さて、新生活に忙殺され…諸事情で1週間ほどアメリカに行っていまして更新滞ってしまい申し訳ありません!
お詫びになるかは分かりませんが…今回割と長めに書きました。
久々かつキリもいいので感想とかくれると嬉しいです( ̄▽ ̄;)
「
大きな岩の上に座りながら静かにある1点を見続ける古城の隣へアスタルテがやってくる。
「ちょっとだけ待ってもらえるか?」
「
「やっぱりすぐ行くよ」
古城に何か非があるのか、アスタルテの雰囲気がよくない方へと変わる。
それに気づいた古城はすぐに岩から降り彼女の後ろをついていく。
超がつくほどの鈍感な古城だが、
ラ・フォリアと別れこの島へと着いてから約2週間が経った今、古城の身の回りの世話は全てアスタルテがやっている。
島の中央に位置する小高い山にある洞窟を拠点とし、古城は1日の大半を空間転移魔術の練習に使う生活だ。
そんなこともあってか以前よりアスタルテが人間らしさのようなものを持ち始めたような気がして実は古城は喜んでいたりする。
「今日も魚か?」
「肯定、現状製作可能なものは二種類のみ」
「米が恋しいな」
昼食は近海で捕れた魚の塩焼き、夕食はその素揚げというのが定着している。
最悪何も食べなくてもお互い死ぬことはないため何か食べられるだけでもありがたいのだが、古城も元々は日本人なのだ。
米が食べれないというのはそれなりにきついものがある。
「
「この島に来た初日に色々調べたけど食べれそうなものは特になかったんだろ?」
アスタルテは古城の言い分を肯定してか首を縦に振る。
一体どうやって米を用意するのか古城には検討がつかなかったが、料理は今回彼女に任せているためそれ以上特に何も聞かない。
それから特にお互い喋ることもなく、黙々と恒例の魚の塩焼きを食べると別々に行動を開始した。
島に来てからというもの古城は空間転移魔術の練習に励む毎日だ。
初日に那月から受け継いだ守護者の召喚を試したが、10秒と実体化を維持できなかったため今は魔力の微妙なコントロールを可能にするため汗を流している。
「そろそろもう1度くらい試してみるか…」
古城はそう呟くと守護者を召喚するために集中力を高め始めた。
呼べば出てくる比較的召喚が簡単な眷獣と違い、守護者の現出には確固たるイメージと微妙な魔力制御が必要となる。
守護者との霊的パスを通じて自らのイメージを魔力に乗せ、守護者へと送り続けなければすぐに実体化が解けてしまう。
一切の雑念を消し身体の魔力が安定していることを確認した古城は守護者のイメージをゆっくりと構築していく。
やがてそのイメージも完成し、守護者の名前を呼ぶ。
「
静かに放たれた古城の言葉に応じるように目の前に黄金の鎧騎士が現れる。
「5.6.7.8.9.10…、消えられる前に空間転移魔術を…」
前回の記録である10秒を越え、古城は目の前にある小さな石ころへ意識を集中させる。
数秒が経ち、小石の周りに見慣れた紫の魔法陣が現れる。
「やった!これで──」
古城が気を緩めた瞬間、魔法陣が消える。
「…やっちまった、これだから…ん?」
集中を乱したことで魔術が正常に動作しなかったと思い頭を抱える古城は目の前の小石が数cm動いてることに気づいた。
「一応出来たのか?もう1回やってみるか…」
微かな手応えを感じた古城は何度も空間転移魔術を行使する。
5cmから10cm、50cm、1m。
それから程なくして日が暮れた頃には石ころ程度の質量であれば、50mほどの距離をなんとか転移させることができるようになっていた。
「すっかり暗くなっちまったか…、アスタルテは…」
すっかり暗くなってしまった中、アスタルテが待っているであろう方向へ身体を向けた古城の前に、茂みの中から2つの青い点が浮かび上がる。
「え…何かいるのか?」
初日に島一体を探索した時から今日まで大きな動物に出会っていなかった古城は目の前の2つの点を警戒する。
「たー…──。」
「え?」
何かの言葉に気を取られた古城の元へ青色のなにかが飛びついてくる。
「ぎゃぁぁぁぁ──ってお前、アスタルテかよ…」
「肯定、夕飯の支度が整いました」
「そうかそうか、それでなんでお前は髪が短くなってるんだ?」
「…………」
「なんで髪短くなってるんだ?」
「…………」
アスタルテは珍しくなにも応えず、何故か古城の背中へと上がってくる。
古城はそんな彼女の行動に首を傾げながら、子供をあやす父親のようにそのまま生活スペースとしている洞窟へと向かった。
いつもより高い景色に目を輝かせるアスタルテと共に洞窟へと近づくにつれ、古城の敏感な鼻が少し懐かしい匂いを感じ取る。
「カレーか?この匂い」
「…………」
「アスタルテ…、いい加減話してくれないと寂しいんだが。早く応えないと下ろしちまうぞ」
「肯定、今晩の献立はカレー…」
よほど古城の背中が気に入ったのかアスタルテは閉じていた口を少しだけ開く。
しかし、それ以上は何も言わずやはりまた黙ってしまう。
そんな彼女に子供らしさというか人間らしさを感じた古城は笑みを浮かべながら先へ歩いていった。
それから数分ほど、どこか心地よい沈黙が2人の間を流れ目的の場所へと到着する。
「ほら、アスタルテ飯にしようぜ」
「…
「そんな顔するなって、またおぶってやるからな?」
少し名残惜しそうな顔をしたアスタルテは古城のその言葉を聞くと軽い足取りで洞窟の奥へとかけていく。
「なんだかんだ言ってアスタルテも子供か…」
そんなふうに古城が彼女の新たな一面を思っているとアスタルテが鍋を持って帰ってくる。
自分と古城の前に素早く皿を置いたアスタルテはカレーをよそっていく。
「アスタルテ…ほんとにカレー、ってか米なんてどっから?」
古城は目の前に鎮座する少し細長めの白米を見ながら疑問を投げかける。
昨夜希望を出したとは言え、半分冗談のつもりだったのだ。
「……」
しかし彼女は何も答えずじっと古城の方を見つめ続ける。
「どうした?何かあるなら言って欲しいんだが…」
鈍い古城はいつも通りアスタルテの意図するところが分からないらしい。
そんな古城に愛想を尽かしたのかアスタルテはカレーを食べ始めてしまう。
少しアスタルテとの距離が縮まったように感じていた古城は少し残念がりながらも冷めないうちにとカレーをゆっくりと口に運んだ。
「美味いな!これ。最近魚ばっかりだったから格別だな…あれはあれで美味しいんだけどやっぱり米は食べたいよな。いつもより固めの米もむしろカレーに合ってるし──」
久しぶりの白米にテンションの上がった古城はアスタルテとの少し気まずかった雰囲気も忘れ、食レポのように味の説明等を始める。
そんな中、目の前のアスタルテが驚いたように目を見開き自分の方を見ていることに気づく。
「どうかしたか?口に米粒でもついてるか?」
「いえ、な、にも…」
何故かアスタルテはくすくすと満足そうに笑い始める。
そんな姿を見て、古城は昔凪沙が初めて料理を作ってくれた時のことを思い出した。
「そうかそうか、アスタルテ褒めて欲しかったんだろ?」
「…肯定」
古城に自分の気持ちを見抜かれたアスタルテは急に顔を赤らめ俯いてしまう。
そんな彼女の頭を古城は優しく撫でた。
「それで、どこから白米なんて持ってきたんだ?」
「…応答。
少し迷う素振りを見せてからアスタルテは古城に白米の入手方法について話し出した。
「つまり…
古城がアスタルテの長い長い話を要約して問い直すと彼女はこくこくと上下に頭を振った。
「あー…なんていうか……、ありがとなアスタルテ」
古城はアスタルテの無茶を怒るべきか迷ったが、彼女なりに自分を思ってのことだと理解しているため結局感謝を伝えることにした。
「それで、アスタルテに頼みたいことが2つあるんだけどいいか?」
いつもより柔らかい表情のアスタルテはすぐに頷いてくる。
髪が短くなったことで普段の雰囲気と変わり、改めて彼女の可愛らしさを認識させられる。
そんな思いを悟られないよう、古城はアスタルテを自分の脚の間へと座らせると話の続きを始めた。
「ひとつ目はもう少し気軽に話してくれたら嬉しいっていう、ただそれだけなんだけど」
「気軽…に?」
「そうそう、
「……こ…古城…?」
しばらく口をパクパク開けたり閉めたりしていたアスタルテはやがてしっかりと古城の名前を呼ぶ。
「そうそう、無理しなくてもいいけどこれからそうやって呼んでくれよ」
「古城……古城…古城…」
まるで赤ん坊が初めて言葉を覚えたときのように自分の名前を連呼するアスタルテを見て、古城は思わず彼女の小さな背中を抱きしめた。
「古城…?」
「それでふたつ目なんだけどさ」
首を傾げながら後ろを向くアスタルテには何も言わず古城は続ける。
「ラ・フォリアがさ、アゼリアはこの世界じゃないどこか?にいるとか言ってただろ?今のまま空間転移魔術を練習したところで多分時間がかかりすぎる。だからちょっと1つ試したいことがあるんだけどさ付き合ってくれないか?」
「
アスタルテの協力を得ることに成功した古城は夜の海辺へと来ていた。
「
突然古城は自らの使役する巨大な双頭龍の眷獣を召喚した。
「前から思ってたんだ、こいつに喰われたものってどこに行ってるんだろうって。それで、さっきもしかしたらその空間にアゼリアがいるんじゃないかって考えて…試したいんだけど…」
古城は恐る恐るアスタルテの方を向いた。
いつもなら雪菜か紗矢華辺りが頭ごなしに文句を言ってきそうな場面だがどうやらアスタルテにそのような考えはないらしい。
内心ホッとした古城はアスタルテに自分の作戦を伝え、準備をさせた。
「よし、じゃあ頼む」
「
アスタルテを人型の眷獣が覆っていく。
完全に眷獣の召喚が終わると眷獣はその大きな手で古城の身体を掴み──
古城ごとその腕を
「怖ぇぇぇ…」
ここ2週間の特訓で眷獣の細かな制御をできるようになったとはいえ、大きく口を開けた眷獣の中へと入るというのはとても恐ろしいことだった。
「アスタルテー、もう少し奥までいけるかー?」
返答はなかったがゆっくりとアスタルテの眷獣の腕が奥へと進んでいく。
「んー…当てが外れたか…?」
古城がやはり無謀だったかと思い直しアスタルテに引き上げてもらうよう声をかけようとすると、急に腕が奥へと進むスピードが早くなった。
「おい!アスタルテ!もういいから戻して──え?」
焦った古城がそう口にしたときだった、眷獣の口から漏れてくる外界の光が一瞬失くなり真っ暗な空間にアスタルテが眷獣を纏った姿のまま現れた。
「警告、対処不能の引力が発生」
「え…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アスタルテの警告とともに古城と彼女は暗闇の底へ底へと引き摺り込まれてしまい意識を失った──
なにか堅いものが身体にぶつかったような鈍い痛みを覚え、古城が目を覚ます。
目の前に広がるのはやはりどこまでも続くかのような暗闇。
目を開けているより、むしろ閉じている方が明るい気がするくらいだ。
「そうだ、アスタルテは──!?よかった、隣にいるな」
周りを手探りで確認すると手の温もりを見つけ、古城はひとまず安心する。
しかし、そんな安堵もつかの間に古城の身体を圧倒的な恐怖が襲う。
暗闇の中、自分と空間の境界が分からなくなるような不思議な感覚。
時間が経つにつれてどんどん自分という存在が薄れていく。
そして遂に古城が自らの存在を認識できなくなる寸前、奇妙な音が聞こえた。
「◇※〇☆★▼!φ#_____」
その音で古城の消えかかっていた感覚が無理やり呼び起こされる。
「誰だ──!?」
「$☆♪%==^〆~…」
古城の呼びかけに応えたものは抑揚のある声のような音。
その得体の知れない音に古城の恐怖はより大きなものへと変わっていく。
「○○○○○○○○○○○○?」
「*÷%:〆×…Спас…」
「안녕…你…あ…?」
「久々だな、こんな辺境に来客なんて」
どこか迷うような雰囲気の漂っていた音声はやがて古城の知る言葉へと変わった。
「危ない危ない、あと少し言葉を思い出すのに時間がかかれば大事な客の意識が崩壊するところだった」
おかしそうにケラケラと笑う声が暗闇に谺響する。
「誰だ!?」
「誰とは失礼な…お前は私を求めてやって来たんだろう?第四真祖」
「なっ──」
古城の反応に再び笑い声が聞こえ、そして声の主。恐らく彼女であろう者は自らの名を応えた。
「私は何処にも存在せず、何処にでも存在する。誰でもないが、何にでもなれる。超越の魔女、キオナ・アゼリア。ようこそ虚無へ」
そう言い終えると古城の前に1つの影が現れた──
前書きでも言いましたが…お久しぶりです。
私事で勝手なのですが、「小説家になろう」の方へ投稿する予定のオリジナル作品のプロローグ、1話、2話がほぼ完成しまして…
もし興味のある方がいればなろうに投稿する前に読んでもらえると嬉しいです!(Twitter、ハーメルンの感想等で言っていただければどこかに掲載してお知らせします)
因みにバトルものです。(ラブコメ要素も若干?)
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