Girls und Panzer ~Falling down Anchovy~   作:ROGOSS

4 / 7
毎週更新といいながら、隔週となっている現実…
申し訳なさしかありません(´;ω;`)


Shock tactics

 ノンナも警戒してるし……私も警戒しておくに越したことはないわね。

 

「各車、警戒を厳としなさい! いい! ネズミ一匹でも通したら、シベリア送りよ!」

 

 カチューシャなりの喝を入れる。

 アンツィオの戦法が変わっている。つまり、隊長であるアンチョビに何か異変が起きたと考えるのが普通だろう。あちらにはカルパッチョと名乗るアンツィオの中では比較的頭の良い副隊長がいるらしいが、指揮を執ったことがあるとは聞いたことがない。もちろん、今回は特別に指揮を執っている可能性も無きにしも非ずだが……。

 

「いったい、どうしようというのよ」

 

 カチューシャは溜息をつきながら、思考を止めた。これ以上考えようとも、答えが出ないことはカチューシャ自身が一番自覚していた。

 手摺(てすり)につかまりながら、ハッチを開けるとキューポラから顔を出した。プラウダ高校の生徒ならば誰しもが見慣れている雪景色が一面に広がっていた。

 

『カチューシャ隊長、ウチ等はどうすればいいべか?』

 

 唐突な通信が入る。この声はKV-2を任せているニーナのものだろう。

 雪山が試合会場ということもあり、足回りはあまり強くないKV-2は置いていこうとノンナは言っていたが、カチューシャが最後まで折れなかったため連れてきていた。もっとも、山頂まで上がるだけで試合が終わってしまうため、中腹あたりで待機となっていた。

 

「今は何もしなくていいわ」

『了解だべ』

 

 本当に読めない。ノンナ達がCV33部隊を追撃している連絡は逐一来ているが、それ以外の情報が一切なしだ。

 セモベンテや残りのCV33部隊はどこへ消えた? まさか、逃げた? 

 

「カチューシャを前にして怖くなったのかしら?」

 

 言葉に出して言うも、もしそうだとしたらどうしようかとカチューシャは悩み始めた。

 試合の最中逃げ帰るなど、武道の精神にのっとっていないどころの騒ぎではない。最悪、カチューシャの始末次第では、二度と誰もアンツィオと試合をしなくなったとしてもおかしくない案件だ。

 カチューシャは再度溜息をつきながら、後ろを振り返る。背後には、巨大な雪の壁がそそりたっていた。道を確保するための除雪作業をした際に出た雪が押し込められているのだろう。おかげでカチューシャとしては背後からの奇襲を警戒しなくて済む。おまけに眼前には崖が広がり、下には昨日まで降っていた大雪の影響か流れの速い川が流れていた。もちろん、これでは前から奇襲をかけることも不可能だ。逃げ道がない、とダージリンなら言いそうなポイントに陣取っているが、そもそも逃げるつもりなどないカチューシャにとって、そんな言葉は馬の耳に念仏である。

 油断したつもりはない。完璧な作戦のつもりだ。そう、自画自賛していた時のことであった。

 

『隊長! 対岸の崖にアンツィオが!』

「なんですって!? 早く撃ち落としなさい!」

『了解っ! ……アンツィオが発砲してきました!』

「あんな豆鉄砲にやられるものですかっ!」

 

 突如対岸に現れたアンツィオは、発砲を始める。しかし、砲弾は当たるどころかかすりさえもしない。

 カチューシャはその様子を見て鼻で笑った。

 

「なによ。遊んでいるつもりなの?」

 

〇 〇 〇

 

 ほら、予想通り。

 対岸に陣取っているプラウダのフラッグ車を見て、アンチョビはほくそ笑んだ。

 もしノンナがCV33の追撃を行わずカチューシャと合流していたならば、間違いなく逃げ場のない危険な場所で待機していることに反対しただろう。しかし、今ここにノンナはいない。

 自分の作戦に妙な自信を持ち、意固地と言われても仕方のないほど意思を固めている愚かなちびっ子隊長がいるだけだ。

 早朝まで雪が降っていたせいで、運営も除雪した雪を別の場所へ運ぶ時間はなかったのだろう。うずたかく道の脇に積まれているのがいい証拠だ。川の流れも速い。あんな場所へ落ちたら命の危険もあるかもしれない。

 

「全車前進。わざわざ装甲を抜けないソ連製戦車を狙う必要はない」

『なら、どこを狙うのですか?』

「あの雪の壁だ!」

 

 アンチョビの乗るCV33を先頭に隠れていたアンツィオ戦車隊は動き出す。

 プラウダ戦車隊も気づいたようで、アンツィオ戦車隊へと砲塔を向けはじめた。

 

「撃てっ!」

 

 セモベンテのやや重い砲撃音とCV33の機銃の音が渓谷に鳴り渡る。プラウダ側は、突然アンツィオが姿を現したことよりも、まるで意図的に自分たちを狙っていないかのような砲撃に驚いているようであり、反撃の様子を見せなかった。

 そして数秒のアンツィオの砲撃の後、プラウダがようやく攻撃を開始しようとした時だった。大きな地鳴りが響き、異変が現れたのは。

 

「よし!」

 

 アンチョビはガッツポーズをする。眼前では、数多の砲撃と爆発による熱でバランスを保っていられなくなった雪の壁が崩れていく瞬間が広がっていた。後ろからは雪崩、前には急流の川。左右に行こうとも、友軍が邪魔で簡単には身動きが取れない。

 やがて、崩れた雪の壁によりプラウダフラッグ車の姿が完全に埋もれた。

 

『プラウダ高校フラッグ車! 行動不能! よってアンツィオ高校の勝利っ!』

 

 雪の中から這い出るのは不可能と判断した運営の無慈悲な声が放送される。

 ここに、アンツィオの勝利は宣言されたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。