ストライク・ザ・ブラッド〜空白の20年〜   作:黒 蓮

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明日は、OVA最終巻の発売日ということもあり更新出来ない可能性が高いのでどうしても今日更新したい。というわがまま故に文章のチェックとか手直ししてません!
かなり変な文になってるかと思いますが、笑って読み流してください(そのうち直すので)

雪菜は次回です汗


第56話

仕損じるな──

那月は古城に確かにそう言った。

その言葉の意味は、失敗すれば取り返しのつかないことになるということだ。

それを理解している古城は那月とその目の前に現れた黄金の騎士へと全神経を集中させる。

2人の挙動を一瞬でも見逃さぬように。

 

そんな極限の集中は、古城の意識をより高位の次元へと誘う。

400年という長い時間、およそほぼ全ての生物が生きる上で1番頼っているであろう視覚を封じ、あらゆる感覚を研ぎ澄まし、戦い続けた古城の意識は不要な情報を全てカットしていく。

まず、視界から色がなくなる。

次に衣擦れの音、自分の心臓が鼓動する音その他あらゆる雑音が消え去る。

そしてそこに使われていた集中力は目に見えないものへと払われる。

 

意識は目に見えるものにのみ払われがちだが、世界には目に見えるものよりも目に見えない部分の方が圧倒的に多い。

そして、そこから何かが見つかることも案外多かったりする。

古城もまた、極限を越えた集中の中で自らの身体から伸びる透明な細い糸状のものを発見した。

それは目の前、那月の前に立つ輪環王(ラインゴルト)へと繋がっている。

 

そんな目に見えないものを見つけるまでゼロコンマ数秒。

古城の身体は考えるよりも早く動いていた。

 

右手に冥姫の虹炎(ミネラウバ・イーリス)の持つ物理、因果律を含めた切断能力を伴う魔力を纏わせる。

その紅く光る右手は古城と輪環王(ラインゴルト)を繋ぐ不可視の糸を簡単に切断した。

 

直後、黄金の騎士はその美しい身体の形を苦しそうに変え暴れ狂うように那月へと肉薄する。

 

「那月ちゃん!」

 

原型を留めず、ゴーストのようになった輪環王(ラインゴルト)の腕は那月を捉えようとするがギリギリのタイミングで那月に避けられる。

それでも諦めず、輪環王(ラインゴルト)は契約を破棄した代償を払わせるため幾度も手を伸ばす。

最初の数回こそ華麗な身のこなしで躱した那月だが、徐々に彼女の身を包むドレス、そしてその身体が傷ついていく。

 

刻一刻と那月の顔は苦しい色を増していく。

彼女の計画にはまだ何か1つピースが足りないのだ。

 

それを理解しながらも、古城は自分が何をすればいいのかが分からない。

そんな自分に憤り、せめて那月を守らんと金剛石を重力によって圧縮した高密度の楯を展開するが、既に完全な魔力体へと変わり果てた輪環王(ラインゴルト)の攻撃は防壁を簡単にすり抜け、那月へと届いてしまう。

 

「落ち着け、馬鹿者が。何事もゴールの設定を間違うな」

 

命の取引をしながらも尚、那月は古城のことを信じヒントを与え続けた。

 

「ゴール…、那月ちゃんを助けるのがゴールじゃないのか?」

 

古城は目の前で致死の攻撃を避け続ける那月の姿を見ながら考え、そしてその問いに答えを見出した。

 

ゆっくりと輪環王(ラインゴルト)へと近づき、その荒れ狂う魔力の塊の中へと腕を入れ、8番目の眷獣の能力により、襲い来る魔力の奔流を全て自らの体内へと導き枯渇した魔力を回復させる。

 

そこで輪環王(ラインゴルト)は身の危険を察したのか古城の方へ身体を向け、邪魔者の身を引き裂かんと腕を伸ばす。

しかしそれより速く輪環王(ラインゴルト)の姿が元の黄金の騎士へと戻り、さらにその鎧の色が白くそして黒く濁っていく。

 

「時間はかかったが、合格としてやるか」

 

そんな那月の言葉とともに灰色の騎士へ無数の鎖が殺到し、その身を縛り上げた。

 

輪環王(ラインゴルト)、お前は少し私を侮り過ぎたな。お前より私の方が上ということをその身をもって知るがいいさ」

 

ゆっくりと歩みよる那月は心底嬉しそうに笑う。

そして慈しむように崩れゆく鎧の身体を抱きしめた。

 

「散れ」

 

たったその2文字で那月の守護者であった騎士は跡形もなく弾け飛ぶ。

その爆裂音で古城は我に返った。

 

「那月ちゃん、守護者壊して大丈夫なのか?」

 

古城は昔、優麻が守護者を失い死にかけたことを思い出す。

 

「留年がお望みか?笑えんジョークはよせ。と言いたいところだが、生憎気分がいい。教えてやるか…」

 

「私の能力はあらゆる隙間に自らが思い描く任意の事象を挟み込む、一見最強の能力と思えるが1つ欠点がある」

 

那月はいつもの無表情な顔へと戻ると面倒くさそうに説明を始める。

 

「挟める事象の限界値が空間の大きさと時間の流れに反比例するというな。だからこそ、この狭く時間の密度が極端に濃い空間に連れ込む必要があった。どこかのバカ真祖があいつとの霊的パスを切断し、弱体化させられるかは賭けだったがな」

「結果的に上手くいったんだからいいだろ…」

 

嘲笑を向けられる古城は不満げだが嬉しげだ。

一先ず那月を助けるという第一目標は達成できた。

次は雪菜や紗矢華だ。

 

「那月ちゃん、1つ手伝ったんだからもちろん手を貸してくれるよな?」

「ちゃん付けで呼ぶな、それは命令か?一国民である私へ皇帝としての」

「オレ個人としての依頼ってとこかな」

「個人としてか、なら私も攻魔官としてではなく1人の知人として手を貸すことにしよう」

「初めて那月ちゃんとしっかり肩を並べて戦える気がするよ」

「五億年早い。だが背中くらいは任せてやろう」

 

そんなやり取りで久しぶりに結成された師弟コンビは紫色の魔法陣へと姿を消した──

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

紗矢華の一撃により辺り一面が更地へと還る。

もうもうと立ち篭める土煙の中に立つのは2人の少女と人工生命体(ホムンクルス)1人。

 

「助かったわ、最悪腕の1本くらいは犠牲にしなきゃならないかと思ってたから」

「問題なし」

 

救急用の輸血パックから枯渇気味な血液を補充しながら、紗矢華はアスタルテと古城が一緒に消えたことを思い出した。

 

「そういえばあなた、古城はどこ?一緒にどこかへ行ってたって聞いたんだけど」

 

紗矢華の質問にアスタルテは口を開かず、ゆっくりとその指を紗矢華の背後へと向けた。

 

「え?」

「よう…煌坂。元気だったか?凪沙のこと…そんなになるまで守ってくれたのか、ありがとな…」

「まだ残ってたの!?消し炭になりなさいこ…の…って暁 古城!?大丈夫なの!?」

 

長く時間の流れが複雑だった空間に入り浸り、ギリギリまで魔力を使い切った古城はゾンビのように紗矢華の背中へと倒れ込む。

そんな古城を食屍鬼の残党と勘違いし、紗矢華は首に回し蹴りをくらわせ大きく吹き飛ばした。

 

「ちょっと、暁 古城!?」

 

紗矢華は自分で蹴り飛ばした古城をダッシュで拾いに行くと、意識の有無を確認するため顔をバチバチとビンタする。

 

「おい…煌坂…、死ぬ…死ぬから…」

「ごめんなさい…、つい…」

「ついで人を蹴るなよ…。それよりちょっと頼んでもいいか…?」

「うん、私にできることならなんでも…」

 

申し訳なさからか、紗矢華は弱気にそんなことを口にした。

 

「そうか…、悪いけど…ち、血を吸わせてくれ…」

「え?」

「ダメか…?」

「ダメ…じゃないけどそんな…乳を吸わせろなんて。でも、できることならなんでもするって言ったし…。あー!もう!吸いなさいよ!ほら!」

 

叫びながら服を脱ぎ、その豊満な胸部を露わにさせる紗矢華。

そんな紗矢華の霰もない姿を見て鼻血を出し、再度ぶっ倒れる古城。

ここまでくればもう、ひとり漫才だ。

 

「変わらんな、お前たちは…」

 

教育上不適切なものを見せぬよう、凪沙の視界を日傘で塞いでいた那月の呆れた声とパニックを引き起こした紗矢華の叫び声が響き渡る。

 

こうして紗矢華の待ちに待った古城との再会は果たされた──

 




ランキングに載ることが最近多くてなんと感謝を述べていいか分かりません!
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さて、ここからは宣伝ですがオリジナル作品の方もよろしくお願いします。
かなり力入れてるのでそれなりには面白いはずなので

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