かつて、いくつかの戦争があった
そして、様々な戦災や気象の異常から世界の環境は加速的に悪化していった。
避けようのない資源の枯渇から人々は争いをやめることができず
拡大していく各所の汚染はやがて限界をもたらした。
一度悪化した環境は容易に改善されることはなく 、むしろ変化に伴って生じた様々な災害の伝播によって我々の住む世界は急速に失われていった。
その後、支配者たちは去って行った。
ーー我々は残されたのだ、この汚された世界に。
かつて人類の作り上げた繁栄は時とともに失われ、またその過程でさらなる汚染をばら撒いた。
あらゆる有害な物質によって大気は変容し、多くの大地は人の住むことのない荒野へと変わった。
大地は汚染されていき、残されたわずかな土地に我々はしがみつくように生きている。
そしてそれでもなお戦いは続いている。
我々自身の愚かさゆえに。
我々は、救済されねばならない。
世界は、まだ死んでいないからだ。
世界は、生き延びなければならない。
我々は、まだ生きているからだ。
人々よ、我々には思念がある、意思がある。
それは、我々が生きている証だ。
世界は、まだ死んでいない証だ。
人々よ、我々は戦うべきだ。
立ちはだかる全ての敵となる、たとえそれが何者であろうと、我々自身の力で排除すべきだ。
それが我々の愚かしさの証だとしても、それこそが我々自身が生きているーー。
我々が生きるための、最後のよすがなのだからーー。
「………なーんつって」
「?どうかしましたか?提督」
『空…急にどうしたんだい?』
俺は今、浜風に案内されて艦娘の墓地から現在生存している艦娘達が細々と暮らしいている居住区に来ている。
そこで目にしたのはまるでACVに出てくる地下世界の居住区染みた世紀末な地下街で、その光景を見てしまった俺はつい先ほどACV代表の演説をついつい熱く語ってしまったというわけだ。
いや、それにしてもほんとに酷い(褒め言葉)。
なんかワイヤーで吊るされている艦娘もいるし、夕張らしき人物が物騒なOWを雪風に向けてるし……雪風が如何に回避と幸運値で神回避をやってのけるといっても夕張がOWなんて全てを焼き尽くす暴力を振るうならば相手は死ぬ。
「…ええと」
「いやあ悪い悪い。ちょっとここの雰囲気が気に入ってね。それに演説を語ったおかげで気分もスッキリしたし、そろそろ日向と不知火を寝かせる場所まで案内してくれないか?」
「あ、はい」
イカレ野郎を見るような目で俺を見ていたので俺は全然大丈夫だから、つーかこの体俺の体じゃねえからね!と浜風にアピールしつつ居住区に足を運ぶ。
「浜風!大丈夫?激しい戦闘音がっ……て」
「誰?……貴女」
「みなさん。彼女は今の時点では敵では…」
見慣れぬシューマッハ(中身俺)とアリーヤの姿にすわ敵か、と殺気立つ艦娘達を浜風が必死に宥めているのを尻目にここまで担いで来た不知火と日向を簡易テントの中に寝かせる。
「遅れました。私は第2艦隊の旗艦を務めている雲龍です」
彼女が来たのは、シューマッハ(俺)が暇な時間を使って周囲の探索やフォックスアイと交信をしている最中だった。
「悪い、フォックスアイ。お客さんだ。また後で」
『いや、このまま聞こう』
「分かった」
フォックスアイと通信を繋げたまま空母艦娘の雲龍と互いに自己紹介をする。
「今の体は…少し話すとややこしくなるけど。上の鎮守府を指揮している風見空だ。体の女の子はシューマッハ。俺の部下だ」
「?……そう」
やはりこの体については後々説明せねば分からないだろう。
それよりも、と話し合いを始める。
「先ず、雲龍達はこれまでに鎮守府奪還を目的に投入された艦隊で間違いないか」
「ええ、その認識で問題ないわ。それで、貴女が鎮守府を統率している事は、既に鎮守府は解放されたという事でいいのよね」
「……うーん、それもちょっと事情が特殊でね。確かに鎮守府は俺の指揮下にある訳だけど、周囲を姫級の深海棲艦に囲まれていてね。資材もピンチで絶体絶命な状況に変わりはないよ」
「そう……」
分かっていた事だけど、事実を告げると雲龍は顔を俯かせて体を震えさせた。
それにしても第2艦隊という事は彼女の他に第1艦隊の旗艦が居るはずだけど、これじゃあ奪還作戦の途中で轟沈したっぽいな。
「…違うわ。第1艦隊は当時、無線が壊れた為に大本営に帰投。私たち第2艦隊はその時の殿よ」
……マジかよ、それって捨て駒にされてんじゃねえか。
「苦肉の策として地下水道の壁を連装砲や単装砲で無理やり私たちだけが通れるほどの穴をこじ開けて此処で暮らしていたの。……私たち第2艦隊の他にも別の鎮守府から派遣されて運悪く撤退出来ずにここに逃げ込んだ艦娘達もいるわ」
資材や燃料に関しては地下水道に生息しているマスコットモンスターAMIDAを殺すと何故か鋼材やボーキサイトに変わる他、AMIDAの体液が燃料代わりになるようで、いままではそれでどうにか耐え忍んでいたらしい。
といっても誰も彼も好き好んでAMIDAの体液なんて使いたくないので練度や戦闘力の高いメンバーに支給し、その他の艦娘は非戦闘員として艤装を取り外しているようだ。
「それにしてもAMIDAが資材になるのか。これは、今後積極的に狙って行った方がいいかもな」
AMIDA狩りだぜぇ、へへへ。
っと、今はAMIDAのことは隅にでも置いといて彼女に鎮守府に所属して貰うよう提案をする。
「雲龍。提案なんだが、周りの姫級が邪魔なので掃除したいんだ。手伝ってくれないか」
「それは、貴女の鎮守府に所属しろという事?」
「ああ。こっちも艦娘が味方だと心強いし何より人手不足でね。まあ、所属するしないに関わらず支援はさせて貰うよ。とりあえずでいいから考えといてくれ」
「……分かったわ」
話を終わり、雲龍にシューマッハが持っていたオーメル製便利道具の一つである無線機を手渡すと、アリーヤを伴い艦娘の居住区を出る。
「フォックスアイ」
『既にフリュークは下がらせている。ポイントに向かえ。其処にマイブリス達がいる』
「了解」
ドン、ドン、と立て続けに発生する爆発。
既に1時間を経過して尚暴威を振るうロケットバカとAMIDA群団の戦いは、ロケットバカの弾切れという結末を迎えていた。
「ぬう、我輩。ロケット弾ががもうないのである!ひじょ〜に悔しいのであーる!」
「チッ、そろそろ撤退しないと流石にヤバイぜ」
「あ、ボクこれ相手にするとか無理だから、お先ー」
武装がねくすと娘空に比べて貧弱なフリュークがジャマーと光学迷彩を起動して撤退。
続いて弾切れのバガモールがマシンガンをばら撒きながらゆっくり後退していく。
「ハッ、本当こいつらの相手は勘弁だな!あばよ、虫共」
最後に背部ミサイル、ガトリングガン、デュアルレーザーライフルをフルバーストしながらマイブリスも撤退を開始する。
彼女はバガモールが派手なロケットパーティーをブッパしていたおかげで十分な程残弾量がある為、此処ぞという場面で弾切れを気にすることなく、口笛を吹きながら小気味良いリズムでAMIDA達を撃破する。
「amyaaaaaaaaaaaaa」
突如一体のAMIDAが上空からレーザー弾を喰らって沈黙、5メートル級も右脚部を全て斬られて横転した。
「シューマッハとアリーヤか、助かったぜ」
「貸し1な!」
『うえぇ。体液……浴びないでよ?』
「提督、援護します!」
オーバードブースト、クイックブーストを連発しながらクルクル回転しつつレーザーブレードで薙ぎ払う。
純粋な技術が無くとも元々の威力が高いレザブレだ、素人の俺に合っている。
「ENが回復したらそろそろ撤退しよう」
「ああ、それじゃあ最後だ、喰らえ」
マイブリスの全身からミサイル、弾丸、レーザーが飛び出していく。
AMIDAの攻勢が僅かに怯んだ瞬間を狙ってすぐ様オーバードブーストを起動、途中でマップに映っている光点、勿論フリュークを拾ってそのまま地下水道から外へ出た。
「とりあえず俺はあっちの体に戻る」
『あー、やっとかー』
若干ふて腐れた様子のシューマッハに苦笑交じりに謝罪し、シューマッハとの繋がりを切る。
目の前がブラックアウトし、まるで夢から醒めたような覚醒を覚える。
「………」
むくっと体を起こす。
隣にはフォックスアイがいて、起きたか、という顔でお茶を持ってきてくれた。
それにしても全身が、頭も怠い。
どう考えてもクイックブーストやオーバードブーストを連発した影響が精神にも及んでるんだろう。
「他の部隊も帰ってきたな」
「執務室まできたら起こしてくれ……」
疲れたのであとはフォックスアイに任せて二度寝した。