アーデと夢を語り合ったあの日、わたしは泣いていた。アーデがゼドーを追っていった後、部屋にこもってまた泣いていた。……語った夢の内容も、あの目も、あの手のぬくもりも、成長しているとはいえ、全く同じだったから。わたしは、わたしは……
そう震えていると、部屋の扉がノックされる。涙を拭いて開けると、白い服を着た研究員が立っていた。主任が呼んでいる。と一言だけ述べ、研究員は去っていく。なにか、嫌な予感がした。
呼ばれた部屋に入ると、真っ黒な服を着た研究員が出迎えてきた。「座りなよ」と、わたしを椅子に座らせて、部屋の中央にある大きなテーブルをはさみ座る研究員。やがて、研究員から話が始まる。その内容は、わたしにとって悪夢のような内容だった。
古代都市シャムニールへ赴き、記憶の泡を管理する巫女となる時が来たこと。
その前に研究の成果として、実験体の少年の記憶を開放し経過を見ること。
最後に、シャムニールへ実験体を連れていき、メモリアを守らせる奴隷とすること。
どれもとてもわたしには納得できない仕事ばかりだった。その様子をみて、研究員は笑う。……悔しい。けど、この力にも、研究所にも、運命にも、わたしは逆らうことはできない。それは、痛いほど身に染みてわかっていることだった。だが、折れずに条件を付けくわえる。
「わたしがシャムニールに縛り付けられるのはわかってます。でも……彼は、彼だけは、自由にしてくれませんか。わたしがいなくなれば……」
「下らん」
研究員は一言で却下する。わたしの目の前が、暗くなっていく。
「あんな魔法も使えない棄民に何の価値がある。それならお前のもとで働かせた方がましだろう?それともまた実験台に戻すか?」
唇をかみしめ、わかりましたと答える。これ以上は話の無駄だと思い、部屋から出ようとする。それを、研究員に引き留められる。
「ああ、一つ伝え忘れていた。古代都市シャムニールへの調査隊という名目で一か月後に出発してもらう。メンバーは実験体と適当に二人ほどお前が決めていいぞ。最後の別れになるかもしれんからな。挨拶くらい済ませておけ」
言葉を背に、強く扉を閉める。わっ、と声が聞こえ、その方向を見るとアーデが立っていた。
「大丈夫かい?メモリア」
話しかけられ、また泣きそうになってしまう。今だけは耐えなければ、と、こわばった笑顔でアーデを見つめ返した。
「大丈夫よ、もう遅いから早く寝ましょう?」
「うん、おやすみ」と廊下の先に消えていくアーデその背を見ながら、私はある決意をする
彼を……アーデを、自由にさせるんだ。と