とある魔術の間桐雁夜 作:雄大
今回、私による独自解釈と独自設定がふんだんに取り込まれています。
俺が
その間、俺はイギリス清教に入信している信徒を含めたネセサリウスの先輩方に挨拶も済ませた。一癖も二癖もある人ばかりだったが決して悪い人たちではなかった。
そして今日、俺は寮の近くにある図書館で神裂から魔術の基本を教わっていた。といっても実践するのは後日で今日は座学のみということになっていた。
「では、まず始めに魔術、そして魔術師という物が何なのか、そこから話ましょう」
「はい。よろしく頼みますよ、師匠」
「むう…… 雁夜、私のことは呼びすてで神裂と呼ぶように頼んだではないですか。突然師匠などと……」
「はは、わかってるよ。冗談だって。じゃあ改めて頼むよ、神裂」
俺は最初こそ、教わる立場として神裂さんと、さん付けで呼び接していた。しかし歳上相手にさん付けで、それも敬語で呼ばれるのはむず痒いから止めて欲しいと神裂から言われたため今では砕けた感じで話すようにしていた。
「全く。貴方という人は。では気を取り直して始めるとしましょう。まず魔術は簡単に言ってしまえば奇跡と神秘を再現した術の総称です。これは雁夜も理解していますね」
「ああ。魔術の修行はしていなかったが、ある程度の知識は幼少の頃から覚えさせられていた」
「では、貴方は何故、魔術師が魔術を使用しているのかはわかりますか」
「それは根源へ至るためだろ? 魔術師の連中はそればっかに気をとられてるし」
「はい。確かにその通りとも言えます。ですが全ての魔術師がそうとは限りません。例えば私のように」
「あ。そうか」
確かに、言われてみればそうだ。神裂が魔術を扱う理由は他者を救うため。そして俺が魔術を会得しようとしている理由は力を手に入れるためだ。それによく考えてみればあの臓現も根源よりも不老不死を優先していた。
「魔術を得た理由。それは人によって様々であり千差万別です。しかしそれ故に魔術師たちが魔術を使う理由にはある共通点があります。それは『まっとうな手段では叶わない願い』を持つが故に、魔術という異常な手段に頼った者達だということです。ただ……」
「ただ?」
「これはあくまでも私や貴方のような者の見解と意見であり、根源を求める彼らとは考え方が違います。例えば時計塔にいる魔術師たちがそうですが、彼らは魔術は全て根源に至るため。ただそれだけの為にある手段であるとしています。そして根源に至るという本来ならばあり得ないことに挑む者こそが魔術師だと考えているのです。故に彼らは根源の事など興味もない私たちの事を魔術師ではなく侮蔑し軽蔑される者の総称として魔術使いと呼んでいます」
神裂の説明に俺はあからさまに眉を寄せた。
俺はともかく神裂のような人が軽蔑される人間だと? そんな事はあり得ない。むしろ根源のためだと一般人を平気で実験材料にする奴等こそ軽蔑されるべき存在だ。
俺の態度から内心を察したのだろう。神裂は苦笑いを浮かべながら話を続けた。
「貴方からしてみればあまり気持ちの言い話ではないでしょう。実際にイギリス清教の中にも時計塔の魔術師を嫌う者たちはいます。その価値観の違いのため現在、私たちは清教派と魔術派にわかれてしまいました」
これは既に聞いたことだが、現在英国では『王室派』『騎士派』『清教派』『魔術派』と四つの派閥に大きく分かれている。これに加えイングランドやスコットランドといった四つの地方文化が存在する酷く複雑な国家になってしまっていた。
「その結果、魔術派である時計塔の者たちはあくまでも神秘の秘匿を最優先し、私たち清教派に位置するネセサリウスは法を犯した魔術師を取り締まる魔術界の警察のような役割を仰せつかうようになりました。そのせいで関係性は悪化するばかりですが…… 致しかたがないことでしょう。時計塔の魔術師は神秘さえ秘匿できれば殺人といった行為には目を瞑りますから」
そう語る神裂の顔は何処か寂しそうだった。同じ魔術師でありながら、その方向性と価値観はまるで正反対。優しい彼女のことだ。本当ならば共に手を取り合い協力しあっていきたいのだろう。
「まあ、魔術師だって色んな奴がいる。神裂みたいな奴が頑張っていけばきっと今の現状も変わるはずさ」
「それもそうですね……! 雁夜の言う通りです。ここで私が諦めたらそこで全て終わってしまいます。もっと頑張らねば」
魔術師を庇護するようであまり気は進まないが神裂がこれで少しでも励まされるのであれば構わない。
「では話を続けましょう。次に魔術ですが、これは大きく二つの種類に分けられます。それが信仰魔術と真正魔術です。真正魔術というのは例外もありますが、主に根源を求める魔術師が会得する魔術です。そして信仰魔術は私たちのように根源に興味がない者が身に付ける魔術です」
「ん? 何が違うんだ?」
「この二つの違いは魔術を使うのに魔術回路を使っているか否かです。根源を求める魔術師は魔術回路を開き、私を始めとした魔術使いの殆どが魔術回路なしで魔術を使用します」
「は!? ちょっ、ちょっと待て! 魔術回路なしで魔術が使えるのか?」
俺は驚きを隠せず思わず声を張り上げた。
魔術回路は言ってしまえば魔術師としての力の代名詞であり証だ。魔術回路がなければ魔術師にはなれないし魔術の家を継ぐことができない。その為に本来家を継ぐ立場にある兄を差し置き次男である俺が後継ぎとして臓現に魔術の修行を施されそうになっていた。兄はその魔術回路がなかったため俺が選ばれたのだ。
「これについては初耳のようですね。では詳しく話たいと思います。まずは真正魔術から説明しましょう。魔術回路を必要とするのが真正魔術です。これにはメリットとデメリットが存在します。メリットは魔術を使っていくにつれ根源に至れる可能性があるということです」
「信仰魔術じゃ、根源には至れないのか」
「はい。その為、時計塔に所属する魔術師たちは全員、魔術回路を持ち真正魔術を使用します。デメリットは、貴方にもわかる通り魔術回路がなければ絶対に使えないということでしょう。故に真正魔術を絶対とする魔術の名家で魔術回路を持たない子が生まれれば才能のない無能の子として扱われます」
「無能の…… 子か」
ふと兄の顔が脳裏を過った。
兄は魔術回路を持たないが故に臓現から冷たい態度を取られていた。まあ、俺の家の場合、寧ろ持たない方が幸せだと俺も兄も思っていたが。
「次に信仰魔術です。これのメリットは先程も言った通り魔術回路なしで魔術を扱えることです。真正魔術は魔術回路を通して魔力を生成しますが信仰魔術は直接自分の中にある生命力を魔力に変換します。そのためある一部を除き誰でも魔術を使うことができるのです。しかしデメリットもあります。それは真正魔術で説明していた根源に信仰魔術では至れないということです」
「どうしてだ? どっちも魔術であるのには変わらないだろ」
「そうですね…… それを知るにはまず根源が何なのかを知る必要がありますね。根源とは世界のあらゆる事象の出発点となったモノであり、始まりの大元、全ての原因とも言われています。それ故に根源に至る事ができれば世界の全てを導きだすことすら可能とされています」
つまり世界の七不思議なんかも全部わかってしまうってことか。なんだか凄い話になってきた。
「根源に至る為の方法。根源という川から流れる支流を辿ることによって至れると考えられています。そのためには神秘、つまり魔術を学ぶことでいつしか到達することができるーー と時計塔の魔術師たちは信じているのです」
「なんか含みのある言い方だな。真正魔術さえ学んでいけばいつかは根源に至れるんじゃないのか?」
「いえ実を言うと確証はないんです。何せ今の今まで根源に至れた魔術師はいないのですから」
まるで雲を掴むような話だ。そんな物の為に犠牲になる人を考えるとあまりにもバカバカしい。
「では何故、根源に至るのに信仰ではなく真正魔術でなければいけないのか。それは信仰魔術の原理に理由があるのです。まず、信仰魔術は異世界の法則を無理矢理現世に適用させ、様々な超自然現象を引き起しているとされています。この場で言う異世界とはわかりやすく言うと宗教概念のことです。十字教を始めとした宗教とそれに付随する神話で語られる地獄や天国といった世界の設定。これらを無理矢理現世に引っ張りだすことにより魔術を引き起こすことができるようになるのです」
知れば知るほどに魔術の異常性が伝わってくるようだった。
俺は唖然とするも神裂の話を黙って聞き続ける。
「しかしその方法ではどうやっても根源に至る事はできない。それは根源が人が誕生する以前に生じたモノであるのに対し宗教概念によって引き出される異世界の法則はあくまでも人間の意識により組み立て上げられたモノだからです。後から作られた信仰魔術では人間の理解の先を越えた物であり始まりである根源には決して到達することができないわけです」
「つまり要約すると信仰魔術は魔術回路を開かなくとも魔術を使えるが異世界の法則を利用する信仰魔術じゃ根源には至れない。だから魔術師たちは真正魔術を使うってことか」
「その通りです。ちなみに魔術使いと呼ばれる私たちが生まれた理由は才能のある者、この場合の魔術回路を持った魔術師たちと対等になるためだと言われています。才能の無き者が異常な手段を取ってでも才能ある者に追いつく為に信仰魔術は作られたのです」
「なるほどなー。やっぱ魔術も奥が深いもんなんだな」
「ええ。ちなみに信仰魔術は宗教概念を利用していることから聖堂教会でも洗礼詠唱と呼ばれる強力な魔術を使っています。ただ、彼らの宗教理念から洗礼詠唱を魔術とは認めていませんがね」
その後も俺は神裂から魔術についての知識を教わり続けた。ルーン魔術、死霊魔術、ガンドと戦い方や俺にあった魔術が何なのか。
あれほど嫌っていたはずの魔術でありながら、この時の俺は今迄にない程にこの時が有意義な時間に思えたのだった。
とあるシリーズとfateの設定をうまく矛盾のないようにしました。正直、これで大丈夫かと不安ですが今後も何かしらの矛盾が出ないよう気をつけたいと思います。
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