2016年秋季限定海域プレイバック ~祈りを越えて 作:黒鋼提督
Commandant Teste「Bonjour! Enchantée. Je m'appelle Commandant Teste. 提督、どうぞよろしくお願い致します。」
その夜、鎮守府は賑やかだった。
発令された艦隊作戦第三法を完遂し、Commandant Testeの救出も達成した。
これ以上ない戦果に、激戦を潜り抜けた戦友に、そして新しい友との出会いに皆、全力の笑顔で答えていた。
そんな賑やかな鎮守府の中、一人、厳しい表情の艦娘がいた。
長門「…。」
静かに腕を組み、眼を塞ぐその姿は今の空気には馴染まない異質な雰囲気だった。
長門「…のだ。」
囁くような声で呟いた後、歩み出した。
Bismarck、Prinz Eugen、阿賀野姉妹のテーブルに近づき、
長門「Eugen、酒匂。少し…頼めるか?」
Prinz Eugen「ナガート?」
酒匂「ぴゃん?」
二人が肯定の返事をする前に踵を返し、長門は鎮守府に歩みを進めていた。
Bismarck「Eugen?あの長門の表情…ただ事じゃないわ…行ってあげなさい。」
Prinz Eugen「は、はい!お姉様!でも、私、何かしたかなぁ…?」
阿賀野「酒匂、悪い事したらちゃーんと謝るのよ?」
能代「そうよ、酒匂?阿賀野姉ぇみたいに隠すともっと怒られるんだからね?」
矢矧「そうね…でも、長門さんは謝れば許してくれるはずよ。」
酒匂「もぅもぅ!酒匂何もしてないもん!」
Prinz Eugen「では、お姉様!Prinz Eugen行ってきます!」
矢矧「ほら、酒匂?Eugenさん行っちゃうわよ。」
酒匂「ぴゃあっ!?Eugenさん、待って待ってー!」
祝勝会に沸く鎮守府広場を後に、3人は鎮守府の中へと消えて行った。
3人は鎮守府2階の第二作戦指令室へ移動していた。
長門とPrinz Eugen、酒匂は向かい合うように立ち、長門は腕を組み、目を閉じていた。
防空窓は閉じられ、幽かに月明りが差し込むだけの室内は沈黙していた。
その長門の静かに厳しい表示に2人は微動だに出来ずにいた。
長門が沈黙する数分間を数時間に感じる程、2人は緊張していた。
何度目かの月明かりが雲に陰り、また光が差し込んだ時、長門は静かに話し始めた。
長門「今から話す事は…2人には…非常に辛い事となると思う…。」
その静かに、だが決意を秘めた声色に2人はさらに緊張を増した。
長門「だが、最後まで聞いて欲しい。これは2人にしか頼めない事なのだ。」
長門「今から話す内容を知っているのは、提督に陸奥・大淀だけだ。」
長門「まず…そうだな、私と陸奥は本作戦の最終局面に決戦支援艦隊として参戦していた。」
長門「あの時…Iowa率いる連合艦隊が敵主力艦隊に接触する寸前に陸奥の偵察機が発見したのだ。」
2人は静かに息を飲んだ。
長門「敵残存戦力が我々が想定する以上の速度と規模で再集結しているのを…だ。」
本作戦は終了したと思っていた2人は驚きを隠せなかった。
Prinz Eugen「ま、まだ作戦は続行されるという事ですか?」
酒匂「ぴゅぅ…。」
長門「いや、本作戦は終結している。それに…だ。」
長門「提督と陸奥、大淀と分析・検証した結果、その拠点からの出撃は戦略的にも戦術的にも考えれないと判断された。」
長門「提督の判断は今、その拠点に集結した大艦隊にこちらから出撃するのは得策ではなく、時折出てくるであろう艦隊を殲滅し、少しづつ戦力を削り落とした後に。」
長門「あの規模の艦隊を殲滅するには各国からの支援艦隊結集後との事だ。」
各国からの支援艦隊。
今までに聞いたことが無いその言葉に2人はその拠点へ集結された戦力規模を想定し、息を飲んだ。
Prinz Eugen「あれ?でも、何が私達に辛い事なのですか?今、戦闘は無いんですよね?」
酒匂「ほんとだ!酒匂、びっくりしたけど、辛くはない…かな?」
その2人の疑問に長門は答えた。
長門「その敵艦隊の予想集結拠点は…MS諸島北東部の環礁沖…。そして…その中枢にsaratogaを確認した。」