灼眼のシャナ Ⅳ(リターン) 作:無明星
『灼眼のシャナ Ⅳ(リターン)』更新してから1年が経ちました。意外と早い感じもしています。
さあ、新年一発目の更新です。それもあり張り切って書き上げたら、いつもの倍くらいになりました。
それでは本編に参ります。
影獣十四神、その謎の一団の一角イルフィス、今まで戦ってきた影──イルフィスのいう影獣──とは違い独特の覇気を放っている。見た目は人型とほぼ一致した影とは異なり、大狼人と獣に相応しい姿をしている。
それに加え、言語を話すことができるようだ。ならば、知能もより優れているのであろう。そう考える悠二たちは意識を高めイルフィスを注意深く捉える。
対してイルフィスは、緊張感を全く感じさせないが、代わりに計り知れないほどの圧迫感を放つ。
痺れを切らし先に動いたのはカトラスだ。彼は刀を大きく振りかぶり猛スピードで突進する。悠二たちもそれに追随する。
「くたばれ!!」
カトラスが大きな叫び声と共に刀を勢いよく振り下ろす。刃はイルフィスの頭を捉えた。しかし、真っ二つに切られる様子はない。
イルフィスは額の寸前で刀身を握っていたのだ。刃は指を切り落とすどころか、傷1つつけることができないままピクリともしなくなってしまった。イルフィスが腕力と握力は想像以上に高い。
その剛力がカトラスの左頬に激突した。たちまちカトラスは吹き飛ばされ瓦礫の上を痛々しい音をたて滑っていく。
シャナも同様に攻撃をいとも容易く防がれると右脇腹に高速で1回転してきた左足が直撃。10mほど飛ばされてしまう。
「シャナ!うぉぉぉ!」
「甘いな」
大きく
「おらぁぁぁ!!」
イルフィスが止めを指す直前にルギーが爆音を放ち強力な一撃を打ち込む。
「んぐっ!?」
イルフィスは1m後ろまで押し飛ばされた。
「チッ、どんだけ頑丈なんだ。他のやつは10mくらい吹き飛ぶぜ」
「あのような雑魚と一緒にしないでもらいたいな。俺は影獣を総統する影獣十四神の第9柱だぞ、それなりの力は存在する」
「第9柱?」
ルギーが聞き返すと悠二たちにも聞こえるくらいの声で説明し始めた。
「俺たち影獣十四神はそれぞれ『ランク』と『クラス』が与えられる。『ランク』はさっきの第○柱と小さいほど上位に位置するのさ」
ということはイルフィスは影獣十四神の中で9番目に位置するということになる。
「『クラス』はその影獣を表すもの、言わば名称ということだ。影獣十四神、第9柱、『ラドン』のイルフィス!それは俺のことだ」
そういうと、イルフィスの姿が徐々に変化していく。毛が消え硬く艶やかな鱗に、鉤爪は更に磨きがかり、体は倍以上に巨大化し、背には大きな翼、牙は鋭さを増し、その姿は伝承の幻獣、龍そのものだ。
「我が『クラス』にかけて、貴様らの悪事を見過ごす訳にはいかんな」
大きな3つの顎はそれぞれ規則的に上下し悠二たちを狙う。迂闊に動けば今度こそ、死ぬだろう。緊張感の針積めたなか、イルフィスが問いかけた。
「冥土に行く前に1つ聞こう。グラクタスを殺ったのは貴様らか?」
「グラクタス?誰だ?」
「大斧振り回してたあの怪力モンスターだよ、貴様らが殺ったのではないのか?」
悠二たちがドイツに来て、最初に訪れた
「君が言っている影獣は僕たちが倒した影獣と多分同じだと思う」
「……やはり貴様らだったか」
さっきまでの圧迫感を放っていた姿が少し寂しさに変っていた。しかし、一瞬で元の覇気を取り戻す。
「あいつを倒したことは誉めてやろう。だがあいつは第14柱、『ミノタウロス』、影獣十四神の中で一番下に位置するものだ。そいつより上の奴はざらにいるってことだ。俺を含めてだ」
それを聞いた悠二は愕然とする。あれだけ苦労して倒した奴の上に13体もいるのだ。その事実にはシャナでさえも驚きを隠せないほどだ。
「あれが他にもいるってのかよ、無茶苦茶だぜ……」
どうやらカトラスも同様のようだ。そして、追い打ちをかけるようにイルフィスは喋り出す。
「そうだ、貴様らが苦労して倒したあいつでさえ、今回のために特別に影獣十四神の1柱に加わったのだ。他にもう1柱も臨時で加わっているが、それ以外の十二柱の実力は本物だ。貴様らでは手も足も出まい」
「それはどうかな?」
割って入ってきたのはルギーだ。
「俺はその『ミノタウロス』は見たこともねぇし、どれくらい強ぇのかも知らねぇが、少なくとも簡単にやられるつもりはねぇし、そう負けるとも思ってねぇよ」
「ほう?貴様のような男は今までやってきたつもりだが、そやつら同じではあるまいな?」
その問いかけを聞いたルギーはフッと鼻をならす。
「そりゃ、試してみてばすぐわかる……だろ!」
ルギーは轟音と共に飛び出しイルフィスの顎を捉える。その時の衝撃は辺りの瓦礫を舞い上げ、大地を裂くようなものだ。流石のイルフィスもこれには堪えきれない。ルギーの10倍近くある巨体は宙に浮き頭は胴体より後ろにまで飛んだ。
その頭は地に着くと激しい音と衝撃を生み出す。とてつもなく痛そうな音だ。瓦礫に沈んだ巨体はすぐに起き上がる。
「フッ、やってくれる。この姿の我を吹き飛ばしたのは貴様が初めてだ。これは久しく潰しがいのある奴に出会えたものだ」
「そりゃどぉも。なら、もう一発くらうか!」
「面白い!受けて立とう!」
ルギーは再びイルフィスの頭を目掛けて一直線に飛んでいく。あと一瞬で右腕が届くというところで薄く透明な壁に阻まれた。ドラゴンをも吹き飛ばした衝撃はきれいさっぱり消滅していた。これには驚きを隠せないようだ。しかしそれもつかの間、イルフィスは間髪いれずルギーに頭突きする。隕石が直撃する威力がルギーを押し返し、瓦礫の地面に突き落とす。
「これが我の力だ。過去、この障壁は破った者はない。貴様に破れるか?」
「上等だ!俺がぶち破る前に潰れんじゃねぇぞ!」
再びイルフィスに光の如き速さで飛んでいく。何度も仕掛けるが障壁に阻まれ、その都度強撃をくらい叩き落とされる。しかし、ルギーは果敢に挑み続ける。
見かねたシャナは刀を構えるが動こうとはしない。攻撃が通らない以上、無謀に飛び込むのは得策ではないと考えているのだろう。そこへルギーの言葉が飛んでくる。
「こいつは俺が倒す。余計なちょっかいは遠慮してもらおうか」
少々腹立たしくはあるがシャナは何も言わず首を縦に振る。
「いいのか?別に2VS1でも構わんぞ」
「いや、1VS1だ」
そう言いきるルギーを見て、イルフィスは笑い出す。
「随分安く見られたものだな。しかしその割には、我が守りを一度たりと越えられておらんが?」
「心配せずとも、すぐぶち抜いてやるよ」
そう言うと、ルギーはまた飛び出していった。イルフィスの頭を目掛けて突進するも、あと僅かのところで左腕は障壁に阻まれてしまう。そして、頭突きの体勢をとり、頭を大きく後ろに引く。
「残念だったな。くたばりな!」
「そうはいかない……さ!」
頭突きが当たる寸前、ルギーが光速の如き速さの剛拳をイルフィスの額に打ち込んだ。遂にイルフィスに攻撃が通ったのだ。空から殴り落とされた衝撃で轟音をたて塵が舞う。
地面に叩きつけられたイルフィスは砂ぼこりと瓦礫を巻き上げ飛翔する。宙に舞った塵が飛翔するイルフィスの体に纏わりつくように垂直に伸びる。
「驚いた。まさか
「いずれ、その口も叩き割ってやるよ。そんときになって後悔するなよ!」
「笑止!この我を後悔させられようものなら、我が守りを破るのだな。一度当てた程度で浮かれていられるほど、我もこの守りもヤワではないぞ?」
最早、次元の違う戦闘の予兆とも言える域のレベルだ。少なくも、悠二はそう思った。
その時、突如2人の間に1つの影が浮かんだ。戦闘体勢だった2人はその緊張感だけを残し自然体になる。
2人の間に現れた影はゆっくりと、落ち着きのある声で喋り始める。
「イルフィス殿、主殿より帰還の指示が下されました。早急に、本部にお戻りください」
「すぐだと!?」
「はい、本作戦の第3フェイズに移行とのことです」
それをきいた瞬間、一気に固まった。
「そうか……命拾いしたな、我らがまともにやり合えばお前らは確実に消し飛んでいた」
悠二たちに向け、言い放つ。視線を戻すと、
「そして貴様、名を聞こう」
「ルギー・クランクリット、〈激昂の衝拳〉とも呼ばれている」
「ルギー……覚えておこう!我が好敵手よ、再戦の時を楽しみにしているぞ!」
そう言い残し、巨龍は遥か上空へと姿を消した。
ルギーはシャナたちを連れ、山小屋へと向かった。その後、あの地には瓦礫の海と静けさだけが取り残されていた。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
今回で1章は終了となります。次回からは2章に入ります。今後の展開もぜひ楽しみに待っていてもらえたら嬉しいです。
次回作は2/20を予定しております。次回もお楽しみに!そして、今年もよろしくお願いいたします。