はなさそうだな…」
優麻のかけた魔術から数十秒で抜け出た静寂破りペーパーノイズの方を向きながら那月は冷ややかな笑みを浮かべる。
「《再契約》、教え子のために自らの命を捨てる…とんだ美談ですね」
「調子に乗るのも大概にしておけよ小娘、悪いが本気でいかせてもらう」
一瞬にして那月がその場から消え背後を取る。
「大層な名前の割にこの程度の速さにも付いてこれんか」
那月は手に持った扇子を振り下ろし相手の右腕を肩から切断した。
「ぐっ…」
「獅子王機関三聖の長ともあろうものが距離を取ったか、滑稽だな」
那月から離れた
古城と優麻を不自然な感覚が襲い2人は那月が吹き飛ばされることを予期した。
しかし後方へと飛ばされたのは那月ではなく
「悪いが私は空隙の魔女だ。お前らは空間転移や空間生成、空間に関する能力だと思っているようだがそれは誤解だ」
那月は言葉の間にも
「私の本当の能力は名の通り《空隙》。この世界の空間軸、時間軸あらゆる隙間に自らの思い描く事象を刷り込むことが出来る。空間生成も空間転移もただの副産物だ」
自らの恩師の圧倒的なまでの力に古城は驚くと同時にひとつの疑問を覚えた。
「なあ、優麻。那月ちゃんはなんで今まであの力を使わなかったんだ?」
「そうだね、これはあくまで想像だけど強い能力には強い代償が伴うんだ。南宮先生の場合は知っての通り永遠に夢の中で過ごすことで彼女の身体は成長が止まってしまった。だからあの小さな身体では能力の全てを制御出来なかったんじゃないかな」
「じゃあ、さっきあいつが言ってた命を捨てるっていうのは…」
「そのままだよ、《再契約》は守護者の持つ能力を限界以上に引き出す。それを受け止めるには人間の体じゃもたないんだよ。多分そろそろ終わるよ」
優麻の言葉の通り
「そろそろ限界が近いか…」
「那月ちゃん!」
「どうした?不出来な教え子め」
「…その」
古城の目には珍しく涙が浮かんでいた。
「泣くな、この先が思いやられる」
「…その、ありがとう──」
「そうだな、私はそれで満足だ」
那月は泣き崩れる古城を優しく抱きしめる。
「しかし、最後まで教師をちゃん付けで呼ぶな馬鹿者」
いつものように古城を扇子で叩き那月は
「お前には聞きたいことが多い、永劫の時の流れの中で私とともに心が朽ち果てるまで過ごそうか」
那月は足元へ転がる少女に向けて冷ややかな笑みを見せた。
そんな2人を中心に巨大な魔法陣が出現する。
最後にいつもより大きくなった空隙の魔女は古城の方へと身体を向けた。
「期待しているぞ暁 古城。次もし会う時があればもっとマシな男になっていることだな」
そうして2人はどこか遠い空間へと消え去った。
深夜のビルの屋上には古城と優麻の2人が取り残され、そこには古城の赤ん坊のような泣き声だけが響いていた──
那月の本気はどれくらいのものなのか。
これは多分ストブラ読者としては誰もが気になるところなんじゃないでしょうか。
自分なりにですがこんな感じかなと思って書いてみました(ずっと書きたかった話)
次回からは今まで曲がりなりにも支えてくれた那月(ちゃん)先生がいなくなってしまった中で古城たちがどう成長?するのかとか見てもらえると嬉しいです。
更新は明後日の予定?
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