エクター卿は剣を構えて俺の方向を向く。そして、あの不思議と安心感を与えてくれていた雰囲気は消えず、ただこちらに向かって早く打ってきなさいと言わんばかりの優しく、少し父性を感じさせるような顔をエクター卿はしていた。それに対して、俺は適切な、それこそ自分の手の長さや剣の刃先から柄までの距離を計算して剣をふるった。それに対してエクター卿は驚きつつもしっかりと剣で防いだ。その顔はその年で剣術に何が一番必要かを悟っているのかという疑問の顔だった。次の瞬間、俺は防がれていた剣を振りぬき、反対の方向に切り返した。当然のように最も威力の高い場所を計算しながら。次のエクター卿の顔は悟ったような顔だった。この目の前の少年は剣術では自分の息子の数段上を行っていることを。だからか、訓練の最中だろうにエクター卿は
「ケイ、ベイリン君の剣を振るう姿勢をしっかり見なさい」
といった。その言葉を聞いた後のケイの感情は読み取る暇がなかった。なぜなら、エクター卿がわずか隙を見測らって剣を上段から振ってきたからだ。先ほどのケイとの訓練では、全く剣を振るう何てことしていなかったせいでその対応にわずかに遅れ、後退した。すると、エクター卿は追撃することなくこちらを見て、
「ベイリン君、君には剣の才能がすごくあるな。それに鍛錬を怠っていない。あぁ、正直君の父上が少しうらやましいな。ケイは剣の才能があるにはあるんだが突出と呼べるほど大きいものではないんだ。だから、君とは違いケイには、徹底的に型を覚えさせているんだが、君はその二歩ほど前を進んでいる。もともとケイが君がいる領域に来た時と同じ対応をしようかなと思って、反撃させてもらった。さあ、訓練を中断させてしまってすまない。続きを始めよう」
といった。俺は王の騎士として名高いエクター卿から剣の腕についてほめてもらったことに少し喜びを感じながら、剣を構えてふった。目の前の騎士はそれの軌跡を様に見抜き、ぜったにここを通るところに剣を構え防いだ。対処されるだろうことは予想していたので、その対処をされた瞬間に次の動作に入ろうと眼前の騎士とのつばぜり合いをやめようした瞬間、それを見抜かれていたこのように騎士は剣を振った。自分の予定を狂わされ、一瞬バランスを崩しそうになったが、必死にそれを耐えて次に剣を振ろうとする。そんな風にエクター卿との訓練をしている中、頭では一方では訓練の状況をしっかりと把握し、次の行動を予測しながら、剣を振る指令を出していて、もう一方では先日亡くなった母のことを考えていた。母はとある王の親類でとても高貴なでの人間だった。そのために母は女性ながら一応、剣術を納めていた。それに対して、母は「昔のやんちゃやっているときの名残よ」と卑下していたが、そんなことはなかった。実際に、母がうちの騎士団に純粋な剣術の試合で負けたことを見たことがなかった。母もよくエクター卿のように剣術の訓練をつけてくれた。それがこの王都に来る道中において、もうできないことが確定してしまった。そのことが少し寂しくなった。
そんな風に雑念にとらわれていたからか、別に何ともなく切り上げたエクター卿の一振りに、木刀を吹き飛ばされてしまった。吹き飛ばされた自分も吹き飛ばした本人であるエクター卿も驚いていた。そしてエクター卿は
「今日は此処までにしよう、ベイリン君。どうやら、少し疲れているようだしね。そして今日はもう帰りなさい」
と優しげな表情で言った。それに対して、はいと返事を返しベイランのもとに行き、エクター卿に今日帰るように言われたことを言おうとする前に、ベイランが、
「兄さま、泣きそうな顔していられますが何処かけがをなされたのですか?」
と心配してる顔で言ってきた。その時、初めて俺は泣きそうな顔をしていることに気付いた。それは全く無意識だったにもかかわらず、どこか腑に落ちた。エクター卿との訓練の最中に母のことを考えて、あまつさえ、寂しいなんて感情をもっていてしまったのだから。ただ、自分より感情が不安定そうなベイランに見られたことが不覚だったなと感じ、母が死んだことを悲しんでいる様子を見せないためにも俺はとっさに
「いや、エクター卿の打ち込みの中でも一本、打ち込みが激しいのがあってな。それの対処を間違えて、少し腕が痛いんだ。それをエクター卿と話して、今日はもう帰ろうという話になった」
と嘘をついた。それに納得したベイランは少し意外そうな顔をして
「わかりました。では、私たちは帰るとエクター卿にあいさつに行きましょう」
と言って、俺を引っ張ってエクター卿の目の前に一緒に来た。そうすると、エクター卿は帰るのかねと尋ねてきたので、短く、はいと返事をすると
「明日はケイともう一人加わるかもしれないが、気が向いたらまた来てくれ」
と言って、ケイとの訓練に戻っていった。俺とベイランは帰る途中何もしゃべらずに帰った。帰る途中の街の風景は行く前の風景とは違い、俺には物足りなさを感じさせた。