王都についた後で知ったことだが、俺たちを王都まで連れて来てくれた騎士の名は「バーロン」というらしい。
王都までの道のりでバーロンは俺と弟によく気を遣ってくれた。特に弟。弟は母が死んだことを受け入れることができていなかった。だからだろうか、弟は王都につく前は馬車に、王都についてからはうちで借りている宿屋の部屋に引きこもった。王都についてからは、弟のそんな心情は無視するかのように、バーロンは母の葬儀の準備を始めた。
「ベイリンよ、よくよく覚えておけ。死者の埋葬は絶対にせんといかんことを。死者の埋葬をせんと、生者は死者にすがり、死に憑りつかれる。今の貴様の弟のようにな。それに、遺体を確実に処理しなければ、サクソン人どもに利用される。故にな、死者の埋葬は絶対にしなければならん。」
バーロンは悲しそうに、悔しそうにそんなこと言っていた。そんなバーロンの顔は俺が理解するまで何度でもいうぞという顔をしていてした。だからだろうか、バーロンの言いたいことがよくわかり、そして次に出た言葉は必然的に弟のことをどうにかする言葉になった。
「あぁ、わかった。バーロン、俺はお前の忠告通り、今もふさぎ込んでいる弟を外に連れ出してみる。すまないが、葬儀の準備をよろしく頼む。」
バーロンはそんな俺の返答に驚いたのか、びっくりしたような顔をして、
「そうだ、わしの言ってる意味が理解しているようでよかった。それ、ベイランのところに行け。葬儀のことは分かった。」
と、うれしそうに俺に言った。
俺は王都での二階建ての我が家にて、二階の弟が閉じこもっている部屋にいき、ノックを2,3回した後、
「ベイラン、入るぞ」
と言ってベイランの部屋に入った。ベイランは部屋の隅で何も言わずに、何も見ずに、何も感じてないようにただうずくまっていた。なにをどうすれば、この亀が甲羅に入ってるかのように籠城しているやつを外に出すか、考えていると、
「あ、兄さま、おはようございます」
と、弟は時違いなことを言い出した。そんなすっとぼけな挨拶に対して俺は返答した。
「ベイラン、今の時間は昼だぞ。昼食を食べたのもわすれたか」
「あれ、そうでしたか?いえ、ずっとこの部屋の中にいるので、時間の感覚がおかしくって」
「そうだな、すっとこの部屋の中にいるからな、お前は。そこでだ、ベイラン。お前のそんな生活環境を少しでも直そうとってことをバーロンと話してきた。バーロンもお前がずっと部屋に閉じこもっているのを心配していたからな。そこでだ、ベイラン。少しでも日の光を浴びるために、外に出て、王都をすこしあるいてみないか?」
ベイランは少し考えたようなそぶりを見せて、
「兄さまがいうのなら、少しだけですけど…」
といい着替の準備をし始めた。その様子をみて、これなら外に出すことは大丈夫だなと思い、俺は部屋を出て、一階の客間で待っていることを告げて部屋を出た。