灼眼のシャナ Ⅳ(リターン) 作:無明星
以前お話した夏限定版の作品ですが、忙しくて出来なかったのともう少しメンバーがほしいという理由でボツになりました。楽しみにしてくださっていた方々には申し訳ありません。来年は出来たらいいなと思っていますので、どうかご理解いただきたい所存です。
では、今作をお楽しみください。
エスターが歌い始め、山積みになっていた人たちがゾンビのような動きで、ルギーたちに襲いかかる。
「どうすんだよ!耳を塞いだままじゃまともに戦えねぇぞ」
カトラスの言葉は他の2人には 聞こえないが、同じことを思っていたところだろう。
攻撃がノロノロなために回避はできるが、それも時間の問題。数が増えてしまえば、万事休すだ。
「くッ……」
突如、エスターがよろめき、腕を押さえた。その瞬間、襲ってきた人たちは、糸が切れた操り人形のようにバタバタ倒れていった。
「なんだ?歌がやんだのか?」
ルギーは耳から手を離し、様子を確認する。レベッカとカトラスも同じく辺りを見回す。
すると、ケータイのベルが鳴り出した。ルギーのものだ。胸ポケットから取り出し、2つ折りのケータイをパチンと開く。
「俺だ。どうした?」
『援護に来た。って言いたいとこだけど、カノちゃんが撤退させるよう言われたからさぁ。そんで、私がバックアップに来たわけ』
「わかった、すぐに下がる。感謝するぞ」
『へっ、いいってのよ。早く戻ってきなよ』
ルギーはぃと答え、電話を切る。そして、間髪入れず2人に伝える。
「撤退だ。この隙に逃げきるぞ!」
「え?でも、今こそ狙い時じゃ?」
「指示が出てるらしいから、それは仕方ない。急ぐぞ」
カトラスの気持ちはルギーにもわかるが、それ以上に危険な感じがしたのだろう。3人は来た道を戻る。
「……逃げられると思わないことね」
5kmほど後退したルギーたちは、救援に来た者と合流する。
「いたいた。ルギ~、無事で良かったよぉ!」
「すまないな、野々宮。助かったぜ」
「いいのよ。カノちゃんも、こっち向かってるらしいよ」
「わかった。ありがとな」
レベッカはルギーに話しかける。
「なぁなぁルギーさんよ、その人は?」
「あぁ。こいつは野々宮佐代、さっき救ってくれたやつだ」
「よろしく!」
佐代は2本立てた指を額に当てウインクして挨拶する。
「お転婆なとこはあるが、狙撃の方は敏腕だ」
「へぇ~、俺はレベッカ。爆撃なら俺に任せろだ!」
「自己紹介は済んだかしら?」
声の方を振り向くと、エスターがいた。
「おまッ、いつからいた!?」
「ん~、つきいさっきかなぁ」
のんびりとした声で答えるエスターに、一同は警戒心を高める。
「あら、そんなに睨まないでよぉ。ん?そこの子はさっきはいなかったわよね?」
佐代のことを指しているのだろう。そう思った彼女は自分を指差し首をかしげる。
「そうそう。もしかしなくても、私を撃った子でしょ?」
「うっ、知ってたのか……」
「ふふ、さあどうかしら」
笑みのある声とは裏腹に、よどんだ空気が漂う。
「でも、ただやられたままで終わらないけど」
次に出てきた言葉は、今までのものとは比べ物にならないくらいの殺気が詰まっていた。
「みんな気をつけて!あの女の歌声に魅了されたら、虜にされちゃうから!」
佐代が慌てて伝える。それを聞き、全員耳を塞ぐ。
「あら、よく知ってるじゃない。でも、私は歌のエキスパートよ。何も魅了するだけじゃないこと教えてあげる」
そう言うと、息を吸い込み叫ぶ。
「うっ、ぐがぁぁ!」
「耳が、裂けそう……」
「なに、が、起きてる、んだ?」
「これは……重低音か」
「せいか~い」
エスターは指をならしルギーを指す。
「いくら耳を塞いでも、振動数の少ない低音はそれを掻い潜れるのよ。あとは、それで直接壊しに行くだけ」
そして、攻撃を再開する。これには、為す術がない。
ドォォン!
突如、凄まじい音と光が辺りを包んだ。エスターは叫びをやめ、耳を押さえた。
「うぅ、炸裂音?何が起きたの……」
彼女は苦しそうにしている。何が起きたのかルギーたちにもよくわからなかった。そこへ1本の電話。
「俺だ」
『すぐに下がて、あとは私がやる』
そう言って、ボルトアクションする音が伝わってきた。
「離れろ!」
ルギーが慌てて叫ぶと、みんなエスターから遠退いた。電話からは引き金を絞る音と共に、ひと言聞こえた。
『チェックメイト』
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今回初登場のキャラについては次回辺りで話していこうと思いますので、そこはもう少しお待ちください。
次回は10/20投稿予定です。次回も楽しみにしていてください。