FGO マシュズ・リポート ~うちのマスターがこんなに変~   作:葉川柚介

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最終章の記録 絆、ネクサス

――この最期を記録に残せないことが、ちょっとだけ残念です。

 

 

◇◆◇

 

 

――オオオォ

      オオオオオォォ

 

「魔神柱……! この空間全てが魔神柱で構成されているんですか!?」

 

 人理継続保障機関カルデア。

 幾多の困難を乗り越え踏み越えて、特異点を形成していた聖杯を手に入れ、たどり着いたここは終局特異点、冠位時間神殿ソロモン。

 宇宙一つが神殿そのものと化し、その構造材は魔神柱という狂気の園。

 

「いやはや、相変わらずの生き汚さだな君たちは。何度も我々の邪魔をして、恥ずかしくないのかね」

「レフ教授……! やはり、あなたも!」

 

 私たちを最初に出迎えたのは、やはりというべきかレフ教授でした。

 第二特異点で真っ二つになったはずですが、その正体が魔神柱であることを考えればこうして復活してくるのも自然なことです。

 

「我々にとってみれば、君たちは本当に取るに足りないものなんだ。なにせ、すでに燃やした薪に過ぎない。風に吹かれて消えてくれればいいものを、こうしてしぶとくまとわりついてくる。鬱陶しいことこの上ない」

「そんな……! 人類史を焼き尽くしておいて何を!」

「そこがまず間違いだ。人理焼却は『目的』ではなく『手段』だ。この星の霊長となった人類、その歴史全てを焼き払って得られるプラネジウムのエネルギー。それこそが我らの欲したもの。それさえ得られれば、あとはどうでもいいのだよ」

 

 それが、レフ教授の語る真実。

 人類はただ、利用されるためだけにこれまで積み上げてきた全てを否定されたんです。

 なんだかここにきて「プラネジウム」なる初耳のエネルギーが出てきましたが、一体。

 

「……はい、先輩。私たちは特異点へのレイシフトという形ですが、人類史を、そこに生きるたくさんの人たちを知りました。その全てが価値のないものだなんて、絶対に言わせません!」

 

 なら、戦います。

 人が生きることを無駄だなんて言わせないために。

 

 

 そう決意しての戦いは、しかし絶望的な物でした。

 特異点丸ごと一つを埋め尽くすような無数の魔神柱。

 しかも、倒しても倒しても復活してくるという心折設計。

 これまでの戦いでの経験と成長が魔神柱相手の戦いでも怯まずに挑ませてはくれますが、倒しても倒しても終わりがないのは……!

 

 

 そう、勝てるはずがありません。

 あまりにも規模が違います。

 視界に映る全てが蠢く肉塊、魔神柱。

 たとえ先輩がいてくれたとしても、その全てを倒しつくすなど不可能な話です。

 

 

 ――人類史を守るために戦うのが、私達だけであったならば。

 

 

「聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不倒の英霊たちよ!」

 

 声が、響きました。

 

「本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても、今は互いに背中を預けよ!」

 

 光が、私達を照らします。

 

「人理焼却を防ぐためではなく、我らが契約者の道を開くため!」

 

 振り返れば、そこには高々と掲げられた聖なる旗。

 空から降り注ぐ流星と、次々に起動する召喚術式。

 何度となく見慣れた、サーヴァント召喚。

 

 そう、私達はこれまでの戦いを、決してカルデアだけの力で乗り越えてきたわけではありません。

 人類史を守るために力を貸してくれた、たくさんの英霊の皆さんがいました。

 

 彼らと共に戦ったことは、私達の旅は……何一つ、無駄ではなかったんです!

 

 

「さすればドンレミ村の娘、ジャンヌ・ダルクが、命という名の盾となろう!」

 

 

 先輩は言っていました。

 「絆、ネクサス」と。

 かつて結んだ絆が力に変わる。それが私達カルデアの、人類の戦いです!

 

 

◇◆◇

 

 

「やれやれ、ドラゴン退治の次は魔神か。お前たちも大変だな」

「でも、がんばりましょう。僕たちが守りたかった世界を、あんなやつらの好きにさせたくないから!」

 

 最初に姿を見せてくれたのは、フランスの特異点で力を貸してくれたみなさん。

 ジャンヌさんを筆頭に、アマデウスさんやマリーさんたち、さらには敵として立ちはだかったサンソンさんたちをはじめとしたサーヴァントの方たち、そしてウィザードさんにキバさんたちライダーの皆さんもいます!

 

「しゃあねえ、心火を燃やして、ぶっ倒す!」

「……あれ、父さん!?」

 

 何だか見たことない人たちも混じっていたようでしたが、キバさんの知り合いの人でしょうか。

 

 

「そうか。ここならまた一緒に戦えるんだな……アンク」

「フン、人間どもに興味はないが、世界まで壊すってんなら話は別だ。行くぞ、映司!」

 

 

◇◆◇

 

 

「人に宿り、人を殺す。……さてはオヌシら、ニンジャなのでは?」

「何を言っているのだこのサーヴァントは!?」

「ニンジャ……いや、魔神柱殺すべし、慈悲はない。イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

「なんかあっちのニンジャがものっそい暴れておるな!? だがためらうな余のローマ兵たちよ! 我らもまた永遠たるローマを守るため、いまこそ奮起せよ!」

「おおおおおおおおおぉぉ! ローマ万歳! 皇帝陛下万歳!」

 

 Ⅱの座、情報室フラウロス。

 この場の戦いに駆け付けてくれたのは、ネロさんを筆頭にするローマで戦ったみなさんでした。

 アヴェンジャー=サンが魔神柱をニンジャ認定して特攻の乗った攻撃で次々に撃破し、ネロさん率いるローマの軍勢が魔神柱と拮抗する、華々しい戦場です。

 

「行くのか、アルテラ」

「……ああ。お前と共に旅をして知った。私は破壊者。全てを破壊し、全てを繋ぐ……!」

「それでいい。さあて、俺も少し本気を出すとするか!」

 

 

「あー、なんだここは? 東離をうろついてたはずが、また妙なところに出ちまった。しかも魔神みたいなやつらがうようよしてると来た。……いや待てよ、あっちの世界と関係なくて、しかも魔神だらけってことは、剣の使いどころじゃねえか!」

 

 あと、なんかエミヤさんとよく似た声をした中国風の剣士の人が嬉しそうに宝具を多用していました。とても頼りになります!

 

 

◇◆◇

 

 

「よっしゃ、野郎ども準備はいいね! 狙いなんざつけるまでもないようなデカブツが相手だ、外したヤツは弾の代わりに大砲に詰めるよ!」

「任せてくだせえ、姐さん!」

 

「うーん、BBAと一緒に戦うことになるとはなー。エウリュアレちゃんたちがこっちに乗ってくれてたら拙者ももうちょっとやる気出たんでござるが。……ドレイクと、共闘かあ。ドゥフ、ドゥフフフフフフフフ!」

「船長ってば、本心隠せてないわねえ」

「いいんじゃない? 気持ち悪いなりに仕事はするし。本当に気持ち悪いけど」

 

 Ⅲの座、観測所フォルネウスは海賊空域と化していました。

 海域ではありません。空域です。

 終局特異点は物理法則がふわっとしているのか、ドレイク船長と黒髭さんの海賊船が空中に浮かんでいます。その状態で砲撃をボンガボンガ魔神柱に叩き込んでいるんです。

 

「ハカセに突貫で改造させたからな。空くらい飛ぶぜ」

「誰ですかあなたは!? 赤い海賊のようですが!」

「気にするな、ただの宇宙海賊だ。ってことで、俺たちも派手に行くぜ!」

 

 あと、オケアノスで見た覚えがあるようなないような空飛ぶ赤いガレオン船もいたりします。

 

「ヒイイィィィィ! なんだこの恐ろし過ぎる空間は!? なぜ私がこんなところで戦わなきゃならないんだ! 戦闘能力なんてほぼないぞ私は!」

「落ち着いてください、イアソン様。今度は私が最期までお供しますから」

「そうだ。俺様が来たからには勝利は決まったも同然。すなわち、伝説の始まりだ」

「誰だお前は!? なぜ当たり前のような顔でアルゴ船の中から出てくる!?」

 

 しかも、ヘラクレスさんを擁するアルゴノートまでもが、今度は頼れる味方として参戦してくれています。

 ……なんだか、アルゴ船には見覚えのない人たちが12人ほど乗っていたりもしますが、その人たちもとっても強いようなので頼もしいです。

 

 

――オーーーリオーーーン!!!!

「きゃー! 本気のダーリンかっこいいー!」

 

 あと、なんか頭から青い炎を噴き上げるロボットっぽい巨人が、手に持ったこん棒で魔神柱をへし折ったりもしています。

 鳴き声(?)とアルテミスさんの反応からしてオリオンさんのようです。

 オケアノスではゆるキャラのような姿でしたが、本気を出してくれるととっても頼もしいです!

 

 

「左舷! 砲雷撃戦、用意!!」

「キシン流奥義……! 終わりです!」

 

 さらには、特異点の空中を海面のごとく滑走して魔神柱に砲撃を加える一団もいます。まるで艦砲のような装備からの砲撃をする子たちと、弓や魔術的な方法か何かで小型の戦闘機を飛ばして集団で魔神柱を攻撃しています。あの人たちも、人類のために戦ってくれているのでしょうか。

 ……なんというか、アルトリアさんみたいに同じ英霊が別の霊基で現界している的な空気が一部から感じられますが!

 

 

◇◆◇

 

 

「こんなに月も青いから……あいつら来ちゃったじゃないかぁ!」

 

「月光条例、執行!」

 

「ほぼお前のせいだろ富士鷹ァ!」

「……ふん、見たくもない懐かしい顔だ」

 

 管制塔バルバトスに駆け付けてくれた、第四特異点のサーヴァントのみなさん。

 なんか富士鷹さんの近くで巨大なこん棒(?)を振り回している高校生くらいの男の人がいましたが、きっとあの人もサーヴァントなのでしょう。アンデルセンさんともお知り合いのようですが、一体なぜ。

 

「世界を守る、か。……少しだけ、誇らしいな」

「俺はそういうのよくわかんねえんだけどなあ。でもじいちゃんもいるし、孫(?)もいるんならイイとこ見せねえとな」

「孫だけじゃなくて息子もいることを忘れるなよジジイ」

「敵も味方もすげえ、グレートですよこいつは……」

 

 あと、ロンドンでは現地人だったはずのジョナサンさんが親戚の人たちも引き連れてきてくれていました。特に高校生くらいの人たちは本人は動かないまま魔神柱にダメージを与えているので、何らかの特殊な力を持っているようですね。

 

「私は戦いなど望まない。ただ平穏に穏やかに生きる。そう、『植物のような生活』を望んでいる。だからこそ、避けられない戦いならば必ず……勝つ!」

『あれー、なんでだろ。何がどう転んでも私はその特異点に行かない方がいいような気がしてきたぞー?』

 

 あと、魔神柱をボンガボンガ爆発させている人も。

 なぜかその様子を見ていたダ・ヴィンチちゃんが絶対にこちらへ駆けつけないという決意を固めていましたが。

 

 

「かなりハードな状況じゃん。……なら俺も、本気出すしかねえよなあ。――変身!」

「あらー、金時さんてばなんだかキラキラしちゃって。霊基まで変わっちゃって、ライダーですかこれは?」

「おうよ。俺の強さに釣られてみるか?」

「多分、色々混じっちゃってますよ」

 

 あちらには金時さんもいます! 金色の仮面に斧を持った姿で、あとなぜか竿を背負っていますね。電車を操って戦っているようですが、一体どういう繋がりなんでしょう。

 

 

「では、我々も行くとしよう。なに、手段を選ぶ理由はない。かつて描いた未来のその先で、人が得るだろう力を借りて来た。旋風寺財閥、世話になる……!」

「ウーっ!」

 

 そして、チャールズ・バベッジさんはなぜか機関車のようなフォームに変形。さらにそこから巨大ロボへと変形しました。質量保存の法則はサーヴァントには通用しないということがよくわかりますね。

 

 

「ヘイ、探偵。これが注文のブツだ。キマるぜ」

「いやあ、助かるよシド。わざわざこんなところまですまないね」

 

「……あの、先輩。あそこでちょっとダーティな取引をしているらしきホームズさんたちは止めた方がいいんでしょうか」

 

 それから、特異点の片隅で謎の粉末のやり取りをしているホームズさんと、大変ロックでパンクな気配を漂わせるサーヴァントがいました。

 パンクな人はホームズさんと別れると、邪魔する魔神柱をなぎ倒しながら帰っていきます。なんか話も通じないみたいですし、あの人絶対にバーサーカーです……!

 

 

◇◆◇

 

 

「ペポぃ!」

「おぉ、セイヴァーくんなにやらメカニカルな宝具を用意してきてくれたか! その動力……やはり直流だな!?」

「ほざくな快傑ライオン丸。あのスムーズな動きとあらゆる能力に適合する自由度の高さ、交流のみが至る領域であるとなぜわからん」

「……あぁん?」

「……やるかオラー!」

「やめなさい、おバカさんたち!」

 

 兵装舎ハルファスにおける戦いに、第五特異点で力を貸してくれたセイヴァーさんが参加してくれました。しかも、今度はセイヴァーさんが乗り込むタイプのロボット的なアーマーを持参して。

 魔神柱に謎の光を照射すると、その能力をコピーして自らの力に出来るようです。……相変わらず規格外ですね。

 

「……あの、ナイチンゲール嬢? 最近吾輩の宝具、開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采(ファースト・フォリオ)の中に灰色の幽霊のような男性が混じっている気がするのですが、心当たりはありませんか?」

「……もう少しだけ、大目に見てあげてください。きっと、あなたと一緒に戦えることがうれしくて仕方がないんです」

 

 本来英霊として召喚されるはずのない存在が力を貸してくれるのも、特異点の特徴ですね。

 

『How do you like me Nooooooooooooow!!!!!』

「……わー、すごいです。大統領、魔神柱を数本まとめてジャイアントスイングしてます。あ、あっちではリンカーン大統領が斧でばっさばっさと魔神柱を切り倒してますね」

 

 あと、エジソンさんの霊基を強化しているはずの歴代大統領たちもなんかサーヴァントとして現界してます。エジソンさんの召喚触媒としての価値が凄まじい勢いで上がっています……!

 

 

◇◆◇

 

 

「呪腕さん、百貌さん、静謐さん! 来てくれたんですね!」

「ええ、我らアサシンのサーヴァント一同、霊基に刻まれた魔術師殿への恩を返すため、馳せ参じました」

 

 次の場には第六特異点のみなさんが駆けつけてくれました。

 アーラシュさんが出て来るや否や態度をころっと変えてテンション高く笑っているオジマンディアスさんや、なんかもうここが唯一汚名返上の機会とばかりに凛々しく奮戦する円卓の騎士たち、そしてハサンさんたちが力を貸してくれます。こんなに嬉しいことはありません。

 

「頭を使え! でやあああああ!」

「ここは宇宙? なんでしょうか。その辺も含めて詳しくリポートしてみたいと思います!」

 

 ……なんか、向こうの方でせがたさんが魔神柱相手に柔道技や頭突きを繰り出してますし、一緒に連れてきてくれたのかそこはかとなく未来的なリポーターの人や中国拳法を繰り出す格闘家の人なんかも協力してくれているみたいです。

 

「ここは人の戦う場だからと初代様はお越しいただけませんでしたが、そのぅ……………………………………………………代理の方が」

 

 あと、呪腕のハサンさんが言いよどみながら指示した方に。

 

 

――はははははははははははははははははは!!!

 

「ああっ、全身金色でマントしか身に着けていない髑髏顔の人が、ステッキ一本で魔神柱を焼き鳥みたいな串刺しに!」

 

 思わず説明口調で叫んだ通りの人が!

 魔神柱の攻撃を受けて倒れても、すぐに何事もなかったかのように起き上ってすぐまた戦っているんですが!

 

「黄金バットは不死身だ!」

「アッハイ」

 

 強い、絶対に強いですよあの人は。

 

 

『好きなように生きて、理不尽に死ぬ』

「向こうでは黒くてケーブルがうねうねしてるロボットの人が! 何もしてないのに近くの魔神柱がダメージを受けてます!」

 

 あと、終局特異点だから許されるけど絶対に地球へ連れて帰っちゃいけない気がする人も。さすが山の翁さん、代理の人たちも超すごいですね!

 

 

「食らえ、魔神柱式霊基退行ビィィーーーーム!!」

「ぐわああああ!? ち、力が抜ける……!」

 

 ああっ、でも向こうでは太陽のライダーさんがピンチです!

 魔神柱が放った謎の光線を受けて姿が変わっています。具体的には霊基が再臨前の状態に戻ったみたいな! スペックも相当……いえ、わずかに、もしかしたら気持ち程度下がった、かも……? みたいな感じですし!

 

「千載一遇の好機! 死ねええええええ!!」

「くっ……マズい!」

 

 ですが。

 

 

――そのとき不思議なことが起こった!

 

 

「とぁ!」

「悲しみの王子、ロボライダー!」

「怒りの王子、バイオッ! ライダッ!!」

 

「……あの辺りはもう全部太陽のライダーさん一人で大丈夫そうですね」

 

 さすが、とびきりの脅威だった第六特異点のサーヴァントの人たちだけあって揃って味方になってくれると頼りになることこの上なしですね!!

 

 

◇◆◇

 

 

――ギャオオオオオオオオン!

――ガアアアアアアアアアア!!

 

「……半ば予想していましたが、怪獣大決戦です先輩!」

「私も、いる……」

「あと、ギルガメッシュ王プロデュースの特訓を受けたネフィリムさんっぽい女の子が!」

 

 第七特異点のサーヴァントのみなさんが力を貸してくれているここは、さながら天災の降る地と化していました。

 冠位時間神殿は構造物全てが魔神柱でできているに等しい空間ですが、その巨大な柱を、天井を構築する魔神柱を軽々へし折る大怪獣が暴れています。

 タラスク(代理)さんはもちろんのこと、口から青白い炎を吐くあの怪獣は、出現直後のティアマトそのもの。どうやら、ティアマトに姿と能力を使われていた元の存在がお礼参りに来たようです。顔つきなど色々違うのですが、強さは折り紙付きですよアレ。

 そして、普通の人間サイズでありながらネフィリムさん的なコスチュームの子までいます。それでも火球とかバリアとか普通にネフィリムに匹敵する能力なんですが!

 

 

「なんだかとんでもないことになってるけど……私だって、力を貸しに来たのだわ! くらいなさい、さっきネルガルから一時的にふんだくった宝具、重力波砲(グラビティブラスト)!!」

 

「ああっ、エレシュキガルさんの背後から謎の重力波が!?」

 

 あと、エレシュキガルさんも本気モードでした。魔神柱がねじれてはじけ飛ぶさまは、さすがにちょっとスプラッタです。

 

 

◇◆◇

 

 

 こうして、たくさんのサーヴァントの皆さんが力を貸してくれています。

 きっと、私達が気付かないところでも。

 

 

◇◆◇

 

 

 激しい戦いから離れた、特異点の隅。

 カルデアとつながっているゲートのすぐそばに蠢くものがあった。

 

――ここだ

――いまのうちだ

――奴らの帰り道など閉ざしてしまえ

 

 それは、紛れもなく魔神柱。

 カルデアとマスターとの接続を断ち切り、孤立させようという邪悪な陰謀だ。

 いかに多くの英霊と絆を結んだマスターとはいえ、それを支えるカルデアとのつながりがなくなればただの人と変わらない。その判断は極めて正しく、多数の魔神柱と戦闘中で駆けつけることはおろか気付くことすらできない。

 伸ばされたその触手がゲートを破壊するのを止める者は誰もいない。

 

 

 突如横合いから押し寄せる、魔神柱と遜色ないほどにおぞましい、海魔の群れを覗いては。

 

 

――我々の動きを読んでいた……!?

――何者だ!

 

「相変わらずですね、ジャンヌ。前だけを見て、導いて、後ろのことなど振り返りもしない。……ならばその背は、そしてあなたが守りたいと願ったカルデアのマスターの退路は、このジル・ド・レェが守り抜きましょう」

 

 姿を見せたのは、たった一人のサーヴァント。

 キャスター、ジル・ド・レェ。彼が呼び出した海魔が魔神柱と絡み合い、触手大合戦の様相を呈している。

 

 ジャンヌ・ダルクの呼びかけに、彼は答えなかった。

 その資格などあるはずもない。彼女の側には、邪悪に堕する前の自分がいれば十分だ。

 だがそれでも、出来ることはある。邪悪だからこそ、邪悪を知る。そんな自分にもできることがあると信じてここへ来た。

 それがかつて戦ったカルデアのマスターを守るのだということに、皮肉を感じながら。

 

「……柄ではないな、プレラーティ。だが、どうか力を貸しておくれ。ジャンヌの愛したものを守る、そのために」

 

 蠢く魔神柱。末端とはいえ通常のサーヴァント一騎が対するには過剰な相手。

 だがジル・ド・レェに迷いはない。

 だって彼方にあるだろうあの旗の美しさは、今も心の中にあるのだから。

 『まあ、たまには悪くないわけだ』。そんな友の声が、なんか生前とは違う女の子の声として聞こえたような気がしたが、それはそれ。

 

 ジル・ド・レェもまた、人理を守るために戦う、サーヴァントの一人なのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「ふはははははははは! 縁が尽きたな! 万策尽きたな! 廃棄孔アンドロマリウス、ここが貴様らの終わりだ!」

「そんな……更なる魔神柱!? もう、これまでに攻略してきた特異点で会ったサーヴァントのみなさんは他の拠点にかかりきりなのに……!」

 

 ソロモンの玉座へ至る直前、最後に立ちはだかったのは更なる魔神柱。

 ですが、大変です。これまでの拠点で力を貸してくれたのは特異点で出会ったサーヴァント。これ以上、戦力なんてもうどこにも……!

 

 そう絶望しかけた、そのとき。

 

「……なんだ、この宙域へ超高速で迫る反応が……ダメだ、捉えきれない!? ありえん、なんだこれは! まるで……ステルス!?」

「え、え……?」

 

 星々の輝きの中に、さらにまばゆく光る流星が、駆けつけてくれたのです。

 

 

<メビウス1、エンゲージ>

 

「ぬわあああああああどう考えても物理的に搭載できない量のミサイルが殺到!?」

「あれは……F-22Aラプター!」

 

 そう、間違いありません。

 うっかり記録には残し損ねましたが、かつて発生した準特異点で出会ったサーヴァントです。

 

 ある時発見された、巨大な聖剣エクスカリバーが突き立った台地。なぜか直接その場へレイシフトすることは出来ず、しかも切り立った断崖に囲まれているため空路でしかたどり着けず、戦闘機を駆るライダークラスのサーヴァントが数多入り乱れた、通称<神聖円卓空域B7R>で力を貸してくれたサーヴァント!

 

<ブレイズ、エンゲージ!>

<ガルム1、エンゲージ!>

 

「ラーズグリーズ! ガルム小隊も! これは、行けますよ先輩!」

 

 

「はぁ。ウチらは鬼やさかい、人を喰うことはあっても人類史を燃したって酒も温まらんわ。しゃあない、止めるしかないわな。手を貸しておくれやす、響鬼はん」

「ああ、もちろん。元々そういう仕事だからね。雷吼も、いいかい?」

「任せろ。それが守りし者、牙狼の使命だ!」

 

 あちらにいるのは、平安京と鬼ヶ島で出会った人たちです!

 平安京を守るために戦っていた雷吼さんは、いまにして思うとウルクでギルガメッシュ王が身に着けていたのとよく似た黄金色の鎧を纏い、鬼ヶ島で力を貸してくれた響鬼さんは紅色に姿を変えました。ばっさばっさと魔神柱を切り裂き爆散させています。

 

 

「行くよ、クロ! マスターさんのために、力にならなきゃ!」

「もう、気合入り過ぎよイリヤ。長丁場になるんだからペース配分考えてね。……他にも頼れる先輩がたくさんいるんだし」

 

「すごい数……! まずは一気に減らします! いくよ、レイジングハート!」

「すっごく怖くて、大変そうだけど……絶対、大丈夫だよ! 力を貸して、カードのみんな!」

 

 小さいながらも頼りになるあの女の子たちは、イリヤさんたち魔法少女連合です!

 普通に宝具に匹敵する魔砲少女な傾向のあるイリヤさんとなのはさん、そしてカードの力を使ってあらゆる局面に対応できる汎用性の高いさくらさん!

 

「おのれおのれ、またぞろ面倒を押し付けてくれたな存在Xぅぅぅぅーーーーーー!!!」

「わああ、ターニャさん落ち着いて! そっちの魔神柱は私が倒します! この……ビームラリアットで!」

 

 ……と、アヴェンジャーのクラスかと錯覚するほど恨みつらみを募らせて戦っているターニャさんとか、メカニカルな手足のパワーみなぎるまどかさんとか。みなさん頼りになりますね!!

 

「ここは私たちに任せて、あなたたちは先に行きなさい! ……さあ行くわよ魔神柱! 人理継続保障機関カルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアの名に懸けて、そして人類史に刻まれた15人の英霊の力を借りて! ここから先へは通さない!!」

\グレイトフル!/

 

 オルガマリー所長が、いつぞやエジソンさんやロビンさんたち一部のサーヴァントの声がギルガメッシュ王のようになってしまうという怪現象に見舞われた際、なんやかんやで手に入れた力で私達の後ろを守ってくれています。

 なら、あとはもはや進むだけ。冠位時間神殿の玉座は、すぐそこです!

 

 

◇◆◇

 

 

 思えば、長い旅だった気がします。あっという間だったような気もします。

 カルデアに生まれて、カルデアに生きて、先輩と出会い、人類史を取り戻すために特異点を巡る旅。

 たくさんの出会いがありました。本来の人の一生では出会うことのなかっただろう様々な英霊のみなさんと言葉を交わし、力を借り、時には戦うこともありました。

 でも、そんな英霊の皆さんがいまは力を貸してくれています。

 

 ソロモン王の死後、その体と魔術回路を使って人理焼却を為したゲーティア。

 彼が無意味無価値と断じたそれを、尊いものだと信じてくれた偉人たちがこんなにもいます。

 

 ……だから、大丈夫。そう信じられます。

 この先も、人類は悲劇と嘆きに彩られ、その都度絶望に襲われるでしょう。

 それでも、私達人類の生きる日々の未来には、きっと良い物もまた待っているのだと。

 

 そう、一片の迷いもなく信じられるから。

 そんな今も、先輩が私の背中を信じてくれるから。

 

 

「顕現せよ、いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)!!!」

 

 

 人類史を焼き尽くした光帯にだって、立ち向かえます。

 

 

 オルガマリー所長が言っていました。

 英霊とは、英雄とは、歴史に名を刻んだから偉人なのではないと。

 命を燃やして生き抜いたからこそ英雄なのだと。

 

 なら、私も。ギャラハッドさんの霊基を受け継ぐ私にも出来るはずです。

 だって私にも守りたい人が……先輩が! いるんですから!!

 

 

「あ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

◇◆◇

 

 

――これが、私の旅の全てです。

 

 先輩を守るため、ゲーティアの宝具を防いだ代わりに、私の体は燃え尽きました。

 悔いなんてありません。そうすることで先輩の命が、未来を繋ぐことができたのなら、それはきっと尊く、意味のあることです。

 特異点を、歴史を巡る旅。

 その中で出会った人々。遥かな過去から今へ、そして未来へと続いていく人の営み。

 

 生きる。死ぬ。託す。

 命の在り方さえ知らなかった私が、その絆と繋がることができた。

 だからいま、私の胸の中は幸せでいっぱいです。

 

 

――なぜだ、なぜお前たちごときに、我々が……!

――カルデアだけじゃない。英霊だけじゃない。人類だけじゃなく、この星の歴史まで否定した。だからこの戦いは人の、地球の戦い。お前の敵は、この地球そのものだ!!

 

 ふふふ。

 どこからか、声が聞こえます。体なんてもうないのに、おかしいですね。

 でも、絶望の淵にあっても諦めず、前を向く。そんな先輩の声がいまも聞こえます。

 なんかもうとんでもない理屈でむちゃくちゃを言っているようですが、先輩ならいつものこと。

 そしてその無茶が、いつも私に勇気をくれました。

 このきれいな思い出とともに終われるのなら、きっとそれは悪くない人生で……。

 

――まだ終わるには早いよ、マシュ・キリエライト

 

 あれ、この声は……フォウさんの鳴き声に、似ているような。

 

――プライミッツマーダー。そんなに地球人が好きになったのか。よし、私は命を二つ持ってきた。そのうちの一つをマシュ・キリエライトにやろう

 

 ……あと、聞き覚えのない声がさりげなく第三魔法を実行したような気が。

 

 

◇◆◇

 

 

 走る。走る。走る。

 主を失い、崩れ行く冠位時間神殿をカルデアのマスターがひた走る。

 

 ありとあらゆる英霊の助けを受けて、ゲーティアを倒した。人理焼却は終わり、人類の未来を取り戻した。

 最後の悪あがきもなんやかんやの末に殴り飛ばし、これにて一件落着……とはいかなかった。

 

 英霊たちが力を振り絞ってくれたからこその得難い勝利。

 しかしそれと引き換えに、この場に集ってくれた数多の英霊たちもすでに一人残らず力を使い果たし、カルデアへと帰還するために足場も壁も何もかもが崩落しつつあるこの場にいるのはマスターだけ。誰の助けも借りられない。

 

 足には自信があった。

 特異点では何日も歩き通し、特にサーヴァントに追いかけられて命がけの逃走をし、アメリカ横断ウルトラ特異点なんてこともあったのだから、この期に及んでも足は動く。

 カルデアへ帰るために開いているゲートまではあと少し。ぐらつく岩場を飛ぶように駆けて、あとほんの数歩。せめてそれまでもってくれ。

 必死にそう祈りながら走る。

 ここまで来たんだ、ハッピーエンドで終わりたい。

 

 

 なのに。

 

 

――ガラリ

 

 

 あっけないほどあっさりと、足場にした岩が裏切った。

 ずるり、と上へ滑る景色。ぞっとするような浮遊感。もうあと3歩もあれば届いただろう、カルデアにこの手が届かない。

 この下には何があるのか。およそ人が生きられる可能性がないことだけは確かなそこへ、マスターの体は堕ちていく。

 助けはない。人の力で空を飛べるはずもない。

 これで、終わり。世界を救い、しかし未帰還。よくある話で幕を閉じる。

 

 

 ……だが、たとえそうだとしても。

 

 

「――あああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 マスターは手を伸ばす。

 こんな程度の絶望なんて慣れっこだ。

 カルデアに来て、人理修復のため特異点を巡る、よりさらに前。

 

 幼い頃の川遊び。突然の増水と押し流される体。

 濁流の中の恐怖と苦しさと冷たさと痛さと声が出ない不安と伸ばした手を誰も掴んでくれないどうしようもなさを。

 

――諦めるな!!

 

 あの時、確かに誰かが掴んでくれた。

 

 それ以来、「諦める」なんて言葉は忘れた。

 だから今も腕を、指を、せめて届けと伸ばし続けて。

 

 

「――先輩!!!」

 

 

 温かくて、柔らかくて、大好きな。

 そして大切な。

 後輩の手が、包んでくれた。

 

 

◇◆◇

 

 

 ……以上が、私ことマシュ・キリエライトによる先輩の観察記録です。

 終局特異点からの期間後、ダ・ヴィンチちゃんの計らいで外を……カルデアの外を、確認しに行ったとき。頭上に広がる青い青い空を先輩と二人で眺めていたら、「綺麗な空だ……目に沁みやがる」と言い出して無性に不安になったりもするくらいにはいまだわからないところもある先輩ですが、それでも人理修復の達成を以て一つの区切りとしたいと思います。

 

 だから、最後に結論付けましょう。

 私の先輩は、どんな人か。

 

 魔術師として、才気あふれる方というわけではありません。

 サーヴァントに伍する戦闘能力だってありません。

 

 でも、強くて優しい人だと思います。

 笑顔であること。前を向くこと。歩みを止めないこと。

 きっとそれは誰にでも出来ることで、いつどんな時でも、誰でも先輩のようにあることは出来るはずだとたくさんの人を励ますことができる力を持った、そんな人です。

 

 だから人理修復はきっと、そんな先輩の……いいえ。人が誰しも当たり前に持つ力で、それを信じた先輩だからこそ完遂できたことなのだと、そう思います。

 そしてそんな旅を共に歩めた誇りと喜びを、この記録の最後に綴ります。

 

 

 ありがとうございました、先輩。

 大好きです。

 

 

◇◆◇

 

 

――ドンドンドンドン!!

「ひゃあっ!? は、はいどなたでしょうか……って、先輩? どうしたんですか……って、なんですかそのうっすら見覚えのある気がする球体(?)は。え、オルガマリー所長を蘇らせる!? できるんですか!? それ軽く魔法だと思うんですが……あ、でもそういえば私もついさっき生き返ったような気が!」

 

 記録は終わります。

 でも先輩との日々と思い出は、きっとこれからも数限りなく増えていく。

 つないだ手を引かれ、先輩の背中ごしの横顔を見て走りながら、私はそう確信しています。

 

 今日も、明日も、きっとずっと、先輩と一緒です!!

 

 

◇◆◇

 

 

キャラクターマテリアル

 

戦闘機の人たち

 

 脳内捏造イベント「神聖円卓空域 B7R」から参戦。なんか突然空から降って来たと思しき巨大なエクスカリバーが突き刺さったことで特異点化した円状の台地で繰り広げられた戦い。台地へ直接レイシフトすることができず、台地は断崖絶壁に囲まれているためサーヴァントでも陸路による侵入は不可能であるため、必然的に空中戦が勃発。

 昔々に言われていた「サーヴァントの強さは戦闘機1機分くらい」という話を真に受けた戦闘機系サーヴァントが大量に現れてエースでコンバットな戦闘になったという。

 

 

魔法少女組

 

 プリズマイリヤコラボイベントの脳内捏造「魔法少女戦記 プリズマキャプターリリカルコーズ☆マギカ」に登場した魔法少女たち。MS(マホウショウジョ)力の強さがサーヴァントとしての強さよりも大きく影響する謎時空において繰り広げられる、ポップでキュートで末期戦なイベントだった模様。

 

 

鬼を含む平安組

 

 脳内捏造イベント「響鬼哭酔夢魔京 羅生門」に参戦した鬼と平安京の守りし者。ここで言う「鬼」は酒呑たちのような鬼種ではなく、人が特殊な装備と鍛錬の果てに至った戦闘形態。多分両儀とか七夜的なナニカ。

 あと守りし者の方は今も世界の片隅で人の世を守っている、人力抑止力的な人たちであるとかないとか。

 

 

オルガマリー所長

 

 脳内捏造イベント「オルガマリー所長と15人の眼魂英霊」の結果、所長が手に入れたグレイトフルな霊基。ロビン、エジソン、ビリー、弁慶などなど一部の英霊の声が軒並みギルガメッシュかアマデウスみたいになるという奇怪な現象が起きて、それをどうにかするためにあれやこれや頑張った結果、オルガマリーが15人の英霊の霊基を一度に憑依・使用できるようになった。

 なお、人理修復してもまだ何か足りなかったのか、オルガマリー所長はまだデミ・サーヴァント状態の模様。


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