Girls und Panzer ~Falling down Anchovy~   作:ROGOSS

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記念すべき2話目となります。
性格改変ものなので、というか闇落ち(?)なのでまったくの別人じゃないか!と思われるかもしれませんが、ご容赦ください。


Change the girl

統帥(ドゥーチェ)! 統帥(ドゥーチェ)!」

「ん……」

「起きてください、統帥(ドゥーチェ)!」

 

 体を激しく揺すられ、アンチョビは目を覚ました。慣れ親しんだ振動が体全体に伝わってくる。アンチョビを起こしたのは、幾度となく共に戦場を駆け巡ったCV33のドライバーだった。まだ2年生だが、ペパロニにも劣らないドライビングテクニックを持っていることで、アンチョビ自らが、隊長車の操縦手へと指名したのだった。

 

「あぁ……すまない、カプレーゼ」

「良かった……統帥(ドゥーチェ)、状況は最悪です。このままでは押し切られてしまいます」

「……は?」

「ですから、状況は最悪です。先程、先遣隊として派遣したCV33部隊が撃破されました。後方に待機させているセモベンテのことも気がかりです」

「ちょ、ちょっと待て! 今は……何をしているんだ?」

「……寝ぼけているのですが、統帥(ドゥーチェ)? 今は兼ねてより進められてきたプラウダ高校との練習試合中ですよ」

 

 プラウダ高校との練習試合中……?

 アンチョビは低く唸る。

 前にもどこかで似たような状況になった気がする。こういうのを確か、そうデジャヴと言うのだったな。

 カプレーゼはアンチョビが黙りこくったのを訝し気に見つめながらも、CV33を発進させた。場所は山岳地帯らしく、所々に森や崖といったものがあり、道路状況は最悪と言える。

 

「カプレーゼ、今日は何月何日だ?」

「2月17日ですよ」

 

 まさか……まさか、そんなことが。

 忘れもしない日付だった。2月17日プラウダ高校との練習試合。ここまでのキーワードが揃えば、もはや疑いようもない事実だということを受け入れることしかできなかった。

 この日の練習試合で、アンツィオは予想通りプラウダに完敗する。そのことをわざわざからかいに来たカチューシャとペパロニとの間で喧嘩が起こり、クアトロのおかげで何とかその場を鎮めることはできた。しかし、クアトロはアンチョビに対してこれ以上負けを重ねぬようアンツィオの方針を改めるように打診してきたが、アンチョビそれを黙殺したのだった。勝つことよりも、まずは楽しむことを優先した結果だった。それからだった。クアトロが完全にアンチョビを軽蔑するようになり、練習にも試合にも出なくなったのは。

 この日はまさに、アンツィオの未来を変えることとなった日なのだ。

 同じことを繰り返している? 私は過去に戻ってきたのか? なぜだかわからないが、ならば今度は同じ道を行かないように努力しなくては……。元を辿れば、カチューシャとペパロニの喧嘩が発端である、その喧嘩の原因がアンツィオが負けたことだとするのなら……ここで勝てば、未来は変わる可能性が十分にあるということ。

 

「カプレーゼ……」

 

 声が掠れる。喉がカラカラに乾ききっていた。

 戦車道を楽しむのではなく、勝つことを優先する。私は今、中学時代の頃と同じことをしようとしている。それでいいのか?

 悩みは数秒で掻き消えていた。なぜかはわからないが、仲間に対して優しくしなくてはいけないという感情が一切ない。勝つためなら、どんな手段をとってもいいという囁きが段々と大きくなっていく。正しいことをやっているのだ、と自己肯定感が堰を切るように流れ出してきた。

 

「私は、勝つための戦車道をやらなければいけない」

統帥(ドゥーチェ)……?」

「通信機を」

「は、はい」

 

 アンチョビの呟いた言葉にカプレーゼは驚きながらも、アンチョビに通信機を手渡した。アンチョビは乱暴にそれを受け取ると、全車に向けて通信回線を開いた。

 

「各員、状況を」

『こちら後方セモベンテ部隊。現在、敵T-34-85と交戦中。装甲も火力も桁違いだ! このままだと撃破されるぞ!』

 

 悲痛な叫び声を挙げたのは、クアトロだった。彼女は頭の回らないセモベンテを生かそうと、試行錯誤しているのだろう。

 

『姐さん! こちらCV33部隊! これからセモベンテの援護に回るッス』

『ペパロニ! まだ、統帥(ドゥーチェ)の指示は出ていませんよ!』

『指示がなくとも……!』

 

 セモベンテの援護に向かおうと躍起になるペパロニとそれを制するカルパッチョの声が聞こえた。

 思わずこめかみがピクリと上がる。自分でもわかるほど、体中の血液がグツグツと沸騰し始めていた。

 ペパロニ率いる先遣隊がしっかりと仕事をしていれば、そもそもセモベンテ部隊が窮地に陥ることはなかったのだ。ペパロニが失敗したのは、いつものごとく中途半端な作戦の解釈と勝手な自己決定であることは容易に想像できる。毎度、それには頭を悩ませつつもやんわりと注意してきたが、一向に変化を見せることはなかった。

 今回は違う。今までのように、やんわりと制することも注意することもない。優しさを見せれば、部下はつけ上がり、勝つことができなくなる。

 

「余計なことはするなペパロニ!」

『姐……さん……?』

「クアトロ、離脱しろ。出来ないものは置いていき、肉壁にすればい。セモベンテがなくては、プラウダとまともにやりあうことはできない」

『わ、わかった……』

「ペパロニとカルパッチョはO地点に集合。再度戦力を整え、敵フラッグ車を狙う」

 

 なんと清々しいのだろう。今まで胸に溜めてきたことをぶちまけるのは。

 

「ふふ……ふふふ……」

 

 アンチョビから自然と笑みがこぼれ落ちた。

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