Girls und Panzer ~Falling down Anchovy~ 作:ROGOSS
地道に更新していきます。
プラウダ戦から二日が経過した。各校でも、アンツィオがプラウダに勝ったという報告はあっという間に飛び交い、大きな話題となっていた。
練習試合といえど、強豪校であるプラウダに他校からお遊び戦車道などと陰口を叩かれているアンツィオが勝ったのだ。もちろん、勝因の一つにはカチューシャの敵を舐め切った態度もあったのだろうが、勝った事実に変わりはない。
一番敏感に反応したのは、カチューシャの友人でもあるダージリン率いる聖グロリアーナ女学院であった。
英国の国風を強く受ける校風から、スパイ養成機関に近しい学科を持っている。ダージリンは、腹心であるアッサムを通じて、さっそく探りを入れていた。
アッサムから突然、「アンツィオの内情を探ってきていただけませんか? 帰還報告の際には極上の茶葉で入れた紅茶をご用意しますので。ご安心を、あなたが生還できる確率は50%を超えていますわ」などと命令された下級生には、まったくもって迷惑な話だが、その話は今は必要ないだろう。
兎にも角にも、命を受け、コンビニ船などというものを使わずに、アンツィオの制服を手に入れ堂々と潜入した聖グロ下級生が見た物に、彼女は驚きを隠せなかった。
アンツィオといえば、常に資金繰りに喘いでおり、そのことから校内で出店を開くことで各部活は活動資金を得ていた。
しかしながら、資金繰りが厳しい原因は紛れもなく、そのあまりにもグルメすぎる舌と自由な性格なのだが……
「なによこれ……」
この統制のとれた動きは黒森峰だろうか? 他の部の様子はいつものアンツィオだが、戦車道だけは違う。なんだ? なんだこれは?
黙々と戦車のメンテナンスを続けるアンツィオ生。それを腕組みをして見ているアンチョビ。その隣にいるのは、あまり見ない顔だが、新しい副官だろうか? 調べる必要がある。
少し視線をそらすと、ガレージの外で動く人影を彼女は見つけた。戦車道の一員のようだが、どうやら随分と力仕事をしているらしい。もちろん、戦車のメンテナンスにもかなりの労力はかかるが、外にいる人等は、さっきから砲弾を持ってきては持ち去りの繰り返しをしている。終わりのない作業などして、なんの得になるというのか?
こうなると、彼女の好奇心は止まらない。ゆっくりと近づいていくと、声をかけた。
「いやぁ、今日は暑いね」
「……そうだな」
「さっきから同じことを繰り返しているけど、何をしてるんだい?」
近付くとその作業の正体がようやくわかった。彼女達は50m先にある砲弾入れから砲弾を運び、やがて空になると今度はその反対側から砲弾を運んでいた。
筋力トレーニングか何かか?
「さあね。もう、姐さんの考えていることは分からないよ」
心なしか、ここにいる者達の目が死にかけている気がする。アンツィオは、もっと活き活きとした目をもつ生徒が多くはなかったか?
「そういえば、この前プラウダに勝ったらしいけど、どうだったんだ?」
「その話をするな!」
彼女が話しかけていた黒髪のショートヘアーが大きな声を出す。
近くにいた者達がペパロニ、と心配そうな声を出す。なるほど、彼女の名前はペパロニらしい。その名前なら聞いたことがある。アンチョビが特に可愛がっている一人のはずだが……
「姐さんは変わっちまった。それだけだ」
「そ、そうかい……なんだか嫌なことを聞いてしまったみたいですまないね」
「……いや、いいんだ。私こそ、大きな声を出してすまないッス。ところで見かけない顔ッスね」
「あ、ああ! 今度転校してこようかと思っててね。ちょっと下見に来たのさ」
「そうッスか。だったら、戦車道には入らない方がいいッスよ」
おかしなことを言う。人員が増えることは喜ばしいはずだろう? なぜ、戦車道を勧めずに、逆のことをする?
「今のアンツィオの戦車道に希望はないッスよ」
「え……それは、どういう……」
「見学かな?」
後ろから声がかけられる。砲弾を運んでいた彼女達はハッとすると、作業に戻っていた。ペパロニも、一瞬何かを睨んだようだが、仲間に声をかけられ戻っていく。
「あ、えぇ……今度、転校しようかと思っていて……」
「そうかそうか! それは嬉しいな! ぜひ、伝えてくれ」
凄まじい威圧を感じる。体を動かすことができない。
その声から、後ろのいるのがアンチョビだということは分かっている。彼女には、こんなにも威圧感があっただろうか?
アンチョビは彼女の耳元に口を近付ける。吐息が髪にかかる。
「私たちの内情はしっかりと伝えるんだぞ」
彼女は走り出した。正体がバレたからではない。
得体の知れない何かが、耳から入り体内を弄られるような恐怖感を感じ取ったからだ。
「違う! これは違う! なんとしても報告しなくては……!」