FGO マシュズ・リポート ~うちのマスターがこんなに変~   作:葉川柚介

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第7章の記録 絶対怪獣戦線バビロニア

――「人間」は知る由のないどこか。

 

「食べ散らかしはいけまセーン。もっときれいに丁寧に、ね?」

「知ったことか。人間など我らの糧とする価値もない」

「それはいいけど、せめて床を汚さないで欲しいのだわ。私、綺麗好きなのよ」

 

 そこで交わされる会話もまた、人の知るところではない。

 否、「生きて知る人間は」いない。

 生々しい血の匂い、滴る水音、臓腑から立ち上る湯気。凄惨と酸鼻極まる地獄の様相を呈しているそこは、まさしく人を人とも思わぬ悪鬼羅刹の巣であるか。

 

「いずれにせよ、この地はもはや終わりだ。私が滅ぼすか、お前たちが滅ぼすか。その差でしかない」

「それは確かに。ウルクの青空ルチャ1万連戦、楽しみデース。あとかわいい男の子がいたら契約してあげマース」

「いやいや、ウルクの人口それだけじゃないわよもっといるわよ。下手したら戦士に絞っても、ね。……ていうか、分霊に変な影響受け過ぎなのだわ」

 

 そうではない。

 人を人と正しく認めたうえで、その悉くを殺しつくすと決めた女神たちの紐帯、「三女神同盟」の会合なのだ。

 

「――よろしい。一人残らず殺害せよ。一人残らず贄とせよ。人間を救おうとした。だがそのたびに一の中から邪魔者が現れた。ならば私は、その全てを滅し、人ならざる人を守護しよう」

 

「……あの、今の誰?」

「私に聞くな。というか多分幻かなにかだ」

「私達女神が見る幻ってシュールデース」

 

 ……なんか、フードを目深にかぶってトンボの飾りがついた杖を持った人もいたりしたが、いずれにせよこの場にいる者達の目的はただ一つ。

 

 人類の絶滅、だけだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 人理の根っこの方からこんにちは、カルデアのデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトです。

 これまで6つの特異点で聖杯を回収してきた私たちは、ついに魔術王ソロモンが直々に送り込んだという7つ目の聖杯を求め、西暦以前のウルクへとやってきました。

 ……いえ、正しくはウルクにやってくるはずでした。

 が、レイシフトはいきなり失敗。どうもウルク市に張られた結界に弾かれたらしく、先輩ともども高空からのフリーフォール。落着した廃墟の都市で見たこともない謎の魔獣と戦ったり、空から女神の人が降ってきたりと大変でしたが、何とか協力的な現地の戦闘人、エルキドゥさんと出会うことができました。

 

 エルキドゥさんといえば、叙事詩に登場するギルガメッシュ王の無二の親友にして意思を持った神造兵装。その力は魔獣退治で大いに見せてくれたことですし、ウルクまでの案内を買って出てくれました。本当に助かります。

 

「ボクの姿ですか? これは命の何たるかを教えてくれたシャムハトの姿を模したものです。……薩摩次郎? よくわからないけど、多分そんな感じですね」

「それでいいんですかエルキドゥさん!?」

 

 先輩は何だか別のものを通して理解を深めたようですが、よろしくお願いしますね、エルキドゥさん。

 

 

 そんなこんなでウルクまでの道中、エルキドゥさんがこの特異点で起きていることを説明してくれました。

 先ほど廃墟となったバビロン市で襲い掛かって来た魔獣は案の定というべきか通常の生物ではなく、ウルクを滅ぼそうとしている「三女神同盟」の一人が生み出してるのだといいます。

 ウルクへ向かうルート的にはいったん森へ入って迂回するのが正しいらしいですが、状況を理解するためにと見せてくれました。

 

 この地における、人の生存圏の最果て。

 長大な壁にて人類を守る最後の砦。

 魔獣との戦いが繰り広げられている、そここそが。

 

 

「人はこの地をこう呼びます。<絶対怪獣戦線バビロニア>と」

「先輩! なんかさっき倒したムシュフシュの超巨大なヤツがいるんですが! それも、ナイフのような頭をしたのと、出刃包丁みたいな頭をしたのがいます!」

 

 ここへ来るまでの間に戦った、頭部から鼻先にかけてが刃物のように伸びた魔獣、ムシュフシュに似た特徴を持つ、巨大な壁をすら乗り越えられそうなほどのさらなる大きさの魔獣、いえエルキドゥさんの言葉によれば「怪獣」が!

 

「大丈夫です。あれは専門家が退治しますから」

 

『ロケットパーーーーーーーーンチ!!』

――ギャオオオオオオオオ!!

 

「……わーすごーい。怪獣と同じくらい巨大なロボットが肘からロケットの炎を噴いたパンチで一匹を殴り倒しましたし、もう一匹はフランスでマルタさんと一緒にいたタラスク(代理)さんが倒しましたよ先輩」

 

 ……なんか、パンチ一発と空から飛んできた亀の甲羅体当たりで倒されました。

 どうやら、またとんでもない特異点みたいですね!?

 

 あ、なんか他の巨大な怪獣を、赤い人がナイフで切ったり投げ飛ばしたりして倒しまくってます。なんでしょう、あの熟練の技の数々。

 それから、ちょっと大きめの人型っぽい魔獣の周囲を通常サイズの人が飛び回って首のあたりを斬って倒しているのも見えます。

 

 

 いえ、でも本当にすごいです。先に述べたような規格外が大暴れしているのはもちろんですが、それ以外の場所でも全体で見ると魔獣と互角の戦いを繰り広げています。

 ごく一部、異様なほど魔獣が密集している場所で銃声のような音が聞こえて、そのたびに魔獣の血しぶきと肉片が吹き飛び、たまに爆発で天高く魔獣の死骸が舞い上げられたりもしていますが……いずれにせよ、あの戦いこそがこの特異点における最重要地点と見ました。

 

 

「ふうむ、なるほどそういうことか。ところで質問していいかい? 君の名は。」

「エルキドゥです」

「今この時、ウルクを治めている王の名は?」

「……ギルガメッシュです」

「では、最後にもう一つだけ。――現時点でウルクのギルガメッシュ王は死んだエルキドゥを蘇らせるための冥界探索から帰って来たあとなんだが、君は誰だい?」

「……お前のように勘のいい魔術師は嫌いだよ!」

 

「! 先輩、下がって!」

 

 そう思っていたのに、案の定というべきかやはり一筋縄ではいかないようです。

 ギルガメッシュ王が冥界探索から帰って来たということは、このエルキドゥさんは現地人としてのエルキドゥさんではありません。そんな人が私たちをウルク市から遠ざかる森の奥へと誘う……これまでのパターンから言って、敵です!

 ……だから先輩、「騙して悪いがは基本」とか言って安心したような顔をしないでください!

 

 

 その後、エルキドゥさんの圧倒的な力が敵に回るとどれほど恐ろしいかを思い知り、ついでにそんなエルキドゥさんすら詐欺のような方法で煙に巻く魔術師、なんとアーサー王伝説にその名が伝わるマーリンさんとついでにアナさんと名乗った正体不明のサーヴァントと出会い、私達はなんとか本格的にウルクへ向かえるようになりました。

 

「フォーウ……フォーウ……シスベシ、マーリンシスベシフォーウ……」

「……フォウさん?」

 

 出会い頭にマーリンさんをどつき倒したフォウさんが何だか聞いたことのない鳴き声を上げ続けていましたが、とりあえず脇に置いておきましょう。

 まずは、ウルクでギルガメッシュ王に会わなければ。

 

 

◇◆◇

 

 

「……ということで、アナさんの依頼で死神さんたちの対処をしてきました。当初は退治を目的としていたのですが、黒い着物姿に刀を持った死神さんたちは話せばわかる人たちだったので、(ホロウ)と呼ばれる胸に穴が開いた怪物を一緒に退治することで和解しました」

「その死神とやらに覚えはないが、なぜか妙にむかっ腹が立つ……!」

 

 そんなこんなで、私達はしばらくウルクで生活することになりました。

 ギルガメッシュ王への謁見はウルク到達直後に出来たものの、すでに自身の宝物庫に聖杯を持つギルガメッシュ王の協力を得ることは出来ず、まずは実績を積むことになったのです。

 用意していただいた家をカルデア大使館として、ウルクの人たちからの依頼に応える日々。簡単な輸送やお手伝いはもちろんのこと、魔獣退治から護衛まで、その内容は多岐にわたります。

 先輩は「これだけ依頼を受けても騙して悪いがされない……!?」となぜかものすごく驚いていましたが、いつものことです。

 

 

「……あの、もしかしてあなたはパラケルススさんですか?」

「君は……ああ、最近噂に聞いたカルデアの。申し訳ないが、私はパラケルススではない。正確には、パラケルススの霊基に間借りしているサーヴァントのようなものでね。ウルクの一般市民とでも思ってくれ。……私自身、そうありたい」

 

 どうやらギルガメッシュ王に呼ばれた方たち以外にもサーヴァントはたくさんいるようです。

 ウルク、まさしく魔境ですね。

 

「おお、あなた方がカルデアの! 私は牛若丸と申します」

「拙僧のことは弁慶とお呼びください。……ああ、カルデアのマスター殿はとても良い目をしておられる。拙僧が昔、憧れた男によく似ている」

 

 そんな中、ギルガメッシュ王にこの地に召喚されたサーヴァントの人たちとも仲良くなることができました。

 北壁で魔獣戦線を指揮するレオニダスさんと、その元で戦う牛若丸さんに弁慶さん。

 そして。

 

「あなたたちが、カルデアの。お目にかかれて光栄です。私は巴。巴御前と呼ばれています」

「いやあ、敵の指揮官ギルダブリルとの一騎打ち、九死に一生でしたなあ」

 

 防衛の指揮がレオニダスさんならば、攻勢の指揮を取るのはこちら、巴御前さんです。

 以前、魔獣側の指揮官であったギルダブリルとの決戦にて相打ち覚悟で挑んだほどの猛者だそうです。

 

「ええ、あのときは覚悟を決めていたのですが……あなたのおかげです、ライダー」

「……………………」

「す、すみません。ライダーは、どうにも無口でして」

 

 そしてもう一人。

 巴御前さんの窮地を救ったという、ライダーさんです。

 ……なんといいましょうか、とても近代的な装備に身を包んだ、英霊というには新し過ぎる感のある人でしたが、こう見えて魔獣退治の専門家として力をふるっているのだとか。

 

「ええ、まさにライダー殿の力は圧巻の一言。魔獣共の群れの中に一人で突っ込んでいってはことごとくを撃ち殺して帰って来る様、まさに嵐のごとし!」

 

 そんな感じの、頼れる仲間もたくさんいます。

 

 

「まあよい。それではカルデアの。お前たちに次なる任務を……む?」

「なんでしょう、この音……足元から?」

 

 ああ、それだけではありませんでした。もう一人。

 ある意味、この戦時体制のウルクにおける最重要サーヴァントの人がいます。

 

――ボコッ

「おのれクラフター! また貴様か! 地下で迷ったからといって所かまわず地上に出るなとあれほど言っておいたであろう!?」

――! ――!

「やっぱりでしたか。お疲れ様です、クラフターさん」

 

 それがこのお方。

 たった今、謁見の間の床を正方形に抉り取ってひょっこりと姿を見せた、クラフターさんです。

 見た目は……なんというか、四角いです。四角いブロックを積み重ねて頭と胴体と手足に見えるようにしたような方ですが、その力は脅威の一言。

 岩であれ木であれ土であれ、しかるべき道具で数回叩けば立方体のブロック状に削り取ることができるというスキルを持っています。

 しかも、そうして削り取ったところより上にある物体は、基本的に落ちてきません。

 以前、木の幹を削り取ったところを見せてもらいましたが、削った場所から上は全て揺らぎもせず空中に浮いていました。一体どういう物理現象なんでしょう。

 

 そんなクラフターさんは、現在ウルクで必要とされる資材の収集を主に担ってくれています。

 北壁の補修材料や、どうやってか杉の森に入って木材も大量に。さらには拠点防衛用のディンギルに使うラピス・ラズリまで、どこからともなく大量に持ってきてくれています。

 ……ある意味、特異点とかそんなもの以上に物理法則を捻じ曲げている存在のような気もしますが、今のウルク防衛には欠かせない戦力です。

 

「ええい、まあいい! しっかりとその床を埋めておけよクラフター! カルデアのお前たちは南の森を抜け、ウル市へ向かえ! 情報を集めて来い!」

 

 と、そんな風に頼れるサーヴァントがたくさんいるので、私達がしばらく留守にしても問題ありません。それでは、魔獣ひしめく森に取り残されているというウル市の人たちの様子を見に行きます。

 

 

◇◆◇

 

 

「……報告は以上です。一日一人の生贄を差し出すことで表向き平穏を保っているウル市。周囲は鬱蒼としたジャングルに囲まれているため、市民の方たちを迅速に避難させることは困難でしょう。ジャングルの王者を自称する謎の神性持ちサーヴァントのジャガーマンが妨害してくることは確実です。……ジャガーさんを筆頭に、フレンズさんたちの協力を得られれば不可能ではなかもしれませんが」

「おのれ、また我に断りもなく愉快系サーヴァントと出会っただと!? ジャガーマンとやらの報告はあとにしろ! 気になり過ぎて仕事にならん!」

 

 

 そんな感じで、ウルクで起きていることがだんだんとわかってきました。

 四方から攻め込まれている状況で、北からは魔獣の女神、南からはじわじわと浸食を続けるジャングル。そして高笑いと共に飛びまわるイシュタル神。

 とても、大変な状況です。

 

「ふぅむ、海水はしっかり溜まっているな。我が調べる。お前たちは少し休んでいろ」

「はい、ありがとうございます。……でも、本当にギルガメッシュ王がウルクを離れてよかったのですか?」

「フッ、我に抜かりはない。ウルクの采配は一時的に銀河のカイザーに任せて来た。我と同じ黄金の王、しかと任を果たすことであろう」

 

 そのストレスのせいもあってか、なんかペルシア湾の水質調査にギルガメッシュ王がついてきてしまったりもしました。ウルクのことは牛若丸さんたちと同じく召喚されたという銀河のカイザーさんに任せてしまっていますが、大丈夫なんでしょうか。銀河のカイザーさんは確かにとても優秀な方ですが、自分に厳しく他人に厳しく仕事量の加減を知らず過労に陥りそうな気がするんですが……。

 

 

「あっははははは! 空を飛ぶ私に当てようなんて甘いんじゃっきゃーーーーー!?」

「さすがですね、防衛軍のライダーさん。あれだけ高速で動き回るイシュタルさんを狙撃するなんて」

 

 次にギルガメッシュ王から命じられた、クタ市での天命の粘土板探し。

 道中の牧場で聞いていた噂通り、偶然出会ったイシュタルさんは高笑いと共に空から砲撃を繰り出してきましたが、今回一緒に来てくれていた防衛軍のライダーさんが一発で撃ち落としてくれました。

 高速で移動する目標は得意ではないとのことでしたが、スナイパーライフルで一発でした。「赤くて速い奴は最優先で墜とさないとダメ」と言っていましたが、防衛軍のライダーさんは一体何と戦ってきたのでしょう。

 

 

「北壁へようこそ。ご覧くださいこの壁の立派なこと。クラフター殿が壊れる端から直し、直すついでに改良してと繰り返してくれたのでいまやかつてないほど強固な防衛拠点と化しています!」

 

 そして次なるミッションは、ニップル市からの住民護送。

 魔獣の襲撃周期から導き出された最適なタイミングで、牛若丸さんたちが囮役を務めてくれている間にニップル市から脱出してもらいます。

 そのために改めてやって来た北壁ですが……本当にすごいです。クラフターさんがあちこち駆け回っては建材を置くと、それだけできっちりがっちりと固定されて壁が出来上がっていく、すさまじい光景が繰り広げられていました。

 ……ですが、それでもなお追い詰められつつあるのがウルクの現状です。

 レオニダスさんの指揮、クラフターさんの建築力、そして牛若丸さんたちの戦闘力。それがあってもなお危険なこの特異点。まだ、何かがあるような気がします。

 

 

◇◆◇

 

 

「……以上が、ニップル市からの住民護送任務の結果になります」

「罠とはな、ゴルゴーンめ小癪な真似を。しかも牛若丸、レオニダスがやられ、弁慶が離脱。10日後にはゴルゴーンの本格侵攻とは」

 

 結果は、この有様でした。

 私たちがニップル市の住民を救おうとすることは全て読まれて、その上で罠にかけられたのです。

 囮に出た牛若丸さんたちは尋常ではない数の魔獣に襲われ、私達がたどり着いたニップル市はもぬけの殻。しかもティアマトを名乗っていたその女神の正体は、ギリシャ神話のゴルゴーン。アヴェンジャーのクラスとして顕現したかの女神は人を徹底的に滅ぼすことしか考えられない存在と化していました。

 状況は、絶望的です。北壁の指揮は巴御前さんが引き継ぎ、破損箇所はクラフターさんがなんかもうすさまじい勢いで改良込みで修復していますが、失われた戦力、そして牛若丸さんたちが担っていた精神的な支えの喪失があまりにも大きすぎます。

 ……でも、だからこそ私たちは戦うべきです。レオニダスさんから学んだ盾サー(盾サーヴァントの意)の極意、今こそ発揮するときです!

 

「その意気やよし! ならばカルデアのマスターに新たな任務を命ずる! ゴルゴーン以外の女神、すなわちイシュタルとケツァル・コアトルをどうにかしてくるがいい! とりあえずイシュタルは金目の物に釣られるぞ!」

 

 

◇◆◇

 

 

「やりましたね、先輩! イシュタルさんだけでなく、ケツァル・コアトルさんも協力してくれるようになりました。きっとギルガメッシュ王も喜んでくれます!」

 

 頑張りました! 特に先輩が!

 

 

 まず、エビフ山のイシュタルさん。

 こちらは先輩の丸め込み技能が炸裂し、ギルガメッシュ王から託された宝物庫3割の宝石、並びにクラフターさんが採掘してくれたほぼ同量のラピスラズリを持って行ったら割とあっさりと協力を取り付けられました。

 女神としてのプライドを立てつつも純粋な利益をもって懐柔する、先輩の話術が冴えまくりです。これで、イシュタルさんが所有するという天の牡牛グガランナが使えるようになったわけです。対ゴルゴーン戦では大きな戦力になってくれることでしょう。

 

 一方、ケツァル・コアトルさん。

 ウルクを襲撃し、兵士たちを相手にルチャ100連戦を繰り広げた彼女を追って南の森へと侵入。途中ジャガーマンさんその他の妨害にも会いましたが、なんとかエリドゥ市までたどり着くことができました。

 

「……ところで、あなたはサーヴァントですよね?」

『この霊基パターンはルーラー。もしかして、ギルガメッシュ王に召喚されたという天草四郎かい?』

「なんのことでしょう。私は通りすがりのユニコーンのフレンズですが」

「シロウはすっごいんだよー!」

「アッハイ、サーバルさん」

 

 道中、以前ウル市に向かうときも出会った、南のジャングルに住むジャガーマンさんの同類のようでいて微妙に違うらしいフレンズのみなさんの協力も得られたのはとても心強かったです。

 人に巻き付いて襲ってくる吸血植物に捕らわれかけたりもしつつジャングルを踏破し、たどり着いたエリドゥ市。

 ジャガーマンさんが言っていました。女神と人は精神構造がそもそも異なる。ケツァル・コアトルさんとは、戦うことでしか分かり合えないと。

 ……だからといって先輩に武器を持たせるのはやめてください! しかも、そこらを歩いていた熊のフレンズさんから借りたものを!

 先輩はこういう時に一切の加減をしない人なんですから! そんなことしたら、絶対にケツァル・コアトルさんの象徴の宝具ではなくケツァル・コアトルさん本人を狙います!

 

 

「なんてこと……あのまばゆいばかりに輝くマスクは、まさしく太陽仮面(エル・ソラール)!」

「いえ、先輩です。イシュタルさんに連れていかれてものすごい高さから落ちてきてますが、先輩です」

 

 ほらぁ! ルチャの大技であるフライングボディアタックしちゃったじゃないですか! しかも、前の特異点で百貌のハサンさんにプレゼントしたのとはまた違う、太陽のような意匠のマスクを被って! ケツァル・コアトルさんにはマスクも含めて効果抜群だったみたいですけど。

 

 

「ふふふ、ギルガメッシュ王に報告するのが楽しみです」

 

 そんなわけで、イシュタルさんの懐柔とケツァル・コアトルさんを仲間にし、並びにケツァル・コアトルさんの神殿近くに突き刺さっていたマルドゥークの斧も手に入れることができました。斧の方は現在、ケツァル・コアトルさんの翼竜とそれを指揮するジャガーマンさんが必死に運んでくれています。

 これで、何とか準備が整いました。

 ギルガメッシュ王もきっと対ゴルゴーンの決戦準備を進めているはず。私達もすぐに加わらなくては……。

 

 と、思っていたんです。このときまでは。

 

 

「……え? ギルガメッシュ王が……亡くなった!?」

「はい、私がほんの少し目を離した隙に……過労でした」

「死因にすごく納得してしまう自分がイヤです!」

 

 ウルクに帰って来た私たちを待っていたのは、ギルガメッシュ王の訃報でした。

 

「ヴェアハハハハハハハ! 甘いな英雄王ゥ! 私など一晩で12回過労死したことがあるぞぉぉぉぉ!」

「……あの、シドゥリさん。あちらの方は?」

「王が新たに召喚したサーヴァントの方で、CRのバーサーカーだそうです」

「バーサーカーではない! 私は……神だあぁぁぁぁぁ!」

 

 なんか新しいサーヴァントの人も増えているようですが、それは置いといて。

 情報を整理した結果、ギルガメッシュ王、並びにその他大勢の人たちがここにきて急死しはじめたのは冥界を治めるエレシュキガルさんの仕業の可能性が高くなりました。なので、救いに行かなければなりません。神代の生死は割とふわっとしたもの。

 体が残っていて、冥界から魂を連れ戻すことができれば蘇生は可能。私たちは冥界とのつながりが強いクタ市へと向かい、ギルガメッシュ王を必ず連れ戻します!

 

 

◇◆◇

 

 

「というわけで、じきにエレシュキガルの宮殿だ。ここまできて深淵に落ちるなよ。かの地はまさしく魂の凪。生者も死者も、神でさえ溶け消えるぞ」

「だそうです。気を付けてくださいね、先輩。……え、深淵の中に誰かいる? 大きな剣を担いだ騎士が……本当にいますー!?」

 

 そうしてやってきました、クタ市の物理的な地下に広がっている冥界。この時代において、こういう世界観は本当の意味での地続きなのだそうです。

 

「見ぃつけたぁ。地獄へようこそ~」

「ダメですよオフェンダー=サン。ここは地獄ではなく冥界。出向中なのですから、こちらの流儀に合わせなくては。……というわけで、失礼いたしました。私は鬼灯。日本の地獄に勤めていますが、今はウルクの冥界に出向中の者です」

 

 という感じで出迎えられたりしつつ延々と冥界を下り、門を通り過ぎるたびに問いを投げられ、なぜかそのたびにイシュタルさんが縮み、途中で拾ったギルガメッシュ王と共にこの一件の元凶たるエレシュキガル神の下へ向かいます。

 途中で先輩が変なものを見つけたりもしましたが、まあいつものことなので気にしません。

 

「心しておけ。宮殿とはいってもそれは冥界のこと。この地に華美な物など一つもなく、花一つ咲かぬ荒地が広がるだけだ」

 

 そう、いよいよエレシュキガル神との対峙。いろんな意味で覚悟を決めておかなければ……!

 

「……あの、ギルガメッシュ王。ここがエレシュキガル神の宮殿ですよね。ただの荒地だという」

「……そうだ」

「宮殿、建ってるんですが。お花畑と麦畑とジャガイモ畑と人参畑に囲まれた、シャンデリアのように常時ライトアップされた立派な宮殿が!」

 

 だって、どうせまた変なことになってるんですから!

 ギルガメッシュ王に曰く、特に何もないというエレシュキガル神の宮殿。そこには、まさしく宮殿と呼ぶほかない荘厳な建物が聳え立っていました。ウルクのジグラットに迫る規模ですよこれは。

 しかも、辺りを明るく照らし出している光源。これはたいまつです。地面から垂直に、壁から斜めに伸びて、決して消えることも周囲を燃やすこともないこれに、私達は見覚えがあります。

 

「やはりいたか、クラフター! 貴様ここで何をしている!?」

「!?」

 

 そう、クラフターさんでした。

 エレシュキガル神とのあれこれのあとで聞いたところによると、ラピスラズリを探して地中を掘りまくっていたら冥界に出てしまい、未知の地下空間と得られる素材にテンションが上がって探索と発掘がてら開拓していたのだとか。それでいいのでしょうか!?

 

「別に、私としては問題ないのだわ。冥界に生者が足を踏み入れることは許されないけど……なんか、クラフターって既に何度となく死んだり冥界的なところに出入りしてるような気配がするから」

 

 とはエレシュキガルさんの弁。冥界の女主人直々の許可があるならいい……んでしょうか。教えてください先輩!

 

 

◇◆◇

 

 

 状況は整いました。

 イシュタルさん、ケツァル・コアトルさん、そしてエレシュキガルさんの助力を得ることができ、ギルガメッシュ王も玉座に帰還。もう間もなく本格侵攻を開始するだろうゴルゴーン討伐の準備は着実に進んでいます。

 きっと、これがウルクで心穏やかに過ごす最後の夜になります。

 ……この特異点の終わりまで、二度と落ち着いてカルデア大使館には戻れない。そんな気がするんです。

 だから最後の夜は華やかに。ウルクのみなさんが持ち寄ってくれた料理とお酒で、宴会です。先輩と私は飲酒NGですが!

 

 

◇◆◇

 

 

 作戦の概要は簡単です。

 予告通り全力でウルクを攻め滅ぼしに来るゴルゴーンの魔獣を北壁で受け止めている間、私達は戦場を迂回して直接ゴルゴーンを倒しに行きます。

 

「北壁のことはお任せください。どれほどの魔獣が来ようともことごとくを倒しつくしてくれるだろうライダーも居ますし、私もバーサーカーからこれを預かりましたので」

\ガッチョーン!/

 

 とは、巴御前さんの弁。バーサーカーさんから預かったという謎のバックルをベルトのように装着して、霊基を強化することができるのだそうです。

 とはいえどうあっても魔獣の方が数が多く、一般兵のみなさんより強いことは明らか。急がなければなりません!

 

 

「――ああ、こうなったか。こうなってしまったら仕方ないね。残念、人類。君たちは終わりだよ」

「なっ、どういうことです!? ゴルゴーンはアナさんが……アナさんが倒したはずです!」

「そう。倒された。そして死んだ。だからこそ、母さんが目覚めるのさ」

 

 鮮血神殿、ブラッドフォート・アンドロメダ。複合神性ゴルゴーンの居城は神殿というよりも魔獣を生み出す母胎のようでした。

 魔獣と戦い、連れ去られた人々の行きつく先が、ここだったんです。そこで行われていたことは……口にしたくありません。

 だからこそ私たちは戦い、アナさんはこの特異点に召喚された意味を、使命を果たしました。それが「残念」? 「母さんが目覚める」……?

 

「うごふっ!? ……そ、そういうことか。しまったな、私としたことが」

「マーリンさん!? 唐突に血を吐いてどうしたんですか!? 沖田さんみたいですよ!」

「失敗した……。ゴルゴーンの死がトリガーになるなんてね。気を付けたまえ、カルデアの諸君。私もつい先日知り合いに聞いたのだが、あらゆる星において、人理を担う霊長たる生物が滅ぶとき、必ず現れる『モノ』がある。これから君たちが直面するのはそれだろう。気を付けてくれ……!」

 

 とかなんとかやってる間に何故かマーリンさんが消滅し、鮮血神殿も崩壊しようとしています。とにかく、一旦退避です。先輩、ちょっと抱えますね!

 

 

◇◆◇

 

 

「先輩、もうじきエリドゥ市です! 突入の準備を!」

 

 ゴルゴーンを倒して決着、とならないのはわかっていたことですが、事態は悪化の一途を辿っています。

 大急ぎでウルクに戻った私たちが見たのは、歴史上はおろか、ゴルゴーンの生み出した魔獣と比べても異質な謎の生物、ラフム。さらにペルシャ湾が謎の泥に埋め尽くされ、そこからラフムが次々に現れてくるという異常事態。あるいはゴルゴーンの侵攻以上に強烈な物量と悪意が叩きつけられているようです。

 

 そして、調査によって判明したラフムを生み出す源こそが、ティアマト。人類悪、ビースト。そう呼ばれるものなのだそうです。

 とにかく、なんとかしなければなりません。

 ですがそれより先に、私たちはラフムが集結しているというエリドゥ市に向かっています。なぜなら、そこにはラフムが攫って行った人たちが、そしてウルクで市民を守るために連れ去られたというシドゥリさんがいるはずだからです。行かなければなりません。知らなければなりません。今、この地で何が起きているのか。

 ちなみに、エリドゥ市へ向かうための移動手段としてはケツァル・コアトルさんが翼竜を貸してくれました。

 

「私の翼竜を使った方が移動は早いデース。遠慮なく使ってください」

\ケツァルコアトルス!/

 

 ……翼竜の羽のような飾りのついたUSBメモリを、そこらにいた鳥に刺したら翼竜に化けたりしましたが、まあよくあることですよね。

 

 エリドゥ市への到着直後、ラフムが集結していると思われる市内中心部へと向かっていく私達。途中、手を振り上げたりするだけで戦わない妙なラフムが出てきましたが、撃破しないと……!

 

 

「え、戦闘中止!? どういうことですか、先輩?」

 

 と、思ったら先輩が必死に止めてきました。

 一体どうしたんでしょう。先輩の青い顔なんて、初めて見ました……!

 

「……あの、先輩その金色のリンゴって、普段疲れたときに食べてる体力回復用のおやつですよね? それをクラフターさんに渡して一体何を……って投げるんですかクラフターさん!?」

「うっ! ……わ、私は一体……?」

「ラフムがシドゥリさんにー!?」

 

 しかも、なんかクラフターさんに金色のリンゴを投げつけてもらったら、ラフムがシドゥリさんに! ……え、つまりこれって、そういう!?

 

「よくはわかりませんが、助かりました。みなさんは早くこの奥へ。まだ市民の生き残りがいます」

「は、はい! でも、シドゥリさんは……?」

「……私には、まだやることが残っていますから。返さなければならない恩があるんです。――変身」

「あ、もう任意でラフムに変身できるんですね」

 

 とまあこんな感じの異常事態、速く何とかしなければ!

 

 

◇◆◇

 

 

「先輩、大変です! このままではラフムが、聖杯を海に……!」

 

 あのあと、私達はラフムを追いました。

 案の定というべきか、人間を弄ぶようにして笑っていたラフム達。それをエルキドゥさんが窘めたというのに、なんとラフムはエルキドゥさんに襲い掛かり、隙をついてエルキドゥさんの心臓となっていた聖杯を奪い、なんか空を飛んでペルシャ湾へ向かいました。

 そこにいるのはティアマトの本体。何をしようとしているのかはさておき、絶対に止めなければいけません!

 

 ……だというのに!

 

「お願いです、そこをどいてください……牛若丸さん!」

 

 私達の前に立ちはだかったのは、ティアマトの泥を浴びて反転した、牛若丸さんでした。

 

「いやだよ。僕はもう決めたんだ、お前たちを殺すって。人間も、兄上も、バカはみんな大嫌いだ」

「……あの、牛若丸さん男性になってません?」

「そっちのほうが自然だろ?」

 

 ……なぜか、ちょっと耽美な雰囲気の男性になってましたが!

 

 その後、なんやかんやで牛若丸さんを振り切り、ペルシャ湾岸の観測所でギルガメッシュ王と通信。とにかく事態収束のためにはティアマト神、その本体を撃破するしかないという結論に達しました。

 海は既にケイオスタイドに侵されていますが、触れれば汚染されるその泥にも、サーヴァントであれば触れないように魔力で防護することが可能です。

 

『ゆめ、気を抜くなよ。あれは常に変化し、新たな生命を生み、触れた生命を取り込む。自己進化、自己再生、自己増殖を繰り返すまさしく悪魔(デビル)の細胞だ』

「はい、十分に注意します!」

 

 目標、ティアマト神。

 ペルシャ湾から姿を現しつつある、星の瞳の人類悪です!

 

 

◇◆◇

 

 

「ついに現れたか、ティアマト。……我が視たものとはだいぶ姿が違うようだが」

「いやあの、アレは何なんですか? まるで直立二足歩行をする恐竜か何かのような……!」

 

 ティアマト神との戦闘の末、撃破に成功。一度はそう思えたのですが、事態はそう簡単ではありませんでした。

 倒したと思ったティアマト神は、あくまでその本体の一部、頭脳体。

 撃破直後、「本命」が姿を現しました。

 

 ケイオスタイドの海から立ち上がった、全長100mを越えようかという怪物。

 北壁で見た巨大なムシュフシュすら小さく見える、大怪獣。それこそが、ティアマト神の本当の姿でした。

 

『カルデアでも解析を進めているが、訳が分からない。間違いなくティアマト神の霊基なんだけど、一体何なんだ……この「シン性」ってステータス!? 神性とも違うし、すさまじい変化と進化と回復の傾向が見られる! こんなもの、まともな手段で倒せるわけがない!』

「その通りだ。およそ真っ当な手段で殺せるものではなく、しかしヤツを殺す以外に人理を維持する手段はない。……よって、最終作戦を開始する。ウルクの全戦力、全サーヴァント、全市民の力を結集する。良いな、カルデアのマスターよ」

 

 それでも、戦うしかありません。

 戦う方法は、あるんです。

 自身以外の全ての生命が死に絶えなければ「死」という概念が発生することすらないティアマト神。その性質を抑えたうえで倒す唯一の方法、冥界落としのための作戦が、始まります!

 

 

◇◆◇

 

 

「くっ、ティアマト神まであと少しなのに、ラフムの妨害が……!」

 

 とにかく、時間稼ぎが必要です。

 エレシュキガルさんが現在ウルクの地下に冥界を広げてくれていますが、その作業の完遂にはどうしてもあと1日かかるのだそうです。

 ちなみに、本来ならさらにもう1月くらいかかるはずだったそうですが、なんとクラフターさんがラピス・ラズリその他資材採掘のためにウルクの地下をほぼ空洞にする勢いで掘りつくしていたので1日だけで済むのだそうです。いつの間に、とギルガメッシュ王が口の端をひくひくさせていました。

 

 ともあれ、それでも時間は必要。ケツァル・コアトルさんの宝具でティアマト神の足元のケイオスタイドを蒸発させることでその進行を抑える……つもりで飛んできたのですが、予想通りとはいえとんでもない数のラフムです。まともに進めません! 

 そんな時、地上からの射撃がラフムを撃ち落としました。

 

「!? あ、あれは……生き残っていた砲台!? ダメです! そんなことをしたら、ラフムが殺到して……!」

 

 私たちを助けてくれたのは、ケイオスタイドに周囲を呑まれながらも辛うじて残っていたディンギルの一つ。威力は十分でラフムの撃墜には成功しましたが、そこにも人間がいると知られてしまっては、大量のラフムが……!

 

 そう、絶望を覚えたそのとき。

 

――その心配はない。任せろ

「え、今の通信は……防衛軍のライダーさん!?」

 

 絶望を振り払う(ストーム)が、産声を上げました。

 

『な、なんだなんだなんだ!? ティアマト神の魔力反応が吹き荒れる中だってのにはっきりと観測出来るサーヴァント反応が現れた! 魔力数値、爆発的に上昇中! それに、これは……霊基パターンが変化!? 間違いない、そこにいるのは……セイヴァーだ!』

 

 以前、牛若丸さんが言っていました。

 数多の魔獣に恐れることなく突撃する防衛軍のライダーさん。どれほどの敵に囲まれても冷静に銃をリロードし、押し寄せる無数の魔獣の全てを倒しつくす様は、まさに嵐のようだったと。

 その言葉の意味を、私は改めて知りました。

 

 眼下の砲台に押し寄せる無数のラフム。

 ですが、押し寄せるのと同じ数だけの血しぶきが宙に咲きます。

 アサルトライフル、ショットガン、スナイパーライフル、グレネード、かんしゃく玉。防衛軍のライダーさんが持てる全ての武器をもって、ラフムをことごとく撃墜しているんです……!

 

「なんだかよくわかりませんが、チャンスデース! あそこは彼に任せて、私達はティアマトを!」

「は、はい! しっかり捕まっていてください、先輩!」

 

 防衛軍のライダーさんのおかげで数を減らしつつあるラフムですが、まだ油断はできません。倒しても倒しても、ケイオスタイドがある限りラフムは増え続け、ティアマト神も今の姿のままではまともに攻撃すら通用しません。せめて、何とか足止めだけでも……!

 

 

「ティアマトのことは私に任せてもらおう」

「こ、今度はなんです!? ……パラケルススさん! どうやってここに!?」

 

 かなりの数が防衛軍のライダーさんのところに向かって血しぶきと化していますが、それでもまだまだすさまじい数が押し寄せるラフム。眼下には止まらず増え続けるケイオスタイド。ティアマト神に攻撃は届くようになってきましたが、全く効いている様子がありません。倒せないにしても、せめて一太刀は。そう焦る私たちのすぐそばで聞こえた声。

 その声の主は、なんとパラケルススさん(?)でした。い、一体いつの間に!

 

「私が呼ばれたということは、きっとこうなるのだろうとわかっていた。だから、その役割を果たそう。……今のティアマトは、本来の姿に別の性質を付加することでシン性を手に入れている。冷凍することは可能だが、そのための薬品を作ることができる施設がない」

「そんな、どうすれば……!?」

 

 眼帯で片目を隠したパラケルススさんの言葉は、私達にとって絶望をより深める宣告でした。これでは、倒すどころか冥界に落とすことさえ不可能です。

 

「安心したまえ。私は、私だけはあの存在を滅ぼすことができる。……かつてと同じように、再びお前を止めて見せよう。この……オキシジェンデストロイヤーで!!」

 

 

――人類悪、顕現

 

 

『うわああああ!? 二人とも、そこから逃げて! なんかよくわからないけどその場所に新たなビーストの反応が発生したぞ!? ……あっ、でも落ちて行った?』

「は……い。パラケルススさんが……謎のカプセルと共にケイオスタイドに落ちて……! って、ああ!? パラケルススさんの落下地点を中心にケイオスタイドが……ケイオスタイドが消滅していきます!?」

「それだけじゃありまセーン! 見て、ティアマトが……姿を変えて!?」

「あれは……今度こそ母さんね。まさか、あのわけのわからないガワを引っぺがすなんて……あのサーヴァント、一体何者だったのよ」

 

 イシュタルさんの言うように、パラケルススさん(?)が本来どのような方だったのかは、わかりません。ですがきっと、優しい人だったのだと思います。

 ビーストと化してなお、人のためにその命を捧げたあの人は。

 

 

◇◆◇

 

 

 その後、私達はなんとかティアマト神の足止めに成功しました。

 

「ティアマト神の足元で何かが動いて……あ、あれはクラフターさんがウルク中に敷設していた人員と物資輸送用のトロッコ! その上をチェストの乗ったトロッコが大量に走って……って、ティアマト神に激突するなり大爆発しましたー!?」

 

 どうやらクラフターさんがあらかじめ用意しておいたらしい無人トロッコ爆弾が炸裂したり。

 

 

「……お前を駆り出すつもりはなかった。だが、戦うというのだな。ならば行くがいい……ネフィリムよ!」

 

――ゼッ、トン!

ピポポポポポポポポ

「ウルク市の前に、ギルガメッシュ王の宝物庫の中から出てきたと思しき巨大生命体が出現しました! 二本足で立っているカミキリムシみたいです!」

 

 ギルガメッシュ王が、いつの間にか宝物庫の中に入っていたので鍛えてみたという謎の生物を召喚したり。

 

 

「……仕方ないわね。あの子に起きてもらいましょうか。行くわよ、(エウリュアレ)

「任せて、(ステンノ)。本当なら、メドゥーサが歌うべきなのでしょうけど」

 

「先輩、アレは一体何ですか!? ステンノさんとエウリュアレさんの歌と踊りに誘われるように、地中から……巨大な蛾のような生物が!」

 

 ステンノさんとエウリュアレさんが、これまた巨大な生物を呼び出したり。

 先輩に曰く、「今の状態は、完全究極体グレートモスに対するグレートモスくらい」とのことですが、どういう状態なのかさっぱりわからないです!

 

 

 たくさんのサーヴァントの方々が活躍してティアマト神の足を止め、アナさん……いえ、ゴルゴーンさんが角をへし折り、エルキドゥさんが天の鎖で縛り上げたことで、ようやく冥界に落とすことができました。

 その最中、ウルクにまで到達したティアマト神の狙撃から先輩をかばってくれたギルガメッシュ王が致命傷を負ってしまいましたが……だからこそ、必ず勝ちます!

 アヴァロンから直接出てきてくれたマーリンさん、ティアマト神に死の概念を付与してくれた山の翁さんの力も借りられるんです。私たちは、きっと勝てるはずです!

 

『当然だ。この上俺の助力もあって倒せぬものなどいるはずもない』

「その声は……ギルガメッシュ王! ……ですよね? 狼っぽい金色の鎧で顔も見えないんですが」

『我の存在を見誤った不敬、今だけは許そう。普段の鎧とは違うのだがな。なぜか、最近この鎧も使えるようになった』

 

『え、なにこの反応。霊基が変わってる。セイバーっぽいけど……なんだろうこのクラス名<ソード>って』

 

 ギルガメッシュ王も、黄金に輝く狼面の鎧で駆けつけてくれましたし、絶対に負けません!

 

 

◇◆◇

 

 

 人類史の基礎ともいえる神代の特異点。

 人が生きて、数多くの苦難に立ち向かう。

 多くの出会いが、生きるということがどういうことなのか、改めて私に刻んでくれました。

 

 だからこそ、より強く思うのです。

 私は、人の世界を終わらせたくない。

 人は善なるものとは言えないかもしれません。生命として完成された形でもないかもしれません。

 でも、きっとこの命を繋ぐことには価値がある。

 私はそう信じます。

 そう信じて歩む先輩を、信じます。

 

 

 次の、いえすでに引き寄せられている最後の戦いの舞台は魔術王ソロモンが座す異界の地、終局特異点ソロモン。

 

 私たちの、カルデアの戦いが。

 

 

 そしてこのレポートが、もうすぐ終わります。

 

 

 

◇◆◇

 

 

キャラクターマテリアル

 

ウルクのイェーガー×2

 

 ギルガメッシュに召喚されたサーヴァント。主に北壁での魔獣退治を専門に請け負っている。

 普通に人型で、腰の装置を使ってびゅんびゅん飛び回っては主に巨大な人型の魔獣を駆逐して回るイェーガーと、二人一組で宝具である巨大ロボットを召喚してそれに乗って戦うイェーガーがいる。どちらも「壁を守る」ことに適性があるらしく、ヤバめの怪獣が現れても北壁を維持できたのはこのサーヴァントたちの活躍によるところが大きい。

 

 

防衛軍のライダー

 

 無口で、どっからどう見てもカルデア時代と比較してさえ未来的な装備に身を包んだサーヴァント。銃火器を主に使うことからアーチャーのクラスの方が適切なのではという疑問を持たれるが、当人に曰く「ヤバくなってくると騎乗技能必須だから」ライダーなのだという。

 現界時はこの姿の他、真ライダー、アーチャー、セイバーのクラスになりうるらしい。

 ギルダブリルと刺し違えることを覚悟していた巴御前を救った理由は、「なんとなくおまえを倒すのはこの俺だ的な気がしたから」と後に語っている。

 あと、カルデア一行がレイシフトしてくるより前、ギルガメッシュがイシュタル対策にヴィマーナを出したところ、ついうっかり本能的に撃墜してしまったらしい。

 先に述べた通りライダーなどのクラスとして召喚されるのが普通だが、それはこのサーヴァント本来の姿ではない。「大地を埋め尽くす異形の群れ」「空を飛び交う侵略者」「星をも揺るがす大怪獣」などの条件が揃ったとき、星を救うために戦ったことに由来する本来のクラス、セイヴァーへとクラスチェンジする。

 見た目と名前の通り一軍人として戦ったため、持って生まれた名前は座にすら記録されていない。それでも彼を呼ぶ場合、その嵐のような戦いを見た人々は自然と「ストーム1」と呼ぶ。

 言うまでもなくフォーリナー特攻を持ち、クラス相性とか関係なくフォーリナーの天敵である。

 

 

ウルクのクラフター

 

 ギルガメッシュに召喚されたサーヴァントの一人……と見せかけて実はサーヴァントですらない来訪者。

 元いた世界で地獄っぽいところへ行くゲートをくぐったところ、なんかうっかりウルクの冥界に出てしまい、見たこともない地形と素材に大興奮。素材を集めたり地上に出てギルガメッシュに協力したりエレシュキガルの神殿とか建ててあげたりしていた。

 クラフターが存在するだけで周囲の環境はクラフター自身の物理法則に支配されることとなり、「大抵の素材は適切な道具で殴るとブロック状に破壊され、回収・再利用できる」「破壊したブロックより上の部分は特定の素材以外落ちてこない」などなどの現象が確認される。

 戦闘能力はさほど高くないが、適当に食事さえとっていればほぼ不眠不休で素材を集めまくることができるため、戦時体制のウルクに取ってなくてはならない存在となっていた。

 

 

銀河のカイザー

 

 ギルガメッシュ召喚サーヴァント。なんか、金髪で王気を持っていたので縁召喚された。

 ……と、ギルガメッシュは思っているが、実際は仕事しすぎ繋がりと友達大好き繋がりで呼ばれている。仕事中に余裕があると、ギルガメッシュと友達談義で盛り上がっているらしい。

 

 

CRのバーサーカー

 

 銀河のカイザー同様、なんか出て来たサーヴァント。霊基が砕けても99回までなら復活できるらしい。基本愉快犯でどう考えても御しきれる存在ではないのだが、巴御前のことを目にかけているらしく、謎のパワーアップアイテムとかプレゼントしていた。

 神を自称し、そのせいか「神性(自称)」のステータスを有している。

 

 

パラケルスス(?)

 

 右目に眼帯をつけたパラケルスス、のようなサーヴァント。

 実際はパラケルススの霊基に間借りする形で自然と召喚された野良サーヴァント。特に何をするでもなく、ウルクで普通に日々を送っていた。

 が、その正体はナンバー不明の人類悪。

 生前は科学者であり、人の世をより良くしようと心血を注いだ研究が、結果として人類を滅ぼしうる副産物を生み出してしまった。

 結果として人類悪として顕現することになったが、彼自身は善良な一科学者でしかないため、彼が発明した「それ」を具現化させない限り人類悪として認識されることはない。

 しかし、彼が召喚されたということはどうあっても「それ」を使う宿命にあることは間違いない。

 それでも彼が人を滅ぼすことはない。かつてと同じく、たとえその命と引き換えにしてでも人を守るために使うことは、間違いない。

 

 

ネフィリム

 

 ギルガメッシュが有するバビロンの宝物庫から出てきて、ティアマト神に戦いを挑んだ怪獣。

 二足歩行のカミキリムシのような姿をしており、「ゼッ、トン」と鳴く。あとどこからともなく「ピポポポポポポ……」という音が聞こえてくる。

 なんか、ギルガメッシュも知らないうちに宝物庫の中に入っていたので、気が向いたときに鍛えてやったらめちゃくちゃ強くなったらしい。

 

 

蛾の怪獣

 

 ステンノとエウリュアレの歌によって呼ばれ、地中から姿を現した怪獣。ネフィリム並みに強く、ティアマトを相手に善戦した。

 現代から少し先の未来でとんでもなく強い奴と戦うが、強すぎて歯が立たない。そこではるか過去に戻ってそいつを倒したが、さすがに力尽きてしまう。

 その後、当時の同族が作ってくれた繭の中で回復と成長に務め、元いた時代に帰る途中だった。そのため完全に成長しきった状態ではないが、それでも十分に強い。

 ちなみにこの子が戦った相手は、はるか昔金星に存在した文明を滅ぼした、金星の人類悪にして金星のアルテミット・ワン。

 水星のあの子よりもさらにさらにはるか前に地球に到達してしまい、まあいっかと恐竜を滅ぼしたりとかしていたらしい。

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