結月ゆかりがISの世界で仮面ライダーになるようです。 作:海棠
なぜか女の子なのに変身してしまった結月ゆかり。見事に化け物を屠った彼女はゼクターを返還して猛スピードで帰って行ったのだった。
「はぁ・・・、どうしましょう・・・」
私はため息をついてぼやきながら植物にぞうさんじょうろで水やりをしていた。
あの後走って帰ってきたのはよかったのですが、帰りが遅かったのでマキさんとずん子さんから怒られてしまいました。私は黙ってそれを受け入れました。二人が心配して怒ったのは理解できますし、何よりさっきの出来事なんか信じてくれとなんか言えませんしね。あまりにもばかばかしい話ですしおすし。
ですがそんなことは私のこんなため息にはつながる原因にもなりません。私のため息の原因は他にあるのです。
「鞄、あそこに置いて行っちゃいました・・・」
どうしましょう、あの中に財布とか学生手帳とかいろいろ入ってるのに・・・。こうなったら夜二人が寝静まった後に窓から脱出して取りに行くしか方法がなさそうです。
「今日はなんでこんなについてないんでしょうか・・・」
私は少し泣きそうに泣きそうになりましたがぐっとこらえて水やりを続行します。こんなとこで泣いても仕方ありません!
「アンタが結月ゆかりだな?」
「ひゅい?!!」
急に誰かに話しかけられました。その声の方を向いてみるとそこにはネクタイをきちんと締めた男の人がいました。
「だ、誰ですか?警察呼びますよ?」
「あなたがハーゼに変身した子ですね?」
「な、なんのことでしょうか?」
すると男の人は鞄を突き出してきました。
「ああ!あの時おいてった私のカバン!」
「何の時です?」
「化け物に追いかけられた時の・・・!・・・あ」
「・・・」
「・・・」
「「・・・」」
気まずい雰囲気がその場を支配しました。私たちは気まずそうに黙りこくってしまいます。
「・・・す」
「?」
「すいませんでしたぁああああああ!!!!」
私は思わずその場に土下座してしまいました。いや、ホントに勘弁してくださいお願いします。
~☆~
「え~と、つまり・・・」
「ゆかりちゃんが本来男の人しか使えないはずのM.R.Sを動かしてしまった、ということですか?」
「ええ。こちらがその記録映像です」
そう言われてパソコンの画面をこちらに向けてきた。そこには変身を解除する私の姿が映っていた。・・・ばっちり撮られてるじゃないですかやだー。
「で、どうしたらいいんでしょうか?」
「実を言うと、あなたたちのことを保護しようとこちらでは動いてるんですよ。」
「「「へ?」」」
つまり・・・。
「え?!つまり私たちがZECTの保護下に置かれるということですか?!!」
「ええ、そうなります」
「な、なんでですか?」
ずん子さんが驚きと疑問が混じったような顔で質問する。
「理由を説明しましょう。
まず一つ目。女性でM.R.Sを使えるとなるとどこかの研究機関に君の身柄を渡せと勧告してくるんです。今はまだですがね。それが起こる前に事前にこちらで引き取ろうというわけなんです。」
「だったら、マキさんやずん子さんも保護してもらう理由にはならないんじゃないんですか?」
「・・・なるんですよ、それが。それが今から話す二つ目にあたることなんです。
二つ目。君だけを保護したら次に狙われるのは弦巻さんと東北さんなんですよ。」
「なんでですか?!」
「二人をダシにするんです。君の身柄を渡させるための、ね」
「そ、そんな・・・」
「結月ちゃん、君はまだ子供だからわからないかもしれないけど、人間って生き物は目的のためならどこまでも汚くなれるんです。・・・私も今まで戦ってきましたが、人間の汚さというのはかなり見てきましたから」
「・・・だったら」
「?」
「だったらなんで戦えるんですか?!」
私はつい叫んでしまった。自分がM.R.Sを使えるのは目の前にいる人のせいじゃないのに。慌てて止めようとするが口は独自の意思を持ったかのように叫び続けた。
「そんなに人間が汚いんだったら、なんで人のために戦うんですか?!!嫌ならやめればいいじゃないですか!!なんで私がそんなにつらいことをしなきゃいけないんですか!!」
私の目からぽろぽろと涙がこぼれ堕ち始めました。・・・ああ、目の前の人は何も悪くないのに。
「・・・それが私の信念だから、ですかね?」
それでも目の前の男の人は少し困ったように笑いながら言いました。
「私は下っ端の社員で友人にもよくバカとか言われることは多いですが、私はそれでもいいと思ってるんです。私が正しいと言えることを私はやっている。今はそれで十分なんです。それがたまたま"人を守る"だった。ただそれだけでいいんですよ。少なくとも私にとっては、ですがね」
「・・・」
「結月さん、あなたに戦えとは言いません。ですが、いつか戦わなくちゃいけなくなります。・・・その時はめげずに頑張ってほしいんです」
「・・・決めました、私」
私は立ち上がった。
~☆~
「・・・決めました、私」
その時の彼女の目には力強い炎がともっているようにその場にいた全員が感じた。
「戦います、私」
「「へ?!」」
「だめだ!」
男が真剣な顔で忠告した。
「君はまだ中学1年だぞ?! 君にはまだ早すぎる! それに君にはまだ社会の裏の汚さなんて知ってほしくない! いや、知るべきじゃない!」
「そうだよゆかりちゃん! ゆかりちゃんが無理することないよ!」「(コクコク)」
男の発言にマキとずん子は心から同意していた。自分たちのかわいい結月ゆかりに社会の裏なんて知ってほしくなかったのだ。
彼女たちには男が言う社会の裏がどれだけ汚いのかは知らない。しかし、知ったらろくな目に合わないということだけはわかった。
「私がわがままを言って戦わなかった分、誰かが泣くぐらいだったら!」
彼女は3人の願いを受け入れなかった。いや、受け入れることはできたかもしれない。しかし、彼女の心の奥底にあった信念はそれを良しとしなかった。
「私が無理をします!」
「だからそれはだめだ! 君は二度とまともな人生を送れなくなるんだぞ?!!」
「それでも! 誰かが泣くぐらいだったら!」
「私がその分戦います! そして笑顔にしてみせます!」
幸か不幸か。彼女は小さいころから正義感がすさまじく強かった。ほかの誰よりも悪いことを良しとしなかった。そして今の彼女の叫びはそんな性格の代名詞でもあった。
それが彼女のその後の人生を大きく狂わすことも知らずに・・・。
続く