追憶のレディアント外伝 埋もれた記憶   作:烏零

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アーデ:兆候

「……え?僕たちがシャムニールに?」

 

それは突然の出来事だった。あの黒い研究員に呼ばれ部屋に入ったとき、ゼドーとティシカ、メモリアもいた。話を聞くと、この四人で最近不穏な動きを見せている古代都市シャムニールを調査してほしいとのことだ。リーダーにはメモリアが選ばれた。明日には出発しなければいけないらしく、急いで準備することになった。

 

「全く、なんで私までそんな僻地に行かなきゃいけないのよ」

「まーまー、たまにはいいじゃないか」

 

ティシカは文句を言いながら、ゼドーはそんなティシカをなだめながら部屋へ戻っていく。アーデも部屋に戻ろうとすると、メモリアに「ねえ」と声をかけられた

 

「アーデは、……怖くないの?急な遠征だけど……」

 

なにやら、メモリアの様子がおかしい。アーデは「いいや」と首を横に振る

 

「そんなことはないよ。それに、シャムニールについては少し気になってたんだ。本で見てね。」

「そう、なんだ」

 

メモリアを安心させようと明るく返したものの、表情は変わらない。じゃあまた明日、と軽く手を挙げ、自室に戻る。その瞬間、メモリアがアーデに手を伸ばしたのには気が付かなかった。

軽く遠征の荷物をまとめ、シャムニールのことが書かれた書物を手に取る。そこには今も封鎖されているということしか書いて無く、立ち入る者は基本的にいないらしい。しかし、先行隊がシャムニールらしき都市を見つけ、その本格的な調査をアーデ達が行うことになったのだ。魔導書を鞄に詰め込みながら、早くこれに頼らないで魔法が打てるようにならないとな、とアーデは魔法の暗唱練習を行い、寝ることにした。

 

 

次の日の朝早く、アーデ達は準備を終え町の外へ出ていた。シャムニールへの道のりは遠いため、余裕をもって行動するべきとのメモリアからの指令があったからだ。ティシカは朝に弱いのかしきりに欠伸をしながら文句を言っている。黒い研究員と何かを話し終えたメモリアがアーデ達と合流し、シャムニール調査団はシャムニールへ向け出発した。

 

 

 

調査団の旅路そのものは問題なく進んだ。時々魔物がアーデ達を襲ったが、メモリアをかばうようにしてアーデ、ゼドーが主に魔物を撃退していく。アーデは、出発前のメモリアの様子が気になっていたため、なるべくメモリアの前に出てメモリアの負担を減らすようにして戦っていた。

しばらく進んだところで、日が暮れ始めたため野宿を始める。手早くたき火を起こすアーデ。こういった魔法を使わないのは得意だった。携帯食でかるく食事をして、各々が持ってきている魔法で作られた寝袋にくるまり眠る。

 

ふと、夜中に目が覚めるアーデ。周りを見ると、メモリアだけいない。一人でいるのは危険だ、とメモリアを急いで探しに出る。メモリアは、四人で野宿していた場所から少し離れた、開けた草原に一人座っていた。ほっとすると、メモリアの横に座る。

 

「どうしたんだい?早く寝ないと。明日からもまた長い道のりを行かなきゃいけないんだし」

「うん……わかってるの」

 

メモリアの声が震えている。何があったのか、アーデには全く分からなかった。

 

「もう少ししたら眠るから……今は、空を見ていたいな」

 

メモリアの言葉を受け、空を見るアーデ。そこには、見たこともない星空が広がっていた。研究所や昔いた小さな集落では見たことがない、とても美しいものだった。

 

「綺麗、だね」

「ええ」

 

それしか言葉は浮かばない。こうして旅をしていなければ、見られないものだったろう。そんなアーデの心情を察したのか、メモリアが問いかける。

 

「ねえ、アーデ。今でもトレジャーハンターとしていろんな世界を見て回りたい?」

え?うーん」

 

突然の質問、考えるふりはするものの、アーデの答えは決まっている。

 

「そうだね。確かに、今もこんな風にいろんな景色を見てみたい。けど、僕はこの景色を一人で見たとしてもつまらないと感じると思うんだ」

 

――――何もなかった僕に、全てをくれた人。

 

「僕は、これからの景色をメモリアと一緒に見てみたい」

 

――――君がいたから、今の僕がある。

 

「これからは、僕が君を守って見せる」

 

我ながら歯の浮くようなセリフだ。とアーデは思う。しかし、この決意を言葉にしなければいけない気がしていた。まるで、このことを忘れないために、自分の中に刻み込むように、言葉をかみしめていく。その言葉を聞いたメモリアは、誰にも聞こえないような小声で何かを呟いた。アーデはそれに気づかない。

 

「そろそろ寝ましょうか。付き合わせてごめんなさい」

「いいよ。僕が勝手にここに来たんだから」

 

アーデが立ち上がり、野宿している場所へ戻っていく。メモリアは、再び、誰にも聞こえない声で、呟いた。

 

「ごめんなさい。そして……さよなら。アーデ」

 

メモリアも、決意を口にして、アーデの後ろをついていった。

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