なんとか文章の質を上げていきたいものです。
「うわあぁぁァァ‼!」
イルボンが村に戻り、最初に聞いたのは村人達の悲鳴であった。ただ事ではない雰囲気を感じ取ったイルボンは、悲鳴のした方に全速力で駆け出した。逃げてきた村人に何事かを尋ねる。すると村人は顔を真っ青にして息せき切らせながら答えた。
「マものにやられて息を引き取った奴が突然起き上がって、村のみんなに襲い掛かってきたんだ! 今は村の若い奴らで抑えているから皆は避難しろと村長が!」
そう言うと、村人はイルボンが来た方向に走り去っていった。村人とは逆に彼が逃げてきた方へ行くと、掴みかかる村の若者達を投げ飛ばす死人の姿があった。
「なんちゅう力だ!こんなのどうしようもねえべ!」
村の青年がそう呟く内にも、次々と死人は抑えかかる若者を薙ぎ払っていく。薙ぎ払われた一人は運悪く農具に直撃し、胸を貫かれ絶命していた。
「後は俺がなんとかする!お前らは逃げるんだ!」
イルボンはマものの頭が入った袋を投げ捨て、肩に掛けた長筒に手を掛けたが、こう人が居ては、長筒の使用はあまりにも危険すぎる。そう思い、刀を抜いて死人に肉薄する。
「うあああ・・・おうこふぬ」
言葉にならない声を上げ、イルボンに向かってくる死人を横に一閃する。
「うご・・」
相手は少しよろめいたが、刀を振りぬいたイルボンを死人の前蹴りが襲う。もろに前蹴りを食らい、左半身に鈍い痛みが走る。
「死んでるからなのか、加減が無いねぇ・・・。それにしても一体どこからそんなパワーが生まれてくるやら」
そう呟くイルボンの額には脂汗が噴き出ていた。振りぬきにもろに食らったそのダメージは大きいものだった。死人はゆらりと歩みを進めてくる。
「できればやりたくなかったが、こういう状況ならしょうがないな」
イルボンは死人が振り上げた拳をかわし、その腕を切り落とす、刀身を通して、肉の繊維を斬り、骨を切断する感覚が体に伝わってくる。
「ゲぇぇえェ――」
死人は叫び声を上げたが、すかさず左腕を振ってくる。今度は上手く勢いを殺し、受け流して距離を取ることが出来たが、それでも痺れが残るほどの重さだ。
「腕一本切っても意に介さないか。死んでるってのは意外に厄介なもんだな」
とは言え、こうして確実に相手の力をそいで行けば、勝てない相手ではないと算段を建てていると、予想外のことが起こった。死人に殺された、村民が突然起き上がったのだ。さらには自身に刺さった農具を抜き、構えてこちらに向かってくる。一対一ならともかく、たとえ片方が手負いでも複数体相手では、非常に厳しい。頭の中で考えていても状況は好転するわけもなく、イルボンはじりじりと死人に挟まれる形になる。どちらの死人が先に来るか、或いは両方襲い掛かってくるのか見極めようとしていると。農具を持った死人が突然倒れこんだ。
「誰だか知らないけど、助太刀するわよ!」
そう言って死人を後ろから切り伏せたのは、さらさらとした茶色の長髪を赤いリボンで結い、透き通るような青い瞳をした少女だった。
「ゲベァぅグあぁ」
腕を失った方の死人がイルボンに迫る。イルボンは少女が作ってくれたこのチャンスを逃すまいと刀を振るう。横に振られた死人の拳を寸での所でかわし、死人の懐に踏み込み肘鉄砲を食らわせる。
「グウェあが」
そして堪らずくの字に折れた死人の隙を見逃さず突き出た頭に向かって刀を振った。鈍い斬撃の音がしてから、死人の頸が転がり、今度こそ死人(しびと)は本当に死人(しにん)となった。流石に頭を落とせば死人でも死ぬようだ。そうすると先ほどの少女が倒した死人はまだ生きているのではないか。イルボンは振り返り、少女に声を掛ける。
「頭を落とせば倒せるぞ!」
だが、振り向いたときには既に頭が落とされた死人と先ほどの少女が横たわっていた。
「おい! おい大丈夫か!」
少女に呼びかけるが起きる気配はない。パッと少女を見るに特に大きな傷は見当たらない。気を失っただけなのだろうか。イルボンは胸をなでおろした。
「とにかく、この場が収まったことを伝えないとな」
少女を抱えて民家の軒下に寝かせた後、イルボンは村中を回り、騒動が収まったこと、そして死体の安置と少女を運ぶように村長に伝えた。少女は村長のご厚意から村長の自宅に一時的に保護されることになった。イルボンは少女が運ばれた後、死人と戦った場所に妙に古臭い巻物が落ちていることに気付いた。
「あの娘の持ち物かも知れんな。一応預かっておくか」
イルボンは巻物を懐に入れ、少女が保護されている村長の家へと向かった。
次回の更新は2月7日あたりになります。