Girls und Panzer ~Falling down Anchovy~ 作:ROGOSS
アンチョビがもし、自分のなしたことに満足してなく、やり直しの機会を得たらどうなるのか?と思い書いています。
アンチョビが闇落ちしますので、苦手な方はブラウザバックお願いします。
試合に負ければ悔しいし、負けても笑顔を浮かべてチームメイトを励まし続けるのだって限界がある。それでも私はやめない。私の使命は今いる学校を強くすること。そのために多くの条件をのんでもらい、スカウトしてもらったのだから。
私は今日もこう呟く。
「アンツィオは弱くない。いや、強い」
〇 〇 〇
「姐さん、姐さん!」
激しく体を揺すられ、アンチョビは眠りの世界より覚醒した。
まだ僅かに寝ぼけいていることが自分でもわかるが、後輩達の手前、シャキッとしなければならない。アンチョビは除き窓から、肺一杯に新鮮な空気を吸い込み完全に目を覚ました。
「あぁ……どうやら寝てしまっていたようだな」
「おはようございます、
「そうだな。すまない、運転を任せているのに」
「いいっスよ。今日は姐さんの晴れ舞台なわけだったし。疲れてたんスよね」
ペパロニがアンチョビの顔を見ることなく言う。
アンチョビは自分の胸に付けられている桜の花びらを見ると、思わず涙を流したくなる衝動に襲われた。
今日はアンツィオ高校の卒業式。アンツィオ高校戦車道を立て直し、残念な性能の戦車をフル活用して、一回戦突破という偉業を成し遂げたアンチョビのアンツィオ高校で過ごす最後の日だった。
カルパッチョもペパロニも口には出さないが何を考えているかを、アンチョビは手に取るようにわかった。
「いやー、卒業証書授与の時に、コケちゃうあたりが姐さんらしいっスよね」
「なんだそれはー!」
「落ち着いてください、
「うぅ……何たる不覚」
ペパロニが運転するCV33が停車する。
豆タンクに定員オーバーの3人で乗るなど常識外のことだが、何も今日が初めてのわけではなかった。
ハッチから顔を出し、改めて胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込む。ゆっくりとあたりの風景を見回しながら、今日で最後かなどというセンチメンタルな感傷に浸った。
「
「早く行かないと、何にも残ってないかもしれないっスよ」
「おいおい……今日は私が主役だろ? まったく、アンツィオは素直すぎる」
その素直さにどれだけ泣かされ、またどれだけ慰められてきたことか。両親の反対を押し切ってアンツィオ高校へとやってきた手前、結果を残さねばならなかった。最終的には不甲斐ない結果しか残せなかったが、アンツィオへやってきて後悔はしてない、とアンチョビは自分に言い聞かせていた。本当ならば、もっと上位へと行き勝つ喜びを共有したかったが、今となっては後の祭りだ。何をしても言っても意味はない。アンツィオへ来たことへの後悔はないが、アンツィオでしてきたことでの後悔はあった。
「おや……安斎さん」
突然声をかけられ、アンチョビはため息をついた。誰なのか想像することは容易だった。その特徴的なハスキーボイスを聞き間違えるはずがない。
「どうしたんだ、クアトロ。とっくに祝賀会に行っていると思っていたぞ」
「私は誰さん達とは違って食い意地を張るつもりはないからな」
クアトロこと
彼女も三年であり今日でアンツィオを去る身だった。彼女はアンツィオの中でも珍しく、勝ちにこだわる性分だ。それゆえに、負けても仕方がないなどという煮え切らない態度をとるアンチョビとは、しばしばぶつかることがあった。
「結局、何も変えられなかったじゃあないですか、隊長。勝ちに誰よりも拘っていたのはアンタのほうだろ?」
「なんだと?」
「仲良しこよしで勝てるほど戦車道は甘くない。一番わかっているはずなのに残念だよ。アンタは無能だった、それをこの三年で証明したわけだ。まったく、とんだ茶番に付き合わされたよ」
「クアトロ! 姐さんに今、なんて言った!」
「待て、ペパロニ!」
アンチョビの静止を振り切り、ペパロニがクアトロへと駆け出していく。
犬猿の仲の二人が喧嘩を始めたことで、先程までの感傷に浸っていた気持ちは既にどこかへ消えていた。今はただ、これ以上騒ぎを大きくせずに収めることしか頭にない。余計な騒動のお陰で、戦車道の活動が停止されなどしたら笑い話にもならない。
「やめろ二人共っ!」
「
ぺパロニを追って車内から飛び出したが、なぜかカルパッチョの悲痛な叫び声が聞こえる。
何をそんなに焦ったように……振り返り、口にしようとしたアンチョビの体に衝撃が走った。今まで体験したことのないような、強烈な圧力がかかる。視線を左に向けると驚いた顔をしたトラックの運転手の顔が目に入った。
あぁ、私は今、不注意にも車道に飛び出したあまりにトラックに轢かれているのか。これで私の人生も終わりか。
不思議とこれから起きることに対しての恐怖は一切なかった。しいて言うならば、何も残すことのできなかった自分を恥ずかしいと思うだけであった。
数秒後、潰れたトマトのように道路へ叩きつけられたアンチョビの姿を見た誰もが悲鳴を上げた。
〇 〇 〇
「ん……?」
記憶が混濁している。甘い香りがする。
「ここは……?」
目はしっかり開いたはずだ。だが、広がっていく空間はただの闇であった。
恐怖心はない。自分はなぜここにいるのかはわからないが、ここにいるべくしているのだという強い確信があった。
「まるで死んだ後の世界みたいだな」
そう小さくつぶやくと、目の前にボウッと白い影が現れた。ハッキリと姿を捉えることができないが、特徴的なツインテールとマントのようなものを羽織っていることをかろうじて認識することができる。
「誰だ?」
『私が誰なのかはどうでもいい』
声は聞こえない。直接脳内に相手の言わんとしていることが文字として流れ込んでくる。
『後悔があるだろう?』
「あぁ……そうだな」
『やり直させてやろう』
「やり直す? どうやって」
『取引さ。お前の一番大切なものをもらう代わりに、やり直すことのできるチャンスを与える、対等だろ?』
「一番大切なもの……それはいったい?」
『やればわかる』
アンチョビの返事を聞かずに影は何かをブツブツと唱え始めた。世界が歪んでいく。黒の世界が赤や白、黄色など様々なグラデーションに塗られてはすぐに塗り替えられる。
『さあ、行くんだ。私は私の大切なものを取り戻したから』
アンチョビの意識がスッと消えるまでに数秒とかかることはなかった。